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根鞘の研究より見た種子発芽の区分に.関する考案

種子発芽に関する研究ほ極めて多く,これが専門書とし{:も,CROCKER,BAR工SON(8),中山(B8)などが挙げ   られる 

然し乍ら発芽を取扱った従来の研究でほ胚器官から見れば,子葉鞘,本葉,中胚軸及び種子根についてほ研究   が深く進められているが,根鞘の研究ほ僅少であり,また発芽の定義についてほ研究者によりことなっており,  

研究結果の比較検討を困難にする場合が多いいま種子発芽の定義の主なるものを列記すると次のようである 

(1)発芽経過中の初期段階をさすもの   

安田(81)ほ胚が種被を破ってその山・部を外に押し出す現象を発芽とし,山田(釦)は種被などの裂開に伴い,胚器   官の出現するのを発芽としている 

(2)幼芽の伸長する時期をさすもの   

高橋(70)ほ子葉鞘細胞の伸長をもって発芽としている 

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

肌るム ー   

(3)発芽経過中のおそい時期をさすもの   

永井(36)は子葉鞘及び幼根の仲島するのをもって発芽とし,西山(40)ほ明確に茎葉根を発生して植物体を形成す   る現象を発芽としている  

(4)発芽経過の全体を含むと考え.たもの   

BECKER(4),手島(72),水戸(呵,TooLE(78)等戸苅,菅(7$)などほ種子の膨水する時期より子葉鞘及び種子根の   出揃う迄の経過全体を発芽として取扱っている 

(5)種子発芽を分解的,区分的に考察したもの   

野口(41)ほ発芽研究に当り,幼芽と幼根を分解して考察すべきであるとし,MARTIN,LEONARD(29)は・さとうき   びの発芽経過を写生しているが,ともにいまだ発芽を詳細に区分しては考察していない.最近ALESHIN(2)は発   芽を2期紅分け第1期は種子が膨大してから子葉鞘が伸び種子根が現われない迄,第2期は種子根,本葉が伸び  

る時期に分けている 

以上の如く,種子発芽に対してほ研究者によって発芽経過の段階が種々にとり上げられているが,発芽の明確   なる区分を行っていないので著者は根鞘の研究に基いて,発芽の区分的考察を行った   

−−方種子発芽経過に伴う粒の化学変化については古来幾多の研究があるが,それらほ露床後の日数による細成   が追跡されており,発芽経過を段階的に成分の変化をみたものは,ERYGIN(9)が膨水した時期,出芽期,幼芽の   長さによるアミラーゼーの活力比較を行っているものがあるに過ぎない.ALES王ⅠIN(2)は上記発芽の第1期,第  

2期を分けて呼吸の差異及び呼吸関係酵素の差を明かにした 

このような関係から,発芽区分の試案に呼応して,禾穀類種子の主成分たる澱粉の分解に関係するα,β,ア   ミヲ−ゼの活力の変化を検討した 

第1節 種 子 発 芽 の 区 分  

乾燥状態の種子に発芽に必要な外的条件が与えられると,先づ吸水が行われ,外観的にほ粒の膨大が観察され   る   

この場合の吸水は物理現象である膨潤によるものであって,発芽力を失った種子において:も同様膨潤がおこる  

ので,この吸水ほ鐘活現象たる発芽経過にほ含まれないが,これに引き続いておこる生理現象としての吸水との   区別は困難である 

TooLE(78)は膨潤による吸水後,粒内成分に化学変化がおこるが,この時期を発芽経過の始期と考え,戸苅,  

菅ぐ7$)も先づ種子が水分をとり入れ,次いで種子の吸収屑,糊精眉に既に存するか,或ほ新生された分解酵素が   活動を始め,貯蔵物質の消費がおこり,幼芽及び幼根ほ細胞の緊張と生長点における細胞の増殖により伸長を開   始するとしている   

このように発芽経過としてはまづ吸水による種子の膨大がおこり,ついで村内の化学変化が起るが,化学的手   段によらなければかかる変化は外部からは判定は困難である 

しかし乍ら吸水および化学変化は広く考えれば発芽経過と見られるものであるので,この時期を発芽前期とす   るのが妥当であろう 

次に外観的に始めて発芽の開始を認め得るのほ胚器′自の全器官が揃って外部に現われる時期を発芽終了の時期   と考えるべきであろう 

以上の発芽経過から著者は種子発芽を次の如く区分することを提案すものである  

(1)種 子 発 芽 前 期   

種子ほ先づ物理的に膨潤し,つづいて生活現象としての吸水が行われ,膨大することほ発芽の段階に入ったも   のと考えられるので,種子が膨大してから根鞘の出現する迄の期間をいう 

(2)種 子 発 芽 初 期   

根鞘が種被を破って出現し始めた時期から,根鞘ほ伸長するが,他の器ノ自は未だ現われない時期迄の期間をい    う 

(3)種 子 発 芽 中 期   

根鞘のはか子葉鞘,中胚軸又は種子根が出現するも未だすべての器官ほ揃わない時期をいう.   

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

ー・る7M   

(4)種 子 発 芽 終 期   

根鞘,子葉鞘,中胚軸,種子根等がすべて\揃う時期をいい,幼植物完成の時をさす.   

以上の如く種子発芽を区分するこ.とほ.,今の後種子発芽に関する研究に・おいで必要であることを強調したいい   第2節 桂子発芽区分【こよる種子の澱粉分解酵素の活力の変化   

実験ほ19る0年12月から19る1年1月にかけ行った.供試材料は水稲農林10号,栄光,ノJ\麦虚林72号,埼玉27号で   前記発芽区分に対して,アミラー・ゼα,βについてその活力変化を検定した..   

まづ試料として20粒をとり,蒸溜水10ccを加え,乳鉢でよく砕き,1時間浸出し,5000回転の遠心分離器で10   分間処理して,酵素液を作り,この原液を水稲では10倍,小麦では100倍として測定したい   

α−アミラーゼ即ちヨ−・ド反応による糊精化力測定,β−アミラーゼ即ち糖化力測定は森田(34)により,澱粉糊精  

化率及び搬粉糖化率は赤堀(1)の方法によったり  

第28衰 アミラーゼの吸光度 (19る1)  

αトア ミラ ー ゼ  

亮穿終期よ   品種名】乾燥種子l発芽初期 巨発芽終期   乾燥種子l発芽初期】発芽終期】苛邑蒔竃姦  

品種名  

埼玉27号   農林72号   栄  光  

農林10写 

完全分解の吸光度 0..027  

水稲ほ酵素原液の1D倍,小麦ほ同上の10ロ倍   2区制 2回反覆の平均価  

β− ア ミ ラ−・ゼ  

完全分解の場合 0.5占   酵素液は前表と同株な濃度  

2区制 2回反覆 4回の平均価  

以上の実験結果によれば小麦のアミヲ−ゼの活力ほα,βともに水稲の場合に比し,著しく大であるがこれは  

中山く3る)によっても報告されている   

水稲のα−・アミラーゼの活力ほ発芽初期では乾燥種子の場合に比し大差がないが,発芽終期では明らかに増大  

した.   

β−アミラーゼの活力ほ発芽初期から発芽終期にかけて乾燥種子の場合に比し殆んど大差がないが,発芽終期   から24時間後すなわち幼芽,幼根が比較的よく伸長した場合に始めて増大が見られたが,この増大ほ栄光で若し  

かった−.   

′J\麦ではα,βのアミラーゼの活力ほ発芽初期では乾燥種子に比し殆んど差異がないが,発芽終期にほ増大し  

た.   

したがって発芽初期において粗全体としてのアミラーゼの活力は乾燥種子に比し増大を見なくとも根鞘は出現   するものであり,根鞘のはか胚器偏が揃って出現する発芽終期には水稲においてはα,小麦でほα,βともにアミ  

ヲ−ゼの活力が増大するものと云いうるであろう。   

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

8  

水稲(酵素原液‰)  

戸 ̄アミラ■ ̄‥ゼ  

よ−アミラ ̄ゼ    ′  

0    0    0  5    4    3  澱 粉 糊 棉  

′  

′  ′  

′′′栄光  

化20   率   有10  

0  

農林10号   

」  l  

乾燥種子 発芽初期 発芽終期 発芽終期  

後24時間   発芽終期  

乾燥種子 発芽初期  

小麦(酵素液Ho)  

第髭図 水稲,小麦の発芽初期及び発芽終期における粒のアミラーゼ活力  

の変化 (19る1)   

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

−−・占9一−−・  

三△.  

刷閏   

禾穀類の種子について胚及び発芽の研究ほ.多数行われているが,根鞘紅関する形態学的,連理生態学的研究は   少く,不明の点が多いままの状態におかれていた.   

著者は1927,1928の両年に亘り,酸素供給を制限した煮沸水中における禾穀類の種子発芽の研究を行い,作物   の種類匿よって根鞘のよく伸長するものから,根鞘が仝々出現しないものまで存在することを明らかにし,種子   発芽における根鞘の研究の必要性を指摘した 

その後発芽時の根鞘に関する研究ほ,内外を通じ,殆んど行われなかったので1952年より根鞘の研究を再開し   た 

即ち根鞘類の15種について根鞘の内部及び外部形態を明らかにするとともに,根鞘のもつ鐘理機能を実証し,  

また不良発芽条件下における根鞘の生態を明らかにし,さらに作物品種の墓要特性としての稲の耐早性,耐瑞   性,小麦の耐湿性の強弱と根鞘の性状との関係および水稲品種の地理的分布と根鞘の生態との関係を検討して,  

根鞘が種子発芽並びに品種の主要特性に対して雷要な意義をもつことを明らかにした 

また従来種子発芽の多数の研究において,発芽の定義が一・定せず,業騎の比較検討に困難を来たす場合が多か  

ったので,根鞘研究に盈づいて種子発芽の区分考察を行い,これが試案を提示した.以上研究結果を要約して結   論とする 

Ⅰ 根鞘の形態学的研究  

板鞘ほ完成胚において−ほ種子根を怒っている鞘状の器官であり,維管束はなく菜細胞からなって.いる‥ いま発   芽の条件が与えられると,根鞘の細胞に膨大がおこり,種被を破って:胚器官として最初に外部に現われる小 従来  

種子発芽で最初に現われるのは子英和,種芋根,叉ほ.根鞘であるとの報嘗があったが,有符種子の場合にほ,秤   の構造上,根鞘の出現が外部から見難いためであり,根聯の出現ほ常に最初に行われることを明らかにした   

次に根鞘が現われると間もなく,その表皮細胞から根鞘毛を形成して,根鞘の表面積は著しく拡大する 

従来胚及びそ・の発生学的研究において\根鞘と他の胚器官との境界・が明確でなかったが,根鞘出現後におい   て,根堀部を縦断検境することにより,根哨と他器官との境界ほ次の如く認められた.  

1.根翰と他器官との境界  

(1)根畢肖と胚盤との境界   

REEDER(68)によると稲及び麦類では根鞘は胚盤で融合しており,雑穀類では胚盤の下部中途で分岐している   とし,末次(6667)によると小麦とらい麦では根鞘ほ胚盤の末端で肢分れするが,大麦とらい麦でほ肢分れせず,  

これらの境界は明らかでないとしているが,少くとも供試した作物の品種の範囲では,稲,麦類では,根鞘ほ何   れも胚盤の梅く末端で分岐しており,その分岐の角度ほ小さく卜胚盤とは広い範囲で接合しており∴雑穀では根   鞘が胚盤の中途で明らかに分岐しているが,しこくびえをのぞく,他の雑穀では胚盤の左右両端が伸びて胚の中   央部をのぞく広い徽阻で胚盤に覆われている関係上,根鞘の分岐もまた胚盤の広い部分で行われていることを明   らかにした 

(2)根鞘と外胚葉との境界   

稲では根鞘と外胚葉の境界ほ乾燥種子でほ明らかでないが,根鞘が伸長すると根鞘細胞の膨大皮が外胚葉のそ   れよりも大きく,且つ根鞘細胞は細長く伸長し,表皮細胞ほ両器官の境界面で凹入するので両者の境界判別が容   易となる 

小麦,えん麦しこくびえの場合ほ乾燥種子の胚でも根神細胞の形状から判定は容易である 

(3)根鞘と申胚軸との境界   

大麦,らい麦,もろこし,とうじんびえでは根耶と中胚軸との境界は乾燥種子で,根鞘の細胞は中胚嘲の細胞   に比し,小形且長形であるので区別が容易である.   

きび,あわ及びひえでは乾燥種子の場合両者の境界判別が困難であるが,根和が伸長すると,根鞘細胞の膨大   度が大であるので境界が明瞭となる 

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

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