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家計金融資産・負債の動向

第 4 章 金融セクターにおけるリテール金融機関の特徴

3. 家計金融資産・負債の動向

ここまで、リテール金融サービスの供給主体である貯蓄銀行・信用協同組合の特徴 や収益性を概観してきた。以下では、リテール金融サービスの需要主体である家計の 金融資産・負債が、金融取引の結果としてどのように変化してきたかを概観する。

(1) 家計金融資産

2017年12月末時点でドイツ家計の金融資産の合計は約5.9兆ユーロである(次頁図

表17)。資産の各項目の比率をみると、現金・預金が39.5%を占めており、次いで保

険・年金準備金が37.1%、株式・債券が合計で13.1%、投資信託が9.8%を占める。2000 年時点と比較すると、現金・預金の比率は4.3%pt、保険・年金準備金の比率は7.3%

pt上昇し、株式・債券、投資信託の比率は低下している。

(i)現金・預金

現金・預金は残高が約2.3兆ユーロで、金融資産全体の39.5%を占める(2017年12 月末時点、特筆しない限り以下同様)。詳細をみると、現金が1,916億ユーロ(金融資

産全体の3.3%)、流動性預金が12,877億ユーロ(同22.0%)、貯蓄性預金(定期預

金等)を含むその他預金が8,319億ユーロ(同14.2%)となっている。2000年時点と の比較において、現金と流動性預金の比率は各々1.2%pt、14.3%pt上昇し、その他預 金の比率は11.2%pt低下している。低金利等を背景に、家計の流動性選好が強まって いるとみられる131

(ii)株式・債券

株式は残高が約6,421億ユーロで、金融資産全体の 11.0%を占める。債券は残高が

約1,205億ユーロで、金融資産全体の2.1%を占める。ドイツでは、家計金融資産にお

ける株式・債券のプレゼンスが高くなく、金融危機後はその傾向が一層顕著となって いる。2000年時点との比較において、株式と債券の比率は各々5.9%pt、3.9%pt低下 している。危機によって家計のリスク許容度が低下したためと推察される。

(iii)投資信託

投資信託は残高が約5,762億ユーロで、金融資産全体の9.8%を占める。2000年時 点との比較において、投資信託の比率は1.1%pt低下しており、株式・債券と同様、金 融危機後に家計のリスク許容度が低下したことが影響したと考えられる。

(iv)保険・年金準備金

保険・年金準備金は残高が約2.2兆ユーロで、金融資産全体の 37.1%を占める。詳 細をみると、損害保険が3,512億ユーロ(金融資産全体の6.0%)と少ない一方、生命 保険・年金保険が9,789億ユーロ(同16.7%)、年金準備金等が8,439億ユーロ(同

14.4%)と多い。2000年時点との比較において、保険・年金準備金の比率は 7.3%pt

上昇している。この一因として、「リースター年金制度(Riester-Rente)」が挙げら れる。この制度は、2002年に導入された任意加入の確定拠出年金で、運用時には非課 税であるだけでなく、加入の拠出額に応じて助成金若しくは所得控除が受けられる132

131 2014年以降のECBの低金利政策等が家計の貯蓄行動に変化をもたらした可能性がある。ドイツの家計へのアンケート調

査(Marek(2017))では、2016年時点において、半数以上の家計が低金利の長期化を予想し、そうした家計の40%程度 が以前よりも貯蓄をしなくなったとされている。

132 リースター年金は、齋田(2009)が詳しい。リースター年金は、2001年の年金制度改革で、財政状況が逼迫する公的年 金制度における給付削減を国民の自助努力により補完するとの方針に基づき、2002年に導入された。加入者は、リース

38

リースター年金契約数は、開始年(2001年)には140万件だったが、2017年には1,659 万件に達している133

図表17:ドイツにおける個人金融資産の内訳推移

2000 2005 2010 2015 2016 2017

現金・預金 (10億ユーロ) 1,191 1,422 1,713 2,095 2,209 2,311

(構成比%) 35.1 35.1 38.8 39.2 39.6 39.5 現金 (10億ユーロ) 72 105 106 153 175 192

(構成比%) 2.1 2.6 2.4 2.9 3.1 3.3 譲渡性預金 (10億ユーロ) 259 448 694 1,082 1,188 1,288

(構成比%) 7.6 11.1 15.7 20.3 21.3 22.0 その他預金 (10億ユーロ) 860 869 913 859 846 832

(構成比%) 25.4 21.4 20.7 16.1 15.2 14.2 債券 (10億ユーロ) 201 291 219 140 127 121

(構成比%) 5.9 7.2 5.0 2.6 2.3 2.1 株式・出資金 (10億ユーロ) 573 513 422 556 590 642

(構成比%) 16.9 12.7 9.6 10.4 10.6 11.0 投資信託 (10億ユーロ) 371 479 396 485 518 576

(構成比%) 10.9 11.8 9.0 9.1 9.3 9.8 年金・保険準備金 (10億ユーロ) 1,010 1,297 1,622 2,030 2,102 2,174

(構成比%) 29.8 32.0 36.8 38.0 37.7 37.1 損害保険 (10億ユーロ) 122 186 243 324 340 351

(構成比%) 3.6 4.6 5.5 6.1 6.1 6.0 生保・年金等 (10億ユーロ) 520 639 765 920 948 979

(構成比%) 15.3 15.8 17.3 17.2 17.0 16.7 その他年金等 (10億ユーロ) 369 471 614 787 814 844

(構成比%) 10.9 11.6 13.9 14.7 14.6 14.4 その他 (10億ユーロ) 46 52 39 37 33 33

(構成比%) 1.3 1.3 0.9 0.7 0.6 0.6 合 計 (10億ユーロ) 3,392 4,054 4,411 5,343 5,579 5,857

(構成比%) 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

(出所)Deutsche Bundesbank,、Eurostatを基に作成

https://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Statistics/Time_series_databases/Macroeconomic_ac counting_systems/macroeconomic_accounting_systems_node.html (閲覧日:2018619日)

ター年金適格保険と呼ばれる、年金保険、銀行預金、投資信託、住宅貯蓄契約のいずれかを選択して契約する。特徴は、

拠出時に政府による助成措置(助成金及び所得控除)があること、支給時には助成金を含む元本全額が確保されることで ある。

133 ドイツ連邦労働社会省(Bundesministerium für Arbeit und Soziales), “ Statistik zur privaten Altersvorsorge (Riester-Rente)“(閲覧日:2018年6月19日)

http://www.bmas.de/DE/Themen/Rente/Zusaetzliche-Altersvorsorge/statistik-zusaetzliche-altersvorsorge.html 1,191201 1,422291 1,713219 2,095140 2,209127 2,311121

573 513 422 556 590 642

371 479 396

485 518 576

1,010

1,297 1,622

2,030 2,102 2,174

46

52 39

37 33 33

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000

2000 2005 2010 2015 2016 2017

その他

保険・年金準備金 投資信託 株式・出資金 債券 現金・預金

(10億ユーロ)

(年)

39 (2) 家計金融負債

2017年12月末時点で、ドイツ家計の金融負債の合計は約1.7兆ユーロである(図表

18)。負債の内訳では、銀行借入が 99.1%と金融負債の殆どを占めている。銀行借入

の残高は、2010年まで横ばい圏で推移していたが、2011年以降に増加傾向に転じ、こ こ数年は増勢が強まっている。

図表18:ドイツにおける個人金融負債の内訳推移

(出所)Deutsche Bundesbank,、Eurostatを基に作成

https://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Statistics/Time_series_databases/Macroeconomic_acc ounting_systems/macroeconomic_accounting_systems_node.html (閲覧日:2018619日)

別統計でドイツ家計の銀行借入(家計向け銀行貸出)の内訳をみると、増加を牽引 しているのが住宅ローンであり、消費者ローンの寄与が限定的であることが分かる(図

表19)。金融危機前に住宅バブルを経験しなかったドイツでは、低金利環境も追い風

となって、住宅需要が盛り上がり、住宅ローンの拡大に繋がっていると考えられる。

図表19:ドイツの家計向け銀行貸出残高の推移

(出所)Deutsche Bundesbankを基に作成 1,485

1,539

1,508

1,607

1,655

1,712 14

14

11

15

15

15

1,400 1,450 1,500 1,550 1,600 1,650 1,700 1,750

2000 2005 2010 2015 2016 2017

その他 銀行借入

(10億ユーロ)

(年)

-2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

消費者ローン 住宅ローン 家計向け貸出残高

(前年比、%)

(年)

40

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