大型ヘリカル装置計画では、閉じ込め改善、輸送、ダイバータ・周辺プラズマ、高ベータプラズマの達成、MHD 不安定性、高温度領域の拡大、高エネルギー粒子の振る舞い、プラズマ壁相互作用、定常プラズマ等のプラズマ物理 実験とともに、超伝導コイルを用いた定常装置に代表されるLHD の特長を生かした技術的実験及び開発試験を、本 体関連機器ならびに加熱機器に対して鋭意進めています。本体システムに関しては、熱粒子制御のための高性能機器 の開発やプラズマ壁相互作用に関連した技術開発等を行っています。加熱機器に関しては、ECHやICRFなどのため の高周波加熱技術開発ならびにNBIを対象とした高エネルギービーム技術開発を行っています。これらは、LHDの 高性能化に直接寄与してプラズマ性能の向上に貢献すると共に、核融合エネルギー炉への適用を見据えたものとなっ ています。
1.本体システム技術
LHDの高性能化に向けて、閉構造ヘリカルダイバータの性能向上を含めた粒子制御機能に関連した研究及び、炉設 計において重要な課題であるダイバータ・第一壁材料の研究を重点的に進めます。それらを含めて、LHD に直接的 に関連する本体システム物理・技術に関する共同研究テーマとして次の課題を例として挙げます。
1)閉構造ヘリカルダイバータとその排気システムの性能向上研究
2)ダイバータ板・第一壁の開発、設計(耐高熱流束材料、特に高Z 材料の開発と評価、冷却システムの開発 と試験)
3)プラズマ生成装置、燃料供給装置(固体水素ペレット、コンパクトトロイド入射等)の開発 4)放電洗浄、ボロニゼーションなどの壁調整手法の開発及び実験
5)磁場配位、粒子供給・排気、加熱などによるプラズマ帰還制御システムの開発実験 6)LHD 本体総合運転・総合プラズマ実験
7)LHD 制御システムの運転・実験 8)高効率の水素排気方法の開発及び実験 9)プラズマ放電制御解析コードの開発及び解析
2.低温システム技術
LHDは、平成10年の実験開始から安定した運用を続けている世界最大級の超伝導低温システムです。その間、全 国の共同研究者に安定した核融合プラズマ実験環境を提供すると共に、超伝導バスラインによる大電流直流給電の実 証を含む超伝導コイル電源系統の実運用、超伝導状態を維持するための大型低温システムの長期安定運用を実証して います。大型超伝導システム特有の電磁特性や機械熱特性などの物理現象に関する研究、および、ヘリカルコイルの 冷却温度を約3.5 Kに下げる過冷却(サブクール)システムに関する研究も引き続き行っていきます。プラズマを生 成しない装置実験のためのマシンタイムも確保できますので、特殊な磁場配位の励磁やIVコイルとISコイル用のパ ルス電源を用いた高速励磁も可能です。一方で LHDの基盤となる超伝導低温システムは建設から既に20年が経過 し、機器の老朽化による信頼性の低下が懸念される状況となっています。今後も高い信頼性を維持するためには、新 しい発想に立った信頼性向上研究への取り組みが求められています。新たな診断技術、測定技術の研究や、制御方式 の高度化のための研究を歓迎いたします。
具体的課題としては、
1) 大型超伝導コイルの電流制御方法
2) 大型超伝導コイルの電磁現象(交流損失、磁束跳躍、常伝導伝播、等)
3) 大型超伝導コイルの機械的擾乱
4) 大型超伝導コイルシステムの健全性評価 5) 大型ヘリウム液化冷凍システムの信頼性向上 6) 過冷却システムの特性評価
7) 大型ヘリウム液化冷凍システムの不純物管理
8) 超伝導低温システムの新たな診断技術、測定技術、制御方式の高度化 等が挙げられます。
3.加熱システム技術
1)電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH)システム
LHD では、ECH システム(ジャイロトロン、高電圧電源、ミリ波伝送系、アンテナなどにより構成)を用いて、
高電子温度プラズマの生成、加熱を行っています。現在は、周波数77GHz、154GHz出力1~1.5MWのジャイロトロ ン発振管の導入を進めています。同時に、ジャイロトロンからのミリ波出力をコルゲート導波管に結合させる MOU
(Matching Optics Unit)の改善、長距離伝送試験、実時間伝送電力モニターや偏波モニター、アーク検出器システム などを含む大電力ミリ波伝送要素部品の開発、試作を進めています。第19サイクルでも、LHDでのECH大電力実 験に加え、引き続きジャイロトロンの高パワー長時間運転試験、ミリ波の結合・伝送効率の一層の向上とその評価な どを計画しています。なお、装置としては実機 ECH システムを用いますが、低パワーでのコンポーネント試験など は、低電力ミリ波伝送系試験装置が使用できます。装置の仕様は高周波加熱装置一覧表に掲載されています。
(a)ジャイロトロン装置を用いて以下の項目を中心に開発研究を行います。
・77GH及び154GHzジャイロトロン発振管を用いた長時間大電力運転試験
・MOU の改良:ジャイロトロン出力モードの評価、導波管への結合効率向上のためのミラー系の改良、アーキン グ対策や長パルス・定常運転時の不要ミリ波処理法の開発など
・ジャイロトロンのさらなる高出力化へ向けたコンポーネント開発の一環としての電子銃や共振器の設計、不要モ ードの抑制策の検討など
・協同トムソン散乱計測に向けた、高周波数ジャイロトロンの開発研究、散乱信号受信システムの性能向上、アン テナの高速駆動など
(b)ミリ波伝送系試験評価を以下の項目について行います。
・伝送系部品の改良と試験:偏波器、マイターベンド、パワーモニター、モード分析器、アンテナ性能評価:集光、
駆動性能など
・導波管系真空化に伴うコンポーネント開発
・準光学伝送系の実機への適用と評価
・プラズマへの吸収パワーの評価法の開発
・長時間運転伝送システムの高信頼性へ向けた要素開発及び実機への適用検討
(c)ジャイロトロンと伝送系の組み合わせにより以下の試験、評価を行います。
・高パワー伝送試験:耐電圧、熱負荷、不要高次モード影響評価
・伝送効率、伝送パワーの評価 (d) LHDにおけるECH実験
・既設ECHシステムを用いてプラズマの生成、加熱、分布制御や電流駆動、散乱計測等を行います。
(e)以下の計算機コードの開発を進めます。
・ジャイロトロン動作解析コード
・ミリ波ビームの伝播、ミラー設計コード
・プラズマ中の波動伝播コード(吸収、加熱、電流駆動解析を含む)
2)イオンサイクロトロン周波数帯加熱(ICH)
ICH 装置ではハードウェアの整備を通して、定常・大電力 ICH システムの総合的開発研究を行っています。LHD での加熱実験では、ECH及びNBI加熱プラズマへの良好な追加熱とICH加熱を主とした高温プラズマの長時間(約 1時間)維持の実験結果を得ています。平成30年度は、ICRFのアンテナを一時的に撤去しているため、ICHを用い たLHDでのプラズマ実験を行うことはできませんでしたが、ECH加熱と合わせて3MWを超える大電力で1時間を 超える定常プラズマ維持実験を行うことがLHDの最終目標となっています。2019年度は、ICH実験再開に向け た大電力定常ICHコンポーネントの開発、加熱に関連した計測器の開発などの要素技術開発研究や、ICH実験の解析 を行います。
具体的には、以下のような課題が挙げられます。
(a)ファラデーシールド材料及び高耐電圧材料と構造の実用化研究
(b)波数制御アンテナ(HASアンテナ)、大電力アンテナ(FAITアンテナ)による物理実験の解析
(c)定常用ICRF加熱コンポーネントの設計及び開発試験 (d)大電力ICRF加熱アンテナの開発
高周波加熱装置一覧表
1. 電子サイクロトロン 共鳴加熱装置
・ジャイロトロン
1. 77.0 GHz/ 1-1.5MW/ 2-5s または 300kW/3600s (CPDタイプ) 3本 2. 82.7 GHz/ 400kW/ 2s 1本
3. 154 GHz/ 1MW/ 5s または300kW/3600s (CPDタイプ) 2本 4. 84.0 GHz/ 500kW/10s または200kW/1000s(CPDタイプ)1本
出力モ-ド ガウスビーム
・コルゲート導波管伝送系 導波管内径 88.9 mm 伝送モード HE11
・ミリ波伝送系試験装置
小電力ミリ波発振器、測定器 5軸制御放射パターン測定器
ミリ波帯ベクトルネットワークアナライザ
2. イオンサイクロトロン 周波数帯加熱装置※
・イオンサイクロトロン周波数帯定常高周波源
(周波数:25~90MHz、パルス幅:60分、電力:6MW)
・アンテナ開発用大型真空容器
(体積:30m3、到達真空度:10-7Torr)
・磁場直交型ループアンテナ(FAITアンテナ)上下1対
・波数制御アンテナ(HASアンテナ)上下1対
(ストラップ:200~300mm×600mm)
※2019年度は一時的に撤去したアンテナの内、FAITアンテナを再設置し、ICHを用いた実験を再開する予定。
3)高エネルギービーム技術
ここではプラズマ加熱や計測用に用いられる高エネルギービームの開発とその応用に関する共同研究課題の募集を 行います。
LHDでは中性粒子ビーム入射装置(NBI)を用いた大電力加熱実験と並行して、大電力NBI用イオン源の開発研究 を進めています。LHD用NBIは平成10年度に最大110 keV程度の比較的低いエネルギーでのビーム入射実験を開始、
平成14年度までに定格ビームエネルギー180 keVを達成し、平成15年度には1ビームライン当たりの定格である ビーム電力5 MWでの入射に成功しました。平成19年度にはNBI3台による同時入射時の定格である15 MWのビ ーム入射を実現しました。現在、運転信頼性も向上し、安定した加熱パワーを得ていますが、パルス幅は最大出力時 2秒程度にとどまっています。これはビーム加速器の構成要素である接地電極への熱負荷が大きいためで、この問題 を解決することが重要な課題です。さらに加えて、平成29年より行われた重水素負イオンビームの入射では、負イ オン生成における同位体効果によって電子電流が増加し、イオン源電極の熱負荷を抑制するためにビーム電流の抑制 が余儀なくされるが明らかになりました。こうした課題に対し、研究所既設のNBIテストスタンドに設置された小型