本研究では個人のリソース管理の手法として協調モデルを提案し,携帯電話用タスクスケ ジューラとしてこのモデルを実装した.
本研究が対象としているのは会社組織のようにあらかじめ上下関係が定められておらず,そ の範囲が明確でないようなグループに複数所属しているような人々である.
提案システムでは,既存のグループウェア等とは異なり,メンバーリストの作成や管理者の 決定といったグループの定義をあらかじめ行う必要はない.ユーザは,他のユーザに対して協 調・依頼タスクを発行するという操作のみを行い,そこからの関係の発見やグループの同定は すべてサーバ側が自動的に行う.これにより,ボトムアップに構築されるグループや,タスク の発生とともに生まれるアドホックなグループに対しても適切な支援が可能になる.
提案システムでは,各ユーザがあらかじめ自身のリソース情報を公開することを前提として いる.このような環境では,他人の時間リソースの状況を考慮した上でリソースの予約をする ことが可能になるために,予期しないリソースの競合を引き起こすことが少なくなる.また,
競合が実際に発生したとしても,交渉のサイクルが短くなると思われる.
過剰な情報公開によるプライバシーの侵害に対しては,タスク情報のアクセスコントロール 機能によって望まない情報公開や全ての認証ユーザに全ての情報を公開してしまうといった状 況を回避することが可能である.実際には,タスクの依頼関係からグループを同定し,グルー
第4章 協調的タスクスケジューラの実装と評価 72 プを横断するような情報アクセスを禁ずる.これにより,プライバシーの侵害を最小限に抑え た上で,情報共有によるメリットを享受することが可能になる.
提案システムでは,1 人のクライアントソフトウェアから他の複数のユーザの持つタスク データに直接タスク情報を書き込むことが可能である.他ユーザはこのタスク情報を自分で入 力する必要がないため,トータルで見るとデータ入力のコストは大幅に低減する.携帯電話の アプリケーションを導入する上で阻害要因となるのはデータ入力の手間であることが多い.こ のような協調モデルには携帯電話用アプリケーションのデメリットを打ち消す効果があると考 えられる.
現状のシステムでは,ユーザ間に張られたパスを消去しないために,発見されるグループの 数が単調増加する.今後の課題として,タスクの依頼関係パスに時間の要素を導入し,一定期 間タスクのやりとりのないユーザ間の関係を消去することや,パスの時間的要素を考慮してア クティブなグループのみを発見する手法[23]を導入することを考える.
第4章 協調的タスクスケジューラの実装と評価 73
図4.18 人間関係ネットワーク
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第 5 章
Weblog とセマンティック Web による
個人の情報流通モデル
本章では,Community Webモデルの実現において重要な課題となるスケーラビリティの確 保という問題について,既存のWeb環境に適用可能な手法を提案する.戦略としては,Web 上での個人性の表出のために,個人用コンテンツマネジメントシステムとして注目を集めてい
るWeblogを利用し,個人間の情報流通を円滑にするためにセマンティックWeb技術,とく
にメタデータを利用する.
本章では,要素技術を概説するとともにCommunity Webモデルとの関連性について述べ,
それらの要素技術をいかに組み合わせて利用するかといった基本的な方針について述べる.
第5章 WeblogとセマンティックWebによる個人の情報流通モデル 75