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プローブ光の試料表面反射位相遅れについて

3.2 新しい光誘起膜厚変化計測システムの開発

3.2.5 プローブ光について

3.2.5.3 プローブ光の試料表面反射位相遅れについて

試料の光吸収端より短い波長のプローブ光を使用する場合,プローブ光を電磁波と して考えると試料は不完全導体とみなされ,反射波の振幅と位相が試料の複素屈折率 に依存するため,測定精度を議論する上で十分検討すべきである.

空気の屈折率をn1,試料の複素屈折率をnˆ2 =n2+ik2とし,垂直入射光の場合の反 射光の位相差をとすると,

1 2

2 2 2

1 2 2

tan 2n k

n n k

 =

- - (3.35)

の関係がある.n2は,試料を誘電体として扱うことができる波長における屈折率と等 しいものとする.一方,複素屈折率の虚部である消衰係数k2と吸収係数の関係は,

2 4

k 

= 

(3.36) であらわされる.但し,はプローブ光の波長である.結局,反射光の位相差 は,

ˆ2

n の実部である屈折率の光誘起変化と,同じく虚部である消衰係数の光黒化による変 化の両方の影響を受ける.式 (3.35) および式 (3.36) より反射光の位相差 は,n1=1 として,

( )

2 2 2 2

2

tan 8

16 n 1

 

  

= - + (3.37)

である.高さ測定値hの 依存性は,

( )

h 4  

= 

(3.38) であるから, が十分小さいとしてtan = と近似して式 (3.37) を代入し,

( )

2

2 2 2 2

2

2

4 16 1

h n

   

   

=

-- + (3.39)

さらに高さ測定値の屈折率実数部依存性¶ ¶h n2 と吸収係数依存性¶ ¶h を求める と,それぞれ,

( )

{ }

2 2 2

2 2 2 2 2

2 2

64

16 1

n h

n n

  

  

¶ =

-¶ - + (3.40)

( )

( )

{ }

2 2 2 4 2

2

2 2 2 2 2

2

32 1 2

16 1

h n

n

   

   

-

-¶ =

¶ - + (3.41)

となる.プローブ光波長を405 10´ -7cm-1,代表的な試料である a-As2Se3のプロー ブ光波長における吸収係数 を4 10´ 5cm-1,複素屈折率の実部n2を 3.3 とすると,

2 3.3

n = ,= ´4 105cm-1近傍における屈折率変化の測定値への影響,および吸収係 数変化の測定値への影響hの一次近似は,それぞれ,

7

2 2

2

4.1 10

h h n n

n

-= ⋅ = - ´ ⋅

 ¶  

(3.42) 1.3 10 12

h h  

-= ⋅ = ´ ⋅

 ¶  

(3.43) である.したがってn2が+1%変化した場合,高さ測定値は,

7 8

4.1 10 0.033 1.4 10

h= - ´ - ´ - ´

- 

[cm] (3.44) また,が+5%変化した場合,高さ測定値は,

12 4 8

1.3 10 2.0 10 2.6 10

h= ´ - ´ ´ = ´

-

[cm] (3.45) となる.すなわち,それぞれ真値より-0.14 nm及び+0.26 nmだけ変化する.これは

本機の目標とする測定精度1nmと比較して,無視することができるほど小さくない が,観測結果に本質的な影響を与えるほど大きくない.また,複素屈折率の変化によ り反射光の振幅が変化するが,位相シフト法の原理により,振幅変化は計測結果に影 響を与えない.

したがって,プローブ光として波長405 nmのレーザを用いた位相シフト干渉計に よるPVEの計測は,上記問題があるものの十分に信頼性が高いと判断できる.参考の ため,a-As2Se3の光学定数を図 3-11に,室温におけるa-As2Se3の光吸収係数を図 3-12 に,それぞれ示す.

5 4 3 2 1

200 400 600 800 1000 1200

2 3 4

Refractive index n Attenuation coefficient k

Wavelength (nm)

Refractive index n

0 1 2

Attenuation coefficient k

Energy (eV)

図 3-11:a-As2Se3の屈折率nと消衰係数k

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 10-1

100 101 102 103 104 105 106

(cm-1 )

Photon energy (eV)

図 3-12:室温(300 K)におけるa-As2Se3の光吸収係数

[1] “膜厚計講習資料”,大日本スクリーン株式会社(1989).

[2] Astosh Ganjoo, Y. Ikeda, and K. Shimakawa, Appl. Phys. Lett. 74, 2119 (1999).

[3] Ke. Tanaka, Rev. Solid St. Sci. 4, 641 (1990).

[4] M. Born and E. Wolf, Principles of Optics 7th (Expanded) Edition (Cambridge University Press, Cambridge, 1999) p.336.

[5] Peter de Groot, Appl. Optics, 34, 4723(1995).

[6] 池田 豊,嶋川晃一,特願2004-346909,“3次元形状測定装置,3次元形状測定方法 および3次元形状測定プログラム” (2004).

[7] Y. Ikeda and K. Shimakawa, J. Non-Cryst. Solids 338-340, 539 (2004).

[8] Jai Singh and K. Shimakawa, Advances in Amorphous Semiconductors (CRC Press, London and New York, 2003) p.14.

4 章 バンドギャップ変化計測システムの開発