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最近のリテール決済の動向

第 5 章 最近の金融動向と今後の展望

2. 最近のリテール決済の動向

ドイツにおける決済手段として最もポピュラーなのは現金である。しかしながら、

長期的にみると現金決済の比率は低下傾向にあり、デビットカード決済やオンライン 決済等の非現金決済の比率が徐々に高まっている。

(1) 現金決済や非現金決済の動向

Deutshce Bundesbankの調査からドイツのリテール決済手段をみると、現金決済比

率が47.6%(2017年)となり、これまでの調査と同様、最もポピュラーな決済手段と

なった(図表20)170。同調査では、現金決済が選好される背景として、同決済による プライバシーの確保、支出の透明化、決済の迅速さなどが挙げられている。

図表20: 手段別にみたドイツの決済状況

2008

(%) 2017

(%) 決済額(ユーロ)

現金決済 57.9 47.6 297,901

カード決済 29.9 39.6 247,933

うち、デビットカード 25.5 34.0 212,576

うち、クレジットカード 3.6 4.4 27,578

その他カード(非接触型等) 0.8 1.2 7,779

その他非現金決済 12.5 12.9 80,268

うち、振り込み 8.9 5.6 34,749

うち、引き落とし 1.9 2.4 15,181

うち、オンライン決済 0.3 3.7 23,258

うち、モバイル決済 0.0 0.02 124

その他 1.4 1.2 6,956

決済合計 100 100 626,102

(注)決済額は1日当たりの金額。四捨五入の関係で、各項目の合計は必ずしも100.0とならない。

(出所)Deutsche Bundesbank(2018)より作成。

もっとも現金決済の比率は約10年前(2008年)には57.9%であり、長期的にみれ ば、同決済の比率は低下傾向にある。非現金決済手段の中で比率を高めているのがカ ード決済であり、デビットカード決済の比率は 34.0%(2008年:25.5%)、クレジッ トカード決済の比率は4.4%(同3.6%)となった。デビットカード決済の方が、相対 的に普及が進んでいると言える。

国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)傘下の決済・市場インフラ 委員会(Committee on Payments and Market Infrastructures, CPMI)が毎年取りまと めて発表している統計年報をみると、ドイツにおけるデビットカード機能を持つカー ドによる決済額は増加傾向にあり、2016 年に 2,530億ユーロとなった(次頁図表 21 左)。一方、クレジットカード機能を持つカードによる決済額は70億ユーロと、デビ ットカード決済額の3%程度にとどまった。

170 Deutsche Bundesbank(2018)。なお、決済比率は決済額ベースである(決済回数ベースではない)。

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図表21: デビットカード、クレジットカードの普及状況(決済額の推移、保有枚数)

(出所)国際決済銀行 (BIS), “Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries”(各年版)を基に作成

https://www.bis.org/list/cpmi/sds_1/tid_57/page_1.htm (201865日閲覧)

デビットカード機能付きカードの一人当たり発行枚数をみると、ドイツでは2016年 時点で 1.32枚であった(前掲図表 21右)。これに対して、クレジットカード機能付 きカードの一人当たり発行枚数は0.07枚にとどまっている。

このようにデビットカードがクレジットカードよりも好まれる理由として、ドイツ 国民がクレジットカードに対して、決済から銀行引き落としまでに時間がかかり支出 の透明化が図れないと認識していること、親しみが薄いと感じていること、利用可能 な場所が限定的と捉えていること等が挙げられている171。また、多くの場合、銀行発 行のキャッシュカードにデビットカードの機能が備わっていることも、デビットカー ドの普及に影響していると考えられる。

(2) 非現金決済におけるオンライン決済・モバイル決済の動向

上述の通り、ドイツの非現金決済手段はデビットカードやクレジットカードが中心 であるが、近年、プレゼンスが高まりつつあるのがオンライン決済である。Deutsche

Bundesbankの同調査によると、2017年時点でオンライン決済の比率は3.7%であり、

約10年前(2008年)の 0.3%から上昇した。ドイツにおいてオンライン決済は、ク レジットカード決済(4.4%)並みのプレゼンスを有している。

他方、スマートフォン上のアプリ等を通じたモバイル決済に関しては、2017年時点

で 0.02%となっている。モバイル決済は、約 10年前にゼロであったことから徐々に

普及しているが、現状、オンライン決済ほどの存在感は無い。モバイル決済という手 段に関しての認知は進んでいるものの、同調査によると、多くの人は、あえてモバイ ル決済を利用する必然性を感じていないほか、モバイル決済の安全性に疑問を持った り、使い方が面倒と捉えたりしているとされている。

171 脚注169に同じ。

0 50 100 150 200 250 300

2001 2004 2007 2010 2013 2016 合計

デビットカード クレジットカード

(10億ユーロ)

(年)

1.32

0.0 0.07 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

2001 2004 2007 2010 2013 2016 デビットカード

クレジットカード

(枚)

(年末)

48 (3) リテール金融機関に関する法規制

リテール金融機関にとって重要なのが、前述した「オープン・バンキング」という 新たな潮流であり、その追い風となっているのがEUの2つの規制である172

1つ目は、第2次決済サービス指令(Payment Service Directive 2, PSD2)である173

PSD2は、FinTech等の新たな決済サービスの担い手が台頭してきたことを受け、金融

機関等の決済サービス提供者に係る規制であった決済サービス指令(2007年)の後継 として策定された。PSD2により、金融機関は、「決済発動サービスプロバイダ(Payment Initiation Service Provider, PISP)」や「口座情報サービスプロバイダ(Account Information Service Provider, AISP)」に対し、標準化された「API(Application Programming Interface)」へのアクセスを提供することが求められる。PISP とは、

オンラインショップと銀行口座を接続し、口座振替によりインターネット上で決済を 発動するサービス等の提供者であり、AISPとは、複数の口座情報を一覧化出来るサー ビス等の提供者である。API は、オペレーティング・システムやアプリケーションの 機能を利用するための接続仕様であり、API を介することで、企業間の情報共有等の 連携が容易となる。APIの仕様を公開することで(オープンAPI)、PISPやAISPが 金融機関の決済口座等にアクセスし、金融サービスを提供することが可能となる。

第2は、一般データ保護規則(General Data Protection Regulation, GDPR)である174。 GDPRは、EUにおける個人情報の保護を幅広く規定する規則であり、データ保護指令

(1995年)が改正されると共に、EU規則へと格上げされたものだ。GDPRにより、

個人情報保護の強化が図られるが、金融機関にとって特に重要となるのが、情報移管 の権利である。即ち、個人は、企業等に提供した自身の情報に関し、機械で読み取る ことが可能な一般的に利用されるフォーマットで受領し、また、他企業等へ当該情報 を移管する権利が認められる。金融機関にとっては、顧客が望めば、これまで自行内 に囲い込んできた顧客の個人情報を、FinTech 企業等の第 3者に移管しなければなら なくなったのである。

以上の2つのEU指令・規則により、金融機関とFinTech企業等が顧客情報を共有 し、従来よりも容易に連携が可能となった。ドイツでも前述した通り、Fidorのような 事例が増えている。

172 PSD2及びGDPRに関する記述は、特に断りの無い限り、神山・富永(2017)に基づく。

173 Directive (EU) 2015/2366 of the European Parliament and of the Council of 25 November 2015 on payment services in the internal market, amending Directives 2002/65/EC, 2009/110/EC and 2013/36/EU and Regulation (EU) No 1093/2010, and repealing Directive 2007/64/EC

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32015L2366

EU指令であるPSD2をドイツの国内法化するために制定されたのが、決済サービスに関する監督法(Gesetz über die Beaufsichtigung von Zahlungsdiensten)である。

https://www.gesetze-im-internet.de/zag_2018/BJNR244610017.html

174 Regulation (EU) 2016/679 of the European Parliament and of the Council of 27 April 2016 on the protection of natural persons with regard to the processing of personal data and on the free movement of such data, and repealing Directive 95/46/EC

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/ALL/?uri=CELEX:32016R0679

PSD2と異なり、EU規則であるGDPRはドイツの国内法化が必要とならない。

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