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準静的な可逆過程において, 熱容量が一般に満たす関係式を議論する † 495

ドキュメント内 0 (Preliminary) F G T S pv (1) (ページ 100-105)

§ 3.1 エネルギーの方程式と Joule の法則

問題 26. 準静的な可逆過程において, 熱容量が一般に満たす関係式を議論する † 495

[

]

定容熱容量

CV(V, T)

の表式

(3.37)

において

,

内部エネルギーの独立変数依存 性が

U(V, T)

であることがわかる

.

そこで

,

この全微分をとってみる

:

dU(V, T) = (∂U

∂V )

T

dV + (∂U

∂T )

V

dT = (∂U

∂V )

T

dV +CVdT (3.77)

最右辺においては, 定容熱容量の表式

(3.37)

を代入した. これを, 熱力学第一法則

(3.30)

の右辺第一項に代入すると, 題意

(3.76)

1

つ目の等号が示される. その後,

エネルギーの方程式

(3.7)

, dV

の係数

[· · ·]

に代入すると

, (3.76)

最右辺に至る

. [

発展

] (3.76)

からも

Mayer

の関係式が導かれる意図で

,

これを出題した

494.

問題

25.

準静的な可逆過程において成立する次式をそれぞれ示せ

. TdS =CVdT +T

(∂p

∂T )

V

dV (3.81)

TdS =CPdT −T (∂V

∂T )

p

dp (3.82)

(i)

定圧熱容量

CP

と定容熱容量

CV

に対して成立する次式を示せ

496. (∂CP

∂p )

T

=−T (2V

∂T2 )

p

(3.83) (∂CV

∂V )

T

=T (2p

∂T2 )

V

(3.84)

(ii)

系が次式を満たすとする

:

(∂CV

∂V )

T

= 0 (3.85)

この系の状態方程式が

497,

次式で与えられることを示せ

498499.

p(V, T) = f(V)T +g(V) (3.86)

ここに

,f

g

はともに

, V

のみに依存する任意関数

(

任意変数

)

である

. [

(i)] [

解法

1] (3.84)

についてのみ示す

500.

題意の左辺に定容熱容量の表式

(3.37)

を代入し

,

偏微分の順序交換

501

の後

,

エネルギー方程式

(3.7)

を代

496[しつこいが再注意]熱容量(と比熱)は状態変数であって,定数とは限らない. ただし,理想気体

の比熱は,ふつう,定数とみなされる.

497[この題意は]“偏微分方程式(3.85)の一般解がと等価である. [注意]もちろん,理想気体には 限らない状態方程式という意味である. 状態方程式と聞くと, 安直に理想気体を思い浮かべて しまう者も多いので注意を要する. 固体でも液体でも実在気体でも,状態方程式は存在する. そ の関数形を求めるのが困難だから,見かけることが少ないだけなのである.

[ついでながら] 高校物理の教科書では, 「状態方程式」や「気体の状態方程式」とだけ書かれ

ていることが多いので, やはり高校物理の熱力学は忘れるべきといえる. 高校物理を批判した いのではなく,用語の定義の軽微な差異が致命傷につながりかねないからである.

498本設問は, 応用数学(後半)の守備範囲を物理学や工学へと応用するにあたり, 最も容易かつ基 礎的な一例に属する.

499[再度基礎を強調(ヒント)]n階定数係数線形常微分方程式の一般解は,n個の任意定数(arbitrary

constant)を含む. これに対して, n階定数係数線形偏微分方程式の一般解はn個の任意

関数(変数)”を含む. この基礎事項を見落としがちとなる理由の1つに,「偏微分方程式の場合 は,一般解に焦点をあてることが少なく,初期値境界値問題に興味を寄せる場合が多いから」が 挙げられるだろう(本当か. 他科目を振り返ってみよ).

500(3.83)の証明方針は全く同様である. (解法1)としてはエンタルピー型のエネルギー方程式

(3.22)の最右辺を利用して, (解法2)としてはMaxwellの関係式(2.16)を代入すればよい.

501[311] 2変数関数の偏微分の順序交換は, 2通りの偏導関数が偏微分の順序によらず存在し, か

つ,それらがともに連続関数であるときに許された.

入し

502,

右辺へと至る方法

: (

左辺

) =

(∂CV

∂V )

T

=

∂V

[(∂U

∂T )

V

]

| {z T}

(3.37)を代入

=

∂T

[(∂U

∂V )

T

]

| {z V}

順序交換(添え字注意)

=

∂T [

T (∂p

∂T )

V

−p ]

V

= (∂p

∂T )

V

+T (2p

∂T2 )

V

(∂p

∂T )

V

= (

右辺

) (3.87) [

解法

2]†503

定容熱容量のエントロピーによる表現

(3.61)

を代入し

,

偏微 分の順序交換を経て

, Maxwell

の関係式

(2.14)

を代入し

,

左辺に至る方法

:

(

左辺

) =

∂V [

T (∂S

∂T )

V

]

T

=T

∂V

[(∂S

∂T )

V

]

T

=T

∂T

[(∂S

∂V )

T

]

V

=T

∂T

[(∂p

∂T )

V

]

V

= (

右辺

) (3.88) 2

つ目の等号で

,

温度

T

が偏微分記号の外に出たのは

,T

固定の偏微分操 作だからである

(

添え字に注意

)504.

[解(ii)]

題意より, 圧力

p

に対する状態方程式の表現が問われているのだから,

(3.84)

(3.85)

を代入して,

T ̸= 0

を考慮すると,

2

階線形偏微分方程式

(2p

∂T2 )

V

= 0 (3.89)

をうる. ここから出発する. まず, 両辺を,

T

1

回不定積分しよう:

(∂p

∂T )

V

=f(V) (3.90)

V

固定のもとでの

T

積分であるがゆえに

,

右辺は任意定数ではなく

V

502[重要]“エネルギー方程式(3.7)の導出の出発点は, 自由エネルギーF の保存則(1.14)から導

かれる式(1.17)であった. さらに,F の保存則から導かれるMaxwellの関係式(2.14)をも用い

たことも重要である. すなわち, 全てが自由“エネルギー”の定義に起源をおいており, やはり F への意味と必然性を感じないだろうか.

[さらに] (3.83)の証明時に用いる, “エンタルピー”型のエネルギー方程式(3.7)は, (2.16)すな

わち自由“エンタルピー”の定義から導かれたことを思い返すと,Gにも意味を感じる.

503これら以外にも,右辺側から左辺側に至る方法も考えられる.

504確かめよ. 案外, 間違う者が多い(馬鹿にできない). VT を混同する誤答が多い.

任意関数となる

505.

もう

1

, T

で不定積分すると

,

題意をうる

506507: p(V, T) =

f(V)dT +G(V) =f(V)

dT +G(V) =f(V)T +g(V) (3.91)

ここに

, f, g, G

は全て

V

の任意関数であって

,

最右辺で

G

g

に置き 換えたのは

,

1

項の

T

の不定積分の計算時に生ずる積分定数を

G

に吸 収し

,

改めて

g

とおいただけのことである

508. “2

偏微分方程式であ るから, 一般解には

“2

個”の任意関数が含まれる

509.

505[重要]この考え方は,覚える(あるいは理解する)というよりも,実際にその場その場で,一般解 の両辺を偏微分して,偏微分方程式を満たすか否かを確かめるべき操作に属する. その方が手っ 取り早く,逐一の確認をとおして,理解も進む.

506丁寧に確認する事が習慣付いていれば,何の困難もない高校数学レベルといえるが,驚くほどに 間違える者が多い. このような2変数関数の積分計算を決して馬鹿にすべきではない. 式変形 でも,議論の展開においても,細部に渡って注意を払うことを習慣づけてほしい. 簡単と思わず, 等号のひとつひとつを丁寧に確かめることが重要である.

507ついでながら,定容熱容量が満たす関数形,すなわち一般解は,CV =K(T)である(KT の 任意関数). これも,当然と思わずに確かめよ.

508[重要: 数学基礎事項(解析学IIIと応用数学)]微分方程式の一般解(general solution)と特解

(特殊解: particular solution)の違いを理解しているだろうか. 理解していない者は,たとえば,

p=V, p=C1, p=C2T, (C1C2は任意定数) (3.92) などの解も微分方程式(3.89)を満たすではないか, これも一般解といえるのではないかと疑問 視するだろう. たしかに, (3.92)はいずれも(3.89)を満足するので(確かめよ), (3.89)の解に は違いない. しかしながら,これは一般解ではなくて, 無数にある特解のうちの一つである. 解

(3.92)ならば微分方程式(3.89)を満たすが, その逆は成立しないことに注意を要する. 微分方

程式の一般解とは, 解に含まれる任意性(常微分方程式の場合の任意定数や偏微分方程式の場 合の任意関数)に何を指定しても, なお,解であり続けるような解を指す. だからこそ, 偏微分 方程式の一般解には,VT への依存性が,一般解の中に任意性として含まれているのである. 1つの微分方程式を満たす特殊解は無数に存在するが, 一般解は1つしか対応しない.

509微分方程式を“2回”積分するのだから, “2個”の任意性が含まれる. また, “2変数”関数を“1変 数”T で積分するのだから,任意関数は“21 = 1変数”関数である.

§ 3.3 Joule–Thomson 効果 [ やや発展 ]

空気を冷やすことは

,

温めることに比べて

,

極めて難しい

.

これは

,

たき火と いう古典的な方法

,

クーラーや冷凍庫といった現代的デバイスを思い浮かべるまで もなく

,

経験的にわかることともいえる

.

ここでは

,

気体がいかなる条件下で冷却 されるのかを調べる.

§ 3.3.1 Joule–Thomson

係数の導出

ジュール・トムソン効果

(Joule–Thomson effect)

を具体的に紹介する前に

510,

これを記述する新しい状態変数として

,Joule–Thomson

係数

(

以下

, JT

係数と略 す) を定義する

511:

µ≡ (∂T

∂p )

H

(3.93)

結果から先に述べる

.

これは

,

つぎのように変形することができる

512:

(∂T

∂p )

H

= 1 CP

[ V +T

(∂S

∂p )

T

]

= 1 CP

[ T

(∂V

∂T )

p

−V ]

(3.94)

最右辺に至る際には

,

これまでと同様に

, Maxwell

の関係式

(2.16)

を使い

513,

エン トロピーを消去した

514.

JT

係数の表式

(3.94)

の導出はたやすい. 定圧熱容量

CP = (∂H/∂T)p [式 (3.42)]

JT

係数

µ= (∂T /∂p)H

が共通して

3

変数

(H, T, p)

を論じている

.

こ れに気づくことが本質である

515.

なぜならば

,

気づけたならば

,

自然と

,

2

の偏

510先に物理的意味を知りたいと望むかもしれないが, 一般関係式の導出は, これで最後であるの で,慣れているうちに一気に導いてしまおうという思惑である. さらにいえば,物理学とは, 本 来は,現象を記述する方程式や解を導いてから(あるいは,実験結果を取得してから),その意味 を考察するのが常套である.

511JT係数の定義を覚える必要はない(重要でないという意味ではない). 変数の定義や用語を記憶 することよりも,形をみたときに物理的意味が説明できて,適切な式変形ができることが重要で ある. なお, 次節§4で現れる化学ポテンシャルは, 慣例上, 記号µを使うことが多いが,混同 の心配はないであろう.

512[予測法](i) (∂S/∂p)T を見て,±(∂V /∂T)p への書き換えを予測する(符号未確定); (ii)独立変

数は(p, T)ゆえに,熱力学ポテンシャルG(p, T)が対応する; (iii)Gの恒等式を書き下す.

513つまり, 自由エンタルピーGの定義とその保存則(2.10)に起源をおく.

514[再強調]繰り返すが,この動機は,エントロピーは測りづらく, 可能ならば消したいからである.

515これは,決して,たまたま眺めていて気づく力を指すのではない. 日頃から, 各状態変数の定義

微分公式の循環公式

(0.54)

を書き下しているはずだからである

516: (∂T

∂p )

H

( ∂p

∂H )

T

(∂H

∂T )

p

=1 (3.95)

左辺の

1

つ目

, 3

つ目の偏導関数が

,

それぞれ

, JT

係数

,

定圧熱容量であること

ドキュメント内 0 (Preliminary) F G T S pv (1) (ページ 100-105)