6.1 図書館レファレンスにおける「談話」の規定
本章では,日本語教科書における相談場面の談話,ラジオの医療相談,心理相談の「電 話相談の談話」との構造上の相違,回答者と相談者による発話機能の相違を考察するため に,自然談話の例として,図書館レファレンスにおける図書館員と相談者の相談の談話【資 料7】【資料8】【資料9】の3資料を分析・考察する。
3資料の発話数,所要時間等は,以下の通りである。
【表6-1】図書館レファレンスにおける相談の談話の発話数と所要時間 資料 相談者と発話数 回答者と発話数 沈黙 発話総数 時間
【資料7】 日本人母語話者
220
発話女性
210
発話15
発話 445発話 15分21
秒【資料8】 日本人母語話者
145
発話男性
195
発話5発話 340発話 14分
16
秒【資料9】 外国人留学生
105
発話女性
108
発話4発話 217発話 8分
21
秒相談者の年齢,その他については,以下の通りである。
【資料7】50代女性,日本人母語話者 大学院修士課程修了
【資料8】20代女性,日本人母語話者 大学院修士課程在学中
【資料9】30代女性,韓国人母語話者 大学院修士課程在学中,日本語レベル超上級
談話資料の収集に際しては,事前に早稲田大学中央図書館に調査の主旨を説明し,ご協 力いただいた。
相談者は,図書館レファレンスに純粋に相談があることを条件に募った。
各相談の談話が開始し,展開し,終了する完結した談話の収集を目的としたため,相談 者にも,回答者にも,細かい指示は与えず,相談者に随時カウンターに来てもらい,相談 を始めてもらった。
図書館レファレンスの3資料は,それぞれが一つの完結した「談話」であり,各資料の「談 話」は,ラジオの相談番組における各「電話相談の談話」にあたる。
6.2 図書館レファレンスにおける相談の談話の構造
図書館の図書館レファレンスカウンターの談話は,A~Dの4種の話段が認定され,「B.
相談かけの話段」「C.相談うけの話段」には,4種の小話段が認定される。これは,ラジ オの相談番組における「電話相談の談話」の構造と同様に認定される話段,小話段である。
A.相談開始の話段 相談展開の大話段
B.相談かけの話段
B-1.相談提示の小話段
B-2.相談内容確認の小話段
C.相談うけの話段
C-1.回答提供の小話段
C-2.回答確認の小話段
D.相談終了の話段
【表6-2】に【資料7】,【資料8】,【資料9】の話段,小話段の展開と発話総数に対 する各話段,各小話段の割合を示した。
【表6-2】によると,最も発話総数の多い【資料7】が最も展開が少なく,発話総数 が【資料7】の半分弱である【資料9】が最も多い展開になっている。
3資料とも「相談展開の大話段」である「B.相談かけの話段」と「C.相談うけの話 段」の4小話段「B-1.相談提示の小話段」「B-2.相談内容確認の小話段」「C-1.回答提 供の小話段」「C-2.回答確認の小話段」が反復している。
ラジオの電話相談では,「B-1.相談提示の小話段」は1度のみで,その後,提示された 相談内容に対して,「B-2.相談内容確認の小話段」「C-1.回答提供の小話段」「C-2.回答 確認の小話段」が反復されていた。図書館レファレンスの相談の談話は,「B-1.相談提示 の小話段」が【資料7】に2回,【資料8】に3回,【資料9】に5回現れ,その都度,「B-2.
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料資料8資料9 話段小話段発話番号,参加者発話数,割合話段小話段発話番号,参加者発話数,割合話段小話段発話番号,参加者発話数,割合 1回~5相5A相談開始の話段1回~3相3A相談開始の話段1相~2回2 1.1%0.9%0.9% の話段①B-1-1相談提示の小話段6相~29相24B相談かけの話段①B-1-1相談提示の小話段4相~12相9B相談かけの話段①B-1-1相談提示の小話段3回~10相8 5.4%2.7%3.7% B-2-1相談内容確認の小話段30回~41回12C相談うけの話段①C-1-1回答提供の小話段13回~14相2B-1-2相談提示の小話段11回~17相7 2.7%0.6%3.2% の話段①C-1-1回答提供の小話段42回~116相75C-2-1回答確認の小話段13回~14相2C相談うけの話段①C-1-1回答提供の小話段18-~29回12 16.9%0.6%5.6% の話段②B-2-2相談内容確認の小話段117回~171相55C-1-2回答提供の小話段17回~25相9C-2-1回答確認の小話段30相~40相11 12.4%2.7%5.1% B-1-2相談提示の小話段172相~186相15B相談かけの話段②B-1-2相談提示の小話段26相~32相7C-1-2回答提供の小話段41回~47回7 3.4%2.1%3.2% の話段②C-1-2回答提供の小話段187回~196回10C相談うけの話段②C-1-3回答提供の小話段33回~57相15B相談かけの話段②B-1-3相談提示の小話段48相~50相3 2.2%4.5%1.4% の話段③B-2-3相談内容確認の小話段197回~217相21B相談かけの話段③B-2-1相談内容確認の小話段58回~63相6C相談うけの話段②C-1-3回答提供の小話段51-~85回35 4.7%1.5%16.2% の話段③C-1-3回答提供の小話段218-~305相88C相談うけの話段③C-1-4回答提供の小話段64回~260相197C-2-2回答確認の小話段86相~103回18 19.8%59.7%8.3% の話段④B-2-4相談内容確認の小話段306回~316相11B相談かけの話段④B-1-4相談提示の小話段261相~278相18B相談かけの話段③B-1-4相談提示の小話段104相~105回2 2.5%5.5%0.9% の話段④C-1-4回答提供の小話段317相~435相119C相談うけの話段④C-1-5回答提供の小話段279回~308回30C相談うけの話段③C-1-4回答提供の小話段106回~122相17 26.7%9.1%7.9% 436相~445相10C-2-2回答確認の小話段309相~324相16C-2-3回答確認の小話段123相~128回6 2.2%4.8%2.8% 445C-1-6回答提供の小話段325回~334相10B相談かけの話段④B-1-5相談提示の小話段129相~132相4 100.0%3.0%1.9% D相談終了の話段335回~340回6C相談うけの話段④C-1-5回答提供の小話段133-~188回40 1.8%18.5% 330C-2-4回答確認の小話段189相~210相22 100.0%10.2% D相談終了の話段211相~217回6 2.8% 216 100.0% レファレンスの3資料の談話の「B.相談かけの話段」「C.相談うけの話段」および,4小話段(「B-1.相談提示の小話段」「B-2.相談内容確認の小話段」「C-1.回答提供の 「C-2.回答確認の小話段」)は,それぞれ複数回現れることがあるため,各話段の出現順に丸番号を,各小話段の出現順に,枝番号(B-1-1.B-1-2…)を付した。 発話数,割合」の欄には,各話段,小話段の発話数を示し,下段に発話総数に対する割合を示した。
発話総数 発話総数に対する割合
【表6-2】図書館レファレンスの相談の談話における「話段」と「小話段」の展開 発話総数 発話総数に対する割合
資料7 発話総数 発話総数に対する割合 192
相談内容確認の小話段」「C-1.回答提供の小話段」「C-2.回答確認の小話段」が現れる。
複数の相談を一つ一つ解決していく展開になっている。
以下,各話段,小話段の例を挙げる。
まず,「A.相談開始の話段」は,相談者と回答者の挨拶の話段であり,3発話程度の非 常に短いものである。回答者と相談者の〈関係作り・儀礼〉の発話が見られる。
(例6-1)
1
回 どうぞ。2
相 おはようございます。3
相 お願いします。 【資料7】「B.相談かけの話段」の「B-1.相談提示の小話段」は,相談者の相談内容が明確であ り,5発話程度で行われている。本研究の分析対象である図書館レファレンスの談話は,
相談者が文献収集に関する相談をしている。相談者は,自分がどこまで文献検索を行った かを述べ,(WINEで検索したら早稲田にはなかった。/中央図書館にはなく,本庄,戸 山にあると書かれていた)文献を入手する方法を聞く。(例6-2)のように,「N1はV んですけどー,N2がVないんですがー。」というⅣ-2〈意見説明〉により,間接的に回答 者に入手の方法について教えてほしいという相談内容を提示している。
(例6-2)