第 4 章
Double Chooz 検出器のエネルギー応答 の研究
前述したようにDouble Chooz実験では、νeのエネルギースペクトルを精密に測定し、観測量と予 測量を比較することで混合角θ13を精度よく測定している。エネルギーを精密に測定するためには、
事象発生点に由来する検出器のエネルギー位置依存性、エネルギー分解能といった検出器のエネル ギー応答を正確に理解して、補正もしくは予測量の計算に使用されるシミュレーションに反映させな くてはいけない。本研究では、データとシミュレーションを用いて作成したエネルギー反応位置依存 性のマップ(エネルギー応答マップ)を作成し、データとシミュレーションのエネルギー応答の評価 を行った。それにより、前置検出器のシミュレーションがデータを再現しきれていないことがわかっ た。この課題を解決するために、数値計算を用いてシミュレーションのパラメータの調節を行った。
図4.1 宇宙線起源の核破砕中性子が検出器中の 水素に捕獲される事象
図4.2 逆ベータ崩壊によって発生した中性子が 水素に捕獲される事象
2つの検出器は同一構造をもつはずであるが、シミュレーション同士で比較しても後置検出器と前置 検出器でエネルギー反応位置依存性が異なっている。前置検出器と後置検出器のシミュレーションに おいて、検出器間で異なる値を用いるのは、次の2つである。一つは、PMTの設置位置と向きであ る。それらの幾何的な情報はPMT設置後に写真撮影によって測定され、検出器ごとに異なる値がシ ミュレーションに組み込まれている。もう一つはニュートリノターゲット層の光の減衰長である。前 置用と後置用のGdを含む液体シンチレータは同時期に作成された。しかしながら、保存状態が異 なったためにその値が前置と後置で異なる値を持つことが、分光光度計を用いたサンプル測定によっ て明らかとなった。そのため、測定結果に基づいた減衰長の調整(7.82 mから4.32 m)が施された。
しかしながら、依然として前置検出器では、データとシミュレーションが合っていない。シミュレー ションの第一段階に用いられたパラメータについては、4.3節に記述する。そのため、前置検出器の シミュレーションのパラメータの微調整が必要である。
前述したようにエネルギー応答マップでの違いは、ニュートリノターゲット層用の液体シンチレー タの減衰長の違いに起因することが液体シンチレータのサンプルを用いた減衰長測定によりわかって いる。ただし、この減衰長測定は測定誤差が1 m程度と大きいことがわかっている。ニュートリノ ターゲット層用の液体シンチレータの減衰長を、本研究で開発した位置依存性の数値計算との比較に よる第二段階の調整を行った。パラメータの調節の詳細は4.4節で述べる。
図4.3 後置検出器の実データによるエネルギー 応答マップ
図4.4 後置検出器のシミュレーションによるエ ネルギー応答マップ
[mm]
0 500 1000 1500 ρ
z [mm]
−1500
−1000
−500 0 500 1000 1500
0.96 0.98 1 1.02 1.04 1.06 1.08 1.1 1.12
0.96 0.98 1 1.02 1.04 1.06 1.08 1.1 1.12
図4.5 後置検出器のデータとシミュレーションのエネルギー応答マップの比
図4.6 前置検出器の実データによるエネルギー 応答マップ
図4.7 前置検出器のシミュレーションによるエ ネルギー応答マップ
[mm]
0 500 1000 1500 ρ
z [mm]
−1500
−1000
−500 0 500 1000 1500
0.92 0.93 0.94 0.95 0.96 0.97 0.98 0.99 1 1.01 1.02
0.92 0.93 0.94 0.95 0.96 0.97 0.98 0.99 1 1.01 1.02
図4.8 前置検出器のデータとシミュレーションのエネルギー応答マップの比