把握することが補助されていた.このことから,提案する情報デザイン手法によって
「集合知におけるコンテンツの時間性」に対するリテラシーを支援でき,コンテンツの 意識化が促進されたことについて述べる.
図12: 駅校内図の例(池袋駅)
これらの見解をふまえると,ベビーカーの利便性を向上させる取り組みは行われてい るが,既存の地図やガイドラインを有効に活用するためには利用者間の意識を共有す る必要があるといえる.
・鉄道駅におけるベビーカー利用に対する社会意識
谷口ら[74]は,ベビーカー利用者の行政対応への依存度とベビーカーへの理解度を調 査しており,その依存度と理解度は世代によって異なることを報告している.先述し た公共機関の対応では,ベビーカー利用者への対応は,ユーザの判断に依存している.
つまり,既存の取り組みでは,ユーザの立場ごとの認識が異なった場合には,ユーザ 間のコミュニケーションに不具合をもたらすことが懸念される.また,井出ら[75]は ベビーカーを利用する人ほど,駅が使いにくいものになっていることを示した.これ より,ベビーカー利用者の経験値では補うことのできない潜在的な不便性が駅にはあ ることが読み取れる.
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一方,本研究では意識調査結果の公開範囲についても言及したい.これらの研究にお ける意識調査は利用者へのアンケートによって行われているため,具体的な問題点を 把握することが可能である.しかし,調査結果は,鉄道駅従業員などの業務的関係者 に向けて,専門用語を含むドキュメントで公開されている.そのため,一般市民から の閲覧はされにくく,これらの調査結果が諸課題の解決や意識の共有のために実世界 の利用者に還元されていないといえる.
・ウェブコミュニティでの情報交換
ベビーカー利用に対する理解の向上を目指して,一般市民の参加が可能なウェブコ ミュニティが形成されている.
例えばうぃめんずぱーく[76]は,妊産婦のための出産・育児に関する意見を交換する SNSであり,駅でのベビーカー利用に関する振る舞い方のアドバイス・トラブル・駅 の構造の利便性などの,様々な議論が行われている.しかし,うぃめんずぱーくの閲 覧および投稿は,妊産婦に限定されており,一般利用者に情報の共有はされていない.
らくらくおでかけネット[77]は,乗り換え案内と共に,駅のバリアフリー情報を提示 するサービスである.誰でもサービスを利用することができるが,利用者の体験談の 掲載がされていないため,従来の駅構内図と同様の課題を持つといえる.まますぱあ と[78]はベビーカー利用者をターゲットとし,ユーザの駅ごとの体験談を掲載するコ ンテンツである.しかし,体験談の投稿は,ベビーカー利用者に制限されており,一般 利用者の意見を提示する仕組みを備えていない.一方,誰でもアクセス可能なFAQサ イト[79]においても,ベビーカーに関する投稿がされている.しかし,駅利用におけ る体験談には,答えを求めないもの,たとえば「〜してもらって嬉しかった/悲しかっ た」といったものがあるため,FAQサイトでは補うことができない.
5.2.2 Twitterに投稿される意見
これまでに述べたように,ベビーカー利用に対する認識は,ベビーカーの利用者か否 かといった属性や,年代によって大きく異なる.しかし,ベビーカーに対する理解を 向上させる既存の取り組みは,このような認識の差異を埋めるための仕組みを設けて いなく,異なる立場にいる者同士の知見をすり合わせるための環境がない.Twitterで は頻繁に駅とベビーカーに関わる意見が投稿されている.
図13: 2014年8月1日から2014年9月30日の間のツイートの投稿数の推移
表11: アカウントの重複投稿回数 回数 アカウント数
11 1
9 1
8 2
7 1
4 1
3 5
2 19
1 461
2014年8月1日から2014年9月30日の間に,Twitterで「駅 ベビーカー」に関わ るツイートの調査を行った.その結果,調査期間に得られた総ツイート数は491件で あった.図13は,「駅 ベビーカー」に関わるツイートの投稿数の推移の記録である.
これより,調査期間において日にちごとの投稿数にばらつきがあることが読み取れる.
また,アカウントの重複投稿回数を表11にまとめる.これより,多様なユーザによる 投稿がされていることがわかる.
なお,主流メディアであるテレビやラジオ・新聞は,話題性を重視するため,常時こ れらの情報を取り上げることはない.反面,Twitterには主流メディアによる影響を受 けた意見や体験も記載されることがある.本研究実施時において,ベビーカーマーク
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が普及され始めたこともあり,主流メディアによって,時期ごとに多様な視点から諸 課題に対するレポートがされている.したがって,Twitterにおいても,主流メディア の視点に影響を受けた「時事的」な意見や体験が投稿される.
一方,表示の条件にもよるが,Twitterのアプリケーションのインタフェースでは,1 度に閲覧できるツイートは多くとも10件である.Twitterの速報性と話題性を重視し たWUIでは,時間軸に沿ってコンテンツが提示されるため,過去の情報の閲覧は難し く,多様性の提示のためには,時間以外の指標によってコンテンツを提示するインタ フェースが必要である.これらの課題は,オルタナティブメディアの表現を模索する ための要件になりうる.
この要件に対応する手法として,ウェブ上に書き込まれるユーザの無意識的な文章 から,社会事象を集約するソーシャルセンサ(本稿3.4節参照)に注目する.ここでは,
実世界で起きている出来事を検出するイベント検出や,諸事象におけるコミュニケー ションの円滑化や社会意識の把握といった効果と,一般ユーザの生活に基づく知識の ボトムアップを図ることが期待されている.したがって,Twitterに投稿されるベビー カーに対するコンテンツをソーシャルセンサとして用いることで,異なる立場にいる 利用者の情報の把握が可能になる.