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6. 事業化に向けた課題と展望

6.6. 海外製無線設備導入における課題

今回、プロジェクトで予定されていた活動の大きな障壁となったのは、スマートアジテーター システム中の、OBC(オンボードコンピューター)の日本国内電波法準拠対応の遅延である。

これにより、予定されていた検証内容、方法を再検討する必要に迫られた。その主たる原因は、

海外OBCサプライヤーと、当社及びシステムメーカーとの協力体制構築が非常に困難を極めた事 にある。

ここでは、海外企業とのコラボレーション事業を考える上での課題と今後に向けた対策案を示 す。

(1)通信機器サプライヤーとの連携の重要性

電波を発する製品を日本国内で使用する場合、電波の利用した際の混信等を防止するため、無 線設備は国の定めた技術基準に適合する必要がある事が電波法により定められている。技術基準

【表36】セグメント毎の対応方法

優 先 度 ター ゲ ット ( セ グ メ ン ト ) 分 析 結 果 営 業 方 法

1

*【超有望セグメント】

  アンケート回答有、かつ導入意欲有りと回答

期待度が非常に高い。

すぐにでも営業活動を開始し、速やかな受注が可能

*訪問等の直接的な対応

2

*【有望セグメント】

  アンケート分析の結果浮かび上がってきた有望セグメント

(5,000㎥以上または、保有車両が20台以上)に属する企業

リサーチ必要であるが、期待度は高い 受注に向けた積極的なアプローチ 期待値は高い

*顧客リスト作成

*システム提供価値(省力化・データ販売等)を「導入事例及び効果」

として提案資料にまとめる

*資料持参等での積極的なアプローチ活動

3

*【期待セグメント】

  中規模以下の企業(上記第2第3セグメント)

期待度は企業によってかなり差がある 知識提供など、提供価値の説明から必要

*顧客リスト作成 規模等でリスト分け

*システム提供価値(省力化・データ販売等)を「導入事例及び効果」

として提案資料にまとめる。

*GNN勉強会、展示会等での広報活動等を行い、ピックアップ活動の のち、訪問

*取付代理店を活用した、デモ等の開催

に反する無線設備を用いた無線局(不法パーソナル無線等)の電波利用は不法開設となり、使用 者は法的な問題が発生してしまう。

その為、一般的には使用する機器に対して、「技術基準適合証明・工事設計認証」や、「基準認 証制度」認証等を取得し、いわゆる「技適マーク」を表示する必要がある。これら認証の申請、

受験作業は、総務大臣の登録を受けた登録証明機関のみが行うことができるが、申請者は、受け ようとする機材の詳細な内部図面や、現品の提示、テストモード電波の受発信作業等、専門的な 知識と技術が不可欠であり、つまるところ、通信機器のサプライヤー等の協力がないと、申請す ら難しいのが現状である。

海外製無線設備を国内で使用する場合も同様であり、通信機器を製造する海外企業との密接な 連携が不可欠になる。まず、日本における法規制と認証に伴う手続きについて共有することが重 要である。また、認証には非常に機密度の高い、内部基盤の図面や、テスト用の電波の発信方法 等が必要になるので、これらの取り扱いについて認識を一致させる必要がある。

地理的に離れており言語の違いもあるなか、センシティブな技術情報に基づく認証を取得する には、これらを踏まえた合意形成が行われていないと、受験の段階になって問題が噴出する可能 性がある。

(2)困難な海外企業との合意形成

プロジェクトのパートナーである米国メーカーは、使用する通信機器をサプライヤーから購入、

使用しているという構造を呈しており、結果的にメーカー側が外注先をコントロールできず遅れ が拡大していったと考えられる。

外注先の協力が思うように思うように得られなかった原因を以下にまとめた。

・意思疎通(3か国語)によるコミュニケーションの難しさ

もともとProbeシステムの販売を行っていたベンチャー企業は、カナダのフランス語圏に本拠

を置いており、買収先の企業はU.Sで英語圏、かつ、我々は日本語権のなかで、英語を交渉言 語として使用するという、3 か国に渡ってのパートナーシップを築く必要があった。また、時

差も日本とは約13時間あり、昼夜逆転している中で、メール等でやり取りを行うと、国内対応 の数倍の日数がかかってしまう事が多く、この点で、無駄な時間を費やしてしまった感は否め ず、そうしたやり取りの中で、細かいニュアンスが伝わり切らずに、誤解を生み、コミュニケ ーションがうまく行かなかった可能性は否定できない。

・秘匿案件等に対する対応(国民性等の相違)

契約社会と呼ばれるように、U.S の企業は、非常に細かい点までを網羅した契約書を交わす事

で知られている等、、我々の商感覚とは異なる部分も非常に多かった。これらへの対応作業に時間 を費やし、計画通りに予定を勧められなかった可能性も否定できない部分である。

・メーカーの開発リソース(買収時期と優先度)

今回、メーカーでは、本国(アメリカ)仕様の製品統合に向けた開発を急いでおり、電波法認 証作業等への対応が希薄になった期間があった事は事実であった。

また、経営母体が変わった事で、意思決定権がより上部に移行し、正確に我々の意思を上層部 に届けられなかった可能性がある。ベンチャー企業から巨大会社へと移行したパートナーとの関 係性の構築が期間中に上手く構築できずに機能不全となっていた時期があったように感じる。

これらの遠因が絡み合う事で、パートナー会社との合意形成に時間を要し、結果として電波法認 証に関する作業が大幅に遅延したと考えられるのである。

(3)解決方法

①パートナー企業との良好な関係性の構築

我々はこうした膠着状態を打開すべく、現地のメーカーを訪問し、役員レベルでの会合を持つ に至った。一番大きな成果は、メーカー関係者(本部、Probe、Five cubits)と当社の役員、担

当者すべてのセクションが一堂に会し、相互理解が進み、方向性の一致を認識できた事に尽きる。

協力メーカーは買収企業の集合体を呈しており、社内でも旧3社3様の思惑があるので、こうし た買収統合の大企業と対等にやっていくためには、今までのような、現場=責任者という関係性 のままでは全く意思決定に至らず、役員レベルでの良好な関係性の構築が必要不可欠だという結 論に達した。

もちろん、今回の電波法認証作業遅延の一番大きな理由は、サプライヤーのコントロールがう まく行かなかった事によるのだが、プロジェクト初期段階(数か月)の遅延の原因はこの「会社 対会社の関係性」を上手くつかむことが出来ず、情報共有、決定のプロセスが上手く動いていな かった可能性は否定できない。

そうした関係性の構築をいかに確実に、緊密に出来るかを、最重要課題として対応出来れば、

技術的な部分は以下の手法を用いる事で、比較的容易に解決できると考えられる。

②技術的解決方法

通信デバイスは、独自のハードウェアを使用する以上、電波法認証は避けて通れない大きな問 題となる。そこで、次の選択肢で、より早く、確実に問題解決へとつなげられると考えられる。

(a)海外製デバイスの使用は極力避ける

(通信デバイスは特殊な物を避ける。または既存のものとの互換性を考慮して、開発する)

もし、通信デバイスが、特殊環境下に置かれない場合は、国内で流通する一般的な物を使用する 事を第一の選択肢とする。例えば、スマートフォンや、タブレット等のデバイスであるならば、

アプリケーション開発ですみ、リソース削減にも寄与する。

また、特殊環境化で独自のデバイスが必要な場合は、現地で使用される機材と互換性のある、国 内製品を使用できるよう、開発依頼をする事が結局の近道となる。

(b)海外製デバイスを使用する必要がある場合

もしも特定の海外製通信デバイスを使用しなければならない場合は認証取得済みのモジュール を使用したものかPCIeモジュールのような交換可能の設計をされたものを選択したい。

こうする事で、海外メーカーも多国的な対応が可能となり、開発リソースの低減に結び付く。

その対応も難しい場合は、デバイス全体の認証作業を受けざるを得なくなる。

その際には、専門的な技術、知識が必要不可欠であり、かつ、担当者が試験に立会う必要もあ る為、認証作業は申請者(技術提供社)の近くにあり、言語が使用可能な機関で受験するのがベ ストな選択方法である。

結論:どういったデバイスを用いる必要があるのか、充分にパートナー社と充事前協議したう えで、極力一般的なデバイスを使用した方法を取る事を最重要ポイントして、提案する。

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