3.1 本研究における「談話」の定義
本研究の分析対象は,ラジオの相談番組,図書館レファレンスの談話,日本語初級およ び中級教材における「相談場面」の談話である。
まず,ラジオの相談番組の「談話」「大話段」「話段」の定義を述べる。その他の分析対 象における「談話」「大話段」「話段」「小話段」については,ラジオの相談番組との相違点 を踏まえて説明する。
3.1.1 本研究における「談話」「大話段」の定義
ラジオの相談番組の「談話」は,放送一回分とする。『暮らしの電話相談』という番組と して,完結されているからである。参加者は,司会者・回答者が各1名,および,2~6 名の相談者である。
下位要素の「大話段」は,鈴木(2002)(2003a)(2003b)では,ラジオの相談番組固有の編 成上の区分の名称を立て,12 種の大話段を設けていた。が,本研究では,番組という,時 間的な制約があり,司会者やディレクターのもとで進行される特殊性はあるものの,完結 した談話であることを重視し,談話が「開始」し,「展開」し,「継続」し,「終了」する談 話の構造を主軸においた名称にした。これは,テレビの相談番組を分析した能田(1994) (1996)の「開始部」「展開部Ⅰ」「展開部Ⅱ」「結尾部」の4種の「大話段」を参考にしたも のである。
ただ,本研究のラジオの相談番組は,放送時間内に2回のニュースが挟まる。ニュース は,独立した「談話」であることから,放送1回分の「談話」の中の「談話」ともいえる が,ニュースの前後に,司会者が電話相談の受付を継続している旨や,受付電話番号の案 内を行っていることなどを聴取者に向けて伝えていることから,放送1回分の「談話」の 中の「大話段」として扱った。
ラジオの相談番組における「大話段」は,以下の5種類である。
Ⅰ.番組開始の大話段
Ⅰ-1.番組案内の大話段
Ⅰ-2.番組のテーマに関わる一般的解説の大話段
Ⅱ.番組展開の大話段 Ⅱ-1.電話相談の談話
Ⅱ-2.電話相談の補足解説の大話段
Ⅲ.番組継続の大話段
Ⅳ.番組終了の大話段
Ⅴ.別番組{ニュース・音楽}の大話段
各大話段の定義は,以下の通りである。
「Ⅰ.番組開始の大話段」には,「Ⅰ-1.番組案内の大話段」と「Ⅰ-2.番組のテーマに 関わる一般的解説の大話段」の2種がある。
「Ⅰ-1.番組案内の大話段」は,司会者が,番組開始を知らせるもので,聴取者に向け て,今日の相談のテーマ,回答者紹介,電話受付時間,電話番号等の紹介を行う。
参加者は,司会者と回答者であるが,回答者は,挨拶をするのみである。
「Ⅰ-2.番組のテーマに関わる一般的解説の大話段」は,回答者が,聴取者に,番組のテ ーマに関連する解説を行う大話段である。
医療相談では,「消化器」「漢方」「呼吸器」など,日によってテーマを定めて放送して いる。回答者が,聴取者に向けて,それぞれのテーマに関連した一般的な解説を行う。例 えば,医療相談の【資料2】「呼吸器」では,「風邪とインフルエンザの違い」,心理相談 の【資料4】では,「子どもの心身症の症状と対処法」などである。
参加者は,司会者と回答者で,司会者は,進行役および聞き手になり,回答者が解説を 行う。
「Ⅱ.番組展開の大話段」は,ラジオの相談番組の談話の中で,中心的な部分を担う。
相談者が参加する部分で,最も番組のテーマに即した部分である。「Ⅱ-1.電話相談の談話」
と「Ⅱ-2.電話相談の補足解説の大話段」の2種がある。
「Ⅱ-1.電話相談の談話」は,実際に相談者と電話をつなぎ,相談者の電話相談を受け,
回答者が回答する大話段である。参加者は,司会者,回答者,相談者である。相談者は,
資料によって2名~6名と人数に違いがあり,「Ⅱ-1.電話相談の談話」は,相談者の数 に伴って反復されることになる。
「Ⅱ-1.電話相談の談話」は,直接相談者と電話をつなぐことで,電話相談を開始し,
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展開し,終了の挨拶を交わすことで終了する点で,「談話」として完結しているといえる こと,図書館レファレンスや,日本語教科書・教材の相談の談話との構造上の比較を行う ため,本研究では,「談話」と呼ぶ。
「Ⅱ-1.電話相談の談話」は,参加者の目的と発話機能の分布により,4種の話段に分 かれる。「電話相談の談話」における,話段,小話段の定義は,後述する。
「Ⅱ-2.電話相談の補足解説の大話段」は,すべてに見られるわけではないが,「Ⅱ-1.
電話相談の談話」に後続して成り立つ大話段である。
参加者は,司会者,回答者である。
「Ⅱ-2.電話相談の補足解説の大話段」は,以下の2種がある。
①1件の電話相談終了後,先の相談者に対し,また,相談者と似た問題を抱えている聴取 者に補足説明を行う。司会者が回答者に質問し,回答者が答える場合と,回答者が,電話 相談終了後,似た問題を抱える聴取者に向けて,すぐに解説を加える場合がある。
②直接電話はつながないものの,個別の相談者の相談内容を司会者が代弁し,回答者が簡 単に回答をする相談者が参加しない相談である。医療相談の【資料1】に3件あるのみで ある。以下は,②の例である。
(例3-1)「Ⅱ-2.電話相談の補足解説の大話段」
1510 司 もうおひとかた、アドバイスをお願いします。
1511 司 Oにお住まいのTGさん、64歳の方、ご本人からの、男性からの相談なんです が、
1512 司 大腸の内視鏡検査のグループ3というのはどんなふうに考えればよいのでしょう か//と。
1513 回 うーん。
1514 司 えー、健康診断、地区の健康診断を受けてきて、
1515 司 えー、便の潜血反応が陽性となりました。
1516 司 専門の、おー、病院で、大腸の内視鏡検査を受けて、
1517 司 グループ3というふうに、
1518 司 何度か、あー、その結果が出たということです。
1519 司 主治医の先生からは、1と2は異常なし、
1520 司 4から5は、まあ、あのー、悪性腫瘍だというような説明を受けましたけれども、
1521 司 グループ3というのは、どういうふうに考えればいいので//しょうかという相談 です。
1522 回 あのー、
1523 回 そうですね。
1524 司 ええ。
1525 回 あのー、えーっと、これは、細胞の、うーん、正常か、癌に近いかというところ の、分け方の表し方なんです//が、
1526 司 はい。
1527 回 グループ1とかゼロとか、いうのは、まったくおっしゃるとおり正常で、
1528 司 はい。
1529 回 5になってくると、
1530 回 非常に癌に、非常に近いと。
1531 司 ええ。
【資料1】
「Ⅲ.番組継続の大話段」は,「Ⅴ.ニュース・音楽の大話段」の前後に現れる。参加者 は,司会者である。番組の中盤に,司会者が聴取者に向けて,今日の相談のテーマ,回答 者紹介,電話受付時間,電話番号等の紹介をし,番組が継続していることを示している。
「Ⅵ.番組終了の大話段」は,司会者が,番組が終了する旨を知らせる部分である。参 加者は,司会者と回答者である。司会者が,改めて,今日のテーマのまとめ,回答者の紹 介,回答者への礼を述べるもので,回答者は,挨拶をするのみである。
(例3-2)
1575 司 この時間は、消化器についての電話相談を致しました。
1576 司 お答え頂いたのは、東京女子医科大学のYI先生でした。
1577 司 ありがとうござ//いました。
1578 回 どうも失礼しました。 【資料1】
上記の各「大話段」には,下位要素の「話段」「小話段」が認められる。特に,回答者と 相談者による「Ⅱ-1.電話相談の談話」の多重構造を考察する。以下の【表3-1】のよ
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うに「Ⅱ-1.電話相談の談話」は,A~Dの4種の「話段」が認められる。
【表3-1】 相談の談話における3段階の話段の多重構造
話段 小話段
A.相談開始の話段 相談展開の話段
B-1.相談提示の小話段
※ B-2.相談内容確認の小話段
※ C-1.回答提供の小話段
※ C-2.回答確認の小話段 D.相談終了の話段
※⇒反復する C.相談うけの話段
B.相談かけの話段
Ⅱ-2.電話相談の補足解説 の大話段※
大話段
Ⅰ-1.番組案内の大話段
相 談 の 談 話
Ⅱ.番組展開の大話段
Ⅰ.番組開始の大話段
Ⅲ.番組継続の大話段※
Ⅳ.番組終了の大話段
Ⅴ.別番組(ニュース,音 楽)
Ⅰ-2.番組のテーマに関わ る一般的解説の大話段
Ⅱ-1.電話相談の談話
3.1.2 本研究における「話段」「小話段」の定義
本研究の「話段」は,佐久間(1987)(1992)(1992)(2000)の「話段」(「段」)の概念規定を 前提にして,さらに「参加者の目的」によって区切られる部分であるとしたザトラウスキ
ー(1993)を参考にして立てた拙稿(2003a)に,拙稿(2003a)の発話機能による分析結果を基 にした以下の定義を立てる。
「話段」とは,内容上のまとまりを持ち,談話の参加者の目的,発話機能により,他と 相対的に区分される部分である。各話段は,参加者の発話機能が異なり,さらに,各話段 は,その成立を決定づける発話が1文相当含まれる。
「話段」の他の認定基準としては,話者交替や沈黙が挙げられる。また,「話段」を認定 する言語形態的指標は,話段の開始部には,「メタ言語的発話」や,佐久間
(2002)
の「接 続表現の文脈展開機能」の b9「話を変える機能」に代表される接続表現,話題を切り 出す際の「あのー」,「なんか」,他の参加者への呼びかけ「~さん」,などがあり,終 了部には,b10「話をまとめる機能」,c1「話を終える機能」の接続表現,あいづちの 繰り返し,沈黙などが挙げられる。「小話段」は,「話段」のさらに下位の要素であり,「話段」の成立を支える必須の 小話段と,必ずしも不可欠とはいえないが,現れる場合がある副次的な小話段がある。
本研究における4種の話段,4種の小話段と主な参加者は,以下の通りである。
【図3-1】「電話相談の談話」の構造と各話段・各小話段における主な参加者
電話相談の談話の構造 主な参加者
A.相談開始の話段 司会者・回答者・相談者 相談展開の大話段
B.相談かけの話段 各小話段,および資料により,異なる。
B-1.相談提示の小話段 (医療相談)司会者/(心理相談)司会者と 相談者
B-2.相談内容確認の小話段 回答者と相談者
C.相談うけの話段 回答者と相談者
C-1.回答提供の小話段 回答者と相談者 C-2.回答確認の小話段 回答者と相談者 D.相談終了の話段 司会者・回答者・相談者