体の間の環射ι: k→Kを体拡大(field extension)と呼ぶ.このιは必然的に単射であ る(それゆえ埋入(embedding)とも呼ぶ).しばしばιを包含と見て,この記号を書か ない.
(Ti)i∈I を変数の族とするとき,多項式環k[(Ti)i∈I]は整域.その商体をk((Ti)i∈I)と記 す.これはkの体拡大である.
Kのk-ベクトル空間としての次元を[K : k]と記し,体拡大k → Kの次数(degree) とも呼ぶ.k→ Kの部分拡大(subextension)とはKのk-部分代数で体であるものを 指す.部分体の族の共通部分はまた部分体である.(ai)i∈I をKの元の族とするとき,
k((ai)i∈I)によりすべてのaiを含む最小の部分体を表す.
定義88 体拡大ι: k→Kが
(1) 有限(次) (finite): ιが有限(定義11).
(2) 代数(的) (algebraic): ιが整(定義51). 元a∈Kがk上代数的とはそれがk 上整.
(3) 超越(的) (transcendental): 代数的でない.
(4) 純超越(的) (purely transcendental): k上代数的独立な元ti ∈Kの族(ti)i∈I が 存在してK=k((ti)i∈I); 同値にKk((Ti)i∈I).ここに(Ti)i∈Iは変数の族. (5) 有 限 生 成 (finitely generated): 有 限 個 の 元a1, . . . ,an ∈ K が 存 在 し てK =
k(a1, . . . ,an).
(6) 分離(的) (separated): 勝手な体拡大k→Lに対しK⊗kLが被約.
注意89
(1) k→KとK→Lを体拡大とする.合成k→Lが有限/代数的/有限生成 ⇔
k→KおよびK→Lが当該性質を持つ.
(2) 体拡大が有限 ⇔ 代数的かつ有限生成.
(3) 純超越拡大は分離的.
定義90 体kが
(1) 代数閉(algebraically closed): kの非自明な代数拡大が存在しない.
(2) 分離閉(separably closed): kの非自明な分離代数拡大が存在しない.
(3) 完 全 (perfect): kの 体 拡 大 が す べ て 分 離 的; 同 値 に char(k) = 0,ま た は char(k)=p>0かつFrobenius射k→k, x7→ xpが全射.
43
体が代数閉 ⇔ 完全かつ分離閉.
kを体とする.kの代数閉包(algebraic closure)/分離閉包(separable closure)/完全閉 包(perfect closure)とは,Kが代数閉/分離閉/完全なる体拡大k→Kであって,当 該性質をもつ体拡大k→Lに対しk-代数射K→Lが存在するものをいう.
命題91 体kの代数閉包/分離閉包/完全閉包は必ず存在し,k上代数的/分離代数 的/純非分離的である.kの代数閉包/分離閉包はk-代数同型を除き一意的.kの完 全閉包は一意的に決まるk-代数同型を除き一意的である.
k→Ωを代数閉/分離閉なる拡大体とすると,勝手な代数拡大/分離代数拡大k→K に対しk-代数射K→Ωが存在する.
命題/定義92 k→Kを体拡大とする.
(1) k上代数的独立な元ti∈Kからなる族(ti)i∈I が存在してKはk((ti)i∈I)上代数 的になる.この族を体拡大k→Kの超越基底(transcendental basis)と呼ぶ.
(2) k→Kのどの2つの超越基底も同じ濃度をもつ.この濃度を超越次数
(tran-scendental degree)と呼びtrdegkKで表す.
(3) K→Lを第2の体拡大とするとtrdegkL=trdegkK+trdegKL.
(4) k → K が 有 限 生 成 で あ れ ば ,有 限 超 越 基 底 (t1, . . . ,tn) が 存 在 し て K は
k(t1, . . . ,tn)上有限になる.
従って,体拡大k→Kが代数的 ⇔ trdegkK=0.
分離拡大の特徴づけに必要な次を想起しよう.Aを環,Mを A-加群とするとき,Z-線形射d : A→Mであって,d(aa′)=ad(a′)+a′d(a) ∀a, a′∈Aを満たすものを導分 (derivaion)という.
命題93 体拡大k→Kに対し次が互いに同値になる.
(i) k→Kが分離拡大.
(ii) kの任意の有限純非分離拡大体Lに対しK⊗kLが被約.
(iii) kの完全拡大体k′が存在してK⊗kk′が被約.
(iv) Kの代数閉拡大体Ωとk上線形独立な元a1, . . . ,an∈Kが勝手に与えられた
とき,Ωのk-自己同型σ1, . . . , σnでdet(
σi(aj))
i,j,0を満たすものが選べる.
(v) K-ベクトル空間Vと導分d : k→V (Vはk→Kを通しk-ベクトル空間と見 なす)が勝手に与えられたとき,dがある導分D : k→Vに延長できる.
k→Kが代数拡大の場合,(i)–(v)は次と同値.
(vi) 各元a∈Kがk上分離的(すなわちaのk上最小多項式が,kのある/勝手な
代数閉拡大体において,重根をもたない).
k→Kが有限生成の場合,(i)–(v)は次と同値.
(vii) k→Kの超越基底(t1, . . . ,tn)が存在してk(t1, . . . ,tn)→Kが有限分離拡大に なる.
命題94 (原始元定理) 有限分離拡大は一元で生成される.
k→Kを体拡大とする.集合
kalg:={a∈K : aはk上代数的}
ksep:={a∈K : aはk上分離かつ代数的}
はいずれもKの部分体.それぞれ, kのKにおける代数閉包,分離閉包と呼ぶ.kが Kにおいて代数閉,分離閉であるとは,それぞれk=kalg, k=ksepが成り立つ場合に いう.
44
定義95 代数体拡大k→Kが
(1) 非分離(的) (inseparable): 分離的でない.
(2) 純非分離(的) (purely inseparable): kがKにおいて分離閉.
(3) 正規(normal): 代数閉なる拡大体k→Ωとk-代数射σ: K→Ωが勝手に与 えられたとき,σ(K)⊂K (すると必然的にσ(K)=K)が成り立つ.
(4) Galois: 正規かつ分離.
k→Kを代数体拡大とする.ksep→Kは純非分離になる.
(16.1) [K : k]sep=[ksep: k], [K : k]insep=[K : ksep]
とおき,それぞれk→ Kの分離次数(separability degree),非分離次数(inseparability degree)と呼ぶ.
注意96 k→Kを代数体拡大とする.
(1) 定義から直ちに
[K : k]=[K : k]sep[K : k]insep.
(2) Ωをkの代数閉拡大体とする.[K : k]sepが有限であるためには,k-埋入K→Ω からなる集合Homk-alg(K,Ω)が有限であることが必要十分であって,その場合
[K : k]sep=# Homk-alg(K,Ω).
(3) K→Lを第2の代数拡大とするとき,(1), (2)から
[L : k]sep=[L : K]sep[K : k]sep, [L : k]insep=[L : K]insep[K : k]insep.
補題97 2つの体拡大k→K, k→Lに対し
dim(K⊗kL)=min{trdegkK, trdegkL}.
(trdegkK, trdegkLがともに無限濃度の場合,dim(K⊗kL)=∞を意味する.)
証明 trdegkK ≤ trdegkL としてよい.T = (Ti)i∈I を K のk上超越基底とすると,
k(T )⊗kL⊂K⊗kLは整拡大ゆえ同一次元(定理54 (3)).よってK=k(T )としてよい.
するとK⊗kLはL[T ]の局所化.∴trdegkK=#I<∞ならばdim(K⊗kL)≤#I.
冒頭の不等号からk-埋入K→Lが,従ってL-代数全射φ: K⊗kL→Lが存在.その 核m⊂K⊗kLは極大イデアル.m∩L[T ]はTi−φ(Ti), i∈Iで生成されるから
dim(K⊗kL)≥ht(m)=ht(m∩L[T ])≥#I (Iが無限の場合#I :=∞)
Iが無限の場合これから,有限の場合には前段の結果と合わせて,補題が従う.
命題98 体拡大k→Kに対し次が互いに同値になる.
(i) kがKにおいて分離閉.
(ii) 各体拡大k→ Lに対しK⊗kLがただ1つの極小素イデアルをもつ(同値に, ベキ零根基
√0が素イデアル).
(iii) 各有限分離体拡大k→Lに対しK⊗kLがただ1つの極小素イデアルをもつ.
(iv) ある分離閉なる拡大体k→Ωに対しK⊗kΩがただ1つの極小素イデアルを もつ.
証明 一般に,2つの閉真部分集合の和で表せないような位相空間を 既約 とい う.
環 A に 対 し ,Spec(A) の 既 約 閉 集 合 は 一 意 に 決 ま る p ∈ Spec(A) を 以 てV(p) = {pを含む素イデアル}で与えられる.従って,Aがただ1つの極小素イデアルをもつ
⇔ Spec(A)が既約.この場合にAが既約と言おう.既約な位相空間の連続写像によ
うる像は既約ゆえ次が成り立つ.
(事実) 環の射A→Bに付随するSpec(B)→Spec(A)が全射(例えばA→ Bが忠実 平坦)の場合,Bが既約ならばAもそう.
45
(ii)⇒(iv). 自明. (iv)⇒(iii). 各有限分離体拡大k→Lは勝手なΩにk-埋入できる (命題91あと)から,上の(事実)より従う. (iii)⇒(i). (i)が成り立たない,すなわ ちk→Kが非自明な有限分離部分拡大k→Lを含むとすると,L⊗kLは非自明なベ キ等元を含む.同値にSpec(A)は非連結.とくにAは可約になり,(事実)より(iii)が 成り立たない.
(i)⇒(ii). kの拡大体Lを有限生成部分拡大体の有向和集合L=∪
αLαとして表すと,
K⊗kL (=∪
αK⊗kLα)のベキ零根基
√0はK⊗kLαのそれらの和集合.従って,(i)か ら(ii)を示すのにLをk上有限生成としてよい.k→Lが純超越拡大であればK⊗kL はL上多項式環の局所化ゆえUFD.このK⊗kLにおいて,L上分離かつ代数的な元 はL (=k⊗kL)の元に限ることに注意しよう37.
k→Lが分離拡大の場合, K⊗kLは整域である.実際L=ℓ[T ]/(p(T )).ここにk→ℓ は有限生成純超越拡大,p(T )はℓ上分離的モニック既約多項式.前段で見たように R=K⊗kℓはUFD.R[T ]においてp(T )を割るモニック既約多項式q(T )を勝手に選 ぶ.q(T )の最高次よりほかの係数は,p(T )の(Frac(R)を含む体における)根の積和 ゆえℓ上分離かつ代数的.前段の注意からq(T )∈ℓ[T ].従ってq(T )はℓ上既約とな り p(T )に一致.こうしてp(T )はR[T ]の素元.K⊗kL=R[T ]/(p(T ))は整域.
一般の場合.char(k) = p > 0 としてよい.ある有限生成分離拡大 k → ℓ を以て,
L=ℓ[T1]/(T1pe1−a1)⊗ℓ· · · ⊗ℓℓ[Tr]/(Trper−ar), ei≥0の形.前段の結果からR=K⊗kℓ は整域.rに関する帰納法により,既約なℓ-代数Rと純非分離単拡大ℓ→ℓ[T ]/(Tpe−a) とのテンソル積S =R[T ]/(Tpe −a)がまた既約であることを示せばよい.RをR/√
0 に替えて整域としてよい.θ=T mod(Tpe−a)のFrac(R)上の最小多項式はTpd−apd−e, 0≤d ≤eの形だが,上と同じ(事実)からapd−e ∈R.R[T ]/(Tpd−apd−e)は整域となる が,これはS/√
0に一致する.
系99 体拡大k→Kに対し次が互いに同値になる.
(i) k→Kが純非分離(とくに代数的).
(ii) 各体拡大k→Lに対しk-埋入K→Lは高々1つしか存在しない.
(iii) 各体拡大k→Lに対しK⊗kLはただ1つの素イデアルをもつ.
証明 (i)⇒(iii). 補題97よりdim(K⊗kL)=0.(i)のもと,命題98よりK⊗kLは ただ1つの極小素イデアルをもつから(iii)が従う.
(iii)⇒(ii). Homk-alg(K,L)=HomL-alg(K⊗kL,L)⊂Spec(K⊗kL)より(最後の包含は L-代数射φにその核Ker(φ)を対応させる).
(ii)⇒(i). (ii)においてLとしてkの代数閉包を選べ.
References
[Atiyah–MacDonald] M. F. Atiyah, I. G. MacDonald, Introduction to commutative algebra, Addison-Wesley, 1969.
[Bourbaki] N. Bourbaki, Commutative algebra, Herman, 1972.
[松村] 松村英之「可換環論」共立出版, 1980.
[Waterhouse] W. C. Waterhouse, Introduction to affine group schemes, Springer, Graduate Texts in Mathematics Vol. 66, 1979.
37
一般に,体k上の有限生成代数Rにおいて,有限次元分離部分代数(kの有限分離拡大 体の有限直積と同型であるような部分代数)のうち最大のものπ0(R)が存在し,これは係数 体の拡大k→Lで保たれる[Waterhouse, Section 6.5].いまの場合,L上分離かつ代数的な元 x=∑
iai⊗bi∈K⊗kLに対し, R⊂Kをaiたちが生成する部分代数とすれば,x∈π0(R⊗kL)= π0(R)⊗kL=L.
46
演習題
頭の番号で関連する節(例えば演習題7.1, 7.2は第7節)を表す.
断りがなければAは(可換)環を表す.
1.1 k[T ]を体k上の1変数多項式環とする.元 f ∈k[T ]−kに対し,次が互いに同 値であることを示せ.
(i) fがkの代数閉包において重根をもたない.
(ii) k[T ]/( f )がk-代数として,有限個のk上有限次分離拡大体の直積に同型.
(iii) 勝手な体拡大k→Lに対しL[T ]/( f )が被約.
1.2 A, Bを体k上の局所代数とするとき次を示せ.
(1) k→B/mBが代数拡大であれば,k-代数射A→Bは必ず局所的である.
(2) Bが有限生成k-代数の極大イデアルにおける局所化であれば,k-代数射A→B
は必ず局所的である.
(3) 一般にk-代数射A→Bが局所的とは限らない(例証せよ).
4.1 Pを加群に関する,次のいずれかの性質とする.有限生成,有限表示をもつ,平 坦,忠実平坦,有限生成射影的.忠実平坦射A→Bによる係数拡大が性質Pを反射 (reflect)すること,すなわちA-加群Mに対しB-加群B⊗AMが性質Pをもてば,M 自身も同じ性質をもつことを示せ.
5.1 A-加群Mの台(support)を
Supp(M)={p∈Spec A : Mp ,0}
により定義する(命題57 (4)). M, Nを有限生成A-加群とするとき Supp(M⊗AN)=Supp(M)∩Supp(N) を示せ.
6.1 X :=Spec AをZariski位相をもつ位相空間(脚注17)と見て,次を示せ.
(1) 有限生成A-加群Mの台Supp(M)は閉集合.実際Supp(M)=V(Ann(M)). A-加群Mが有限生成でなくてもSupp(M)⊂V(Ann(M))が成り立つ.
(2) 有限生成射影的A-加群Mに対し,p7→ rkAp(Mp) (=dimκ(p)(κ(p)⊗A M))が与 える写像X→N={0,1,2, . . .}(離散位相空間)は連続である.
(3) 有限生成射影的A-加群Mが与えられたとき,Xの各連結成分Xα の基本開 集合による有限被覆Xα =∪rα
i=1D( fi)をうまく選んで,各1 ≤i≤rαに対し MfiがAfi 上自由であるようにできる.
X=Spec AのZariski位相とは,すべての
V(a)={p∈X :p⊃a}, a⊂Aイデアル を閉集合とするもの.等しく,すべての
D( f )={p∈X : f <p}, f ∈A を開集合基とするものである.
7.1 素数pに対し,Zの素イデアル(p)における局所化をZ(p)とする.QのZ(p)に よる剰余Z-加群Q/Z(p)において,各非負整数nに対しp−n modZ(p)の生成する部分 Z-加群をGnとかく.次を示せ.
(1) GnがQ/Z(p)の真部分加群のすべてを与え,0=G0(G1(G2(. . . . (2) Z-加群Q/Z(p)はArtinであるがNoetherでない.
47
7.2 脚注10にある準素分解に関する事実の証明を与えよ.
7.3 次を示せ.代数閉体k上の有限次元代数A,0は,
k[T1, . . . ,Tr]/(T1n1, . . . ,Trnr), ni>0, r≥0 の形をしたk-代数の有限直積に同型である.
8.1 N={0,1,2, . . .}を添え字集合にもつA-加群の射影系の短完全列 0→ {Ln}−→ {{fn} Mn}−→ {{gn} Nn} →0
(すなわち各0→Ln fn
−→Mn gn
−→Nn →0がA-加群の短完全列で,{fn},{gn}がともに 射影系をなす射と両立する)が与えられたとき,次を示せ.
(1) 0→lim
←−Ln lim←−fn
−→lim
←− Mn lim←−gn
−→ lim
←−Nnは完全.
(2) 射影系
({Ln}n, {unm}m≤n)
がMittag-Leffler条件を満たす,すなわち∀n∃n0 ≥ n : Im(unn0+k)がk≥0によらず一定(例えばun+1n がすべて全射であれば,こ れは満たされる)とすると,lim
←−gn: lim
←− Mn→lim
←−Nnは全射.
(3) 一般には(2)の結論は成り立たない(例証せよ).
8.2 系41からとくに,局所Noether環Aにおいて
∩
n≥0
mnA=0.
これから次を導け.
(1) Noether環Aにおいて
∩
m極大イデアル
∩
n≥0
mn=0.
(2) Noether整域Aにおいて勝手な真のイデアルb(Aに対し
∩
n≥0
bn=0.
注意 これら一連の等式はKrull交叉定理と呼ばれる.
8.3 kを実数体Rまたは複素数体Cとするとき次を示せ.1変数形式ベキ級数環 k[[T ]]において,正の収束半径をもつもの全体k{T}は部分局所環をなし,その(極 大イデアルによる)完備化はk[[T ]]に一致する.
またこれを多変数の場合に一般化せよ.
9.1 Aを局所Noether環,(a1, . . . ,ar)をA-正則列(定義58)とする.Aが体kを部 分体として含むとき,a1, . . . ,arはk-上代数的独立であって,Aはk[a1, . . . ,ar]上平坦 である.下を順に示してこれを導け.
(1) φ(Ti)=ai(1≤i≤r)が与えるk-代数射φ: k[T1, . . . ,Tr]→Aが平坦であるこ とさえ示せば,その単射性が従い,残りの代数的独立性を得る.
(2) その平坦性を示すには,定理48を環k[T ]=k[T1, . . . ,Tr]とイデアル(T1, . . . ,Tr), k[T ]-加群Aに適用することにより
Tork[T ]1 (k,A)=0
さえ示せばよい(定理の証明にある条件(iii)′を用いる).
48
(3) 上記Torを計算するために,kのk[T ]-自由分解として,k[T ]/(Ti)のk[T ]-自 由分解
· · · →0→0→k[T ]−→Ti k[T ]→k[T ]/(Ti)→0
を 1 ≤ i ≤ r に わ たってk[T ] 上 テ ン ソ ル し た も の( 境 界 作 用 素 の 符 号 を 適 宜 変 え る )が 選 べ る .こ れ を F• → k → 0 と か く と ,A⊗k[T ] を 施 し た A⊗k[T ]F•→A/(a1, . . . ,ar)→0は完全となり,従って
Tork[T ]n (k,A)=
A/(a1, . . . ,ar) n=0,
0 n>0.
注意 A⊗k[T ]F•はKoszul複体と呼ばれる.
10.1 Aを整域,K=Frac(A)をその商体とするとき次を示せ.
(1) Aが整閉整域の場合,Kを含む代数拡大体の元bがA上整であれば,bのK
上最小多項式はすべての係数をAにもち,B=A[b]はAの整拡大でA-加群 として有限生成自由,Frac(B)=K⊗ABとなる.
(2) Aが整閉整域でない場合,上が成り立つとは限らない.
10.2 AをUFDとする.B=A[√f]
はAを含む整域であって,square-freeな(=ど んな素元の2乗でも割れない)Aの元f の2乗根
√f でA上生成されているとする.
次を示せ.
(1) 2∈A×であればBは整閉整域になる.
(2) Aが体k上の多項式環k[T1, . . . ,Tn]の場合,char(k),2であればBは整閉整 域になる.char(k)=2の場合,f が仮定「すべてのTiに関し偶数次であるよ うな単項式を含まない」を満たせば,同じ結論が成り立つ.
10.3 Aを整閉整域,Lを商体K =Frac(A)の正規拡大体,BをAのLにおける整 閉包とする.G = Aut(L/K)を LのK-自己同型群とする.Gの Lへの作用はBの
(A-代数)自己同型に制限されるから,Spec(B)上の置換を引き起こす.Spec(B)/Gに
よりSpec(B)におけるG-軌道全体の集合を表すとき,包含φ: A ֒→ Bに付随する
aφ: Spec(B)→Spec(A)が全単射
Spec(B)/G−→≃ Spec(A) を引き起こすことを示せ.
10.4 kを体とする.次を示せ.
(1) A,0を有限生成k-代数とし,定理56 (Noether正規化定理)にいうk-代数単 射φ: k[T1, . . . ,Td]→Aを包含と見る.AのT1, . . . ,Tdが生成するイデアル による剰余環A/(T1, . . . ,Td)は,非零有限次元k-代数である.これより,A の極大イデアルmで有限余次元なる(A/mがk上有限次元である)ものが 少なくとも1つ存在する.
(2) (Hilbert零点定理)有限生成k-代数A,0の極大イデアルはすべて有限余次
元である.またAのJacobson根基r(A)とベキ零根基
√0は一致する.
(3) kが代数閉体であれば,多項式環k[T1, . . . ,Td]の極大イデアルは (T1−a1, . . . ,Td−ad), (ai)∈kd
の形に1通りに表される.こうして全単射
kd −→ {≃ k[T1, . . . ,Td]の極大イデアル} が得られる.
49
12.1 Noether環A,0上の1変数多項式環A[T ]について dim A[T ]=dim A+1
が成り立つ(dim A=∞の場合dim A[T ] =∞と了解する)ことを,次を順に示して 導け.
(1) 包含φ: A→A[T ]は忠実平坦ゆえ,付随するaφ: Spec B→Spec Aは全射 である.これより,勝手なp∈Spec Aと,その上にある素イデアルのうち極 大なq∈Spec Bに対し
htq=htp+1 を示せばよい.
(2) 命題65を平坦射Ap→Bqに適用して,上の等式は ht(q/pB)=1
に同値である.
(3) qBp/pBpは体k=Ap/pAp上の1変数多項式環k[T ]の0と異なる素イデアル であり,これより(2)の等式が従う.
12.2 kを体とするとき次を示せ.
(1) 多項式環k[T1, . . . ,Td]の次元はdに等しく,従って素イデアル鎖(0)⊂(T1)⊂
(T1,T2)⊂ · · · ⊂(T1, . . . ,Td)は最長である.
(2) k上の有限生成代数Aが既約(命題98証明; √
0が素イデアル)であれば,す べての極大イデアルmに対し高さht(m)は一定でdim Aに等しい.
12.3 体k上の3変数形式ベキ級数環k[[T1,T2,T3]]のイデアルa=(T1)∩(T2,T3)に よる剰余環をA=k[[T1,T2,T3]]/aとし,TiのAにおける自然な像をtiとかく.この とき次を示せ.
(1) Aは2次元局所Noether環で,極小素イデアルは(t1)と(t2,t3)から成る.
(2) t2, t1+t3はAの巴系を成すが,t2は極小素イデアルに含まれるからht(t2)=0. とくに(t2, t1+t3)は定昇列(補題61 c)ではない.
13.1 命題66 (iii)⇒(i)の証明を与えよ.
13.2 (1)有理数体Qの付値環とその完備化をすべて求めよ.
(2)実数体R上の1変数有理関数体R(T )の付値環のうち,R[T ]を含むものすべてを 求めよ.またそれらの完備化を同型によって分類せよ.
13.3 命題69 (1)の証明を与えよ.
13.4 命題69 (3)の証明に引用した,次の事実を証明せよ.有限次体拡大L/KとL
の付値vに対し,付値群の指数(分岐指数)e(L/K) =[v(L×) : v(K×)] は拡大次数 [L : K]を超えない.
14.1 命題70 (1)の証明にある(事実)を証明せよ.
14.2 命題73 (iii)⇒(ii)の証明にある(事実)を証明せよ.
14.3 体k上の既約な(演習題12.2)有限生成代数が A=k[T1, . . . ,Tn]/( f1, . . . ,fr), r>0
の形に表されているとする.点 a = (a1, . . . ,an) ∈ kn がすべての1 ≤ i ≤ r に対し fi(a)=0を満たすとする.すると
m:=ma =(T1−a1, . . . ,Tn−an)/( f1, . . . ,fr) がAの極大イデアルになる.次が互いに同値であることを示せ.
(i) 局所化Amが正則局所環である;
50