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業界団体との連携による学校内実習の実施

6. 事例集

6.1 業界団体との連携による学校内実習の実施

6.1.1

学校基礎情報

学校名、学科名 札幌工科専門学校 造園緑地科 分野(認定年度) 工業分野(平成

26

年度認定)

学校規模 生徒数:98人 (平成

28

5

1

日現在) 学科数:4学科 所在地 北海道札幌市

6.1.2

特徴的な取組内容

札幌工科専門学校造園緑地科は、林学、造園学、園芸学の

3

分野を学ぶ学科で、少人数 制教育により、多くの資格取得と企業等との連携による技術習得を両立させ、専門分野への 就職を実現している。教育課程編成委員会に基づく教育課程編成の改善、就職先分野を検討 するためのインターンシップの実施、業界団体との連携による学校内実習の継続的な実施等 を通じて、実践的教育を実現している。

(1) 教育課程編成委員会の運営上の工夫

教育課程編成委員会は、技術顧問

2

名(元大学教員)、関連企業の方、卒業生の就職先企 業の方を委員として構成し、年

2

回開催している。

札幌工科専門学校では教育課程編成委員会に先立ち、教員・生徒を対象としてアンケート を実施し、その結果を踏まえて授業内容や就職指導の改善案を提案する。なお、同アンケー トの結果は、学校関係者評価委員会にも活用している。学校関係者評価委員会、教育課程編 成委員会ともに議論の対象は多岐にわたることから、学校関係者評価委員会において現状を 評価し、教育課程編成委員会において改善方策を検討するなど、会議体ごとに役割を明確化 している。なお、一部重複する委員もいるため、学校関係者評価委員会と教育課程編成委員 会は同日に開催している。

教育課程編成委員会の運営にあたっては、事前に委員への資料配付、会議前の委員への個 別説明と相談を行った上で、事前の相談結果を踏まえて当日の議題を設定する。会議時間中 の資料説明の時間を排することにより、改善策に特化した議論を行う。なお、議事録はホー ムページで公開している。

教育課程編成委員会を踏まえた教育課程の改善として、基礎学力の向上と専門知識技術の 習得という学校の教育理念をより発揮できるよう教育課程を変更した。具体的には、企業で は造園の仕事だけでなく土木に関する業務を合わせて担うことが多いことを踏まえ、授業に 土木分野の内容を取り入れた。また、土木施工管理技士の資格が取得できるよう、国土交通 省の学科認定を受けた。なお、資格取得のため必須の科目が多いという学科の特性上、教育 課程の改善は学習時間を増やすことで対応していた。

(2) 協会との連携による学校内実習の実施

1)教員と業界団体による年間計画の検討

「造園実習」(2年間で

9

単位)のうち、年間

13

回程度を札幌造園協会から推薦を受けた 企業人講師(1回あたり

1

名)が担当して学校内実習を実施している。授業のシラバスは教 員が検討し、札幌造園協会と協議の上、年間計画を決定する。各年度の生徒の技能の習得状 況や進路希望を踏まえて、教員と札幌造園協会による打ち合わせで各回の指導事項やレベル を決定する。

授業の教育目標として、技術の習得に加え、一流の技術を体験することを通じて生徒が自 らの現在の技能を確認し、今後の学習意欲を高めること、仕事の厳しさを感じることが設定 されている。そのため、企業人講師が担う授業は技能検定のための実技指導に加え、企業人 講師の得意分野や個性を活かした当該分野の実技指導(例:樹木の剪定、冬囲い、芝生や石 の加工など)が組み込まれている。また、各回の授業内容に適した企業人講師を札幌造園協 会において推薦、派遣している。

図 6-1 造園技能士試験に向けた実習の様子 出所)札幌工科専門学校より提供)

2)企業人講師と教員との連携による授業実施

1

つの科目で企業人講師と教員が連携して授業を展開している。そのため、教員のみの実 習の際には基礎的な事項の指導をした上で、企業人講師による実習を行い、確実な技術習得 を図っている。また、企業人講師が担当する回においても、企業人講師は技術的な指導を中 心に担い、生徒指導や安全管理は教員が担当するなど、連携している。

企業人講師は授業態度、技術の習得状況などを評価、教員は提出物や参加態度、実習の達 成度などを評価し、総合して成績を決定する。

図 6-2 「造園実習」の様子 出所)札幌工科専門学校より提供

3)業界団体による講師選定、講師を対象とした会議・研修の実施

札幌造園協会では、「造園実習」への協力は社会貢献と講師を担うことを通じた人材育成 機会として位置づけられており、組織的な協力体制が築かれている。

派遣する企業人講師は

1

級技能検定合格者の会員の中から札幌造園協会が選定、派遣元 企業の承諾をとった上で学校に派遣する。

1

級技能検定取得後は技能向上機会が少なくなる ため、講師にとっては授業を担当することは自らの知識を整理する機会となる。

また、講師により教える内容に偏りが生じることがないよう、札幌造園協会では講師を対 象として年

1~2

回の水準会議を開催し、授業の年間計画を伝達するとともに、教える事項 について共通認識を持たせ、指導を統一している。また、札幌造園協会の事業として、

1

級 技能検定合格者を対象とした研修会を開催しており、講師となる人材の技能の維持・向上に 努めている。

6.1.3

取組の成果、効果

教育課程編成委員会における十分な議論の結果、国土地理院及び国土交通省の指定養成施 設で必修科目数が多く、教育課程編成の自由度が低い中で、業界の人材ニーズを踏まえたカ リキュラム改善を実現した。

また、業界団体と連携することにより、業界団体による講師の人選、講師を対象とした会 議の実施、継続的な協力関係の確保等が実施され、持続可能で質の高い学校内実習の実施体 制が構築されている。業界団体及び派遣元企業においても、企業人講師としての協力は能力 向上機会として認識されており、講師を務めた人材の指導力が向上している。

6.1.4

関係者の声

「造園実習」は業界団体との連携を深める中で、授業内容を改善してきました。生徒 にとっては、企業人講師の技術を体験する機会は貴重で、充実した実習となっていま す。(教員)

「造園実習」は先生と企業の方が分担して教えてくれるので、確実に力を付け、資格 を取得することができます。また、インターンシップでは、学校で学ぶ林学、造園学、

園芸学の

3

分野の中から、自分が進みたい道を考え、それを体験できる企業に行く ことで就職先を考える材料になりました。(在校生)

在学中は勉強が大変でしたが、現場で求められる資格が取得できたこと、インターン シップを通じて職人としての技術や志を学んだことは、今の仕事に活きています。(卒 業生)

「造園実習」では、事前に教員が基礎的な事項の指導をした上で、企業人講師による 実習を行えるので、短時間でも専門的な内容を指導できています。その結果として、

ほとんどの生徒は技能検定に高得点で合格しています。(連携企業)