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下水処理水の毒性予測結果

第 3 章 下水処理水の生態影響の評価

4.3 結果及び考察

4.3.1 下水処理水の毒性予測結果

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2013年、福冨ら4)がPRTR データを用いて事業場排水の生態毒性を予測した研究を行っ た際、年間稼働日数を248日で計算したが、本研究では下水処理施設であるため、年間稼働 日数は365日として計算した。

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一方、下水処理場のPRTR年間排出量データは、通常、年間平均濃度と年間排出水量の積 として計算される82)。したがって、最終排水量に大きな変動がなければ、年間平均濃度は推 定排出濃度にほぼ等しくなるはずである。処理場FからのO-エチルO-4-ニトロフェニルフ ェニルホスホノチオエート(EPN)排出量は2013年から2016年にかけて12~14 kg/yでほぼ 一定であり、これらのデータから計算された年間平均濃度は約 0.1 mg/Lであった。この値

は、1 mg/LのEPN排水基準の約1/10に相当する。EPNは有機リン殺虫剤であり、中枢神経

系のアセチルコリンエステラーゼ活性を阻害することにより殺虫効果を発揮する 83)。年間 平均水質値に基づいて、処理場Fからの他のPRTR物質の大半は、排水基準の約1/10であ った。測定値が定量限界(LOQ)と検出限界の間にある場合、ガイドラインはLOQの半分を 年間平均濃度82)として使用することを推奨している。したがって、処理場Fについては、

年間平均濃度は排水水準の1/10と仮定されたと考えられる。処理場FにおけるEPNの甲殻 類HQは大きい(6,780)。計算に用いたEPNのNOEC値は0.015 μg/L(甲殻類の旧姓毒性値

をACR10 で除して算出)と小さかったが、生物応答試験の結果、処理場Fからの処理水は

甲殻類に対して毒性を示さなかった。したがって、排水濃度の過大評価、あるいは、毒性値 の過小評価の可能性がある。先に述べたように、EPN が定量限界以下しか検出されていな いにもかかわらず、算出方法により過大な排出量が見積られた可能性が高い。そのため、

EPNは処理場Fでの甲殻類HQ計算には使用しなかった。なお、EPNの排出は他の処理場 では報告されていない。

図4.4は各下水処理場の2013年と2014年平均のPRTRデータ及び採水年度のPRTRデー タを用いて算出したHQ値を示す。下水処理水が放流先へ排出後水環境中で10倍希釈され ていると考えると、HQ 値が10以上である場合は水生生物への毒性影響が懸念される。計 算方法の違いにより若干の差異が見られるが、HQは3つの処理場で10を超えると予測さ れた。特に、PRTR物質が最も多く含まれている処理場Fのすべての生物種について、比較

0 1 2 3 4 5 6 7

亜鉛の水溶性化合物 ダイオキシン類 銅水溶性塩(錯塩を除く。)

砒素及びその無機化合物 ほう素及びその化合物 マンガン及びその化合物

下水処理場の数

図4.3 2013年および2014年に下水処理場から排出された主なPRTR物質

2013 2014

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的高いHQ値が観察された。下水処理場Fの甲殻類、魚類に対する予測された毒性値HQが 30以上であった。図に示すように、3種の試験生物のうち、HQ値は甲殻類で最も大きかっ た。下水処理場別では、水生生物に毒性影響を与える可能性はF>B>Aであった。処理場F の処理水は3種の水生生物への毒性影響があると考えられる。その他、処理場A と処理場 Bの処理水がそれぞれ甲殻類及び藻類に毒性影響が懸念される。しかし、実際に行った生物 応答試験の結果では、藻類が最も影響を受け、予測された毒性傾向と異なる(図4.5)。

0 10 20 30 40 50

A B C D E F G

HQ値

(b)

図4.4 下水処理場のHQ値(a)2013年および2014年のPRTRデータ、お よび(b)採水年度のPRTRデータの平均

藻類 甲殻類 魚類

0 10 20 30 40

A B C D E F G

HQ値

(a)

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HQ値の算出に用いた藻類、甲殻類及び魚類の毒性値NOECの由来を図4.6にまとめた。

また、表4.1に示しているように、30種のPRTR物質中、ダイオキシンがあるが、藻類と甲 殻類の NOEC 値が入手できなかった。藻類試験は他の生物応答試験と異なり、一回の生長 阻害試験で急性値(EC50)と慢性値(NOEC)が同時に得られるため、藻類のデータはより充実 していると考えられる。同種-同試験法(第3章の生物応答試験法と比較した)の試験結果を 用いて推定した割合は藻類、甲殻類、魚類でそれぞれ 53.3、20.0、13.3%であった。同じ種 での同様の試験および他の種での慢性試験の値をこれらのデータに加えると、比率は藻類、

甲殻類、魚類でそれぞれ63.3、76.7、および73.3%に改善された。一方、ACR(= 10)を用い た同種または他種の急性毒性データからの推定値はそれぞれ、藻類、甲殻類、魚類で33.3、

20.0、および 26.7%だった。PRTR データに基づく排水リスク評価の精度を向上させるため

には、ニセネコゼミジンコとゼブラフィッシュの慢性データ(NOEC)を充実させることが不 可欠である。

1.25

20

1.25

2.5

1.25

10 10

1.25 2.5 1.25

1.25 1.25

1.25

1.25 1.25 1.25

0 5 10 15 20 25

A B C D E F G

TUc

藻類 甲殻類 魚類

NM NM NM NM NM

図4.5 各下水処理場の水生生物毒性試験結果TUc

NM:未測定

50