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滞納回収における滞納整理事務の有効性

ドキュメント内 納税意識と納税行動に関する経済分析 (ページ 87-90)

第 4 章 わが国の滞納の実態と税務行政

4.4.2 滞納回収における滞納整理事務の有効性

これまで、各税目間での比較を見てきたが、ここでは滞納整理コストと回収分である処理 済滞納税額について相関はあるのかを確認する。税全体の徴税コストと処理済税額との関係 を散布図で見ると、図 4.4 より、近似曲線が右下がりに湾曲していることがわかる。

したがって、ある程度までコストをかけることで滞納整理も進み処理済滞納税額を増加さ せることができるが、ある点を越えるとコストを増加させることがそのまま回収の増加に直 結するとは言いがたく、回収である処理済滞納税額が頭打ちになる形状を示している。その 要因として滞納回収が進むほど回収が難しくなるうえ、滞納整理の困難な税目にコストをか けているのではないか、また、景気の影響があるのではないかなどが考えられる74)

74)図 4.4 で、税全体の滞納整理コストと回収分の処理済滞納税額の関係を見た。各税目についても同 様に見る。( )の値は t 値である。

源泉所得税 Y=-0.00297 * X2 + 50.97984 * X – 42651 修正済み R2=0.58 (1.554) (2.019) (0.536)

申告所得税 Y=-0.03272 * X2 + 724.821 * X – 3686311 修正済み R2=0.384 (3.714) (3.698) (3.398)

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図 4.4

全税目、滞納整理コストと処理済滞納税額 (出所)筆者作成.

それでは、どの税目が滞納整理においてもっとも効率的で、滞納整理事務において有効な のかについて検証する。まず、滞納整理コストと処理済税額に相関があるのか、税目別に確 認する。被説明変数に回収を表す処理済滞納税額(Y)をとり、説明変数に滞納整理コスト(X)

をとる。その結果、

源泉所得税: Y=11.895 * X + 78748.1 修正済み R2=0.552 (4.938) (5.178)

申告所得税: Y=-2.522 * X + 328331.8 修正済み R2=-0.052 (-0.230) (2.765)

法人税: Y=42.586 * X - 98144.4 修正済み R2=0.913 (14.150) (-3.225)

消費税: Y=37.614 * X + 57531.9 修正済み R2=0.946 (18.400) (3.281)

となる。 ( )の値はt値である。

源泉所得税、法人税、消費税はt値が 2 以上であることから相関を示す値をとっている。

また、補正 R2も法人税、消費税では回収を示す処理済滞納税額を得るのに、滞納整理コスト

法人税 Y=0.00054 * X2 + 31.67031 * X – 45164 修正済み R2=0.908 (0.312) (0.903) (0.261)

消費税 Y=-0.00167 * X2 + 63.15677 * X – 22206 修正済 R2=0.987 (7.485) (17.741) (2.243)

y = -0.0024x2 + 215.22x - 3286040 R² = 0.9365

500000 700000 900000 1100000 1300000 1500000 1700000

20000 30000 40000 50000 60000

処理済滞納税 額(百万円)

滞納整理コスト(百万円)

全税目、滞納整理コストと処理済滞納税額

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が 90%以上関係するということが説明できる値を示している。源泉所得税は他の要因も作用 していることが示されているものの 55%以上説明できる値であり相関があると言える。しか し、申告所得税は滞納整理コストと回収との相関は見られないという結果になった。つまり、

申告所得税は、滞納整理の人員を今まで以上に投入しコストを増やすことで回収をはかろう としても、滞納整理が進みにくい税目であると言えるだろう。その理由として予想されるの は、申告所得税には個人事業者が多く存在し、景気により事業利益に影響を受けやすいなど、

金銭的支払い力が困難になる個別要因が生じると考えられる。また、申告所得税は納税者数 の最も多い税目であり、一件あたり納税額が他税目に比較して少ない納税者が多いため、実 務的に滞納処理に手間がかかる上、処理したとしても一軒当たり処理額が少ないということ も背景の一つにあげられるだろう。

それでは、コスト1円あたり処理済税額がいくらになるのかをみると、法人税が最も高く 42 円、次に消費税 37 円、源泉所得税 11 円という結果である。

さらに、滞納整理コストに対して、処理済滞納税額がどれだけ反応するか、被説明変数に 処理済滞納税額(Y)、説明変数には滞納整理コスト(X)をとり、いずれも対数をとることによ り弾性値も求めてみることにする。

源泉所得税: LnY=0.511 * LnX + 7.477 修正済み R2=0.542 (4.850) (8.161)

法人税: LnY=1.309 * LnX + 0.638 修正済み R2=0.919 (14.751) (0.783)

消費税: LnY=0.862 *Ln X + 5.112 修正済み R2=0.968 (19.823) (13.277)

となる。 ( )の値は t 値である。

この結果、滞納整理コストに対する処理済滞納税額の反応が最も良いのが法人税であり、

法人税は滞納整理コストを 10%上げれば、処理済滞納税額は 13%上昇することがわかる。消 費税では 8%であり、源泉所得税では 5%上昇する。これらのことから滞納整理については、

法人税が、最もコストをかければかけるほど処理が進むという結果になった。また、消費税、

源泉所得税でもさらに人員を投入し回収を図ることが可能であると言えるだろう。これらの ことから、今後、税務行政が徴税を行う上で、申告所得税については、滞納が生じた場合、

コストをかけても回収が進まないという結果から、徴税について滞納整理という方法以外で 納税を進める方法を考慮し、滞納が発生しにくくなるような対策を講じるべきでないだろう かと考える。

また、税目別に滞納整理コストの増加を調整して滞納整理を進めるということは、一つの 選択ではないだろうか。なお、消費税における滞納整理の特徴として、法人税の滞納整理を

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行うとき、同時に消費税も行われ、所得税とも同時に行われるということが、滞納整理コス トと処理済滞納税額との関係にも作用し、効率性をあげているということもあるだろう。

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