• 検索結果がありません。

バックグランド事象

ドキュメント内 平成 28 年度 修士論文 (ページ 44-48)

Double Chooz実験では、3.3節で述べたように遅延同時計測法によりニュートリノ事象候補を選

別し、大幅なバックグラウンド事象の削減を可能としている。また、宇宙線ミューオンを起源とする バックグラウンド事象も、外部ミューオン検出器や内部ミューオン検出器で同定できるものは、検出 後に不感時間を設けることで削減している。残る僅かなバックグラウンド事象は、それらの選別条件 や不感時間で落としきれないようなバックグラウンド事象であり、大きく2つに別けられる。一つ は、独立した事象が偶然選別条件を満たしてしまう場合に起こる偶発的バックグラウンド事象であ る。もう一つは、擬似先発信号と擬似後発信号が遅延同時計測法の時間相関を持つために選別条件を 満たしてしまうことで起こるバックグラウンド事象である。外部ミューオン検出器や内部ミューオン 検出器で検出できない、または不感時間を設けることで削減できない場合にニュートリノ事象候補と なってしまうため、バックグラウンド事象となってしまう。

 本章では、そういったバックグラウンド事象の詳細と見積もり手法について記述する。

3.4.1 偶発的なバックグラウンド

2つの物理的に相関のない独立した事象が遅延同時計測法の時間相関を満たしてしまい起こるバッ クグラウンド事象である。事象例は、PMTガラスに含まれる放射性同位体や周囲の岩盤からの環境 放射線から放出されるγ 線やβ線が擬似先発信号になる。また、宇宙線ミューオンが検出器内や周 辺の岩盤などで核破砕反応を起こし、中性子を生成する。この生成された中性子が検出器中のガドリ ニウム(または水素)に捕獲され放出されたγ 線が擬似後発信号となる。2つの信号の時間差が遅延 同時計測法の時間相関を持つために選別条件を満たしてしまい、ニュートリノ事象候補に選別されて しまう(図3.19)。

3.4.2 時間相関を持つバックグラウンド

疑似先発信号と疑似後発信号が遅延同時計測法の時間相関を持つために選別条件を満たしてしまう ことで起こるバックグラウンド事象である。主な事象は宇宙線ミューオン起源であるが、外部ミュー オン検出器や内部ミューオン検出器で検出できない、または1 msの不感時間を設けることでも削減 できない場合にニュートリノ事象候補となってしまうため、バックグラウンド事象となってしまう。

発生原因とともに事例を幾つかあげる。

3.19 偶発的なバックグラウンドの事象例。PMTガラスに含まれる放射性同位体から放出さ れるγ線が擬似先発信号となる。宇宙線ミューオンが検出器内や周辺の岩盤などで核破砕反応を 起こし、生成された中性子がGd捕獲され放出されたγ線が擬似後発信号となる。

核破砕生成物バックグラウンド

宇宙線ミューオンが液体シンチレータに含まれる12C原子核を核破砕することで発生する事象で ある。12C原子核を破砕することで、放射性同位体である9Li、8Heを生成する(図3.20)。

9Li、8He共にベータ崩壊し、中には中性子を放出するものもある。

µ+12C→µ+9Li + 3p (3.11)

9Li8Be + e+ n +νe (3.12)

µ+12C→µ+8He + 4p (3.13)

8He7Li + e+ n +νe (3.14)

この崩壊により生成されたβ線やγ 線が先発信号となり、中性子がGd(H)に捕獲され後発信号とな りニュートリノ信号候補となる。9Li、8Heはそれぞれ半減期が178 ms、119 msとミューオン事象 による不感時間1 msより長いため、取り除くことは難しい。

高速中性子バックグラウンド

宇宙線ミューオンが検出器周辺の岩盤で核破砕反応し、高速中性子が生成され、検出器内に侵入す る。高速中性子は検出器内の陽子を反跳させながらエネルギーを落とし、熱中性子になる。反跳陽子 が擬似先発信号、熱中性子がガドリニウム(または水素)に捕獲される事象を擬似後発信号とみなさ

3.20 核破砕生成物バックグラウンド

れ、ニュートリノ信号候補となる(図3.21)。宇宙線ミューオン自体は検出器内を通過していないた め、外部ミューオン検出器や内部ミューオン検出器で同定できず、削除できない。

停止ミューオンバックグラウンド

低エネルギーの宇宙線ミューオンが検出器のチムニーを通過し検出器内でエネルギーを落としきっ て停止し、約2.2 µsの寿命で崩壊することで発生するバックグラウンド事象である (図3.22)。宇 宙線ミューオンのエネルギーが 30 MeV以下の時先発信号の条件を満たし、擬似先発信号となる。

ミューオンが崩壊した後に生じる電子が擬似後発信号になる。多くの宇宙線ミューオンは、外部また は内部ミューオン検出器で同定されるため削除される。しかし宇宙線ミューオンがチムニーを通過し てしまうため、同定が難しく、バックグラウンド事象になってしまう。

3.21 高速中性子バックグラウンド

3.22 停止ミューオンバックグラウンド

ドキュメント内 平成 28 年度 修士論文 (ページ 44-48)