図1 防波堤灯台復旧のイメージ
平成23年3月11日14時50分頃、東京の本 庁舎内においても大きな揺れを感じ、これ が未曾有の被害をもたらした東北地方太平 洋沖地震でした。この地震は宮城県牡鹿半 島沖を震源として大津波を発生させ、リア ス式の三陸海岸を呑み込み、港湾、漁港な どの防波堤・防潮堤を崩落させたばかりか、
海岸の市街地を壊滅的被害に追い込んだ東 日本大震災になりました。
この震災では、灯台などの航路標識も数 多く被害を受け、倒壊、傾斜などが58基、
被害総数も156基になっています。
震災直後は、被災地のライフラインの機 能が麻痺していたことに加え、津波で被災 した官署もあって、被害の全容を把握する には時間を要しました。
震災から1週間後には被災地支援のため の緊急物資の輸送計画が打ち出され、仙台 塩釜港の石油タンカー輸送を皮切りに主要 港を優先した啓開作業が急ピッチで進めら
れることとなり、当初港内は漂流物で埋め 尽くされ、海底地形も変化しておりました が、安全の確認できた港から順次、応急復 旧ブイを設置しました。
この時はまだ、市街地に明かりはなく、
星空の中で点滅する太陽電池式の灯台の灯 り、港の入り口で点滅する応急復旧ブイの 灯りは、被災者にとっても希望の灯りであ るとして感謝されました。
しかし、応急復旧ブイは形が小さく昼間 は見つけにくいので、改善するため東京湾 などに設置している航路ブイを被害の受け た灯台付近に設置することにしました。理 想は早急に灯台を復旧することが望ましい のですが、灯台の復旧には、防波堤の復旧 が前提となり時間がかかるので、それまで のつなぎとして、緊急物資拠点港の主要港 湾を優先して作業を開始しました。(図1)
航路ブイは全国の浮標基地に保管してあ る予備の標体を整備して被災地に輸送する
東日本大震災で被災した航路標識の復旧に向けた取り組み
〜倒壊した防波堤灯台近傍に灯浮標を設置し、船舶交通の安全を図る〜
ことにしたところ、各地から輸送される標 体には応援メッセージの寄せ書きが添えら れるなどし、被災地でもメディアに注目さ れ、復興の機運が高まりました。(写真1)
航路ブイの設置のためのクレーン船は、
瓦礫引揚などの復旧事業により東北地方で の手配が極めて困難で、関東東海地区まで 範囲を広げたところ、静岡の事業者から快 諾が得られ、結局このクレーン船は、約3 ヵ月間休みなく被災地での作業に従事しま した。ただ停泊地は被災場所なので、夜に なると真っ暗で人もいなくなり、心細く、
埃と悪臭にも悩まされたそうです。
航路ブイの設置には、漁船、復旧工事に 必要となる作業船などの通航に支障となら ないよう、事前に管理者および利用者と意 見交換をして、目印になるような場所を選 定しましたが、現地で海底の状況を確認す ると、防波堤の先端部付近は、津波の影響 で思いのほか洗掘されており、消波ブロッ ク、瓦礫なども散在していたので、現場で の位置決めに難渋しました。(写真2)
このほかにも工事期間中は、台風、三陸 特有の濃霧、余震による津波の警戒など多
難な事がありましたが、事故なく作業を終 えることができ、また設置後の航路ブイの 存在感は大きいようで、利用者からも感謝 されることになりました。(写真3)
航路標識の復旧に向けた取り組みは、ま だまだ道半ばですが、今回の作業で被災地 の復興に対する強い思いと、全国からの応 援の気持ちを肌で感じ、一日も早い復旧に 取り組んで参ります。そして、航路標識が 海上交通の安全に寄与し、地域の復興に貢 献できれば幸いです。
最後になりますが、この誌面をお借りし て、東日本大震災で犠牲になられた皆様に 対し、心からお悔やみ申し上げます。
写真1 寄せ書き風景
写真2 航路ブイの設置作業
写真3 防波堤の先端に設置した航路ブイ
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地点番号 地点名 道府県名
430 尻羽岬 北海道
590 江ノ島 宮城県
656 石廊崎 静岡県
750 経ヶ岬 京都府
817 福江島 長崎県
827 佐多岬 鹿児島県
一般財団法人 日本気象協会
気象予報士・技術士 ひ ら ま つ の ぶ あ き
平松信昭
波浪情報の入手と見方
波浪情報の入手方法
気象無線模写通報では、気象庁が作成し た東アジアや北西太平洋海域の地上天気図、
等圧面天気図、平均図、海況図などが図情 報として提供されています。
気象無線模写通報を受信は無料ですが、
専用の設備が必要です。インターネットの 時代になって、気象無線模写通報と同じ内 容が気象庁のウェブサイトから閲覧できる ようになっています。
このサイトでは、現在の放送スケジュー ルを入手することもできます。
波浪情報の見方
気象無線模写通報では、天気図や台風予 報の他に、波浪に関する情報が提供されて います。沿岸波浪図と外洋波浪図の2種類 で、それぞれ解析図と予想図があります。
沿岸波浪図は、日本近海および沿岸の波 浪の状況を表しており、外洋波浪図に比べ てより詳細な情報になっています。解析図 は日本時間の9時と21時の1日2回、予想 図は通常1日1回9時の波浪状況が図にな っています(図1)。
沿岸波浪解析図では気象庁の波浪計で観 測した波の周期と高さが表になっています。
波浪計は現在、表1に示す6箇所ですが、
江ノ島(宮城県)は東日本大震災で流され
たため、欠測が続いています。また、各沿 岸の代表地点26箇所(A~Z で位置を示す)
の波(波高と周期)と風(風向と風速)の 情報が表になっています。代表点の値は予 想図にも掲載されています。
海上の波の高さは等値線(実 線 で1m
図1 2011年10月9日21時(日本時間)の沿岸波浪解析図
表1 波浪計の地点番号と地点名
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毎、点線で50cm 毎に描写)で、周期は数 値、波向はベクトル、風向風速は矢羽根(長 い羽ひとつが10ノット、半分の長さが5ノ ット、三角形の羽は50ノット)で表現され ています。図2にはこれらの読み取り方を 説明しました。この読み取り方法を問う課 題が気象予報士の実技試験に出題されたこ とがありました。
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図2 A 点における読み取り値
注意点をあげると、ここでの波高は有義 波高といって、連続する波を観測したとき、
波高の高いほうから順に全体の1/3個の 波を選び、それを平均した値です。統計的 には、1000波に1波程度は、有義波高の2 倍近い高波が発生することが知られていま すので、油断しないようにお願いします。
外洋波浪図は北西太平洋を中心とした外 洋の波浪情報です。解析情報は9時と21時 の1日2回で、予想図は、24時間後の予想図 が1日1回9時に発表される他、1日2回、
9時と21時 の12・24・48・72時 間 後 の 予 想 をひとまとめにした図が提供されています。
外洋波浪解析図には船舶から通報された 観測値を載せています(図3)。船の位置 を示す○印に、そこでの風向風速を矢羽根 で示し、風浪による波向きをベクトルで示 しています。2段の数値は上段が風浪によ る周期(秒)と高さ(m)、下段はうねり
による周期(秒)と高さ(m)で、うねり の方向は周期の前にベクトルで示していま す。この他、外洋波浪図には低気圧や前線、
台風に関する情報が掲載されています。
詳細は波浪データの解説をご覧ください。
おわりに
インターネットの閲覧できる船舶向け天 気図提供ページでは、気象無線模写通報で は放送されていない船舶向けの特殊な情報 が掲載されています。たとえば、気象衛星 画像には、東北日本、中央日本、南西日本 の3つの領域の詳細な画像と夜間の海霧を 判別しやすい「差分」画像が含まれます。
これらについては別の機会にご紹介した いと思います。
気象情報を海難防止に上手く活用して頂 ければ幸いです。
参考資料
船舶向け天気図提供ページ
http : //www.jma.go.jp/jmh/jmhmenu.html 波浪データの解説(気象庁)
http : / / www. data. kishou. go. jp / db / wave / comment.html
図3 2011年10月10日9時(日本時間)の外洋波浪解析図と船舶 通報からの通報値の読み取り方
風 東北東の風 20ノット、風浪の波向き 東北東 周期3秒 高さ1m、うねりの波向き 東北東 周期6秒 高さ3.5m を示 す。