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横風流速変化時の各方向のアーク内の対流熱輸送

第 3 章 アーク溶接における金属蒸気の混入現象とアーク姿態の偏向現象の解析 70

3.5 横風流速変化時の各方向のアーク内の対流熱輸送

本節以降では,3.2.2項で述べた横風下のアークの流速と対流熱輸送との相関を解明するモ デルの検証を行う。図53に,横風流速変化時の線分L = 5 mmのアーク偏向距離を示す(94)vL= 2 m/sまでの範囲では,アーク偏向距離は緩やかに増加し,vL= 2 m/sを超えた範囲から アーク偏向距離は急峻に増加した。2.4節で定義した線分Lとアーク偏向距離ydを用いたアー ク偏向時の軸方向位置は,vL= 0―2.5 m/sにおいて陰極下5.0 mm,vL= 3 m/sにおいて陰極下 4.8 mm,vL= 3.5 m/sにおいて陰極下4.6 mm,vL= 4 m/sにおいて陰極下4.2 mmとなった。図 54に,横風流速変化時のアーク軸中心部の径方向と軸方向の流速を示す(94)vL= 2 m/sまで の範囲では,軸方向流速の変化量が小さかった。これに対して,vL= 2 m/sを超えた範囲から 横風流速の増加に伴い,軸方向流速は低下し,径方向流速が増加した。

次に,横風流速変化時の入熱量の結果を示す。図55 に,横風流速変化時の電子凝縮熱成分 と熱伝導成分の入熱量,放射パワー,対流熱損失を示す(94)。ここで,ηはアークから陽極へ 与える入熱効率,Pinは入力電力,Pradは放射パワーを示す。また,Pin(Pele+Pheat+Prad) は対流による熱損失と定義した。横風流速を増加させても,電子凝縮熱成分の入熱量は一定と なった。これは,横風によりアーク姿態が変化しても陽極に流れる電流の総量が変化しないた めである。これに対して,vL= 2 m/sを超えた範囲から横風流速の増加に伴い,放射パワーは 増加し,熱伝導成分の入熱量は低下した。これは,横風流速の増加によってアーク長が増加し,

アークの温度体積が増加するためである。更に,径方向の対流熱輸送が増大し,陽極への入熱 とならずに径方向側にエネルギーが逃げるためである。結果として,横風流速の増加に伴い対 流による熱損失が増加した。vL= 4 m/sにおける陽極への電子凝縮熱と熱伝導成分の入熱量の 総和は,702 Wであり,vL= 0 m/sでは810 Wであった。更に,vL= 4 m/sにおける入力電力 は1350 Wであり,vL= 0 m/sでは1130 Wであった。これは,アーク偏向距離の増加に伴い,

アーク長が伸びるためである。vL= 4 m/sの場合には,横風が及ぼすアーク偏向によって入力 電力の増加と入熱量の低下により入熱効率は52%となり,vL= 0 m/sと比べて低下した。また,

横風流速の増加に対する入熱効率は,アーク偏向距離が短い場合には緩やかに低下し,アーク 偏向距離の増加に伴い,急峻に低下する傾向となった。この入熱効率の低下傾向は,他者の傾 向と同様であった(22)

図56に,横風流速変化時の径方向と軸方向のアーク領域のエンタルピーフローの総入熱量を 示す(94)。ここで,ρvyhρvzhは各コントロールボリュームの径方向と軸方向のエンタルピーフ ロー,sxzsxyは各コントロールボリュームの径方向に垂直な断面積と軸方向に垂直な断面積を 示す。軸方向のアーク領域のエンタルピーフローの総入熱量は,各コントロールボリュームの軸

方向のエンタルピーフローρvzhと垂直な断面積sxyの積を計算し,アーク領域で総和を求める ことで算出を行った。なお,入力電流100 Aの99%が流れている領域をアーク領域の導電面積 として定義した。径方向のアーク領域のエンタルピーフローの総入熱量は,各コントロールボ リュームの径方向のエンタルピーフローρvyhと垂直な断面積sxzの積を計算し,算出したアー ク偏向時の軸方向位置から下のアーク領域で総和をとることで算出を行った。vL= 2 m/s以下 では,軸方向のエンタルピーフローの総入熱量の変化量は小さかった。これに対し,vL= 2 m/s を超えた範囲から横風流速の増加に伴い,軸方向のエンタルピーフローの総入熱量は低下し,

径方向のエンタルピーフローの総入熱量は増加した。以上より,vL= 2 m/sを超えた範囲から 横風流速の増加に伴い,軸方向流速は低下し径方向流速は増加した。更に,軸方向のエンタル ピーフローの総入熱量は低下し,径方向のエンタルピーフローの総入熱量は増加することが明 らかとなった。

図57に,横風流速変化時の陰極直下0.5 mmの軸方向圧力勾配とアーク外周部の単位長さ当 たりの対流によって生じる力の平均を示す(94)。ここで,アーク外周部の単位長さ当たりの対流 によって生じる力の平均は,運動量保存則のy方向の移流項で示される対流によって生じる力 ρv2y[Pa]をアーク領域の軸方向のグリッドz=0.2 mmで割り,アーク領域外周部において,平 均を求めることで算出した。vL= 2 m/sまでの範囲では,陰極近傍の軸方向圧力勾配は変化し なかった。vL= 2 m/sを超えた範囲から横風流速の増加に伴い,陰極近傍の軸方向圧力勾配は 低下し,アーク外周部の単位長さ当たりの対流によって生じる力の平均は増加した。

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Arc deflection length at L = 5 mm yd [mm]

0 1.0 2.0 3.0

Lateral gas flow velocity vL [m/s]

0 1.0 2.0 3.0

4.0

図 53 横風流速変化時の線分L = 5 mmのアーク偏向距離(94) Fig.53 Arc deflection length at L= 5 mm with lateral gas flow velocity(94).

Flow velocity to radial direction and axial direction at arc axial center vy, vz [m/s]

0 1.0 2.0 3.0

Lateral gas flow velocity vL [m/s]

0 10 20 30 40

4.0 vz

vy

図 54 横風流速変化時のアーク軸中心部の径方向と軸方向の流速(94)

Fig.54 Flow velocity to radial direction and axial direction at arc axial center with lateral gas flow velocity(94).

0 1.0 3.0 4.0

Lateral gas flow velocity v

L

[m/s]

2.0 P

ele

, P

heat

, P

rad

, P

in

- ( P

ele

+ P

heat

+ P

rad

) [W]

0.6 0.4 0.2 0 0.8 1.0

×10

3

1.2 1.4

η = 52 %

Pele Pheat

Pin - (Pele +Pheat+Prad)

Prad

72 % 65 % 72 % 72 %

図 55 横風流速変化時の電子凝縮熱成分と熱伝導成分の入熱量,放射パワー,対流熱損失(94) Fig.55 Heat transfer of electron inflow and heat conduction, radiaiton power, and convective heat

loss with lateral gas flow velocity(94).

88

Σ(ρvzh × sxy )

0 1.0 2.0 3.0

Lateral gas flow velocity vL [m/s]

4.0

×102

1.0

Total heat transfer derived from enthalpy flow of arc to radial and axial direcion Σ( ρvyh × sxz ), Σ( ρvzh × sxy ) [W]

2.0

0 3.0 4.0 5.0

Σ(ρvyh × sxz )

図 56 横風流速変化時の径方向と軸方向のアーク領域のエンタルピーフローの総入熱量(94) Fig.56 Total heat transfer to radial or axial direction derived from enthalpy flow of arc with

lateral gas flow velocity(94).

×104

0 1.0 2.0 3.0

Lateral gas flow velocity vL [m/s]

0 2.0 3.0 4.0 5.0

4.0

×104

0 2.0 3.0 4.0 5.0

Axial pressure gradient at arc center at 0.5 mm below cathode [N/m3] Pr z

1.0 1.0

∂Pr

∂z

Mean convective force in arc periphery part per unit length [N/m3] ρvy2 z ρvy2

∂z

図 57 横風流速変化時の陰極直下0.5 mmの軸方向圧力勾配とアーク外周部の単位長さ当たり の対流によって生じる力の平均(94)

Fig.57 Axial pressure gradient at 0.5 mm below cathode and mean convective force in arc periphery part per unit length with lateral gas flow velocity(94).

3.6 陰極近傍の軸方向圧力勾配が及ぼすアークの軸方向対流熱