第 7 章 :結論
3.5 実験による特性評価
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 28
(a)ギア効率
(b)ギア損失
図3.7 リラクタンス型磁気ギアのギア効率とギア損失
ロータの磁石渦電流損が発生しないため,損失を大幅に低減することができる。したがって,リラクタン ス型磁気ギアはSPM型磁気ギアに比べて高速領域において高い効率を得ることができる。
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 29
(a)実機概観
(b)高速ロータ
(c)ポールピース
(d)低速ロータ
図3.8 リラクタンス型磁気ギアの実機
3.5.2 拘束試験によるトルクの測定
拘束試験により, 損失が発生しない条件下において高速ロータおよび低速ロータのトルクを測定する。
拘束試験ではギアの低速ロータをヒステリシスブレーキにより拘束し,高速ロータを電気角一周期の区間 において位置を変えたときのトルクを測定する。このとき, 各ロータは静止した状態であるため損失の影 響は無視できる。
拘束試験によるトルク波形の測定結果と同条件下のFEAの解析結果の比較を図3.9に示す。図3.9よ り,測定結果と解析結果は主に基本波成分と6次の脈動成分を含むトルク波形となる。トルクの基本波成 分の測定結果と解析結果の比較を図3.10に示す。 図3.10より,測定結果の高速ロータおよび低速ロータ のトルクの基本波成分は0.22Nm, 1.3Nmとなっており, ギア比1:6の関係で出力されていることがわ かる。しかしながら,解析結果の低速ロータの基本波成分のトルクが2.0Nmであることに対して,測定結 果は解析結果に比べ35%減少する結果となった。
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 30
図3.9 拘束試験によるトルク波形
図3.10 拘束試験によるトルクの基本波成分の比較
3.5.3 高速ロータと低速ロータの回転速度
次に, ロータが回転時の動特性を測定する。実験配置図を図3.11に示す。図3.11より, 高速ロータの 回転速度をサーボモータにより一定速度に制御し,低速ロータの負荷をヒステリシスブレーキで変えたと きの各ロータのトルクと回転速度を測定する。ヒステリシスブレーキの負荷1.0Nm一定とした条件にお いて, 高速ロータの回転速度を変えたときの低速ロータの回転速度を測定する。図3.12に高速ロータと 低速ロータの回転速度の測定値と理論値(ギア比1:6となる各ロータの回転速度)を示す。図3.12より, 高速ロータの入力回転速度3000rpmまでの区間において,低速ロータの回転速度の測定値はギア比1:6
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 31
図3.11 実験配置図
図3.12 高速ロータと低速ロータの回転速度
の関係で出力されており,ギアとして正常に動作していることがわかる。
3.5.4 高速ロータと低速ロータのトルク
高速ロータと低速ロータが一定速度の条件において,ヒステリシスブレーキの負荷を変えたときの高速 ロータおよび低速ロータの出力トルクを測定する。ただし,各ロータの回転速度は高速ロータ3000rpm, 低速ロータ500rpmとする。図3.13に高速ロータと低速ロータのトルクの測定値と理論値(ギア比1:6 の関係に基づく各ロータのトルク)を示す。図3.13より,高速ロータと低速ロータのトルクの測定値は理 論値に比べて損失の影響によって減少する結果となる。すなわち, 低速ロータの出力に対して, 高速ロー タの出力(ギアの入力)が増加しており,効率が低下していることを表している。
3.5.5 高速ロータと低速ロータのトルク波形
高速ロータと低速ロータの回転速度が一定速度の条件において,低速ロータおよび高速ロータのトルク 波形を測定する。図3.14に各ロータの電気角1周期分のトルク波形を示す。図3.14より,低速ロータの トルクは高速ロータのトルクに対して約6倍になっていることがわかる。また,各ロータのトルクリプル
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 32
図3.13 高速ロータと低速ロータのトルク
図3.14 高速ロータと低速ロータのトルク波形
は解析のトルク波形と同様に14次のトルクリプルを含むことがわかる。低速ロータのトルクリプルは, 解析のトルクリプルに比べて大きい結果となった。
3.5.6 負荷角とトルクの関係
高速ロータと低速ロータが速度一定の条件において,ヒステリシスブレーキの負荷を変えたときのロー タトルクと各ロータに取り付けた位置センサにより負荷角を測定し, 負荷角とトルクの関係を測定する。
ただし, 負荷角は高速ロータと低速ロータの位置の偏差角とする。負荷を変えたときの負荷角の変化を図 3.15に示し, 負荷角とトルクの関係を図3.16に示す。図3.15より, 負荷が0Nmにおいて高速ロータと 低速ロータの位置信号はほぼ一致しており,負荷角が0°であることがわかる。ロータが脱調する最大負
荷付近1.2Nmにおいて高速ロータと低速ロータの位置信号はずれていることがわかり,およそ負荷角80
°であることがわかる。図3.16より,ヒステリシスブレーキの負荷を大きくすることで高速ロータと低
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 33
(a)負荷0Nmのときの負荷角 (b)負荷1.2Nmのときの負荷角
図3.15 負荷を変えたときの負荷角の変化
図3.16 負荷角に対するトルク
速ロータにかかる負荷トルクは増加していることがわかり, 高速ロータと低速ロータ間の負荷角も増加す る傾向が得られている。負荷角80°を超えるまで負荷を増加させるとロータは脱調した。
3.5.7 負荷を増加させたときの脱調現象
高速ロータと低速ロータが一定速度の条件において,ヒステリシスブレーキの負荷を脱調するまで増加 させたときの高速ロータと低速ロータのトルクを測定する。負荷を増加したときの脱調現象を図3.17に 示す。図3.17より,ヒステリシスブレーキの負荷を増加させると低速ロータ及び高速ロータのトルクは 増加していき負荷1.25Nm付近(Time63[s]あたり)で脱調していることがわかる。脱調が起きると高速 ロータおよび低速ロータは同期しないため, 平均トルクが0Nmとなることがわかる。磁気ギアの脱調現 象はトルクリミッタ機能として働き人命や機械装置の保護のために利用される。一方で, 磁気ギアの使用 用途に応じて脱調を回避するための制御方法や脱調から復帰するための制御方法の研究が取り組まれてい
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 34
図3.17 負荷を増加したときの脱調現象
る[75] [76]。
3.5.8 負荷に対するギア効率
高速ロータと低速ロータが一定速度の条件において,ヒステリシスブレーキの負荷をロータが脱調する 点まで変えたときの高速ロータおよび低速ロータの出力トルクを測定し,式(2.26)より効率を算出する。
ただし,高速ロータの回転速度600rpm, 低速ロータの回転速度100rpmとする。負荷トルクに対する効 率を図3.18に示す。図3.18より,負荷が増加するほど効率が高くなることがわかる。これは, 回転速度 が一定であるとき損失がほぼ一定であることに対して,負荷の増加により低速ロータの出力が増加するた めである。したがって,最大負荷1.2Nmにおいて効率が最大となり. 91%を満たす。
3.5.9 回転速度に対するギア効率
最大負荷1.2Nm一定としたときの回転速度に対する効率を測定し, 同一の駆動条件における解析値と
比較する。回転速度に対する効率を図3.19(a)に示す。図3.19(a)より,回転速度が増加するにつれて損 失が増加することから効率が低下していることがわかる。高速ロータの回転速度(モータの回転速度)の
3000rpmまでの速度領域おいて88%以上の効率を満たすが, 解析値に比べて効率が大きく低下した結果
となる。出力と損失の内訳を図3.19(b)に示す。図3.19(b)より,実機の損失は解析値に比べて増加して いることがわかり,効率低下の大きな要因として最大伝達トルク低下による出力の減少が大きいことがわ かる。
第3章 リラクタンス型磁気ギアの提案 35
図3.18 負荷トルクに対する効率
(a)回転速度に対する効率
(b)回転速度に対する出力と損失
図3.19 回転速度に対する効率と出力及び損失