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スマートアジテーターシステムの日本国内での性能、法準拠確認、検証

5. プロジェクトの成果

5.1 スマートアジテーターシステムの日本国内での性能、法準拠確認、検証

(1)Probe+Five Cubits(海外向けモデル)の日本市場導入と、日本向け仕様変更

(国内法規対応・日本語化・国内ユーザー要望対応)

①目標 本システム(国内仕様)の完成

②結果 Probeシステム部分は測定精度、堅牢性検証含め完成

車両総合管理システム部分はOBC電波法認証作業の遅延から国内導入未達

(a)知識習得

(ア)Command Alkon社でのトレーニング受講 (あ)システム構成確認

・新しいProbeシステムのプロトタイプ現品確認

旧型との大きな違いは、Probe と呼ばれるドラムに取り付けられたセンサー部分の設計が大き く変更された点である。旧型では、センサー部分にバッテリー、PCボードを内蔵し、ソーラーパ

ネルだけを別体としていた。このため、防水性能、ソーラーパネル取付時のドラムへの影響、突 起部の厚さ等に問題があり、改良にも限界があった。

そこで、この部分を全く新しい型とし、開発名称を(SplitProbe)別体型probeと称した、セ

ンサー部とその他付随部分に分けた新型を開発した。構成部品をソーラーパネルで覆う設計とし たことで、防水性や、メンテナンス性が大きく向上したほか、ハッチ部分だけに収まるようにな った事で、見た目や、影響も最小限に抑える事が可能となった。

その他、通信方式がBLEに変更となったほか、バッテリーもリチウムイオンタイプに変更とな る等、利便性、耐久性の向上も期待できる内容となった。

レシーバーと呼ばれるデータの表示部分に関しては、通信方式が変更になったのみで、その他 大きな変更は見送られた。以下【図18】に詳細を示す。

【図18】新旧変更図

・車両総合管理システム現品確認(通信端末(OBC)及び、ソフトウエア)

【図19】に、機材との関係性を示す。Probe部分で得られた生コン情報は、表示・蓄積部を介 して、OBCと呼ばれる通信部に集積される。この端末は、RC232,OBD-Ⅱ,の外部入力、及び、GPS、

Wi-Fi,セルラーモジュールを内蔵しており、集積されたデータを、運転手用に表示させたり、デ

ータをセルラー回線で打ち上げたりする役割を担う。いわば、クラウドに車両総合管理システム の基幹部と言える。

クラウドに集積されたデータを可視化するソフトウエアを、メーカーではFive Cubitsとい う商品名で展開しており、U.S国内では実稼働30000台の実績がある。

今回は、このFive Cubitsに、Probeを統合実装する事が大きな開発部分であった。

(い)操作方法習得

・車両総合管理システム

システムは、インターネット回線を通じ、ID,PWを用いたポータルサイト形式であり、UI含め、

非常に使い勝手の良い物であった。操作方法は、次の【図 20】に示した、マニュアルに沿って、

実地訓練を受ける事で、問題なく把握する事が出来た。

【図19】 システム構成

【図20 車両総合管理システムマニュアル

(う)取付作業確認

・新しいProbeシステム ・通信端末(OBC)

現地の生コン事業者の協力を得て、取付手順を確認する事が出来た。

旧型と大きく異なるのは、ドラム部分への取付手順である。新型は、旧型と異なり1ヶ所にす べての部品が取付けられる為、「ベースプレート」と

呼ばれる、固定用金属板をドラム部に溶接する必要 がある事がわかった。

この部品を正確にかつ確実に取付が出来ないと、

計測に支障が出るばかりでなく、使用中に外れてし まうなど、重大な事故を誘発する恐れがある。以下 手順を【図21】にまとめた。

*取付ノウハウ等の秘匿部分がある為、一部の み掲載する。

(イ)日本国内でのプロトタイプ取付テスト

海外事例との一番大きな違いは、ドラムの点検口(ハッチ)に取付が可能であるという点であ る。これを取外して作業できることで、車両への負担が少なくなり、また、安全確実な作業が可 能である。

これを踏まえ、実際に取付テストを行った結果、次の2点を国内向けとして変更する事にした。

・穴開け作業には、ガス溶断機を使わずに、ディスクグラインダーを使用する。

ハッチを外して作業出来る為、安全性が高く、かつ正確な切断が可能

・ベースプレートの溶接は、裏側から行う。

検証の結果、ベースプレートの両側に、大きな隙間が空く事が分かった。これは、海外のミキ サー車と比べ、ドラムの直径が小さい事が影響していると推測された。その為、より作業がしや すい裏側からの溶接作業を標準作業に変更した。

また、作業完了までは約1時間程度必要で、溶接工程が多くなることから熱でハッチが歪み、

再取付に時間がかかる事も判明した。

【写真5 作業風景

【図21 取付手順

これらの問題は、作業習熟度が上がれば、解 決でき、また、のちの5社での取付作業の結果 から、半自動溶接機を使用すると、より早く、

確実な作業が出来る事も判明した為、作業工程 に推奨部分として、導入した。

(ウ)取付作業手順書の作成

上記の結果を踏まえ、国内の車両に適応した、システム取付作業マニュアルを作成した。

*詳細は、別添資料「Split Probeシステムの取付手順書ver1.4」を参照の事

(部外秘の部分が含まれる為、一部抜粋して掲載する。)

(b)法準拠

結果として、プロジェクト期間中にOBCの電波法認証の取得は間に合わず、方向の転換を余儀 なくされた。

当初から、OBC の認証等に関しサプライヤーが理解を示さない(渋っている)との情報があっ

た。彼らは、日本向け独自に加工や、部品変更をする事に難色を示していたのが主な理由であっ た。

そこで、当社、メーカー共同で確認作業を行い、日本国内での使用に際し、SIM モジュールを 変更する事なく、使用可能な事を確認出来た事から、サプライヤーとメーカー間での交渉が再開 された。

しかしその後も現場担当者間での交渉が遅々として進まない事から、相互役員間での交渉に移 行した。その際、万が一OBC認証作業への協力が拒否された場合、日本独自の通信端末開発への 協力、または他のOBCサプライヤーへの移行等の遅延打開にむけたオプションも含めた。

以上の結果、既存OBCを使用した電波法認証への実務プロセスが何とか始動したが、残念なが ら、必要書類の不備や遅延などが頻発する事となり、結果、プロジェクト期間内での認証取得は 不可能である事が確認された。

一旦、このOBCを用いた認証プロセスは凍結し、打開策を相互に検討する事となった。

c)システム配備

取付代理店設立に向けた教育の一環として、取付作業、及び設定作業を行った。

詳細は、後術する、5.3ビジネスモデル検証(1)取付代理店設立d)システム取付作業、保守点

検作業の教育、習得OJTを参照の事。

③作成物 スマートアジテータープロトタイプシステム(システム本体)

取付マニュアル(一部抜粋)SplitProbeシステムの取付手順書ver1.4

【写真6】 国内テスト取付作業風景

(2)測定精度検証

①目標 本システム(国内仕様)の完成

②結果 Probeシステム部分の測定精度は旧型同等以上を示した。

(a) 工場間の測定差比較検証

・スランプ測定値

各社から収集したデータのうち、故障や、コンクリートの付着等による、異常値を除いたデー タを、以下【表19】に取りまとめた。会社毎に、左からProbe測定値、実測値、Probe測定値か ら実測値を差し引いた、計測差を示している。有効データ数は合計153点となった。

次に、測定差の偏差を求める為に、【図22】のように、測定差(cm)毎の件数を取りまとめ、

会社間での測定結果の傾向を確認した。

【表19】 スランプ値測定結果

各社ごとに傾向をまとめた。

A社:+1.5cmの5件をピークに、バランスよく正規分布している。

B社:+1.0cmの9件をピークに、バランスよく正規分布している。

C社:- 1.0cmの7件をピークに、バランスよく正規分布している。

D社:+1.5~3cmのあたりをピークに、+側にずれた結果多く偏差がおおきい。

E社:±0.0cmの7件をピークにバランスよく正規分布している。

結果、D社を除く4社はピークが‐1.0~+1.5cmの範囲に入り、偏差幅も同じ傾向を示した。一 方、D 社に取り付けた機材や測定方法は他社との差は見られず、旧型の偏差の傾向を考えても、

配合や、骨材等の材料違いに起因する差とも考えられなかった。

今回の検証中、各社で大きく異なる部分(変動の要素)は測定場所(工場・現場)の割合以外に

はなかった為、その傾向を【表20】

にまとめた。

すると、驚く事に各社共に現場で 採取された値の方が、工場で取得し たデータよりも計測差が大きいとい う結果が得られ、かつ、現場採取の 割合が増加するに従い、そのずれが 大きい傾向が示唆された。また、A、

D社においては、現場採取の割合が9

割を超えており、B,C社ではほぼ5割、E社は工場採取が10割という結果と合わせると、よりそ

のような傾向があると考えられた。現場での計測値は、実際の納入検査や、品質確認を目的とし て行われたものを比較データとして採用したものと、Probe による計測値を比較したもので、現

場では、合格範囲に合致させたいという潜在的な恣意性を排除出来ないという現状の問題点が、

図らずも露呈される結果となった。

D 社は、小口の物件への対応数が多い事が特徴で、こうした恣意性が他社と比べ、強く出た結 果が、+側へのずれと、偏差が大きくなった原因だと考えられた。

【図22 スランプ値測定結果の傾向

【表20 採取場所による測定精度差

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