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本研究の特別調査2の結果

〆鍔→

第5節  本研究の特別調査2の結果

  一 更生保護施設退所の更生事例へのヒヤリング調査

本節では、犯罪者10名に行った質的調査の結果を概観する。

1 調査の目的

 刑務所を釈放されて後に再犯がなく無事に更生の途Lにあると思われる元犯 罪者から、当該犯罪や判決に関する思い、裁判後から調査時までの経過、生活 上の課題、それへの対処方法、生活の再建の方法などを聴き、再犯を抑ILする

要因(保護要因)を探る。

2 調査対象

 刑務所を釈放されて、A更生保護施設(東京都内)に帰り、順調に独立の準

備を進めて無事に退所し、その後も(9月〜4年間)再犯がなく、同施設長で

あるp氏と連絡を保っている者10名。全員に対し、B氏から手紙で当ヒヤリ

ングの趣旨を説明して協力を求め、それに応じた人達である。

 更生保護施設とは、住居 と食事を一・定期間提供して犯罪者の社会復帰を支援

する中間施設である。刑務所から更生保護施設へ帰ってくる者は、通常、次の

ような背景をもつ。

 家族がいない、家族関係が破綻している、家族が本人の同居に同意しなかっ た等の理由で家族の元に帰ることが叶わず、当人自身が更生保護施設に戻るこ とを希望した者に対し、更生保護施設職員が刑務所に出向いて面接し、更生の 意欲があり、就労能力があると判断し、刑務所を出所した後に更生保護施設に 帰住することを許可した者である。なお、近年は高齢者、障害者等福祉施設へ の入所が予定されている者を待機期間に引き受ける「特別調整」も実施されて

いるが、今回の被調査者はこの類型に含まれていない。

 ところで、共同ヒヤリング実施者であるA更生保護施設長のB氏は、立場ヒ 当被調査者に関する情報を把握しているが、個人情報の保護のために筆者には 開示されなかった。よって、筆者は「A施設を退所し、再犯がない者」という 認識だけで当人らに面接した。そして、ヒヤリング時に当人から語られた情報 から類推し、表4−9に示したプロフィールを把握した。

表4−9 被調査者10名のプロフィール

更生保護施 退所後の期

性別 調査時年齢 罪   名 宣告刑 設在会期間 開(初回時)

男性

40歳代

詐欺・強盗、

懲役1年8月

4月〜

9月〜4年

殺人、横領、 〜懲役16年 1年7月

60歳代 放火、売春防止 法違反、窃盗 住居侵入、殺人 強盗、強姦の いずれか

*  10人のうち4人には2012年7月〜2013年2月に、同じ要領で再度ヒヤリングを  実施した。

** 刑期は本人の話から類推した。

3 調査の方法

 初回目は、2010年11月13日〜2011年2月27Hに、各回2時間の半構造

化面接を、各人の自宅で実施した。ただし、1人だけは住居のアパート居室が

荷物でいっぱいなので3人は入れないというので、 ・1],自宅を訪問して中に見

せてもらった後に、最寄駅付近のファミリーレストランで面接を実施した。自 宅で面接を行うことで、本人の生活の現状とその中での客人を迎えたホストと

しての本人の行動を観察できた。

 初回目のヒヤリングでの質問項目は、「健康、就労、住居、収人と家計、交友

関係、余暇、被害弁償、生活状況とそれに対する自己評価、困難・課題とそれ に対する対処方法、判決をどう受け止めるか、受刑生活や刑務所への要望、史 生保護施設での生活や施設への要望、保護観察所の指導や観察所への要望1で

あり、調査者は調査事項についてOpen Questionを行い、自山な回答を促した。

なお、本人の話が本題から逸れた場合、それに意義が認められ、かつ時間的余

裕がない時は、あえて話題を元に引き戻さず、流れのままに話してもらったc,

 3人に実施した再度目のヒヤリングでの質問項目は、「就労、住居、収人、交

友関係、余暇、前回調査後の生活状況と自己評価、家族との関係、犯罪からの 立ち直りへの所感、社会的支援についての希望や所感」で、初回目同様にA由

に語ってもらった。

 なおヒヤリングはあえて録音しなかった、、本人との間に機械を介在させるこ

となく、人間的な触れ合いの中で本人の肉声を聴き出したいと願ったからであ

る。その分、詳細にメモを取り、帰宅後に即日記録として残したt,

4 調査の結果

(1)更生促進要因と二L−・.一・ズについて

 次頁の図4−5は、ヒヤリングの回答から筆者が導いた「犯罪からの、 11ち直り」

のモデル図である。

 ヒヤリング回答者の発言を分析し、更生促進要因(=再犯リスクに対する保 護要因)として共通すると思われた要素、あるいは本調査の回答者の中ではた だ一人の発言であっても、犯罪者の発言として典型性をもつと筆者が判断した

ものを、赤字で示した。そして、犯罪者の1・1答から、犯罪者一般のニーズとし ていいと筆者が判断したものを、表の右に示した。

 この更生促進要因と本人のニーズを、裁判から当調査時までのステージを時 系列に並べた中に入れ込み、これらを総合して「犯罪からの立ち直り」への途

とした。

  「犯罪からの立ち直り」への途一半構造化ヒヤリング調査から見えてきたもの

調査対象:刑務所出所者のうち、更生保護施設帰住者。施設退所後再犯がなく、社会適応が概ね順調に進んでいる者10名

時系列段階 本人の体験の諸相 調査から見えたニーズ

裁判・判決 判決に納得「自分がしたことを考えると仕方ない。どんな判決でも受け入れる。

アれで最後の裁判にする。短かすぎて、びっくりした。これが相場だと思った。」

s服がある場合は控訴・上告(手を尽くして、「現実を受け入れた。」)

@      刑罰の受け入れ

重すぎる。

T訴しなければ ヌかった。仮 ゚放が遅れた。

罪の認識、刑事責任の受入れ

刑務所で

生存ラインの栄養、十分な睡眠、単純な刑務作業の反復。規律ある生活。

驍轤オ方の原型の(再)習得。思考と行動のぜい肉を削いでスリムに。

シンプルな生活の中で暮らし方のリセット

自分の精神内面に対峙、過去の振り返り。

ニ罪を行った原因と自分の問題性を探求 自分の問題性の洞察・自己覚知

公正・迅速な司法

Y務所スタッフによる K切なガイダンス

{人の精神内面に寄り Yった支援(篤志面接

、教誠師など)

iニーズのある者に)

E業訓練、資格取得

i中高年向けの特別機会)

F知行動療法

A住先の社会的整備

K正な仮釈放申請と 刑務作業に精励、成就体験→「自分にもがんばれる。がんばれば、必ず見ていてくれる人がいる。」

癆N成人は職業・技能訓練と高卒資格、中高年には機会が少ない)、又は余暇時間に勉強

肯鷲灘∵信頼⇔向社会的な認知U  ・

更生への動機づけ 更生保護施設職員の面接と受容

シ釈放審査・決定

問題の多い生活をリセットして、新しい生活に

@         1

      一

仮釈放 更生保護会 へ帰住

刑の満了

 ←

独立生活へ 踏み出す

独立生活の

住民票の登録、医療保険に加入

物理的・精神的居場所の確保(おいしいご飯と見守られている安心感)

社会的常識と生活ルールの(再)習得

最新の生活情報の取得(携帯電話、メールなど)

就労(高望みせず入れる所へ就職、とにかく独立資金を貯める)

     金銭管理、独立資金の貯蓄(20数万円〜200万円)

自分のハンディや社会的評価を適正に認識 生活再建への明確な方向性・現実的なプラン

「条件のいい職場だと、それだけ前歴がばれ易い。」

「事務職を希望したが、1週間で清掃に切り替えた。」

いよいよ独立生活の開始

ハローワークの特別支援 Web上で求職

(在会が6月間未満者は、「更生保護会にもっと居たかった。」=独ここ一の準備下足・不安)

アパートへ転居(大半が家賃5万円前後のIDK、身元保証人確保の困難)

生活できるが、大半に余裕がない。手取り月収18万円未満。生活保護との差が 少ないので、やる気を削がれる。「権利だから、生活保護をもらっている」者。

安定就労者のみ社会保険に加入。非正規雇用では無理(「あと3万円収入が多い と社会保険に加入できるのに。どうがんばっても納入期間が25年に届かない。」)

ぎりぎりのところで、生活の基盤作り

就労の継続、一部が受刑前に馴染みのある職種・業種でキャリアアップ(管理職に採用、上司が 技能職に引き上げてくれた、資格を取って転職した。ただし、前歴があるからあまり高望みしない。.)

 就労の安定化・キャリアパスの上昇

生活方法と独立準備に ついて、更生保護施設 職員の指導と助言・その ための社会資源の活用 ハローワークによる就 労支援・ガイダンス 市民セクターによる就 労・生活自立支援 保護観察官や専門家に

よる職業、資格、社会資 源に関する具体的情報 提供と再犯防止計画策 定の支援

更生保護施設委託の相 当な期間(実質6月?か 官・民・公の住宅支援

(含:身元保証)

賃金の低さによるモラ ルハザードへの対応(最 低賃金制度など)

社会保障制度の柔軟化

(生活保障と年金)

官・公の専門スタッフに よる安定した職へのキ ャリアガイダンス・

職業技能訓練

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