(B,f )が存在.f (B)は体ゆえm=Ker( f )は極大イデアル.ペアの極大性からB=Bm. 従って(B,m)は局所環で,明らかにAを支配する.このBがvの延長を与える付値 環であるのを見るのに,あと定義66の条件(i)を確かめればよい.x∈L×とする.x が B上整の場合.f を延長する射 B[x] → kが構成できる30からペアの極大性から x∈B.xがB上整でない場合.x<B[x−1]が成リ立ち,x−1はB[x−1]の非単元.標準 射B→B[x−1]/(x−1),0は非零環への全射となるから,x−1を含むB[x−1]の極大イデ アルnが存在してB/m=B[x−1]/n.ペアの極大性からx−1∈B.
(3) 一般に体拡大L/KとLの付値vに対し,付値群の指数 e(L/K)=[v(L×) : v(K×)] を 分岐指数と呼ぶ.L/Kが有限次拡大であればe(L/K)は有限 (実際e(L/K)≤[L : K]) で あることが知られている[Bourbaki, Chap. VI, Sect. 8.1, Lemma 2].この場合v(K×)Z であれば,v(L×)はねじれをもたない階数1の有限生成アーベル群,すなわち Z.
これを証明するには,命題68より,(a)の各素因子pに対しpApが単項(命題85証 明)を示せばよい.局所Noether整閉整域Apにおいて極大イデアルpApが(a/1)の素 因子であることに注意すると,命題68 (ii)⇒(iv)の証明において既に示されている.
(事実)から標準射A/(a)→∏
ht(p)=1Ap/aApは単射.実際,最短準素分解(a)=q1∩· · ·∩qr から生じる単射A/(a)→∏
iA/qi⊂∏
i(A/(a))√qiと同一視できる.(a)の非自明な⊃を 示すのに,b/a<A,すなわちb.0 mod(a)とすると,∃p: ht(p)=1, b.0 mod(aAp), すなわちb/a<Ap.
(4) 0 , a ∈ Aに対し,有限個のpを除きvp(a) =0 (∵ vp(a) , 0 ⇔ a ∈ pAp ⇔ a ∈ p ⇔ pが(a)の素因子). 従ってx=b/a (,0)に対しても,有限個のpを除き vp(x)=vp(b)−vp(a)=0.
(6) 局所化によりA→ Bを局所Noether環の間の平坦な局所的射としてよい((⇒)に
Spec(B)→Spec(A)の全射性を用いる).その場合,命題78と79を合わせればよい.
(7) 帰納法によりn=1としてよい.(6)により,各p∈Spec(A)に対し(Ap/pAp)[T ] (これはPID)が整閉であることを示せばよい.PID,より一般にUFDは整閉.
命題
/
定義71
整域A
が一意分解整域またはUFD (unique factorization domain)
であるとは,次の互いに同値な条件が満たされるときにいう.(i)
非零元f ∈ A
が既約元の積f = f
1. . . f
r として表せ,しかもここに現 れる既約元f
iたちが順序と単元倍を除き一意的である.(ii)
非零元f ∈ A
が素元の積として表せる.(iii)
既約元がすべて素元であって,かつ単項イデアルの昇鎖が必ず停滞する.
証明 例えば順に(iii)⇒(ii)⇒(i)⇒(iii)が見て取れる.
UFD
A
において,あらゆる素元(=
既約元) p
の生成するイデアル(p)
がすべ ての非零素イデアルを与える.A
(p)はp
を素元にもつ離散付値環.とくに整 閉(
命題70 (5))
.従ってUFDは整閉(=
正規)
整域である.命題
72 A
を整域とする.(1) A
が UFDであれば多項式環A[T
1, . . . , T
n]
もUFD.勝手な積閉集合S ( = 0)
による局所化S
−1A
もUFD.(2) A
がNoether
の場合,A
がUFD⇔
高さ1の素イデアルがすべて単項.(3) A
をNoether
とし,S ⊂ A
をいくつかの素元で生成された積閉集合とする.このとき,
A
がUFD⇔ S
−1A
がUFD.
証明 (1) Aが一般の整域の場合,S のどの元も割らない,Aの素元全体が,単元倍を
除きS−1Aの素元すべてを与える.∴Aが上の条件(ii)を満たせばS−1Aも満たす.
(2) (⇒) ht(p)=1とし0,a∈pを勝手に選ぶ.素元分解a= f1. . .frに現れる素元の いずれか fiがpに含まれるが,高さからp=( fi). (⇐) Noether性から各非零元は既 約分解可能.既約元aが必ず素元であることを示せばよい.pを(a)の極小素因子と するとht(p)=1.pの生成元をb (素元)とすればa∈(b).aの既約性から(a)=(b). (3) (⇒) (1)で済み. (⇐) (2)より,ht(p)=1の場合,この素イデアルpが単項であ ることを示せばよい.Γを素元から成るS の生成系とする.p∩S ,∅ならばpはΓ に含まれるある素元aを含むが,高さからp=(a).p∩S =∅ならばp(S−1A)はS−1A の素イデアル.S−1Aに対する(2)より ∃a ∈ p:p(S−1A)=a(S−1A).このaを(a) が極大となるように選べば,aはΓのどの元も割らないことに注意.p=(a)のため に,sb=ac, s∈S , b,c∈Aのときb∈(a)を示せばよい.s= f1. . .fr, fi∈Γとする と,最後の注意から∀iに対しc∈( fi).とくにc∈( fr).rに関する帰納法でc∈(s).
∴b∈(a).
34
定義/命題73 局所Noether環(A,m)が正則(regular)とは,次の互いに同値な条件が 満たされるときにいう.ここでk=A/mは剰余体とする.
(i) dim A=dimk(m/m2).
(ii) grm(A)k[T1, . . . ,Tn].すなわち次数k-代数grm(A)が多項式環に同型.
(iii) mがdim A個の元で生成され得る.
Noether環Aが正則(regular)とは,すべての極大イデアルmに対し局所Noether環
Amが正則であるときにいう.
証明 (ii)⇒(i). 自明. (i)⇔(iii). 中山により,mの元から成るa1, . . . ,arがイデア ルmの(極小)生成系 ⇔ a1mod(m2), . . . ,armod(m2) がm/m2のk上生成系(基底).
(iii)⇒(ii). 一般に局所Noether環(A,m)に対し,k=A/mを剰余体として
χ(n)=dimk(A/mn), n≫0 (十分大)
はnに関し整数係数多項式になる.これを特性多項式と呼ぶ
32.Aの次元の特徴づけ として,命題61bに与えたdim A=min{µ(q) : √
q=m}に加え
(事実) 局所Noether環の次元は特性多項式の次数に一致する: dim A=deg χ.
証明は[松村,定理13.4]または[Atiyah–MacDonald, Theorem 11.4]を参照.χ(n)が grm<n(A)=⊕
i<ngrmi (A)の次元に一致することに注意すると,次が従う.A:=grm(A)
において,添加イデアルA+:=⊕
i>0grmi (A)の高さht(A+)がdim Aに一致する(∵A+ による局所化に付随する次数環がgrm(A)に一致).
d=dim A, m=(a1, . . . ,ad)とする.
(14.1) Ti7→aimodm2∈grm1(A), 1≤i≤d
が次数k-代数射φ: k[T1, . . . ,Td] → A=grm(A)を与えるが,これは明らかに全射,
0, 1-成分上同型.核Ker(φ)が非零斉次多項式 f を含めばdeg( f ) >1.とくに f は k[T1, . . . ,Td]の添加イデアル(T1, . . . ,Td)に含まれ,引き起こされる[T1, . . . ,Td]/( f )→
Aは(T1, . . . ,Td)/( f )をA+の上に写す.ht(T1, . . . ,Td)=dに注意.命題60と前段の
結果から d−1=ht((T1, . . . ,Td)/( f ))≥ht(A+)=d.これは矛盾 ゆえKer(φ)=0.
局所Noether環Aに対し,一般にd :=dim A≤dimk(m/m2).Aが正則 ⇔ mがある
d元a1, . . . ,adで生成される.このようなa1, . . . ,adはとくに巴系.正則巴系(regular
system of parameters)と呼ばれる.列(a1, . . . ,ad)は必然的にA-正則33で,(14.1)が与
える次数k-代数射k[T1, . . . ,Td]→grm(A)が同型になる.
命題74 (1)–(3)において(A,m)を正則局所環,kをその剰余体とする.
(1) すべての素イデアルp⊂Aに対しApは正則である.
(2) (Auslander–Buchsbaumの定理) AはUFD(とくに整域)である.
(3) a1, . . . ,ar ∈ m,r ≤ dim A とする.それらのm/m2 における像 aimodm2,
1≤i≤rがk-線形独立 ⇔ A/(a1, . . . ,ar)が正則でその次元=dim A−r.
(4) 正則環A上の多項式環A[T ],形式ベキ級数環A[[T ]]はともに正則.
(5) A→Bを局所Noether環の間の平坦な局所的射とする.Bが正則 ⇒ Aが正
則.A, B/mABがともに正則 ⇒ Bが正則.
(6) 局所Noether環Rが正則 ⇔ その完備化Rˆが正則.
32
これは,m-準素イデアルqの特性多項式χq(n)=lgA/q(A/qn) (n≫0)に一般化される(A/q Artinを想起せよ).次数degχqはqに依らずdim Aに一致する.
33
命題74 (3)の証明参照.a1は整域Aの非零元ゆえA-正則.a2, . . . ,adが正則局所環A/(a1) の正則巴系を与えるから,a2はA/(a1)-正則.これを続ける.証明された事実から正則局所環 がCohen-Macaulayであること,命題74 (1)と合わせて,正則環がCohen-Macaulayであるこ とが従う.これを知った上で,命題80証明中の(事実)にも注意を払うこと.
35
証明 (3) A=A/(a1, . . . ,ar)とおく. (⇒) 与えられたa1, . . . ,arは正則巴系a1, . . . ,ar,
. . . ,adに延長可能.系62からdim A=d−r.ar+1, . . . ,adがAの極大イデアルを生成.
従って正則巴系となる. (⇐) ar+1, . . . ,ad−r ∈mがAの正則巴系を与えるとすれば,
a1, . . . ,ar, . . . ,adがmを生成.従って正則巴系となり,mod(m2)でk-基底を与える.
(1) 次のSerreによる重要な結果[松村,定理19.2]を用いる.
(事実) 局所Noether環(A,m)が正則 ⇔ A-加群k=A/mの射影次元proj.dimAk (=
大域次元gl.dim A)が有限.この場合,有限値はdim Aに一致する.
いまAは正則ゆえ,(⇒)からkの有限A-自由分解が存在.それを局所化してkの有 限Ap-自由分解を得るから(⇐)よりApは正則.
(2) 定義73条件(ii)から容易に従うように,Aは整域である.(2)の証明はd=dim A に関する帰納法.d=0の場合,上と同じ条件からAは体kゆえとくにUFD.d=1 の場合,条件(iii)からAは離散付値環(命題68),とくにUFD.
d >1とする.f ∈m\m2を勝手に選ぶ.A/( f )はd−1次元正則局所環 (∵命題61a (2),系62からd−1=極大イデアルのある生成系の位数≥次元≥d−1) ゆえ整域.
f は素元となるから,命題72 (3), (2)より,Af がUFDを,そのためにht(P)=1なる P∈Spec(Af)が単項を示せばよい.p=P∩Aとおく.
Pが階数1の射影的Af-加群なること,すなわち各 Q ∈ Spec(Af)において局所化 したのち Af と同型になることを示したい.Q∩Aは f を含まないから ( m.(1) よ り (Af)Q = AQ∩A は 次 元 < d の 正 則 局 所 環 に な る .帰 納 法 の 仮 定 と 命 題72 (2) から P(Af)Q (Af)Q (正確にはこれは P ⊂ Qの場合. しかし P 1 Qであっても P(Af)Q=(Af)Q).
目標のPAfを示そう.上記Serreの定理からpは有限A-自由分解をもつ.それを 局所化してPの有限Af-自由分解0→Fn →Fn−1→ · · · →F0→ P→0 (Fiは有限 生成自由Af-加群) を得る.E =⊕
i偶数Fi,F =⊕
i奇数Fi, r=rank Fとする.前 段の結果から EF⊕P, rank E=r+1 が従う.Af 上(r+1)-次外積をとり
Af =∧r+1(E)
⊕
s+t=r+1
∧s(F)⊗Af ∧t(P)=P.
(5) (前半) 一般に,局所Noether環 A上の有限生成加群M の極小自由分解· · · →
F2 → F1 → F0 → M → 0に⊗Ak (k=A/mA)を施せば. . .→0 F2⊗Ak→0 F1⊗Ak→0
F0⊗Ak→ M⊗Akが従う.これよりTorAn(M,k)=rank Fn(n>0)ゆえ,再びSerreの 定理からAが正則 ⇔ TorAn(k,k)=0, n≫0.
いまA→ Bの平坦性からTornA(k,k)⊗AB=TornB(B/mAB,B/mAB).三度Serreの定理
から, n>dim Aに対しこれは消滅.A→Bの忠実平坦性と前段の結果からAは正則.
(後半) 命題65よりdim B=dim A+dim(B/mAB)が成り立つ.a1, . . . ,adをAの正則 巴系とし,b1, . . . ,be ∈ mBをmod(mAB)で B/mABの正則巴系をなすものとすれば,
(A → Bは単射ゆえこれを包含と見て)これらの合併はmBを生成する.先の等号か らその合併を正則巴系としてBは正則になる.
(6) dim R = dim ˆR (命題64) とm/m2 = m/ˆ mˆ2 から.あるいは命題73 (ii)を鑑み grm(R)=grmˆ( ˆR)から.あるいは(5)を平坦射R→Rˆに適用してもよい.
(4) B =A[T ]または A[[T ]]とする.極大イデアルP⊂ Bを勝手に選びm= P∩A, k=A/mとおく.
B = A[T ]の場合.BP は Bm = Am[T ]の局所化ゆえ,Aを(Am に置き換え)正則局 所環としてよい.P/mBは B/mB = k[T ]の極大イデアルゆえ,mod(mB)で既約多 項式となる f ∈ A[T ]を以てP = mB+( f ).命題65を平坦射A → BPに適用して dim BP=dim A+dim(k[T ]( f ))=dim A+1.Aの正則巴系と{f}の合併がPを生成.先 の等式からBPの正則巴系になる.
36
B=A[[T ]]の場合.1+T ∈Bが単元ゆえT ∈P.これよりP=mB+(T )であり,
c BP=lim
←−ℓ,n
Am/mℓAm⊗AA[T ]/(Tn)=Acm[[T ]].
Bpが正則を示すのに,(6)よりcBPが正則を示せばよい.上式から,AをAcmに替え,
Aが正則局所環の場合にB=A[[T ]]もそうであることを示せばよい.命題65を平坦 射A→Bに適用してdim B=dim A+dim(k[[T ]])=dim A+1.Aの正則巴系と{T}の 合併がBの極大イデアルmB+(T )を生成.先の等式からBの正則巴系になる. Rを局所Noether環とする.dim R=0の場合,Rが正則 ⇔ Rが体.dim R=1の場 合,Rが正則 ⇔ 極大イデアルが単項 ⇔ Rが離散付値環(命題68).
注意75
(1) 正則局所環はUFD(Auslander–Buchsbaum).UFDは正規(命題72上).これ より,正則環は正規環である.
(2) Rを正規環とすると,高さ≤1の素イデアルpに対しRp は正則 (ht(p)=1
であれば,命題70 (3)からRpは離散付値環,同値に正則.ht(p)=0であれ ば,Rpはもとより整域ゆえ体になる). これより,1次元以下のNoether環 が正規 ⇔ 正則.
2次元のNoether正規環のうちに正則でないものが存在する(演習題14.7).
定義76 AをNoether環,k≥0を整数とする.
(1) Aが(Rk)を満たすとは,ht(p)≤kなるすべてのp∈Spec(A)に対しAp が正 則であるときにいう.
(2) Aが(Sk)を満たすとは,depth Ap ≥min{ht(p),k}がすべてのp∈Spec(A)に 対し成り立つときにいう.
(3) AがCohen–Macaulayとは,depth Ap=ht(p)がすべてのp∈Spec(A)に対し 成り立つときにいう.
例77 AをNoether環とする.
(1) Aが 正則 ⇔ すべての (Rk), k≥0 を満たす.AがCohen–Macaulay ⇔ す べての (Sk), k≥0 を満たす.
(2) すべてのAは(S0)を満たす.Aが(S1)を満たす ⇔ Aの素因子が極小素イ デアルに限る(換言すると零イデアル(0)が純(命題80)).
(3) Aが被約 ⇔ (R0)と(S1)を満たす.
証明 (2) (後半) 2条件が次に同値.ht(p)>0ならばpAp がApの(同値に,pがA の)正則元を含む. (3)最後の条件,すなわち(S1)に関して
(14.2) (S1) ⇔ 零イデアル(0)が純 ⇔ A→ ∏
p極小
Ap(
⊂ ∏
p極小
(A/p)p)
が単射. 実際,最後の条件は,無駄のない準素分解(0)=q1∩ · · · ∩qrにおいて
√qiたち,す なわち(0)の素因子すべて,が極小素イデアルから成ることと同値.あと,次を用い 可換図式を描いて(3)を得る.
Aが被約 ⇔ A→ ∏
p極小
A/pが単射,
(R0) ⇔ 各極小素イデアルpに対しApが体, 同値にAp→(A/p)pが単射.
命題78 (Serreの正規性判定) Noether環Aが正規であるためには,(R1)+(S2),す なわち次が成り立つことが必要十分である.
(1) ht(p)≤1ならばApは正則,同値に体または離散付値環.
(2) ht(p)≥2ならばdepth(Ap)≥2.
37
証明 (必要) p∈Spec(A)とする.ApはNoether整閉整域.ht(p)≤1ならばApは体 または離散付値環.ht(p)≥2とすると,勝手な0,a∈Apに対し,(a)のいずれの極 小素因子,等しく素因子(命題70 (3)証明中の(事実))にも含まれない元b∈pApが 存在.このbはAp/(a)において正則元ゆえ(a,b)はAp-正則列.∴depth(Ap)≥2.
(十分) Aはとくに(R0)+(S1)を満たすから被約(例77 (3)).p1, . . . ,prをAの極小素イ デアルのすべてとすれば標準的単射A→∏r
i=1A/piを得る.これは全商環の間の同型 K−→
∏r
i=1
Ki, K :=Frac(A), Ki:=Frac(A/pi)
に延長される(全射性は,引き起こされるK →Kiが全射ゆえ中国剰余定理による).
あとAがKにおいて整閉を示せばよい(∵Kの各ベキ等元e=e2はA上整ゆえe∈A. A → ∏r
i=1A/piは同型.各 A/piは整閉整域になる).元x=b/a ∈ Kが A上整とす る.ここにa ∈ A\A×は正則元でb ∈ A.(2)より(a)は純 (∵反してht(q) ≥2な る(a)の素因子qが存在すれば,qAq/aAqは零因子だけから成りdepth(Aq)=1) ゆえ A/(a)→∏
ht(p)=1Ap/aApは単射(命題80).x∈Aすなわちb∈(a)を示すのに,各Ap
(ht(p)=1)においてbの像∈aApを,すなわちxのFrac(Ap)における像(これはAp
上整)∈Apを示せばよい.これは,(1)よりApが正則ゆえ整閉だから成り立つ.
命題79 A→ Bを局所Noether環の間の平坦な局所的射,k≥0を整数とする.
(1) Bが(Rk) (または(Sk))を満たせばAも(Rk) (または(Sk))を満たす.
(2) A およびすべてのファイバー環 B⊗Aκ(p), p∈Spec(A), が(Rk) (または(Sk)) を満たせば,Bも(Rk) (または(Sk))を満たす.
証明 P∈Spec(B)としp=P∩A (∈Spec(A))とおく.命題65を平坦射Ap→ BPに 適用し
(14.3) ht(P)=ht(p)+ht(P/pB).
一方,次が成り立つ[松村,定理23.3].
(事実) 局所Noether環の間の平坦な局所的射A→Bに対し
depth B=depth A+depth(B/mAB).
いまこれをAp→BPに適用し
(14.4) depth BP=depth Ap+depth(BP/pBP).
(1) p∈Spec(A)を勝手に選ぶ.射の忠実平坦性からその上にあるP ∈Spec(B)が存
在.そのうち極小であるようにPを選べばht(P/pB)=0=depth(BP/pBP).
Bがまず(Rk)を,ついで(Sk)を満たすとする. (14.3)からht(p)=ht(P).∴ht(P)≤ k ⇒ BP 正則 ⇒ Ap 正則(命題 74 (5)).Aも (Rk)満たす. ついで (14.4)から depth Ap=depth BP≥min{ht(P) (=ht(p)), k}.Aも(Sk)満たす.
(2) ∀P∈Spec(B)に対しp= P∩Aとおく.A, Bp/pBpともにまず(Rk)を,ついで (Sk)を満たすとする.
ht(P)≤kとする.(14.3)からht(p), ht(PBP/pBP)ともに≤kゆえAp, BP/pBPともに 正則.命題74 (5)からBP正則.Bも(Rk)満たす.
ついで(14.4)から従う次によりBも(Sk)満たす. depth BP=depth Ap+depth(BP/pBP)
≥min{ht(p), k}+min{ht(P/pB), k}
≥min{ht(p)+ht(P/pB) (=ht(P)), k}.
(最後の≥を得るにはht(P)≤k≥ht(P/pB)の場合とそうでない場合に分けよ.)
38
命題80 Noether環AがCohen–Macaulayであるためには,Aに関し純性定理が成り 立つ,すなわちイデアルa⊂Aのうちht(a)元で生成されるものがすべて純である– その素因子すべてが同一の高さ(=ht(a))をもつ–ことが必要十分.命題61a (1)によ り,この最後の条件は,aの素因子が極小素因子に限ることと,さらに標準射
A/a→ ∏
pはaの 極小素因子
(A/a)p
が単射であるのと同値である.
証明 最後の同値は(14.2)における議論を一般化し,aの最短準素分解を用いて示さ れる.
(必要) a=(a1, . . . ,ar), ht(a)=rとせよ.aの素因子mがd :=ht(m)>rを満たすと
し矛盾を導く.AをAmに替え(A,m)を局所環としてよい.A/aにおいてm/aは零因 子だけから成ることに注意.mはaの極小素因子ではないから,(a1, . . . ,ar)はAの
巴系(a1, . . . ,ad)に延長される(補題61c (3)の証明).注意からこれはA-正則列では
なく次の事実に矛盾する.
(事実) 局所Cohen–Macaulay環Aに対し,巴系の一部とA-正則列は同義語である.
後者が前者であるのは見やすい.用いたのは逆.これを示すのにd=dim Aに関する 帰納法で,巴系(a1, . . . ,ad)がA-正則列を示す.一般に,上のようなAにおいて (14.5) dim A=depth A=dim(A/p) ∀p∈Ass(A).
後に用いるより一般の結果として,有限生成A-加群Mに対し (14.6) dim M=depth M=dim(A/p) ∀p∈Ass(M).
([松村,定理17.3]参照.) (14.5)よりa1 <∀p(∵a1 ∈pとするとa2, . . . ,adがA/pに おいて(m/p)-準素イデアルを生成.dim(A/p)<d).すなわちa1は正則元.系62と命 題83からA/(a1)はd−1次元局所Cohen–Macaulay環.A/(a1)においてa2, . . . ,adは 巴系を,等しく(帰納法の仮定) A/(a1)-正則列を与える.∴(a1, . . . ,ad)はA-正則列.
(十分) p∈Spec(A),ht(p)=rとする.r=0ならdepth(Ap)=dim(Ap)=0.r>0の
場合,pの元の列(a1, . . . ,ar)で
(14.7) ht(a1, . . . ,ai)=i, 1≤i≤r
を満たすものが選べる.補題61c (3)の証明同様,順次aiを,(a1, . . . ,ai−1)のどの極 小素因子(純性定理より,等しく素因子)にも含まれないように選べばよい.すると この列はA-正則.従ってdepth(Ap)=dim(Ap)=r.
命題81 Aを局所Cohen–Macaulay環とする.
(1) Aのすべての素因子は同一の高さをもつ.すなわちSpec(A)が非孤立成分を
もたない.Spec(A)の各既約成分は同一の次元をもつ.
(2) 真のイデアルa(Aに対し
dim(A/a)+ht(a)=dim A.
また,aの元から成る極大A-正則列の長さは一定でht(a)に一致する.
証明 (1)前半は,零イデアル(0)が純(命題80)の言い換え.後半の“同一の次元 は(14.5)から.
(2) (後半) Aを局所Noether環Aとその真のイデアルa(Aに対し,命題59の一般
化が,“M-正則列”を“aの元から成るM-正則列”に替えて成り立つ
34
.この一般化さ れた結果から“長さ一定”が従う.
34
すなわちaの元から成る極大M-正則列の長さは一定.この一定値をdepth(a,M)で表す が,これはinf{n : ExtnA(A/a,M),0}(<∞)に一致する.命題59の証明を修正してこの一般 化が示せる.注意すべき点として,HomA(A/a,M)=0とするとaがM-正則元を含む.∵含
39
ht(a)=rとする.aの元から成るA-正則列(a1, . . . ,ar)で(14.7)と同じ等式を満たす ものが存在(等式における議論と同様).あと,そのようなA-正則列(b1, . . . ,bs)に対 しs≤rを示せばよい.確かにs=ht(b1, . . . ,bs)≤r.
(前半) S をaの極小素因子全体の集合とすると
dim(A/a)=sup{dim(A/p) :p∈S}, ht(a)=inf{ht(p) :p∈S}
ゆえ,dim(A/p)+ht(p)=dim A ∀p∈S を示せばよい.前半の結果をpに適用し,長さ r :=ht(p)の,pの元から成るA-正則列(a1, . . . ,ar)を得る.pはイデアル(a1, . . . ,ar) の極小素因子ゆえ(14.6)からdim(A/p)=dim(A/(a1, . . . ,ar)).系62から最後の次元
=dim A−r.
命題82 (Hartshorneの連結性定理) Aを局所Noether環とする.Aの2つのイデアル a, bの共通部分a∩bがベキ零で,根基
√a, √
bの間に包含関係がなければ,a+bは 長さ2以上のA-正則列を含まない.脚注34の記号でdepth(a+b,A)≤1.
証明 一般に次が成り立つ.
(事実) 環A上の加群Mに対し,(a1, . . . ,ar)がM-正則列であれば(an11, . . . ,anrr)もそ
う.ここに ni, 1≤i≤r, は勝手な正整数35.
命題の結論を示すのに(事実)から,a,bをベキan,bn(n>0)に替えてよい(結論に関 し,3つのイデアル(a+b)2n⊂an+bn⊂a+bに関わるdepthの一致が効く).ab⊂a∩b で,いま後者ベキ零の仮定から,n を十分大きく選びab = 0としてよい.すると (a∩b)(a+b)=0.a∩b,0ならばa+bは零因子だけから成りdepth(a+b,A)=0.
a∩b=0の場合,depth(a+b,A)>1と仮定(矛盾を導く).するとExt1A(A/(a+b),A)=0 (脚注34).とくにA-加群の短完全列
0→A=A/(a∩b)−→対角 A/a⊕A/b−→差 A/(a+b)→0
は分裂.元a,b ∈ Aが存在して,(i) a−b ≡ 1 mod(a+b),(ii) A/a⊕A/bにおいて A(1,1)∩A(a,b)=0を満たす.(i)よりa, bの少なくとも一方,例えばaは単元.する とA/a⊕A/bにおいてb(a,b)=b(1,0)=b(1,1).(ii)からb(1,0)=0,すなわちa⊃b.
これは仮定
√a 2 √
bに反す.
命題83 Aを局所Noether環とし,そのA-正則列で生成されたイデアルaが勝手に
与えられたとする.このときAがCohen–Macaulay ⇔ A/aがCohen–Macaulay.こ れより,正則環がCohen–Macaulayであることが従う
36
.
証明 a1, . . . ,ar がaを生成するA-正則列であるとせよ.命題59から,これにある
列ar+1, . . . ,adをつなげて極大A-正則列が得られるが,最後の列は極大A/a-正則列で
なくてはならない.∴depth A/a=depth A−r.一方,系62からdim A/a=dim A−r. これら2等式から命題が従う.
まなければ,prime avoidanceによりaはMのある素因子pに含まれ,A/a→ A/p֒→ Mが HomA(A/a,M)の非零元になる.
35(a1, . . . ,ar)をM-正則列とする.まず,∑r
i=1aimi=0, mi∈M ⇒ mi∈∑r
i=1aiM, 1≤i≤r がrに関する帰納法で示せる.(事実)の結論を示すにはn2=· · ·=nr =1の場合で十分.まず an11はM-正則.あとn :=n1に関する帰納法で,1<k≤r, m∈Mに対しakm=an1x1+a2x2+
· · ·+ak−1xk−1, xi∈Mと書ければm∈an1M+a2M+· · ·+ak−1Mとなることを示せばよい.n=1の 場合自明.n>1とする.先の表示と帰納法の仮定からm=an1−1y1+a2y2+· · ·+ak−1yk−1, yi∈M と書ける.∴ an1−1(a1x1−aky1)+a2(x2−aky2)+· · ·+ak−1(xk−1−akyk−1) =0.冒頭の事実から a1xi−aky1∈an1−1M+a2M+· · ·+ak−1M.∴aky1∈∑k−1
i=1aiM.これよりy1∈∑k−1
i=1aiM.最後のm
の表示から示すべき結果が従う.
36
しかし,この最後の事実は既知.脚注33を見よ. 40