第 9 章 物理量と期待値 67
16.6 演習問題
対する
r π 2xJ`+1
2(x)をj`(x)と書いて「球ベッセル関数」と呼ぶこともある10。三次元問題用のベッ セル関数だから、「球」を頭につけるのである。
[問い16-7]0次の球ベッセル関数j0(x)は、実は三角関数を使って表せる。ベッセル関数の級数展開の 式(15.63)を使ってそれを示せ。
結局解は
ψ(r, θ, φ) = A
√rJ`+1
2
s2µE
¯ h2 r
P`m(cosθ)eimφ
=A0j`
s2µE
¯ h2 r
P`m(cosθ)eimφ
(16.103)
である。与えられた境界条件に応じて適当な線形結合を取ることで解が得られる。たとえば半径 R の球内に束縛されているとしたら、ψ(r = R, θ, φ) = 0でなくてはいけないが、その条件から jn
s2µE
¯ h2 r
= 0となるから、これが充たされるようにEの値をきめていかなくてはいけない。
では、次の章で球対称ポテンシャルの場合の具体例として、水素原子の中の電子の問題を解こう。
16.6. 演習問題 173 [演習問題16-7] 角運動量演算子Lz=−i¯h ∂
∂φ と角度φは交換関係[φ, Lz] =i¯hを満たす。ということは、
不確定性関係∆φ∆Lz≥ ¯h
2 を満たしそうだが、∆Lz = 0の状態でも、∆φ= 2πである(そもそもφの範囲は 2πしかないのだからそれより大きくなるはずがない!)。
この一見矛盾した事実は、不確定性関係の証明の時に演算子のエルミート性を使っているが、Lzは実はエ ルミートではないからである。
エルミートならば任意の関数ψ, φに対して Z 2π
0
(Lzφ)∗ψdθ= Z 2π
0
φ∗(Lzψ)dθ
を満たすはずなので、これに対する反例を作ってLzがエルミートでないことを示せ。
(hint:エルミートであるのは、部分積分の表面項(θ= 0,2πでの項)が消える時)
175
第 17 章 水素原子
この章では水素原子の回りの電子のシュレーディンガー方程式を具体的に解いて、電子がどのよう な波動関数で表せるかを計算し、原子の構造を量子力学で考えていく。
17.1 相対運動のハミルトニアン
V v
m : M
そのためにまず、古典力学での原子のまわりの電子の運 動をどう扱うかについて、一つ注意をしておく。高校の教 科書などの初等的な本では、まるで原子核(水素の場合は陽 子)が静止していて、そのまわりを電子が回っていると考え るが、陽子と電子が引っ張りあって運動しているのだから、
陽子が静止しているということはあり得ない。静止するこ とができるとしたら、2粒子の重心である。
ここで陽子の質量をM、電子の質量をm とする。それ ぞれの位置ベクトルをX~ および~xとし、その速度をV~ お よび ~v とする。二つの粒子の間の引力のポテンシャルは
− ke2
二つの粒子間の距離 で表されるので、電子と陽子の運動 を表すラグランジアンは
1
2M|V~|2+ 1
2m|~v|2+ ke2
|X~ −~x| (17.1) と書ける。この中には、重心の運動と相対的な運動が両方入っているので、まず重心運動の部分を取 り出してみる。質量M+mの物体が速度M ~V +m~v
M +m を持っていると考えれば、重心運動のラグラン ジアンは
1
2(M +m)
¯¯
¯¯
¯¯(M ~V +m~v M +m
¯¯
¯¯
¯¯
2
= M2
2(M +m)
¯¯
¯V~¯¯¯2+ m2
2(M +m)|~v|2+ M m M +m
V~ ·~v (17.2)
である。これを全ラグランジアンから引くと、
1
2M|V~|2+1
2m|~v|2+ ke2
|X~ −~x| − M2 2(M+m)
¯¯
¯V~¯¯¯2− m2
2(M+m)|~v|2− M m M +mV~ ·~v
= M m
2(M +m)
¯¯
¯V~¯¯¯2+ M m
2(M +m)|~v|2− M m M +m
V~ ·~v + ke2
|X~ −~x|
= 1 2
M m (M +m)
¯¯
¯V~ −~v¯¯¯2+ ke2
|X~ −~x|
(17.3)
となって、残るものはX~ −~xとV~ −~vの関数となる。このベクトルは相対運動の位置ベクトルおよ び速度ベクトルであるから、全ラグランジアンは(重心運動のラグランジアン)+(相対運動のラグラ ンジアン)に分離できたことになる。
以後で興味があるのは相対運動の部分である。そして、そのラグランジアンを見ると、あたかも質 量µ= M m
M +m の粒子が中心力ポテンシャルの中を動いているかのように思える。
µを換算質量と呼ぶ。水素原子の場合、陽子は電子の1800倍ぐらいの質量を持っているので、換 算質量と実際の質量の差は1800分の1程度しかない。以後の方程式はすべて換算質量を用いて、原 点にある陽子が静止していると考えて行う。