4 -1序論
レジン性接着剤を用いて象牙質に対して接着を施す際に形成されるハイブリッド 層は,接着安定性に重要な役割を果たしていると考えられる(中林1982, Nakabaうrashi
1992). ハイブリッド層の形成過程を考えるにあたり, 最初の段階で起こっている現 象の本質は象牙質コラーゲンと接着性モノマーの相互作用であると考えられる. そこ で, 第3章では多くのレジン性接着剤に含まれる接着性モノマーのメタクリノレ酸2-ヒドロキシエチル (HEMA)と, HEMAのコラーゲン結合部と推定される部分のモデ ル物質としての直鎖アルコールを用い3 これらの物質がコラーゲンの構造安定性に与 える影響を, コラーゲンの変性温度をモニターすることにより調べた . その結果, コ ラーゲンの変性温度は添加物濃度に依存して変化し, 30 0/0で、極小となることが一連の モデノレ物質に共通して見出された. さらに, モデノレ物質の疎水性が高いほど変性温度 に与える影響が大きく, 逆に親水性が高くなると濃度依存性はほとんど見られなくな ることが明らかになった.
ここまでは象牙質コラーゲンおよびそれに類した鍵コラーゲンを用いてきたが3 こ れらは高度に架橋した不溶性コラーゲンであるため,コラーゲンの高次構造を解析す るにあたって,溶液には適用できる分光法等の多くの手法を用いることができない.
このためにHEMAやその関連物質との相互作用により, コラーゲンに具体的にどの ような構造変化が引き起こされているのかについての情報を得ることができなかっ た.
そこで本章では,同じI型ではあるが一定の条件下で水溶性であるウシ皮膚コラー ゲンを用いた. まず3 示差走査熱量分析法(DSC) によって第3章と同様にI-ffiMA がこのコラーゲンの変性に及ぼす影響を調べ,HEMA-コラーゲン相互作用に関してp
不溶性の象牙質コラーゲンや鍵コラーゲンについての結果と の対応を確認した. 次い で,HEMAが作用することでコラーゲンの集合状態や高次構造に変化が引き起こされ,
コラーゲン分子また はその集合体のサイズが変化すると考えp ゲ、ノレ滅過クロマトグラ フィーを応用してこれを検証した.
4-2材料と方法 4-2-1材料
水溶性のコラーゲンとして3酸性条件下で可溶なウシ皮膚I型コラーゲンCcalfskin collagen ; CSC) を用いたCSigma 社製, Lot No. 13H7060). その抽出方法はGâllopら の方法に準じている(Gallop & Seifter 1963). HEMA (試薬一級, Lot No. M7K7325,
M8K4909)) 35 010塩酸(Lot No. V2H3660), 1 M塩酸(容量分析級, Lot No . L 8600),
1M水酸化ナトリウム溶液(容量分析級, Lot No . VOT7825 ), 無水コハク酸(試薬特 級, Lot No. M6K9163) はナカライテスク社製の 試薬を用いた. これらは3 いずれも 特別な精製を行うこと なく用いた.
4 -2 - 2 71<溶性コラーゲンのコハク酸修飾
本研究では口腔内の中性に近いpHを想定している. と ころがCSCは酸性pHでは
水溶性で、あるが中性pHでは溶けないので, 以下 の手順で中性pHでも水溶性を保つ ように3 塩基性アミノ酸残基にコハク酸を結合させる化学修飾を施した(Shenoy &
Rosenblatt 1995, Nezu & Winnik 2000) (図4-1 ).
CSCを蒸留水中, pH 2.0の酸性条件下で一旦完全に溶解させた後, 1M水酸化ナト
ウシ皮膚コラーゲン(Calおkin collagen ; CSC) 1
mo叫叫ν111配m削叫l(a伊a
pH 2.0
1mol/1 NaOH(いaqω )
コラ一ゲン懸濁液pH 9.0
コラーゲン0.1 mgに対して 0.2 mgコハク酸を加える 1/20体積のアセトンを溶かす
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