第 7 章 :結論
3.8 最大伝達トルク低下の要因分析
再試作機においてポールピースをカーボン樹脂で覆う構造とすることでエアギャップは一定に保たれた が,前回モデルと同様に最大伝達トルクが低下する問題が生じた。最大伝達トルク低下の要因として下記 が考えられる。
• 低速ロータ磁石の表面磁束密度の低下
• ポールピース及び高速ロータのパーミアンスの低下
3.8.1 磁石の表面磁束密度の低下
リラクタンス型磁気ギアの最大伝達トルク低下の一要因として,低速ロータの磁石の磁束密度が低下し ている可能性を明らかにするため,低速ロータ磁石の磁石表面の磁束密度を測定した。磁石表面の測定点 と実験配置を図3.34に示す。図3.34(b)より,低速ロータのみを割り出し機によって回転させたときの磁 石表面の磁束密度分布をテスラメータを用いて測定する。図3.34(a)より,測定点は, 低速ロータの磁石 からx軸方向に0.5mm離した,高さ12mmの点とする。測定結果を図3.35に示す。図3.35より, 測定 結果と解析値の磁束密度分布はほぼ一致していることがわかり,低速ロータ磁石の磁束密度低下が最大伝 達トルクの低下の要因である可能性は低いと言える。
3.8.2 エアギャップ磁束密度の測定
上記の検討結果から最大伝達トルク低下の要因として低速ロータ磁石の磁束密度低下の可能性は低いた め,漏れ磁束の影響若しくは高速ロータ及びポールピースのパーミアンス低下によってトルクの発生に起
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 45
(a)低速ロータ磁石の表面磁束密度の測定点
(b)実験配置
図3.34 低速ロータ磁石の表面磁束密度測定の測定点と実験配置
図3.35 低速ロータ磁石の表面磁束密度の測定結果
因する磁束密度が減少していることが考えられる。これらの要因を検証するため,ギアが駆動中にポール ピースを鎖交する磁束をサーチコイルを用いて測定する。また,ポールピースにサーチコイルを巻いた三 次元の解析モデルを作成し,測定結果と比較する。サーチコイルのターン数は20turnとし,駆動条件は高 速ロータの回転速度600rpm, 低速ロータの回転速度100rpmにおいて無負荷時,最大負荷時1.2Nmのと きに測定する。無負荷時の電圧波形と磁束波形を図3.36に示し,最大負荷時の電圧波形と磁束波形を図 3.37に示す。図3.36, 図3.37より,無負荷時および最大負荷時にサーチコイルを用いて測定した電圧波 形および磁束波形は,解析値と同じ高調波成分を含む波形となった。しかしながら,測定した磁束の基本 波成分は解析値に比べて15%前後の減少があることがわかった。トルクは磁束密度の2乗に比例するこ とから,実機のトルクは解析値に対して約30%の減少があることが見積もれる。これは,拘束試験におい
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 46
(a)電圧波形 (b)磁束波形 (c)磁束波形のFFT結果
図3.36 無負荷時のサーチコイルによる測定結果
(a)電圧波形 (b)磁束波形 (c)磁束波形のFFT結果
図3.37 最大負荷時のサーチコイルによる測定結果
て実機のトルクが解析値に比べて約35%減少した結果とおおよそ一致しており, 漏れ磁束とポールピー ス及び高速ロータのパーミアンスの減少がトルクの減少に大きく影響していると考えられる。
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 47
3.9 まとめ
本章では,高速駆動可能なリラクタンス型磁気ギアを提案し,下記項目について示した。
• リラクタンス型磁気ギアは高速ロータに磁石を有さないことから高い機械強度を満たし, また高 速ロータにおける磁石渦電流損が発生しないことから高速領域において高い効率を得ることがで きる。
• リラクタンス型磁気ギアにおいて高速ロータに磁石を有さない構造による新しい磁束変調原理を示 した。
• FEAより,リラクタンス型磁気ギアは従来のSPM型磁気ギアに比べて高速ロータに生じる応力を 低減できることから高速領域での駆動が可能となることを示した。また, 高速ロータによる磁石渦 電流損が発生しないことから,高速領域においても高い効率が得られることを示した。
• 実機実験により, リラクタンス型磁気ギアが理論に基づきギアとして動作可能であることを検証 した。また, カーボン樹脂でポールピースを補強した再試作機により,高速領域30000rpmにおい て動作可能であることを示した。また, 10000rpm以下かつ高負荷の駆動領域において85%〜95
%の効率を満たすことを明らかとした。
• 実機の最大伝達トルク低下の要因分析として,低速ロータ磁石の表面磁束密度及びエアギャップの 磁束密度を測定することで,高速ロータとポールピースのパーミアンスの低下または漏れ磁束の影 響であることを明らかとした。
• リラクタンス型磁気ギアの課題として,トルク密度の向上,低負荷領域および高速領域における更 なる効率向上が必要とされる。
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第 4 章
フラックススイッチング型磁気ギア
前章までに提案したリラクタンス型磁気ギアは高速駆動が可能であるが,一方でトルク密度が低いため ギアサイズが大型化する問題がある。これらの問題に対し, 本章では高速駆動が可能かつ高トルク密度を 満たすことができるフラックススイッチング型磁気ギアを提案する。