6.1 基板材料選択の重要性
6.1.2 有限要素法による熱解析
6.1.2.2 熱解析プログラムの作成
有限要素法は,解析を行う対象物を有限個の要素に分割し,要素毎に定められた節 点変数に関する方程式を作成し,それを組み合わせて対象物全体の方程式として解く,
数値計算による解析法である.近年の有限要素法では,分割の自由度が高い四面体要 素が使用されることが多いが,ここではモデルを単純形状に限定することと,モデル の要素分割において考えやすい六面体要素を採用することにした.
図 6-3:6面体20節点アイソパラメトリック要素
解析対象となるモデルが置かれたグローバル座標を,右手系のxyz直交座標とする.6 面体要素の各辺は直線または曲線とし,各頂点と各辺の中点に節点(node)を設け,
20 個の節点とする.6 面体要素の中心を原点とし,要素内部で1に正規化されたロ ーカル座標を 座標とする.図 6-3に6面体20節点アイソパラメトリック要素と,
そのローカル節点(node)番号および面(face)の番号を示す.
このシミュレーションにおいては,矩形モデルと円板モデルの2種類を扱う.有限 要素法の原理に基づき,隣り合う要素は節点を共有する.したがって,それぞれの節 点には,ユニークなグローバル節点番号が付与される.矩形モデルにおいては,ちょ うど矩形の積み木を隙間無く積み重ねていくように,図 6-3に示す6面体要素を積み 重ね,目的とする大きさの矩形を作る.一方円板モデルにおいて,円板の中心線を含 む要素については図 6-4に示すような少々変則的形状となるが,面および節点の数に 変わりはない.さらにこれよりひとつ外側の要素との結合は,隣り合う要素の接合面 の節点は共有しなければならないから,図 6-5に示す関係になる.それぞれのモデル は,光照射する光軸に対称であるから,シミュレーション計算は1/4のみ行えば十分 である.これに基づくそれぞれのモデルの要素分割を図 6-6 (a) および (b) に示す.
(a) の矩形モデルは,モデルの1/4の基板を縦10分割,横20分割,厚み5分割に,(b) の円板モデルは,モデルの1/4の基板を半径方向10分割,θ方向12分割し,それぞ れ最上部に面方向に基板と同じ分割をした薄膜があるものとする.
図 6-4:円板の中心線を含む6面体20節点要素
図 6-5:円板の中心線を含む要素とひとつ外側の要素との結合
(a) 矩形モデル
(b) 円板モデル
図 6-6:熱伝導モデルの要素分割
後述する連立方程式を解くマトリクス計算において,ひとつの要素内のグローバル 節点番号の最大値と最小値の差が大きいと計算量が増大するため,グローバル節点番 号の付与には注意が必要である.
ひとつの要素における,各節点の形状関数をN ii
(
=1, 2,, 20)
と定め, 座標で表すと,
( )( )( )( )
1
1 1 1 1 2
N =8 - - + - - + -
(6.2)
(
2) ( )( )
2
1 1 1 1
N =4 - - +
(6.3)
( )( )( )( )
3
1 1 1 1 2
N =8 + - + +
(6.4)
( ) (
2) ( )
4
1 1 1 1
N =4 + - +
(6.5)
( )( )( )( )
5
1 1 1 1 2
N =8 + + + + +
(6.6)
(
2) ( )( )
6
1 1 1 1
N =4 - + +
(6.7)
( )( )( )( )
7
1 1 1 1 2
N =8 - + + - + + -
(6.8)
( ) (
2) ( )
8
1 1 1 1
N =4 - - +
(6.9)
( )( ) (
2)
9
1 1 1 1
N =4 - - -
(6.10)
( )( ) (
2)
10
1 1 1 1
N =4 + - -
(6.11)
( )( ) (
2)
11
1 1 1 1
N =4 + + -
(6.12)
( )( ) (
2)
12
1 1 1 1
N =4 - + -
(6.13)
( )( )( )( )
13
1 1 1 1 2
N =8 - + - - - - -
(6.14)
(
2) ( )( )
14
1 1 1 1
N =4 - - -
(6.15)
( )( )( )( )
15
1 1 1 1 2
N =8 + - -
(6.16)
( ) (
2) ( )
16
1 1 1 1
N =4 + - -
(6.17)
( )( )( )( )
17
1 1 1 1 2
N =8 + + - +
(6.18)
(
2) ( )( )
18
1 1 1 1
N =4 - + -
(6.19)
( )( )( )( )
19
1 1 1 1 2
N =8 - + - - + - -
(6.20)
( ) (
2) ( )
20
1 1 1 1
N =4 - - -
(6.21) となる.各節点の変数の値uiがわかっているとき,形状関数Ni
(
, ,)
を用いると,要素内部の任意の点における変数値u
(
, ,)
は,( ) ( )
20
1
, , i , , i
i
u N u
=
=
å
(6.22)により与えられる.
発熱項を除く三次元熱伝導方程式は,
2 2 2
2 2 2
T T T T
C t x y z
¶¶ =æççççè¶¶ +¶¶ +¶ ÷¶ ö÷÷÷ø (6.23)
:密度,C:比熱,T:温度,:熱伝導率,t:時間,x y z, , :座標値 となる.これを有限要素法により定式化すると,
[ ]{ } [ ]
e e e{ }
e{ }
et
+ ¶ =
¶
K T C T F
(6.24)
[ ]
Ke:要素の熱伝導マトリクス
{ }
Te:要素節点の温度ベクトル
[ ]
Ce:要素の熱容量マトリクス
{ }
Fe:境界条件で決定される右辺ベクトル
となり,要素の熱伝導マトリクス
[ ]
Ke は,[ ] [ ] [ ]
t[ ] [ ]
t[ ] [ ]
te V
x x y y z z dV
æçç¶ ¶ ¶ ¶ ¶ ¶ ö÷÷
=
ò
çç ¶çè N ¶N + ¶N ¶N + ¶N ¶ ÷N ÷÷ø K(6.25) 要素の熱容量マトリクス
[ ]
Ce は,[ ]
e[ ] [ ]
tV
C dV
=
ò
C N N
(6.26) で与えられる.これらを局所座標に変換すると,
[ ] [ ] [ ]
t[ ] [ ]
t[ ] [ ]
te V
d d d
x x y y z z
æçç¶ ¶ ¶ ¶ ¶ ¶ ö÷÷
=
ò
çç ¶çè N ¶N + ¶N ¶N + ¶N ¶ ÷N ÷÷øK J
(6.27)
[ ]
e[ ] [ ]
tV
C d d d
=
ò
C N N J
(6.28) J :Jacobianマトリクスの値(det
[ ]
J )となる.ここで,JacobianマトリクスJは,
1 2
20 1 1 1
1 2
2 2 2
1
1 2
i i i
i i i
i i i
i i i
i
i i i
i i i
N N N N N
x y z
x y z
N N N N N
x y z x y z
N N N N N
x y z
=
é¶ ¶ ¶ ù é¶ ¶ ù
ê ú ê ú
ê ¶ ¶ ¶ ú ê ¶ ¶ úé ù
ê ú ê ú
ê ú
ê¶ ¶ ¶ ú ê¶ ¶ úê ú
ê ú ê ú
= êêêê¶¶ ¶¶ ¶¶ úúúú=êêêê¶¶ ¶¶ úúúúêêë úúû
ê¶ ¶ ¶ ú êë¶ ¶ úû
ë û
å
J
(6.29)
である.
境界条件を次に示す.
温度固定境界
境界の温度を一定温度に固定するものであり,境界に属する各節点に任意の固 定温度を設定する.
熱流束境界
境界から外部へ,常に一定の熱量qが流出するものとする.流出する熱量qは,
単位時間,単位面積当たりとし,単位はJ m⋅ -2⋅s-1またはW m⋅ -2である.従って,
要素の面から流入する熱量は,
Q= -
ò
q dA (6.30)である.但し,dAは積分面積である.
熱伝達境界
熱伝達境界における単位面積当たりの流出熱量qは,
(
c)
q= T T
(6.31) となる.但し,は熱伝達係数,Tは境界面温度,TCは外部温度とする.
従って,熱伝達境界から流入する熱量Qは,
(
c)
cQ= -
ò
q dA= -ò
T T dA- = -ò
T dA+ò
T dA (6.32) で表される. 熱放射境界
熱放射源である構造体から外部放射源に対し,熱を放射する境界をいう.熱放 射境界における単位面積当たりの流出熱量qは,
(
4 c4)
q=kF T -T
(6.33) となる.但し,は放射率,kはボルツマン定数5.67 10 W´ -8 ⋅m-2⋅K-4,Fは形
状係数
( )
m2 ,Tは境界の温度( )
K ,Tcは外部放射源温度( )
K とする.ここでは式 (6.33) の係数部分をまとめて,
[W K 4] Cr =kF ⋅
(6.34) を放射係数として使用する.従って,熱伝達境界から流入する熱量Qは,
(
4 4) (
2 2) ( )( )
r c r c c c
Q= -
ò
q dA= -ò
C T -T dA= -ò
C T +T T+T T T dA(6.35) となって,Tの 4 次式となるため解けない.そこで未知数Tに 1 ステップ前の既
知のTを用い,係数rを,
(
2 2)(
2)
r C Tr Tc T Tc
= + +
(6.36) とおいて,(6.35)式に代入し,
( )
r c r r c
Q= -
ò
T T dA- = -ò
T dA+ò
T dA (6.37) として近似計算を行う. 内部発熱
内部発熱は,要素内部の単位体積・単位時間当たりの発熱量qIを設定する.要 素における発熱量は,
Q=
ò
q dVI (6.38)となる.但し,dV は体積積分である.
以上のアルゴリズムに従い,三次元有限要素法による熱解析プログラムを作成した.
開発環境はWindows XPをOSとしたPCで,Microsoft Visual C++とDirect X 9.0 SDK を使用した.有限要素法のマトリクス計算のソルバーとして,ICCG(Incomplete Cholesky Conjugate Gradient)法[1]を採用した.ICCG法の詳細については,ここでは 省略する.
図 6-7に開発した熱解析プログラムのメインダイアログを示す.
図 6-7:開発した熱解析プログラムのメインダイアログ