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熱交換器性能予測手法の開発

一方で,自動車空調機器は,新冷媒の適用及び内燃機関からモータへのパワートレイン シフトという大きな転換期にある.現在カーエアコン用冷媒としては,コストや安全性の 面からHFO1234yfが有力視されている.しかしながら,HFO1234yfは現行のエアコンシス テムに適用した場合,HFC-134aよりも冷凍能力,COPが低下することが知られている(2). 性能低下の要因としては,冷媒が持つ潜熱が低いこと及び気相冷媒密度が大きいことに起 因した冷媒循環量の増加による圧力損失の増加等が挙げられる.そのため,エアコンシス テム性能の向上のためには,HFO1234yf に合わせた熱交換器の性能改善が重要となってく る.

また,近年のHEVの普及やEVの登場により,将来的に車両排熱の低下による暖房熱源の 不足が予測される.そのため自動車空調では,各車両メーカからは新たな暖房機器への要 求が高まっている.最も容易な暖房熱源としては,電気ヒータが考えられるが車両燃費(電 費)を考慮すると,暖房方法としてはHPが有力である.HPシステムにおいては,室内・室外 熱交換器がそれぞれ冷暖房の切り替えで蒸発器・凝縮器の両方の役割を果たす.特に室外 熱交換器を蒸発器として用いるHPサイクルにおいては,外気温度の低下に伴い,着霜への 懸念が増大するため,着霜抑制や除霜技術の必要性が高まっている.

以上のような背景の中で,熱交換器の高効率化の必要性が認識できるが,この手段とし て,一つは現行のコルゲートフィンの改善,二つ目に新たな形状の熱交換器の提案という 方向性があるといえる.これらの熱交換器に対して,第 5 章で述べる最適化検討を実施す るためには,高精度な熱交換器の性能予測手法の確立が重要である.

熱交換性能は,空気側・冷媒側それぞれの熱抵抗によって求まるが,一般に空気側の熱 伝達率は冷媒側の熱伝達率の1/10 のオーダーであり,空気側の熱抵抗が大きくなる.その ため,通常は空気側に拡大伝熱面であるフィンを用いて,熱抵抗を低下させているが,そ れを加味しても熱抵抗は冷媒側と比較して数倍大きく,熱交換器の性能は空気側の熱抵抗 が支配的であるといえる.つまり,熱交換器の性能予測を実施する上でも空気側の熱伝達 率の予測が重要であるといえる.一方で,冷媒側の熱伝達率や圧力損失についても,定性 的・定量的な予測を行う上では,実機条件と合致した相関式が必要となる.

このような熱交換器の性能予測手法に関する研究としては,例えば Yin(3)らや Din(4)らの 研究例が挙げられる.これらの研究例はいずれも熱交換器コアを微小要素に分割し,各要

CFDを用いた3 次元熱流体解析を行うためには,膨大なメッシュが必要になり多くの計算 リソースを必要とし,現在のコンピュータの性能では現実的に解析は不可能である.さら に二相流の沸騰・凝縮現象を忠実に再現する必要があるが,そのような解析モデルは未だ 確立されていない.このような背景から熱交換器の性能予測に対して,上述のような 1 次 元シミュレーションが主流となっているが,前述のように性能予測の精度を向上するため には,熱伝達率,圧力損失の予測精度,特に空気側の予測精度の向上が重要となる.その ため本研究では,第2 章においてコルゲートフィンの空気側伝熱・圧力損失特性,第 3 章 において凹凸平板間の空気側伝熱・圧力損失特性について述べ,高精度な相関式の作成を 行った.本章ではこれらの結果を用いて,冷媒側の熱伝達,圧力損失特性も考慮した熱交 換器の性能予測シミュレーションを実施し,各熱交換器での定性的・定量的な性能比較を 行う.

また,従来のカーエアコンに用いられる熱交換器は,蒸発器,凝縮器,ヒータコアがあ るが,本章では,HP冷暖房システムに用いられる室内凝縮器,室内蒸発器,室外熱交換器

(冷房時:凝縮器,暖房時:蒸発器)の 3 つの熱交換器を解析対象とし,それぞれの性能 予測手法の確立を目的とする.この解析手法を用いることで,第 5 章で述べる熱交換器仕 様の最適化の検討が可能となり,開発期間の短縮・最適化・高性能化が可能となると考え られる.

4.2 解析方法

4.2.1 プログラム概要

性能予測シミュレーションを作成するに当たり,本研究ではMicrosoft社製のVisual Studio 2008(5)を用いてVC++でプログラムを作成した.C++はFortranやBasicに代表される手続き 型言語と異なり,C言語を拡張し,オブジェクト指向の概念を取り入れたプログラミング言 語である.本研究のように様々な形式の熱交換器に対応するためには非常に有効な言語で あると言える.

本プログラムでは,熱交換器の仕様,冷媒の種類,伝熱量計算といった項目を”クラス”

と呼ばれるモジュールで構成し,それぞれを組み合わせることで熱交換器全体の性能計算 を可能にする.ユーザー側は図4.2.1に示すようなGUIを用いて,熱交換器の仕様や計算条

組み込んで計算を行った.

熱交換器の性能計算手法の概略を図4.2.2 に示す.図4.2.2 に示すように本手法では,熱 交換器を任意のセルに分割し,各セルでの伝熱量や圧力損失等を冷媒の流れに沿って順次 計算し,熱交換器全体の能力や圧力損失等を算出する.

図4.2.1 熱交換器性能予測シミュレーションGUI

4.2.2 蒸発器計算アルゴリズム

蒸発器の計算プログラムでは,熱交換器を冷媒の流れ方向に対して任意の微小セルに分 割し,それぞれのセルを微小な熱交換器として扱い,各セルでの空気側,冷媒側のエネル ギバランス及びマスバランスから熱交換量,圧力損失等を計算する.また蒸発器では,空 気温度が露点以下に達すると水蒸気の凝縮が起こるため,その影響を考慮する必要がある.

そこで,蒸発器における計算では以下に示す仮定を用いた.また,本計算プログラムにお いては,着霜領域での計算には対応しない.