第 7 章 :結論
4.6 実験による特性評価
第4章 フラックススイッチング型磁気ギア 62
(a)風損を考慮したギア損失
(b)風損を考慮したギア効率
図4.16 風損を考慮したギア損失とギア効率
また,風損対策として高速ロータをシュラウド構造やモールド構造とすることで風損を大幅に低減するこ とができる[81]。
第4章 フラックススイッチング型磁気ギア 63
(a)実機概観
(b)高速ロータ
(c)ポールピース
(d)低速ロータ
図4.17 フラックススイッチング型磁気ギアの実機
表4.4 フラックススイッチング型磁気ギア実機の仕様
Pole pairs of high speed rotor 1 Pole pairs of low speed rotor 12 Pole pairs of stationary field magnet 10
Pole pieces 20
Gear ratio 1:6
Diameter of low speed rotor [mm] 66
Stack length [mm] 30
Air gap length [mm] 0.5
Permanent magnet material Sintered Nd-Fe-B(N42SH-R) Core material Magnetic steel sheet(35JN300)
第4章 フラックススイッチング型磁気ギア 64
図4.18 フラックススイッチング型磁気ギアの各ロータの回転速度
図4.19 フラックススイッチング型磁気ギアの各ロータのトルク
4.6.2 高速ロータと低速ロータの回転速度とトルク
フラックススイッチング型磁気ギアの各ロータの回転速度とトルクを測定し動作原理を検証する。フ ラックススイッチング型磁気ギアの実験配置は図3.11と同様の配置とする。高速ロータ及び低速ロータ の回転速度を図4.18に示す。図4.18より, 高速ロータの回転速度が30000rpmまでの速度領域におい て, 低速ロータの回転速度はギア比1:6の関係で出力されており,フラックススイッチング型磁気ギアは
回転速度30000rpmまでギアとして動作できることがわかる。モータの入力回転速度が3000rpm一定の
条件において,ヒステリシスブレーキの負荷を変えたときの高速ロータおよび低速ロータの出力トルクを 測定する。高速ロータ及び低速ロータのトルクを図4.19に示す。図4.19より,低速ロータのトルクは高 速ロータのトルクに対してギア比1:6の関係で出力されるが,損失の影響で理論値に比べて減少すること がわかる。以上の結果からフラックススイッチング型磁気ギアの実機は理論通り動作可能であることがわ かる。
第4章 フラックススイッチング型磁気ギア 65
図4.20 負荷を増加させたときの低速ロータのトルク
4.6.3 最大伝達トルクの測定
モータの入力回転速度100rpm一定の条件において,各ロータが脱調するまで負荷を増加したときの低 速ロータのトルクを測定する。負荷を増加させたときの低速ロータのトルクを図4.20に示す。図4.20よ
り, 75s付近において負荷が約2.0Nmを超えると高速ロータと低速ロータは脱調することがわかる。した
がって,フラックススイッチング型磁気ギア実機の最大伝達トルクは約2.0Nmとなりリラクタンス型磁 気ギアに比べて高い伝達トルクが得られる。
4.6.4 損失と効率
フラックススイッチング型磁気ギアの損失マップと効率マップを図4.21に示す。図4.21(a)より, フ ラックススイッチング型磁気ギアの損失はリラクタンス型磁気ギアと同様に回転速度が高くなるにつれ てコア損, 磁石渦電流損が増加するが, 負荷の変化に対して損失はほぼ一定の傾向となる。したがって,
図4.21(b)より,効率は低速かつ高負荷の駆動領域において高効率を満たすことがわかる。フラックスス
イッチング型磁気ギアの実機は,モータの入力回転速度20000rpm以下かつ高負荷領域において80%〜
92%の効率を満たす。しかしながら,低負荷領域,モータの入力回転速度20000rpm以上の領域では損失 が増加し効率は低下する。
第4章 フラックススイッチング型磁気ギア 66
(a)損失マップ (b)効率マップ
図4.21 フラックススイッチング型磁気ギアの損失マップと効率マップ
4.7 まとめ
本章では,高速駆動可能なフラックススイッチング型磁気ギアを提案し,下記項目について示した。
• フラックススイッチング型磁気ギアは,リラクタンス型磁気ギアと同様に高速ロータに磁石を有さ ないことから高い機械強度を満たし,また高速ロータにおける磁石渦電流損が発生しないことから 高速領域において高い効率を得ることができる。さらに, ポールピースの間に配置した固定界磁 磁石の起磁力を利用することでリラクタンス型磁気ギアに比べて高いトルク密度を得ることがで きる。
• フラックススイッチング型磁気ギアの高速ロータに磁石を有さない構造による新しい磁束変調原理 を明らかにした。
• FEAより, フラックススイッチング型磁気ギアがリラクタンス型磁気ギアに比べて高いトルク密 度が得られることを示した。また, 界磁磁石をポールピース間に配置することにより,磁石を鎖交 する磁束密度の周波数が下がり, SPM型磁気ギアに比べて磁石渦電流損が低減できることを示し た。また, リラクタンス型に比べてギア体積が低減されるため損失を低減でき,磁束変調伝達方式 の磁気ギアの中で最も高効率を満たすことができることを示した。
• フラックススイッチング型磁気ギアの実機実験より, 実機が理論に基づきギアとして動作可能であ ることを検証した。また,回転速度30000rpmの高速領域においても動作可能であることを示し, リラクタンス型磁気ギアに比べて高い伝達トルクが得られることを示した。さらに, フラックスス イッチング型磁気ギアの実機はモータの入力回転速度20000rpmかつ高負荷の駆動領域において 80%〜92%の効率が得られることを明らかとした。
• 課題として,低負荷領域および高速領域における更なる効率向上が必要とされる。
67
第 5 章
Magnetic Multiple Spur Gear の提案
前章までに磁束変調伝達方式に基づいたリラクタンス型磁気ギアとフラックススイッチング型磁気ギア を提案したが,磁束変調伝達方式の磁気ギアでは下記の課題が残る。
• 高い伝達トルクを得るためには高速ロータ外径を大きく確保する必要があるが, 高速ロータ径を 大きくすると高速ロータに高い応力が生じる。
• ポールピースにより磁束変調した際に多くの高調波磁束が発生し磁石渦電流損およびコア損が増大 するため,更なる効率向上は難しい。
• 変調磁束はトルクの発生に寄与するが, 磁束の基本波成分はトルクの発生に寄与しないことから, 更なるトルク密度の向上は難しい。
• ポールピースの使用は構造を複雑化し, ギアの機械強度を低下させる。
本章では磁束直接伝達方式に基づいて高速駆動に適した新しいMagnetic Multiple Spur Gear(MMSG)
を提案し, MMSGの構造と特徴, 理論について述べ, インホイールモータシステムを対象にしたMMSG
の設計方法について示す。また, FEAによる特性評価を行い, MMSGの有効性を示す。