本章では締固められた花崗岩風化残積士および安山岩風化残帯土の水分保持特性と弊断強さに及ぼす浸透水の 影響について述べる
5−1 水分保持特性
ここでほ,後節における三軸圧縮試験笹用いたと同様の,水を浸透させずに供託する標準試料および特定条件 下で水を浸透させた後,供試する浸透試料について,pF値の測定を行い,pF値への水の浸透の影響を,後節の 努断強さ特性(粘着力,内部摩擦係数一合水比曲線)と関連して考察する
5−1−1 供試土および実験方法
1)供試土
花崗岩風化残債土としては,次の3種を用いた
a)北山土
採取地は香川県大川郡大内町で,母岩は粗〜ヰ粒の黒雲母花崗岩で,いわゆるマサ士である・
b)水主士
採取地は香川県大川郡大内町で,母岩は粗〜中粒の黒雲母花崗岩である c)大三鳥A土
採取地ほ愛媛県越智郡上浦町で,母岩は粗〜中粒の黒雲母花崗岩である・
次レこ,安山岩風化残積土としては,次の3種を用いた d)由良山土
採取地は香川県高松市由良町で,母岩は黒雲母安山岩である.
e)五色台C土
採取地は香川県坂出市青海町で,母岩は含輝石讃岐岩質安山岩である.
f)鴛ノ山土
採取地は香川県綾歌郡国分寺町で,母岩は角閃石安山岩である 風乾後の供試土の粒度分析結果を表5−1に示した
表5−1供試士の比重および粒皮紐成
粒 度 組 成(%)
供 試 土 比 墓
礫 砂 分 シルト分 粘土分
北 山 土 265 28 62
6 4花嵐岩
水 主 土 2小64 7 60 19 14 風化残帯土
大三島A土 2,68 3 56 13 28
由良山土 264 29
43 28 安山岩五色台C土 2小71 6161 24 15 風化残有責土
駕ノ 山土 255 6 14 46 34
ー30−
2)実験方法
標準締固め曲線上で最適含水比抄Opt。.(PdO=Pdmax.)と,それの乾燥側含水比∽1(Pdl=095Pdmax..)お よび湿潤側含水比∽2(βd2=0.95Pdmaxハ)を選び,それぞれの含水比になるように水分を加え,18時間以上密 封静置した後,βdがPdOおよびβdl,βd2それぞれの1」00および095,090,085の比になるように,油圧装置 によって静的に締固め,直径約5Ocm,高さ約125cmの円筒形供試体を作成した但し,北山土の湿潤側について は,W2(Pd2=095Pdmax…)では供試体の作成が不可能であるので,Wち(Pd2=097Pdmax.)を湿潤側含水比 とした…最終圧ほ約50kgf/禄である…締固めに要した時間は約5分である・実験に用いた花崗岩風化残贋土お よび安山岩風化残債土それぞれの標準緬固や曲線(JIS A1210,1・1・bによる)と供試体作成点を図5−
1に示した‖
10 20
花崗岩風化残椚士
30
含水比∽(殉 15 20 30 40
含水比抄(矧 安山岩風化残硫士
図5−1標準締固め曲線と供試体作製点
標準試料についてほ.,三軸圧縮試験の供試体と同じように締固めた後に,内径約50cm,高さ約1.9cmの円筒 に乱さないように入れて,そのまま吸水飽和させることなく遠心法によって水分保持特性を求めた
浸透試料については,締固めた後に供試体を≡制圧縮室に設置して三軸圧縮試験と同様に水を浸透させた後,
内径約50cm,高さ約19cmの円筒に乱さないように入れて,そのまま吸水飽和させることなく,遠心法によっ て水分保持特性を求めた..初期の水分条件以外は標準的な遠心法によるpF試験に準じたものと考えられる
5−1−2 実験腐臭
花崗岩風化残岩±匿ついて,pFと含水比の関係を北山土について図5−2に,大三島A土について図5−3に 示した
一 棟準 pF
−−− 浸透 40 0100Pdlll
●085J)dl
◎初期含水比 川
○浸透後含水比
........や
2015 20 25
乾 娩 側 含水比抄伽)
10
乾 燥 側 含水比抄(%)
15 20
湿 潤 側
25 含水比抄(%)
5 10 15
湿 潤 側 含水比砂(%)
図5−2 花崗岩風化残騎士におけるpFと含水比 の関係(北山土)
図5−3 花崗岩風化残帯土におけるpFと含水比 の関係(大三島A士)
いわゆるマサ土である粗粒な北山土を乾燥側で締固めた場合,供試体はpF25以下の水分をほとんど含まない が,浸透後ではpFl8以下の重力水まで大豊の水分を含むようになる」・すなわち,水の浸透によって毛管水(げ
18〜30),重力水(pFl 8以下)が大幅に増え,供試体のpF値が浸透前の25(毛管水領域)から18以下
(蛮力水領域)へと大きく低下している・
北山土を最適含水比付近で締固めた場合,供試体は重力水をわずかしか含まないが,水の浸透によ、つて毛管水 と共虹,より低pFの重力水を含むようになる・すなわち,供試体のpF値が,浸透前後で重力水領域内で低下し
ている
北山土を湿潤側で締固めた場合,供試体は蛮力水をかなり含んでおり,浸透後でも重力水が増えているのみで ある…すなわち,供試体のpF値が,浸透前後で重力水領域内で低下している・・
細粒の花崗岩風化残債土である大三島A士を乾燥側で締固めた場合,供試体は結合水(pF4・2〜63),強結 合水(pF63以上)を主に含み,半結合水(bF30〜42)以下の水分はわずかでありpF34以下の水分をほと
んど含まないが,水の浸透によってpF4。2近辺からpFl−8近辺までの広い範囲にわたって,大幅に水分を含むよ
−32−
うになるすなわち,水の浸透によって半結合水,毛管水が大幅に.増え,供試体のpF値が浸透前の半結合水領域 の3.4から毛管水領域下限の18へと大きく低下している.
大三島A土を最適含水比付近で締固めた場合,供試体は半結合水および結合水,強結合水■を主に含み,pF32 以下の水分をほとんど含まないが,水の浸透によって半結合水,毛管水が増え,供試体のpF値が浸透前の半結 合水領域の32から毛管水領域下限の18へと低下している
大三島A土を湿潤側で締固めた場合,供試体はpF22以下の水分をほとんど含まないが,浸透後ではpF30 近辺からpFl8近辺までの毛管水が増え,供試体のpF値が浸透前の毛管水領域の2・2から毛管水領域下限の1」8 へと低下している。
水主土についても,北山土,大三島A土と同様に水の浸透によって,より低pFの水分が増え,供試体のpF値 の低下が見られた.
安山岩風化残積士について,pFと含水比の関係を由良山士について図5−4に,五色台C土について図5−5 に示した
一 棟準 pF
_一一 浸透 40 0100Jクdl
● 085 〉dl
◎初期含水比 30 0浸透後含水比
標準
−−一 浸透
0100J)dl
● 085Pdl
◎初期含水比
○浸透後含水比
30
含水比び飯)
一 標準 p万
一−− 浸透 40
0100βdO
●085pdO
◎初期含水比 30
◎浸透後含水比
t 20
10 15 20 25
乾 燥 側
45 50 含水比び(%)
標準
−・・−一 浸透
0100βdO
● 085(〉dO
◎初期含水比
○浸透後含水比
30 35 40
乾 燥 側
50 含水比抄(%)
30 35 40 45
最適含水比
0 55
含水比び(%)
35 40 45 5
湿 潤 側
30 35 含水比び伽)
15 20 25
湿 潤 側
図5−6 安山岩風化残帯土におけるpFと含水比 の関係(五色台C士)
図5−4 安山岩風化残債土におけるpFと含水比 の関係(由良山土)
由良山士を乾燥側で締固めた場合,供託体はpF28近辺以下の水分をほとんど含まないが,浸透後では半結合 水および毛管水,重力水を大農に∴含むようになり,供試体のpF値が浸透前の毛管水領域の2。8から蛮力水領域 の1.8以下へと大きく低下している
由良山士せ最適含水比付近で締固めた場合,供試体はpF26近辺以下の水分をほとんど含まないが,浸透後で は半結合水および毛管水,重力水を大量に含むようになり,供試体のpF値が浸透前の毛管水領域の26から蛮 力水領域の18以下へと大きく低下している
由良山士を湿潤側で締固めた場合,供託体はpFl8以下の重力水をわずかに含むが,浸透後では半結合水およ び毛管水,重力水が増え,供試体のpF値ほ浸透前後で審力水領域内で低下している小
五色台C士を乾燥側で締固めた場合,供試体ほpF30以下の水分をほとんど含まないが,浸透後ではpFl8 以下の蛮力水まで大義の水分を含むようになる
すなわら,水の浸透によって半結合水および毛管水,重力水が大幅に増え,供試体のpF値が浸透前の毛管水 領域上限である30から重力水領域の18以下へと大きく低下している
五色台C士せ最適含水比付近で締固めた場合,供試体はpF26近辺以7の水分をほとんど含まないが,浸透後 では,pF3.8近辺からpFl−8以下までの大量の水分を含むようになるいすなわち,水の浸透によって半結合水お
よび毛管水,重力水が増え,供試体のpF倍が浸透前の毛管水領域の26から重力水領域の18以下へと大きく 低下している
五色台C士を湿潤側で締固めた場合,供試体ほpF2.2近辺以下の水分をほとんど含まないが,浸透後ではpF 38近辺からpFl。8以下までの大意の水分を含むようになる.すなわち,水の浸透によって半結合水および毛管 水,重力水が増え,供試体のpF億が浸透前の毛管水領域の22から蛮力水領域18以下へと低下して−いる.
鴛ノ山土についても,由良山土,五色台C土と同様に水の浸透によって,より低pFの水分が増え,供試体の pF値の低下が見られた…特に,乾燥側,痕適含水比付近で締固めた場合にほ,水の浸透による供試体のpF値 の大幅な低下が見られた
5−2 努断強さ
溜池堤体,河川堤防などの土質構造物の勢断強さは,築造後の水分履歴,たとえば,雨水,地下水の浸透によ って大きく変動するまた造成農地の安定性,特に,耐水食性も降雨,地下水の浸透によって変化する一このよ うな締固められた不飽和な盛土や造成農地における雨水,地下水の浸透状況は−・定したものではない−
浸透水が締固められた不飽和な盛土の葬断強さに及ばす影響については,盛土の耐久性に大きく関与するにも かかわらず統一・的な試験方法は確立していない
水没による努断特性の変化については,鳥山60)によって透水後に背圧(バックプレッシャー)を加え,さらに 圧許して三軸圧縮すると言う研究がなされている,また福田13)は下部可動塑の一層輿断試験機を用いて,不飽和 土の水没彼の強度低下特性を調べている‖西田ら36)は乱さない不飽和マサ土を用いた強度実験を行い,水の浸透 の影響が過圧密領域に顕著に現われること,サクショソの変化と関係のあることを述べている.また,宇野ら62)
は水浸によって不飽和土の強度が,2/3〜1/10にまで低下することを示し,浸水後の強度の評価については,等 体積勇断や非圧密非排水試験が一つの目安になる可能性を持つと述べている…
ここでは,浸透による強度低下がしばしば問題とされる花崗岩風化残額士および安山岩風化残債土を供試土と して,三軸圧縮試験装置を用いて標準試料(浸透させることなく圧縮虜断)と浸透試料(特定条件下で浸透後圧 縮勇断)の勇断特性を検討する.また,水の浸透後の,そのままの状態での努断強さを得ることを目的としてい