核融合工学研究プロジェクトでは、ヘリカル型核融合エネルギー炉の概念設計、詳細設計と核融合エネルギー炉の開 発に必要な工学研究を行っています。また、国内外の共同研究と協力して研究の高度化を進めるとともに、基礎となる 学際領域の研究拡充を図っています。具体的には13のグループ及び44のサブグループで構成される実施体制の下、
中期計画に沿って研究を推進しています。従いまして、共同研究の進め方としては、これらグループの活動に直接あ るいは間接的に参加頂くことを前提として、(1)炉設計研究、(2)超伝導システム研究、(3)炉内材料機器研 究、及び(4)システム・環境安全研究、の4つのサブカテゴリーに区分して、研究の方向性と分担を明確にしつつ、
各サブカテゴリーの中では出来るだけ広範で多様な共同研究が組めるようにしています。特に、(2)~(4)に新 たに拡充しました「革新的エネルギー循環工学」研究設備群が平成27年度より本格稼働を開始し、共同利用・共同 研究が可能となっています。そのための安全を確保する体制や手順も整備しています。核融合工学をエネルギーの生 産・変換・輸送・効率の統合科学と見ることによって、より広い分野の大学の最先端研究との連携や、生理学、分子 生物学、宇宙工学、地球物理学等との異分野融合も併せて、国内外の研究ネットワークの機能強化にも積極的に貢献 する計画です。これによって、核融合炉の早期実現に必要な技術の高度化を加速するとともに、研究資源の効率的活 用も進めます。以下に当該研究プロジェクトの概要を示します。
ヘリカル方式はプラズマ電流を必要としないため、定常炉として成立するための優れた特性を持っており、このこと を十分に生かした核融合炉設計が重要となります。具体的な研究活動では、電磁力支持構造も含めた超伝導コイルシス テムの最適な形状を探るための研究や、長寿命で効率の良いブランケットや第一壁・ダイバータとそのための冷却方式
が印加されます。電磁力によって材料にかかる応力を正確に評価し、安全に支持する構造の研究を進めています。併せ て、超伝導マグネットシステムの巻線と製作方法についての工学研究を進めています。
核融合炉では、発電のためのエネルギー取り出し、燃料増殖、中性子遮蔽の3つの主機能を担うブランケットが必要 で、その開発研究を進めています。溶融塩や液体金属を用いる先進的な液体増殖ブランケットでは、長寿命化による炉 の稼働率向上や保守交換を考慮して、材料の高温強度の向上や腐食の制御が最重要課題です。エネルギー輸送や増殖燃 料回収など、伝熱流動下での物質輸送制御に関する要素研究、更にはこれらを複合した循環ループ実験研究などが必 要であり、そのための技術研究や設計研究を進めています。
ブランケットに用いる構造材には、中性子照射によって生じる誘導放射能の減衰が速い材料(低放射化材料)を用い る必要があります。代表的な候補材である低放射化バナジウム合金共通材料やフェライト鋼の接合材、耐熱被覆材な どを製作し、大学と協力してその特性評価とコンポーネント開発に向けた試作研究、高温下強度特性の更なる改良に向 けた基礎研究などを進めています。
ヘリカル型核融合炉のヘリカルダイバータでは 10 MW/m2あるいはそれ以上の定常熱負荷が想定されており、超高 熱負荷仕様の受熱構造が必要です。重要な要素研究として、特に、「材料の高度化」、アーマータイルと冷却管間の「接合 技術開発」、「3次元形状の設計検討」の3項目が挙げられます。新しい製法、接合法を活用したプラズマ対向材、ヒー トシンク材及びこれらの接合材の試作開発、試作試験体への熱負荷試験、コンピュータによる熱解析を相補的に実施す ることで、これら3項目の最適化に向けた研究を進めています。また、より先進的な概念として、液体金属を用いたダ イバータに関する基礎的な研究も開始しています。
核融合炉では、重水素とトリチウムが燃料として使用されます。トリチウムは放射性物質であり、安全に管理する必 要があります。トリチウム管理技術として、トリチウム除染や、漏洩トリチウムの回収除去などの研究を進めています。
また、放射線管理の観点から、微量トリチウム検出の研究も進めています。
2-(1) 炉設計研究
炉設計研究は、核融合工学研究プロジェクトの柱のひとつであり、定常性、無電流特性(電流崩壊無し、高密度運 転、循環電力割合小)、造り付けのダイバータ等、LHDの特長を生かしたヘリカル型核融合炉の総合的な設計研究を 展開しています。またプラズマ実験及び理論研究によって予測、または期待される成果を積極的に採り入れるととも に、核融合炉設計に必要となる実験・研究テーマを提案するなど、LHD計画プロジェクトや数値実験炉研究プロジェ クトとも密接にリンクしながら、大胆かつ先進的な設計研究を推進しています。これらの特長に焦点を絞った共同研 究を継続するとともに、ヘリカル型に限らずトカマク型を含む各種形式の炉設計に共通な炉工学課題、さらにはその 応用から広がる異分野融合、新分野創成にも広く積極的に取り組んでいます。
核融合炉は様々な形でエネルギーの生産・変換・輸送が行われる複合工学システムであり、それらの効率を向上さ せることはそのまま核融合炉の魅力を高めることに繋がります。核融合工学研究プロジェクトに設置されているタス クグループと対応し、核融合炉設計に必要となる、主に以下のテーマに関連する共同研究を募集します。
1) 大型超伝導コイルシステム(冷却・電磁力支持手法含む)の設計及びコイル巻線手法の研究 2) 低温システム及びコイル電源システム(電源・バスライン・電流リード等)の設計研究 3) ブランケットの核設計・熱構造設計及び建設・遠隔保守交換手法に関する設計研究 4) 強磁場下での先進伝熱流動システムの設計研究
5) 炉内機器(真空容器・プラズマ対向機器)の3次元構造設計及び高温壁とプラズマ相互作用に関する研究 6) ダイバータの設計・熱負荷低減手法及び保守交換手法に関する研究
7) 高効率・定常排気システムの設計研究
8) 発電システム及び高効率エネルギー変換システム(熱交換、水素製造、負荷追従性など含む)の設計研究 9) トリチウム回収・分離精製システムの設計研究
10) 核融合プラント及びサイトの安全性と安全管理手法に関する研究
11) 燃焼炉心プラズマの運転制御(プラズマ立ち上げ、定常維持、立ち下げ)と運転条件最適化に関する研究 12) 核融合プラント運転制御システム及びデータ処理システムの設計研究
13) 燃料供給システムの設計研究
14) プラズマ加熱機器(ECH、ICH、NBI等)の設計研究
15) 燃焼プラズマ運転に対応した計測機器の設計研究 16) 核融合炉用先進構造材料・機能材料に関する研究
17) 核融合プラント建屋の配置・構造及び建設工程に関する研究(耐震、免震など含む)
18) 核融合プラントの経済性・廃棄物量評価手法及び導入シナリオに関する研究 19) 核融合炉システムの総合評価と高度化への方策検討
これらのテーマについて、LHD計画プロジェクトや数値実験炉研究プロジェクトとの相補的な連携、次節の(2)超 伝導システム、(3)炉内材料機器及び(4)システム・環境安全に関する各共同研究と相補的に連携しながら、デ ータベースや解析コードの整備なども含む炉システム設計の立場からアプローチすることを目指します。
早期実現性、安全性、経済性、運用柔軟性等の全ての面で魅力ある核融合炉システムの提案とその設計の推進には、
プラズマ物理・理論シミュレーションの研究者と装置工学、核融合炉システム工学の研究者との間の密接な連携が必 要であることはもちろん、関連した基礎科学分野の研究の促進、さらには異分野からのアナロジーによる革新的・独 創的な発案など、裾野の広い取り組みが期待されます。今年度も引き続きネットワーク活動や海外との協力研究を通 して、活発な共同研究を展開したいと考えています。
2-(2) 超伝導システム研究
超伝導低温技術は、核融合エネルギーの実現に不可欠な基盤技術です。将来の核融合エネルギー炉には、ITERマグ ネットよりもさらに大型・高磁場マグネットが必要と考えられております。また、マグネットの冷却に要する電力負 荷を低減するために運転温度の高い高温超伝導システムの開発も期待されています。
平成30年度は、以下に示す課題に関する研究を進めていきたいと考えています。また、以下に示されていない課 題についても提案を歓迎します。
1) 核融合炉用超伝導マグネットシステムの先進化技術(高磁場・大電流・高強度・接続など)
2) 核融合炉用超伝導マグネットシステムの健全性診断技術
3) 核融合炉の電力システム技術(励磁電源、給電系、電力系統安定化、超伝導電力貯蔵など)
4) 大型超伝導マグネットの冷却安定性とコイル保護(絶縁技術を含む)
5) 大型超伝導マグネット用構造材料の高強度化
6) 核融合炉用先進超伝導導体(酸化物超伝導体、高臨界温度、高臨界磁場、高安定度、高強度、高電流密度 など現時点において開発の済んでいない導体)
7) 大型超伝導導体の電磁現象(電流分流、交流損失を含む)
8) 核融合炉用大型低温システム及び超伝導マグネット冷却技術
9) 超伝導マグネット材料の中性子照射実験と照射後特性評価(外部施設利用)
10) 極低温,強磁場試験法開発研究
超伝導マグネット研究棟及び総合工学実験棟では、次世代の核融合発電炉のための超伝導低温システム及びその周 辺技術のための研究開発を押し進めるため、次のような設備を準備し、共同研究として利用が可能です。
<超伝導マグネット研究棟>