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演算子による解法

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第 9 章 物理量と期待値 67

14.3 演算子による解法

14.3 演算子による解法

すでに述べたように、エネルギー固有値は1

を最低値として、¯ずつ大きくなっていくだろう と推測することができる。そこで以下では、「エネルギー固有値を¯だけ上昇させる演算子」を作っ ていくことにする。もしそんな演算子を作ることができれば、その演算子(aと名付ける)をどん どんかけていくことで、いろんなエネルギーを持った状態を求めることができる。

エネルギーは演算子Hの固有値であるから、エネルギーEを持つ状態(波動関数をψEと書こう)

があったとして、この状態の波動関数にaをかけると、エネルギーE+²を持った状態(波動関数 をaψEと書こう)になるわけである。²は後で決まる定数である(実は¯になるということはすで に述べたとおり)。つまり「ψEHをかけると固有値Eだが、aをかけてaψE にしてからHをか けると固有値はE+²になる」ような演算子を作るわけである。さらに別の言い方をすると「Hをか けてからaをかけたのと、aをかけてからHをかけたのでは、²だけ固有値が違う」ということに なる。これを式で表せば、

HaψE −aE =²aψE (14.29) である。ゆえに、

Ha−aH =²a すなわち hH, ai=²a (14.30) となるような演算子が作れればよいということになる。

このaを「エネルギーをあげる演算子」ということで「上昇演算子」と呼ぶ。上昇演算子をわざ わざaつきで書いているのは、昔から下降演算子(エネルギーを下げる方の演算子)の方をaと 書くのが習慣だからである。つまり、上昇演算子と下降演算子は互いにエルミート共役である。h

H, ai=²aの式の両辺のエルミート共役をとると、[a, H] =²aとなる(交換関係のエルミート共 役を取ると順番がひっくりかえることに注意)。これはつまり[H, a] =−²aだということである。つ まり、aはエネルギーを−²あげる(²下げる)演算子である。以上から、aが上昇演算子ならばaが 下降演算子ならであることがわかった。

aを求めるのはそんなに難しくない。まず、

a =C(x+ap) (14.31)

のようにx, pの一次式で書けることを仮定する(C, aは後で決めるが、複素数の定数)。係数が簡単に なるようにここでも無次元化した表記を使うことにして、

a =A(ξ+α

∂ξ) (14.32)

としよう(A, αもまた、複素数の定数)。今H = 1 2

2

∂ξ2 + 1

2ξ2であるから、交換関係をとってや

ると、 h

H, ai= A

"

1 2

2

∂ξ2 +1

2ξ2, ξ+α

∂ξ

#

(14.33) である。交換関係の後ろのξに関係する部分を計算する。まずξは自分自身とは交換するので、自分 自身の自乗とも交換(hξ2, ξi= 0)し、

"

1 2

2

∂ξ2 +1 2ξ2, ξ

#

=1 2

"

2

∂ξ2, ξ

#

(14.34)

となる。次に公式[AB, C] = [A, C]B+A[B, C]を使うと、

1 2

"

2

∂ξ2, ξ

#

=1 2

"

∂ξ, ξ

#

∂ξ 1 2

∂ξ

"

∂ξ, ξ

#

(14.35)

であるが、

"

∂ξ, ξ

#

= 1である5から、結果は

"

1 2

2

∂ξ2 +1 2ξ2, ξ

#

=

∂ξ (14.36)

である。同様に、 "

1 2

2

∂ξ2 +1 2ξ2,

∂ξ

#

=−ξ (14.37)

となるので、

hH, ai=

"

H, A

Ã

ξ+α

∂ξ

!#

=−A

Ã

∂ξ +αξ

!

(14.38) という結果が出る。

この式の右辺が元の演算子の² 倍だという条件を置くと、−A

Ã

∂ξ +αξ

!

=²A(ξ+α

∂ξ)から、

1 = ²α (14.39)

−α = ² (14.40)

という式が出る。

まず(14.39)に(14.40)を代入すると

1 =α2 (14.41)

となり、結果α=±1とわかる。これを(14.40)に代入して±1 =²となるが、²が正の数になる方を とって、α=1とることにする。結局、

a =A

Ã

ξ−

∂ξ

!

(14.42) となる。aの方は

a=A

Ã

ξ+

∂ξ

!

(14.43) となる6

もし、上で²が負になる解をとったとすると、aとaが入れ替わるような答えになってしまったこ とになる。aがエネルギーを上昇させる演算子になるようにしたかったのだから、²を正と取ったの は正しかった。

5念のためにくどいようだがもう一度書いておくと、こういう計算の時にはさらに後ろに任意の関数f(ξ)がいると考 える。つまり、、

·

∂ξ, ξ

¸

= 1とは、

∂ξ(ξf)ξ

∂ξf =f ということ。

6

µ

∂ξ

=

∂ξ に注意。

14.3. 演算子による解法 131 ここでaaの交換関係をとってみると、

ha, ai= AA

"

ξ+

∂ξ, ξ−

∂ξ

#

= AA

Ã"

∂ξ, ξ

#

"

ξ,

∂ξ

#!

= 2AA

(14.44)

となる。A = 1

2e とすれば右辺は1となって後々楽なので、そうすることにする。Aの位相βは 決まらないので、これまた簡単のためβ = 0と選んでおく。aとaの交換関係は

ha, ai= 1 (14.45)

となった。まとめると、

a= 1

2

Ã

ξ+

∂ξ

!

, a = 1

2

Ã

ξ−

∂ξ

!

(14.46) である。これを逆に解くと、

ξ= 1

2(a+a),

∂ξ = 1

2(a−a) (14.47)

となる。ハミルトニアンにこの式を代入すれば、

H = 1 2

à 1

2(a−a)

!2

+ 1 2

à 1

2(a+a)

!2

= 1 4

³a−a´+ 1 4

³a+a´2

= 1 4

³(a)2−aa−aa+a2´+ 1 4

³a2 +aa+aa+ (a)2´

= 1 2

³aa+aa´=aa+ 1 2

(14.48)

となる。最後は交換関係(14.45)からaa=aa+ 1となることを使っている。

ここで、次元を復活させよう。a, aは無次元のままとする。ξをxに直すには、長さの次元を持つ 量

s ¯h

をかければよい。運動量は−i¯h

∂xであるから、−i¯hをかけた後、長さの次元を持つ量

s h¯ で割ればよい。ゆえに、

x=

s h¯

2mω(a+a), p=i

s¯hmω

2 (a−a) (14.49)

である。これからa, aを出すと、

a =

rh

µ

x+i 1 mωp

, a =

rh

µ

x−i 1 mωp

(14.50) となる。ハミルトニアンは

H = ¯

µ

aa+1 2

(14.51) とまとまる(Hはエネルギーの次元を持っているから、¯をかけてその次元を復活させる)。

この形になると、hH, ai= ¯hωaは自明である(haa, ai=aha, ai=a)。

エネルギー固有値には下限がなくてはならない。そうでない(底無し)場合、「物事はエネルギーの 低い方に落ちていく」という法則7にしたがってどんどんエネルギーが低くなっていってしまう。

最低状態があるとすると、それにaをかけて新しい状態を作ることはできない(もしできたら、その 状態は「最低状態よりも低い状態(?)」になってしまう)。そこで、最低状態の波動関数ψ00 = 0 をみたすとしよう。

-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4

すなわち、

Ã

ξ+

∂ξ

!

ψ0 = 0 (14.52) である。こうなるような関数は

ψ0 =e12ξ2 (14.53) である。このψ0 で表される状態を「基底状態」

と呼ぶ。

左のグラフは基底状態のグラフである。グラ フの目盛りは無次元化した座標ξで書かれてい る。基底状態はエネルギーが 1

hω、無次元化し て考えた場合で 1

2 である。位置エネルギーが無次元化して書くと1

2ξ2であることを考えると、古典

的には1 < ξ <1のところまでしか粒子は存在できないはずである(振り子として考えたならば、

ξ =±1が振り子が戻る位置)。波動関数はその外側にも存在する。ただし、これまでの「運動エネル ギーが負になる領域」と同様、波動関数の曲がり具合が変わっている(具体的に言うならば、2階微 分の符号が違う)。図では網掛けで「古典的に許される領域」を示した。

-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4

基底状態の波動関数にaをかけていくことで それよりも¯だけエネルギーが高い状態を次々 とつくり出していくことができる。左のグラフは 基底状態から第3励起状態までの波動関数(の実 数部)を表したものである。基底状態から、エネ ルギーが高くなるごとに(nが増加するごとに)

波動関数の波の数が増えていくと同時に、空間 的広がりも大きくなっている。

具体的にaをかけるという計算を実行すると、

ae12ξ2 =

2ξe12ξ2 (14.54) a³

2ξe12ξ2´ =

Ã

ξ−

∂ξ

!³

ξe12ξ2´

= ³21´e12ξ2 (14.55)

7よくこういう法則があると言われるが、実際には物理にはこんな法則はない。エネルギーは保存するのだから、どこ かのエネルギーが低くなれば必ずどこか別の場所のエネルギーが大きくなっている。ゆえに「エネルギーが低くなるか ら」という説明をするのなら、「なぜ周りのエネルギーは増えてもいいのか」に答えなくてはいけない。実際に物理に存 在する法則は「一個の物体がエネルギーを占有しているとエントロピーが低いから、回りにエネルギーをばらまいてエ ントロピーがあがった状態に変化する傾向がある」という法則(つまりは熱力学第2法則)である。

14.3. 演算子による解法 133 となる。以下同様にエネルギー固有値と固有関数を求めていくことができる。当然、この答はまじめ に微分方程式を級数展開を使って解いた結果と一致する。

空間的広がりが大きくなることは、単振動の振幅が大きくなることに対応する。また、波の数が多 くなるということは波長が短くなるということで、平衡点を通過する時の運動エネルギーが大きく なっていることに対応している。

なお、図に書かれた波動関数はすべて定常状態であって、この状態では古典的な意味での「運動」は見 えない。二つ以上のエネルギー固有状態が重ね合わされると、波動関数は定常状態ではなくなり、粒子 の存在確率が右へ左へと動く様子が見えてくる。このあたりは壁に閉じこめられた粒子の場合と同じで

あ る 。

-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

-4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4

第1励起状態ではエネルギーが 3

であり、

基底状態の3倍あるので、古典的に存在できる 場所も

3倍広がり、−√

3< ξ <√

3となる。や はりこの場所で波動関数の2階微分が符号を変 えていることが見て取れる。

古典的に許される領域では波動関数はまさに

「波」となって振動するように振る舞い、その外 では急速に減衰する関数になっているのである。

基底状態はE = 1

だけのエネルギーを持 つ。この最低エネルギーのことを「零点振動の エネルギー」と呼ぶ。古典力学的には最低エネ ルギーとは粒子が原点に静止した状態であり、エ ネルギーは0である。しかし量子力学的には原点で静止している(つまり運動量も位置も0という値 に確定している)ということは有り得ない。これは不確定関係のおかげである。

我々に観測できるのは常にエネルギーの変化量なので、エネルギーの原点はどこに選んでもよい。

よって、零点振動のエネルギーを0と置いてもよい。ただしその場合は古典的な調和振動子のエネル ギーH = 1

2mp2+1

22x2に比べ、1

だけ小さい量になっている。量子力学ではエネルギーは で表せるので、「エネルギーの原点を変えるということは波動関数の振動数を変えることになってし まうが、それはいいのか?」という心配が起きるかもしれないが、量子力学において、エネルギーの 原点をE0ずらすということは波動関数のψ →e¯hiE0tという置き換えに対応する。この変化は(エ ネルギーの期待値の原点がずれたということ以外には)観測結果に影響を与えない。

ここまで、波動関数の規格化は考えていなかった。基底状態から順に規格化を考えていこう。公式

Z

−∞dxex2 =

πがあるので、基底状態は

ψ0 =π14e12ξ2 (14.56)

と規格化される。ただし、この状態が規格化されるのは

Z

−∞dξψ(ξ)ψ(ξ)という積分に関してであ る。積分をxで行うならば、dξ=

r

¯

h dxという違いの部分を吸収するために、

ψ0 =

µπmω

¯ h

14

ehx2 (14.57)

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