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樹冠各層における面積あたりの窒素含量の季節変化

第4節 樹冠内における窒素分布の季節変化

2. 樹冠各層における面積あたりの窒素含量の季節変化

刈-2・4・2に, 積算葉面積指数と面積あたりの窒素含量との関係、を樹冠各層の

、11均値で示した. 面積あたりの窒素含量は6月から9月にかけて増大し, 9月 から4月にかけて減少した. 季節による変動は樹冠上層ほど大きく, 最も深い 第5層ではほとんど変化しなかった.

4. 考察

1

.

窒素含量の季節変化

面積あたりの窒素含量は6月から9月にかけて増加し,12月から翌年の4月 にかけて減少した(図-2・4.1a)

.

葉の成熟後,葉面積は一定の値を示すことから,

面積あたりの窒素含量は葉に含 まれる窒素 の量的な変化を反映してい る

(Sanchez and Righetti, 1990). したがって, 葉の窒素量は成長期に増大し,

成長休止期には減少するといえる. 成長休止期に窒素が減少する原因として,

葉以外の器官への転流が考えられ, 樹冠上層の葉ほど窒素含量の低下が大きか った(図-2・4・2)ことから, 窒素の非同化器官への転流量は上層葉ほど多いとい

える.

落葉樹の場合, 乾重あたりの窒素含量は開葉後成熟するにつれて急激に低下 し,しばらく一定の値を保って,その後徐々に低下する(Tamm,1951 ;辰巳,1962 ;

Wells, 1965;後藤, 1977; Kudo, 1995). しかし, 本研究で見られた乾重あた りの窒素含量の季節変化はこれとは異なり, 6月から9月にかけて増加し, 9 月から4月にかけて低下した(図-2・4.1

b)

.成長期に乾重あたりの窒素含量が増 加するのは, 葉の窒素量の増大が乾重増加量を相対的に上回るためであるが,

脇(1972)や後藤(1977)らの報告にもスギの乾重あたりの窒素含量が本研究と同 じ季節変化をすることが示されている.

葉重比は月を経るにつれて増大したが, 成長期の増大は小さく, 成長休止期 に大きく増大した(図-2・4. 1c) . これと同じ季節変化は,スギの葉の見かけの比 重について調べた松本ら(1992)と丸山ら(1996)によっても報告されている. 葉 重 比 は 葉齢 に よっ て異な り , 齢 の 古 い葉ほ ど 大 き くな る (van Hees and Bartelink, 1993; Gilmore et a1, 1995)が, Gilmore et a1.はその原因として,

齢の古い葉ほどて次師部が発達することを挙げている. 1年生以上の葉におい

て二次師部が成長することは,スギ(Elliot, 1937)を含む多くの裸子植物(Ewers,

1982 ; Ewers and Aloni, 1987; Stover, 1944)で観察されている. このことか ら, 成長休止期に葉重比が大きく増大した原因として, 二次師部の成長が考え られる.

2. 窒素分布の季節変化

Field(1983)は, Mooney and Gulmon (1979)の費用-便益仮説に基づき,

樹元三

全体の光合成量は, 窒素が樹冠の成長過程で光強度の低い下層葉から光強度の 高い 上層葉へ転流されることによって高められる可能性を示した. これ を受け て, Dejong and Doyle(1985)はモモ(Prunus persica)樹冠における窒素分布を

4月から9月にかけて調べ, 光強度と窒素含量との一次回帰式の傾きが樹冠が 発達す る にした がって大 き くなる こ と を 示 し た. 彼ら は , こ の結果は

Field (1983)の考え と一致すると述べ, Mooney and Gulmon (1979)の費用-便益 仮説を支 持し

た. このように, 落葉樹(Fie

ld, 1983; Field and Mooney, 1983;

Dejong and Doyle, 1985), あるい は草本(Mooneyθt al, 1981; Hirose and Werger,

1987b; Hirose θt al., 1988; Werger and Hirose, 1988)では窒素が下層葉か ら上層葉に転流されることによって樹冠全体の光合成量は高められると考えら

れている.

し かし ながら, 本研究では, 成長期の面積あたりの窒素含量は樹冠の上層葉 ほど大きく増加したが, 第5層における低下は見られず, ほとんど変化がなか った(図-2・4・2). このことから, スギでは樹冠下層においても窒素は上層葉に 転流せず, 新葉期の窒素を1年間は保持するといえる. したがって, スギでは に根から吸収された窒素が樹冠上層の葉に多く分配されることによって樹冠 全体の光合成量を高めていると考えられる.

1994 1993

8

-0.2

-0.4

-0.6 0 6

4

40

(伺) (』)ωao一ω

-0.1

-0.2 30

20

vaωυ」ω】C一

-0.3 0

-0.1

-0.2

-0.3 10

600

300 500

400

-0.4 200

o N

図-2-4-1. 面積あたりの窒素含量(a)と乾重あたりの窒素含量(b) および葉重比(c)における係数aとbの季節変化

S A M J J F M A Month

J N 0 S 0 A J A M J

それぞれ( 1 )式の係数aとbを表す.

黒丸と黒四角は,

表-2・4・1

.

共分散分析

結果

Source of variation df SS MS pi

a ) Narea on cumulative LAI

Among b' s (slopes) 7 0.0749 0.0107 0.981 ns Within regressions 97 1. 0573 0.0109

Among a' s (adjusted means) 7 3.4620 0.4946 45. 43 *牢*

Error 104 1. 1322 0.0109

b ) Nweight on cumulative LAI

Among b' s (slopes) 7 O. 1192 0.0170 2.89 *牢 Within regressions 97 O. 5 708 O. 0059

Among a' s (adjusted means) not relevant

c ) LMA on cumulative LAI

Among b' s (slopes) 7 O. 1468 0.0210 2. 50 * Within regressions 97 0.8148 0.0084

Among a' s (adjusted means) not relevant

ns, not significant; *, P< 0.05; **, P< 0.01 ; ***, P<O.OO1.

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