2.5 反応性スパッターTa 2 O 5 膜の基礎特性
2.5.2 熱的安定性
反応性スパッター法( “SP"で示す)、CVD法( ”CVD"で示す)により形 成した Ta2O5膜は堆積直後では非晶質構造であるが、約 700 ℃で結晶化するこ とが報告されている〔11〕。熱処理温度によって、SiO2換算膜厚での絶縁電界強 度EoxとSiO2換算膜厚Toxがどのように変化するかについて調べた。SiO2換算 膜厚での絶縁電界強度Eoxは(1-6)式に従って、10-6 A/cm2のリーク電流と なる印加電圧とSiO2換算膜厚Toxより算出して求められる。(1-4)式に示す ように、容量はSiO2換算膜厚Toxに反比例するので、容量の大小はToxの大小 で比較できる。図 2-13 は乾燥酸素雰囲気中での熱処理によって生じる EOX と
図2-13 スパッター、CVD-Ta2O5膜のEOXとSiO2換算膜厚Toxの乾燥酸素雰囲で の熱処理温度依存性
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SiO2換算膜厚 Tox の熱処理温度依存性を示している。20 nm より薄膜領域にお いて、スパッター膜とCVD膜の膜厚は、得られる容量( Tox=3.5 nm )が同じ となるように膜厚を選択しており、それぞれ6 nm、13 nmであった。CVD膜は 堆積時にポーラスな膜であり、堆積時には膜厚が 13 nm と測定されるものの、
熱処理により大きく収縮する。一方、スパッター膜の界面 SiO2膜厚が成膜時の プラズマ酸化によりCVD膜の界面SiO2膜厚より厚くなるために、逆に、スパッ ターによるTa2O5膜の膜厚はCVD膜より薄膜となる。
しかしながら、スパッター膜、CVD膜とも同等の容量となるようにした にもかかわらず、CVD膜のEOXはスパッター膜のEOXに比べて低い。本章で適 用対象とするバイポーラメモリ素子では、図2-1 に示す様に、高濃度 Si 基板上 に平面構造の容量部を用いているので、スパッター法で形成しても、被覆性の問 題がないことから、スパッター膜によりシリコン半導体素子製品適用の検討を 進めることとした。
2.1 節にて、Ta2O5 膜の第一の課題として示したように、600 ℃以上の熱処 理により、Eoxが低下するという問題がある。図2-13に示す様に、膜厚が40 nm のTa2O5膜には、その現象が確認できる。40 nmのスパッター膜は600 ℃の熱処 理で EOXが低下している。一方、SiO2換算膜厚 Tox は、600 ℃では大きな変化 はないが、800 ℃ではSiO2換算膜厚Toxが薄膜化することから、結晶化による 誘電率の増加によるものと考えられる。SiO2換算膜厚Toxは8 nmから 6 nmと なることから、誘電率は非晶質膜の約18 から結晶化により 3 分の 4 倍増加し、
約24となる。つまり、600 ℃での耐圧低下は結晶化によるものではない。
6 nmのスパッター膜のSiO2換算膜厚Toxは熱処理なし、600 ℃、800 ℃の 処理によっても殆ど変化がない。一方、EOXは600 ℃、800 ℃と増加し、800 ℃ で最大のEoxが得られる。従って、2.1節で示した耐熱性に対する懸念は、薄膜 領域では問題とならず、800 ℃の高温プロセスにも適用できることがわかった。
薄膜領域では、容量を減少させることなく、EOXを増加させることができ、容量 絶縁膜としての性能を向上できることは、大きな発見であった。
薄膜領域において、容量を減少させることなく、絶縁耐圧が改善される要因 について検討するために、薄膜領域における、800 ℃の乾燥酸素熱処理後の結晶 化の有無について評価した。微小角入射 X 線回折によって、800 ℃の乾燥酸素 雰囲気での熱処理を行った反応性スパッター法による 20 nm の Ta2O5膜を評価 した。図2-14に示すように、800 ℃の乾燥酸素雰囲気での熱処理により、熱処 理なしの場合には観察されない回折スペクトルが測定され、結晶化することが 確認できた。α-Ta2O5構造と β-Ta2O5構造の主な回折線は28.3、36.7、50°の近傍 にあり、α-Ta2O5構造の六方晶の回折線に対して, β-Ta2O5構造の斜方晶の回折線 は、それぞれの位置に複数の回折を含むという違いがあるものの、この測定から、
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800 ℃の乾燥酸素雰囲気での熱処理を行った薄膜領域のTa2O5膜はα-Ta2O5構造 かβ-Ta2O5構造のいずれかの結晶構造と考えられる。
図2-15は膜厚4、10、20、70 nmのTa2O5膜について、熱処理前後による
表面の平均凹凸深さ( nm )の変化をAFMにより評価した結果である。800 ℃ の乾燥酸素熱処理により、膜厚 70 nm では凹凸深さが急激に大きくなり、クラ ックの発生に対応する。一方、20 nmでは、熱処理後でも凹凸深さの変化はみら れず、クラックの発生はないと判断できる。一方、膜厚4 nm、10 nm の領域で は、熱処理により平均凹凸深さが増加することが観察された。10 nm以下の薄膜 領域において、800 ℃の乾燥酸素熱処理に伴う、凹凸の生成があると考えられる。
図2-16はTa2O5とSi界面のSiO2膜に起因するSi2pピークを、乾燥酸素熱処理 温度を変えて測定した結果である。熱処理温度が高くなるとともに、界面 SiO2
のピークは大きくなり、逆に基板からのSiのピークは小さくなる。従って、Ta2O5
と Si 界面の SiO2膜が成長することがわかる。図 2-17に、乾燥酸素中で熱処理 図2-14 乾燥酸素熱処理後のTa2O5膜のX線回折スペクトル
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を行った際の容量値の変化から、Ta2O5膜の下地に成長するSiO2の膜厚のTa2O5
膜厚、乾燥酸素熱処理温度の依存性を求めた結果を示している。Ta2O5膜厚が10
図2-15 AFM乾燥により酸素熱処理理前後の表面凹凸深さ変化
図2-16 XPSによるTa2O5/Si界面のSiO2膜成長の分析
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nm以下の領域では、800 ℃の熱処理により界面にSiO2膜が成長する。一方、10 nm 以上の膜厚の Ta2O5膜と Si 基板界面では、殆ど SiO2膜の成長はおきない。
AFMにより10 nm以下の膜厚領域で観察される凹凸の生成は界面におけるSiO2
膜の成長によるものと考えられる。
以上のように、10 nm以下のTa2O5膜が800 ℃の高温熱処理によっても、絶 縁耐圧の低下がないことは、10 nm以下のTa2O5膜を容量絶縁膜形成後に高温プ ロセスを必要とするDRAMに適用できることを確信させる結果となった。