第 6 章 大気降下物の雨天時越流水の生態毒性への寄与
6.3 調査結果及び考察
6.3.3 無機元素
大気降下物を含む雨水試料中の無機元素分析の沈着量結果を用いて、金属成分を含む溶 存態元素の平均存在割合(100%以上の値は 100%として平均値を算出)は図 6.9 に示す。図 6.9から明らかなように、これらの元素の存在形態は主に溶存元素であった。そのうち、Fe、 Siの溶存態割合が最も低く、60%前後であった。採水期間中、各元素沈着量を算出し、降雨 量、採取期間及びNaとの寄与率を求めた。対象地域は海岸部の都市域であるため、海塩主 成分である元素Naとの相関も求めた。有意な結果が得られた元素のみ表6.7に示す。6回 目採水した試料の濃度が他の試料に比べて顕著に大きかったため、比較のために 6 回目の 採水を含めた場合と除いた場合の結果の両者を表6.7に示す。
表6.7に示しているように、6回目の結果の影響で、多数の元素が降雨量や採水期間との 相関が高く算出されている。特に、6回目を含めた結果では降雨量との寄与率が高く算出し ていた。Fe、Srの寄与率が最も高く、90%以上であった。6回目を除いた場合、それぞれ33.2%
と56.2%に下がった。また、Si、Ca、V、Cr、Ni、As、Zr、Ba、W、Pbは6回目の結果を含 めた場合、すべて降雨量と有意かつ高い相関関係がみられたが、6回目の結果を除いた場合、
すべて降雨量と一部の採取期間と有意な寄与が認められなかった。
そこで、1~5回イベントの結果から考察すると、降雨量のみと有意な寄与率が認められた Al、Cu、Se、Sr、Snは主に湿式沈下由来の可能性が高いと考えられる。V、Rb、Mo、Ag、 Cdは採取期間とのみ有意な相関関係がみられた。特にRbとCdの寄与率が90%以上であっ たことから、これらの成分は乾式沈下由来と考えられる。Naとの相関関係ではMgの寄与 率が最も高くて95%以上で、Mgは海塩起源と示唆される。
また、PbとFeはそれぞれ自動車排気ガスと浮遊粉塵中によく検出されていたが、本研究 の大気降下物を含む雨水試料中のPbと Feは降雨量との相関が高くて有意であった。これ らは主に降雨時に大気から降雨に溶け込んで水環境に排出されていると考えられる。
0 500 1000 1500 2000 2500
0 500 1000 1500 2000 2500
Cl-(µeq)
Na+(µeq)
図6.8 試料中のCl-/Na+当量組成
92
0% 20% 40% 60% 80% 100%
B Na Mg Al Si Ca V Cr Mn Fe
Co Ni Cu Zn As Se Rb Sr Zr Mo Ag Cd Sn Sb Ba W Pb
図6.9 金属成分を含む溶存態元素の平均存在割合
93
表6.7 降雨量、採取期間及びNaの元素沈着量への寄与率 イベント: 1~6 イベント: 1~5
元素 降雨量 採取期間 Na 降雨量 採取期間 Na
Mg - - 0.953** - - 0.996**
Al 0.613** 0.186* - 0.221* - -
Si 0.789** 0.211* - - - -
Ca 0.745** 0.212* - - - -
V 0.711** 0.344** - - 0.226* -
Cr 0.862** 0.176* - - - 0.228*
Mn 0.894** 0.223* - 0.270* 0.298* 0.224*
Fe 0.901** 0.298* - 0.332** 0.231* -
Ni 0.634** - - - - -
Cu 0.515** - 0.210* 0.390** - 0.242*
Zn - - - -
As 0.658** - 0.518** - - 0.519**
Se 0.896** - 0.205* 0.537** - -
Rb - 0.734** - - 0.929** -
Sr 0.905** - 0.399** 0.562** - 0.568**
Zr 0.858** - 0.239* - - 0.198*
Mo - 0.287** - - 0.381** -
Ag - - - - 0.373** -
Cd - 0.653** - - 0.910** -
Sn 0.866** - 0.236* 0.260* - -
Ba 0.813** - 0.176* - - -
W 0.871** - 0.223* - - -
Pb 0.794** - 0.447** - - 0.564**
**: p<0.01,*: p<0.05
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