A ⊂ B
を局所環の包含とする.m
A⊂ m
Bまたは同値にm
B∩ A = m
Aが成り立つとき
B
はA
を支配(dominate)
するという.体K
において,部分局所環全体の集合は支配を順序にもつ帰納的順序集合になる.
定義
/
命題66 K
を体,A
をその部分環とする.A
がK
の付値環(valuation
ring)
であるとは,次の互いに同値な条件が満たされるときにいう.(i)
各元x ∈ K
×に対しx ∈ A
またはx
−1∈ A
が成り立つ.(ii) Frac(A) = K
,かつA
のイデアル全体が包含に関し全順序集合をなす.(iii) A
が局所環であって,支配順序に関し極大である.(iv) K
のある付値v
に対しA = { a ∈ K : v(a) ≥ 0 } (
証明の後を見よ)
.28B/mABがmA上のファイバー環であることに注意して(不)等式の幾何学的意味を考えよ. 30
証明 (i)⇒(ii). (i)を仮定.明らかにFrac(A)=K.また,単項イデアル全体が全順 序集合になることに注意.a,bをイデアル,a1bと仮定.∃a∈a\b.∀b∈bをとる とa<(b).(a)1(b)ゆえ注意から(a⊃) (a)⊃(b) (∋b).∴a⊃b.
(ii)⇒(iii). (ii)を仮定.するとAの極大イデアルはただ1つ.すなわちAは局所環.
Aを支配する部分局所環B⊂Kを選び,x=a/b (a,b∈A\ {0})をその勝手な非零元 とする.x∈Aを示したい.(ii)から(a)⊂(b)または(a)⊃(b).非自明な後者の場合,
x−1∈A.x∈Bゆえx−1<mB.mA ⊂mBゆえx−1 ∈A\mA=A×.∴ x∈A.
(iii)⇒(i). [Bourbaki, Chap. VI, Sect. 1.2, Theorem 1] (a)⇒(b)⇒(c) の証明参照.
(iv)⇒(i). x∈K×に対し,v(x)+v(x−1)=0ゆえv(x)≥0またはv(x−1)≥0.
(ii)⇒(iv). 一般に整域Aとその商体Kに対し,商群G=K×/A×は,非零単項分数イ デアルxA (⊂K), 0,x∈K 全体が積に関し成す群と同一視される.後者がもつ,包 含の逆に関する順序により,このGは順序群(演算が順序と両立)になる.Gの演算 を加法で表す.(ii)を仮定するとGは全順序加法群.標準的準同型v : K×→Gの延 長K→G∪ {∞}(v(0)=∞)を同じ記号で表す.v(x)≥v(y) ⇔ xA⊂yA in K に注意.
明らかにA={a ∈K : v(a) ≥0}.あとは下記(13.1)の確かめ.(x+y)A ⊂xA+yA.
後者はxA,yAのうち,包含に関し大きい方に含まれる.
体
K
の付値(valuation)
とは,
乗法群K
×からある全順序加法群(加法と両立する29全順序を伴う加法群)
G
への群準同型v
をv(0) = ∞
と定めて延長した 写像v : K → G ∪ {∞}
であって,(13.1) v(x + y) ≥ min { v(x), v(y) } , x, y ∈ K
を満たすものをいう(ただし
g < ∞ , g ∈ G
).A = { a ∈ K : v(a) ≥ 0 }
はK
の 部分環(実際,上の意味のK
の付値環)になる.部分群v(K
×) ⊂ G
をv
の値群(
value group
)と呼ぶ.これはK
×/A
×に同型な,ねじれをもたないアーベル群である.
系
67 K
を体,R ⊂ K
を部分環,p ⊂ R
を素イデアルとすると,R
を含むK
の付値環A
が存在してm
A∩ R = p
を満たす.証明 RをRpに替え,(R,p)を局所環としてよい.Rを含むKの部分環Aで1<pAを 満たすものすべてを考える.Zornの補題により,包含に関し極大なAを得る.m⊃pA なるAの極大イデアルmを選べばm∩R=p.極大性からAm=A,すなわち(A,m)は 局所環.AがKの付値環であることを見るのに,∃0∈x∈K : (i) x<Aかつ(ii) x−1<A として矛盾を導く(命題66).(i)によりA[x])Aゆえ1∈pA[x].すなわち
1=a0+a1x+· · ·+anxn, ai∈pA, n>0 と表せる.1−a0 ∈A×ゆえ逆元を乗じて
1=b1x+· · ·+bnxn, bi∈pA, n>0.
この関係式をnが最小となるように選ぶ.(ii)より同様に,関係式 1=c1x−1+· · ·+cmx−m, ci∈pA, m>0
をmが最小となるように選べる.n≥mの場合,この式にbnxnを乗じ前の式から引 くと,nがより小さい関係式が得られ矛盾.n>mの場合も同様に,mの最小性に矛 盾する関係式が作れる.
定義
/
命題68 A
を体でない整域とする.A
が離散付値環(discrete valuation
ring)
であるとは,次の互いに同値な条件が満たされるときにいう.(i) A
が局所PID.29gi≤hiin G, i=1,2, ならば g1+g2≤h1+h2. 31
(ii) A
が1次元局所Noether
整閉整域.(iii) A
がNoether
付値環.(iv) A
が局所Noether
環,極大イデアルm
Aが単項イデアル.(v) A
がZ
に値をもつ付値v : Frac(A) → Z ∪ {∞}
の付値環.証明 m=mA, K=Frac(A)とかく.
(v)⇒(i)⇒(iv)⇒(v).(v)を仮定.v(π)=1を満たす元π∈Aを1つ選ぶ.∀x∈ K に対しm =v(x) (∈Z)とおくと ∃u∈ A× : x =uπmが見て取れる.勝手なイデアル 0,a(Aに対しn=min{v(a) : a∈a}は正整数.先の結果からa=(πn)が従い,(i) を得る.(後のため,m=(π),a=mnに注意せよ.)
(i)⇒(iv)は自明.(iv)を仮定.m=(π)とする.系41から
∩
n>0(πn)=0.∀0∈a∈ A∃!0 ≤n ∈ Z : a ∈ (πn)\(πn+1).u =aπ−n とおくとu ∈ A\m = A×.これより次 が見て取れる.∀x∈K×∃!(n, u)∈Z×A×: x=uπn.従ってx7→ nが順序群の同型 K×/A×Zを与え,(v)が従う (命題66 (ii)⇒(iv)の証明を見よ).
(v)⇒(iii)⇒(iv). 上で見たように(v)のもとAはNoetherゆえ(iii)を得る.(iii)を 仮定.Aを与える付値をvとせよ.Noether性から,あるπ ∈ Aに対しv(π)が値群 v(K×)の中の正の最小値となる.明らかに(π)⊂m.逆の包含を示すため∀a∈mを選 ぶ.v(aπ−1)≥0よりa∈(π).
(v)⇒(ii)⇒(iv)を示せば終わる. 付値環は整閉整域(命題70 (5)).また(v)のもと,
上の注意からdim A≤1ゆえ(ii)が従う.
(ii)⇒(iv).m ,0に注意.0 ,a ∈ mを勝手に選ぶ.dim A = 1とする.A/(a)は Artin.mは(a)の素因子になるから∃b∈A : ((a) : b)=m.x=a−1b (∈K)とおくと xmはAのイデアルで,x<m(∵x∈A とすると1∈((a) : b)).
AをNoether整閉整域とするとxm=A (∵反してxm⊂mとすれば,行列式を用い
た議論でxはA上整. x<Aに反す).x−1∈m.m=x−1xm⊂(x−1)⊂m.∴m=(x−1).
(後のための注意して,前段の結論はmが(a)の素因子であれば成り立つから,次が
示された.局所Noether整閉整域において,極大イデアルmを素因子にもつ単項イ デアルが存在すれば,mは単項イデアルである.)
A
を離散付値環とするとき,極大イデアルm
A を生成する元π
を素元または 一意化元(uniformizing element)
と呼ぶ.A
の非零イデアルは,ある整数n ≥ 0
を以て(π
n)
で与えられる.さらに条件(v)
の付値v
を以て,(13.1) A
×= { a ∈ A : v(a) ≥ 0 } , m
A= { a ∈ A : v(a) > 0 } .
v
が正規化されている(normalized)
とは,v
が全射のとき,同値にある/
勝手 な素元π
がv(π) = 1
を満たすときにいう.命題
69 v : K → G ∪ {∞}
を全順序加法群G
に値をもつ体K
の付値とする.(1) v
はK(T ) (T
は超越元)
の(
同じG
に値をもつ)
付値に延長可能.(2)
勝手な体拡大L/K
に対し,v
はL
の付値に延長可能.(3) L/K
が有限次体拡大の場合,v
が離散付値(
すなわちv(K
×) Z )
であ ればその延長もすべて離散付値である.証明 (1) [Bourbaki, Chap. IV, Sect. 10.1, Proposition 1]を見よ.ng,0 ∀n∈Z\ {0} を満たすg∈Gを勝手に選ぶとき,v(T )=gなる延長が一意に存在する.
(2) vを与える付値環をA={a ∈K : v(a)≥0},剰余体をk=A/mA,その代数閉包 をkとする.Aを含むLの部分環Bと射影A → kを延長する射 f : B→ kからな るペア(B,f )全体を考え,そこに自然な順序を入れる.Zornの補題から極大なペア
32
(B,f )が存在.f (B)は体ゆえm=Ker( f )は極大イデアル.ペアの極大性からB=Bm. 従って(B,m)は局所環で,明らかにAを支配する.このBがvの延長を与える付値 環であるのを見るのに,あと定義66の条件(i)を確かめればよい.x∈L×とする.x が B上整の場合.f を延長する射 B[x] → kが構成できる30からペアの極大性から x∈B.xがB上整でない場合.x<B[x−1]が成リ立ち,x−1はB[x−1]の非単元.標準 射B→B[x−1]/(x−1),0は非零環への全射となるから,x−1を含むB[x−1]の極大イデ アルnが存在してB/m=B[x−1]/n.ペアの極大性からx−1∈B.
(3) 一般に体拡大L/KとLの付値vに対し,付値群の指数 e(L/K)=[v(L×) : v(K×)] を 分岐指数と呼ぶ.L/Kが有限次拡大であればe(L/K)は有限 (実際e(L/K)≤[L : K]) で あることが知られている[Bourbaki, Chap. VI, Sect. 8.1, Lemma 2].この場合v(K×)Z であれば,v(L×)はねじれをもたない階数1の有限生成アーベル群,すなわち Z.