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本研究における課題と方法

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 44-64)

本章では、第2章において概観した先行研究とその成果及び問題点を踏まえ、本研究 の課題を述べ、続いて研究方法について述べる。そして次に、本調査を行うに先立ち予 備的に行った調査について述べ、続いて本調査の概要(調査時期、調査対象者、質問紙 の作成、データの収集、得られたデータの分析方法⦅統計処理、自由記述のカテゴリー 化など⦆)について述べる。

3.1 本研究の課題

前章で述べた先行研究の問題点を踏まえ、本研究の課題を設定する。

まず、韓国人学習者が持つ日本及び日本人に対するイメージと、そのイメージの影響 要因について明らかにする。次に、韓国人学習者が持つ日本語学習動機づけについて明 らかにする。最後に、以上の2つの結果を基にし、韓国というJFL環境における日本 語学習の阻害要因となると考えられる「否定的な対日イメージが日本語学習動機づけに 与える影響」について明らかにする。本研究の課題は以下に示す。

課題1.韓国人日本語学習者が持つ対日イメージとその影響要因は何か。(第5章)

課題2.韓国人日本語学習者が持つ日本語学習動機づけは何か。(第6章)

課題3.否定的な対日イメージが日本語学習動機づけに与える影響は何か。(第7章)

3.2 研究方法

2011 年以降、韓国人学習者や専攻者などが減少している事実に焦点を当て、まずそ の減少要因について検討することを目的として、質的調査と量的調査を行った。質的調 査として、2015 年の日本の大学に在籍する韓国人留学生を対象としてインタビューを 実施し、量的調査としては2017年から 2018年にかけて韓国の大学に在籍する日本語 学習者(専攻者と非専攻者)を対象として質問紙調査を行った。質問紙の配布や回収な どについては、各大学の日本語教員と相談した上で実施した。以上の手続きを経て実施 した質問紙調査を統計的に処理するため、課題1及び課題2については因子分析、t検 定、カイ2乗検定を行う。その上で、課題3の「否定的な対日イメージが日本語学習動 機づけに与える影響」については相関分析と重回帰分析を行う(具体的な調査の概要に ついては、次の 3.4 に示す)。加えて、質的調査として自由記述式も加え、回答をカテ ゴリー化し分析する。最後に、否定的な対日イメージと日本語学習動機づけの関係に関

40 するモデルを示す。

3.3 予備的調査

本調査を行うに先立ち、上述した研究の課題に対してまず予備的調査を行う。調査の 概要、調査結果などについて述べ、この結果を基に、本調査で改善すべき点について述 べていく。

3.3.1 予備的調査の概要

2017年5月下旬、韓国の釜山にある釜慶大学において、日本語学習者50名(20代 の日本語・日本関連専攻者)を対象に対日イメージと日本語学習動機づけについて、質 問紙調査を行った。質問紙は授業の際に担当教師が配布し、その場で回収した。その結 果、日本及び日本人のイメージについては記入漏れがないが、日本語学習動機づけにつ いて3名の記入漏れがあり、有効回答は47であった。対象者の日本語レベル(初級・

中級・上級)については、休みの期間を除く日本語学習期間及びレベルの自己申告をも とにすると、初級32名(64%)、中級13名(26%)、上級5名(10%)であった。ま た性別は、女性37名(74%)、男性13名(26%)であった。

質問紙の作成は、日本及び日本人イメージについては呉(2008a,b)、大江(2012)、 加賀美・守谷・岩井(2014)、金(2016)などを、日本語学習動機づけについては縫部・

狩野・伊藤(1995)、田中(2012)、大西(2014)などを参考にして作成した。質問項 目は、「日本イメージ」19項目、「日本人イメージ」16項目、「日本語学習動機づけ」36 項目である。

分析方法については、SPSS 24を用いて日本及び日本人のイメージ、日本語学習動機 づけについてそれぞれ因子分析15(主因子法、プロマックス回転)を行い、その際、因

15 因子分析とは、複数の変数間の関係から変数の共通性や独立性を推定する統計手法であり、

観測された複数のデータの背後に共通要因が潜在しているとするものである。バリマックス 法は、各因子の負荷を拡散させるよう修正するもので、これよりどの因子にも高い負荷がかか っている(つまり解釈しにくい)変数を減らすことができる直交回転を行う手法である。プロ マックス法とは、先にバリマックス回転を行ってある程度の単純構造を得た後で、因子負荷を べき乗するなどして単純構造をより強調した因子パターンを作ってターゲット行列(目標行 列)に指定し、その目標に近づくよう斜交回転を行わせる手法であり、最近では多くの統計専

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子負荷量 16の絶対値が0.35以下の項目は除外することにした。質問項目についてのデ ータ処理は、「1=全然そう思わない、2=そう思わない、3=どちらともいえない、4=そう 思う、5=とてもそう思う」の5件法で求めた。そして、因子分析を行った結果をもとに し、日本及び日本人のイメージと日本語学習動機づけとの関連性を検討するため相関分 析17を行った。この際、前述したように、日本語学習動機づけについて得られたデータ は 47 であったため、47 人で分析を行った。また、自由記述(複数回答可)から得た

「2011 年以降の韓国人学習者や専攻者などの減少要因」については、それぞれの内容

をEXCELで整理した上でカテゴリー化して分析した。

3.3.2 予備的調査の結果

まず、「2011 年以降の韓国人学習者や専攻者などの減少要因」については、「地震・

放射能の問題」、「日韓関係の問題(政治・外交など)」、「中国語志向の影響」がそれぞ れ12答(22.2%)で最も多かった。また、日本及び日本人のイメージについて、日本 イメージでは「好条件」、「不安定」、「信頼性」、「個性的」の4つの因子、日本人イメー ジでは「信頼・興味・関心」、「規範的」、「二面的」の3つの因子、日本語学習動機づけ については「統合的」、「内発的」、「道具的」、「外発的」の4つの因子が抽出された。そ こで、因子名を命名する際、特に「統合的」と「内発的」、「道具的」と「外発的」の下 位項目の中に類似している項目が見られたため、本調査ではこのような判別が困難にな る項目について再検討する必要性が認められた。

そして、日本及び日本人のイメージと日本語学習動機づけの関連性については、上述 した2011年以降の韓国人学習者や専攻者などの減少要因について、最も多かった回答

門家が斜交回転を推奨している(石川・前田・山崎(編)2010)『言語研究のための統計入門』

p.219, p.229)。

16 因子負荷量とは、共通因子が観測変数に与える影響の「重み」、すなわち「因子にかかる負荷 の量」である(石川・前田・山崎(編)(2010)『言語研究のための統計入門』p.221)。

17 相関分析とは、複数の変数がどの程度の強さで相互に関係しているか、つまり、一方が変化 すれば他方もそれにつれて変化するという直線的な関係がどの程度の強さで見られるかを調 べる統計的分析方法である。相関係数(r)は、相関の強さであり、相関係数が絶対値で0.2 以下の場合は、「相関なし」0.2より大きければ「弱い相関」0.4より大きければ「中程度の 相関」0.7より大きければ「強い相関」があるとされる(石川・前田・山崎(編)2010)『言 語研究のための統計入門』pp.85-86)。

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は「地震・放射能の問題」であったにも拘らず、その日本イメージの「不安定」は日本 語学習動機づけと相関が見られなかった。また、日本人イメージでは「信頼・興味・関 心」が日本語学習動機づけの「内発的」に唯一、相関が見られた程度で、他の因子には 相関が見られなかった。この結果を鑑みて、日本及び日本人の肯定的イメージ、すなわ ち、先行研究に示されたように、対日のプラスイメージのみに相関があるのではないか という疑問が生じた。さらに、日本及び日本人のイメージと日本語学習動機づけには相 関が見られはしたものの、その因子の数は少なかった。他方、対象者が日本語・日本関 連専攻者であるため、例えば日本語学習を始めた理由として「専攻であるから」などと いう専攻者の観点からの回答が多く見られた。

以上の結果から、本調査では、調査対象者として日本語関連専攻者のみならず非日本 語専攻者(以下、非専攻者)も加え、調査を行う必要性が認められた。

次は、以上の予備的調査の結果を踏まえ、本調査の概要を述べていく。

3.4 本調査の概要

調査の時期は、2017 年11 月中旬から2018 年 3 月下旬にかけ、韓国のソウル大学

(ソウル市)、ソウル神学大学(富川市)、又松大学(大田市)、忠南大学(大田市)、釜 慶大学(釜山市)の5校(表5参照)において、日本語学習者(専攻者及び非専攻者)

361名を対象に質問紙調査を行った。最終的に記入漏れの多い6名を除く、355名のデ ータを得た。質問紙の配布については、ソウル大学を除く大学では、日本語教員が授業 時間に質問紙を配布し、その場で回収した。一方、ソウル大学の場合は、日本語教員が まず授業で調査についてアナウンスし、回答は期日までにメールで提出する方法を採っ た。ソウル大学で調査対象となったのは、新設の「アジア言語文明学部の日本言語文明」

で、その専攻者は 20 名程度である。そのうち10 名程度が韓国の徴兵制度に従い軍隊 入隊のため休学しているため、最終的に協力を得られたのは6名である。新設である学 科であるため、近年の対日イメージと日本語学習動機づけについてより明確にできると 判断し、少ない数ではあるが、データとして採用することにした。

3.4.1 調査対象者

対象者の属性について、学校別、性別、専攻別、日本語のレベル別に分類したものを、

次の表5、表6、表7、表8に示す。

まず、表5における「学校別」の内訳は、前述したように韓国の大学5校である。ま

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