• 検索結果がありません。

淋病に起因する

ドキュメント内 i I II III (ページ 31-34)

サ イ コ シ ス

精神病

おれの人生は、淋病持ちだったときに始まった。十八才。というか、淋病が終わったと きに始まったと言おうか。この手のものが終わるならの話だけど。このやっかいな病気の

おかげで、おれはまるっきり役たたずになっちまった。生きるための必須行動でさえ、他 人に頼る羽目になったんだから。

いまのおれは、役たたずなだけじゃない。人間は一人残らず役たたずだし、ほとんどの 人間つまり金持ちでない連中は、自分が役たたずだと思いこんでる。いまのおれは、肉体 的にも精神的にもイカレてる。唯一の望みが自殺することだから。

千葉に住んでる。目下のマンコは、あんたなんか自殺しちゃえばいいんだけど、もっと すてきなことに、ほかのみんながあんたを殺したがってるから、といつも言う。

「具体的にだれがおれを殺したがってるって? なぜそうやっておれを落ちこませたが るんだ。おれだって、連中が殺したがってることくらい知ってる」

「なんだっていつももめごとを起こしたがるのよ。男」

「おれのヤクの

サプライヤー

売 人 か?」不安定な安定性を維持するのにクスリがいるのだ。

「男があんたを殺したがってんの」おれがオルガズムに達した直後、女はそう告げた。

それで、わかった。

特に何も言わなかった。それが主義。人間のことばなんて、時間つぶし以外の何かだな んて思わないこと。逃げ出したかもしれない、逃げ出したかったおれだが、どこも逃げ場 がなかったので、唯一の安全は

サ イ コ シ ス

精神病とクスリだった。

こっちをまるで気にとめず、おれのことをまるで死人みたいに、女はしゃべり続けた。

「知覚は哲学上の問題となった」

親密になりすぎたもんで、マンコはおれの思考が読めるようになっていた。でも、おれ には答があった。そこで言ってやる。「ほかのいろんなものとまったく同じように自分自 身を知覚するのは可能だ。ストリッパーはそうやって自分のからだを知覚してる」

「あんたに

ノーマル

正常な人のことなんかわかるわけないじゃない」だれかが、たぶん彼女自身 だろうが、ジャンプスーツのそでを肩まで破っていた。彼女の目の色は、爪の色と、彼女 の別の部分の色と同じだった。

「淋病になるまではおれだって

ノーマル

正常だった」とおれは思った。「でも、

ノーマル

正常な暮らしの記 憶なんて、いまじゃただの夢。おれの生業は子供の

ニューロシス

強迫症。若い頃は、何度も何度も、自 分が尾行されてる夢をみた。尾行しているやつらは悪者だ。おれはやつらから逃げ出せる ほど速く走れなかった」

特にその夢を女に説明しなかった。ただのマンコだし。かわりに彼女の人格断片をし

ばらく見つめた。氷山か宇宙みたいに砕け、女のアイデンティティのかけらが漂い去り、

やがて彼女のむきだしの欲望、中毒である強迫観念が見えた。こわかった。逃げ出した かった。

「やつらがおれを殺したがってるって、なぜわかる」

「鳥さんが教えてくれたの」

おれの見おろした頭には、からだがなかった。ショックをうけつつ、それが頭なのがわ かった。というか、思いだした。何事もいつかは終わる。

眠りか安静は、かつての愛と同じような重要性を持つ。精神病になる前、眠るのをやめ る前、夢はだれかがおれを殺そうとしていると告げた。おれのマンコが、だれかがおれを 殺そうとしていると告げる。

なじみのバーにつくと、カウンターの向こうの男は、だれもおれを殺そうとなんかして ないと言う。眠らない限り、何も悪いことなんか起きないそうだ。

ボスはおれに危害を加えるつもりはなかった。

バーテンはさらに、おれがハメてた女がボスにおれのスケルチを頼んだと教えてくれ た。中毒だったので、金がいったからだ。RAM――というのがだれにせよ――がおれの 死に対して金を払うのだ。やつらはおれを追ってる。

おんなをヤると、みんな必ず、なぜおれが他人を信用しないのかききたがる……

「どうして信用してくれないの?」と股を広げてみせながら。

おれは紳士なもんで、唾棄すべきところでも唾を吐かない。自分のボスがだれだけ知ら なくても。

アパートに戻った。べつのマンコがおれにルガーを向けていた。やつらはおれを追って る。こうして現実化した以上、憎悪の現実性を信じることができる。

「あんた、だれだ? RAMか? おれを追ってたやつらの仲間か? これであんたが だれだかわかった」と相手に告げた。

彼女は、だれかの下で働いたりしてないと言う。自分は自由な女で、名前はアブホー ル。マンコのせりふを信じる義理もあるまいに。

もし現実ってのが、おれのつくる現実の絵じゃないなら、お手上げだ。

ドキュメント内 i I II III (ページ 31-34)

関連したドキュメント