2.3.3
節で示したように,
時系列データに対してsemantic interaction
に基づくインタフェースを実装する際の問題点として
,
以下の3
点が想定される[87].
3.2.1
時間軸上でのインタラクションの衝突本節において
,
時間軸とは,
散布図や線グラフを構成する軸のような画面(
空間)
上の表現ではな く,
インタフェース上で経過し,
分析者の体感として経過する実時間に対応する.
データ表現に時 間軸を用いる可視化手法として,
アニメーションが代表的である.
アニメーションの再生に伴い,
オブジェクトの配置は変化する.
一方で,
直接操作に基づく視覚的分析では,
インタラクションに よっても画面上のオブジェクトの配置は変化する. 2
つの配置の変化は共に時間軸上で発生する.
そのため,
パラメータの調整結果をフィードバックする際に,
図1
のようにアニメーションによる オブジェクトの移動と,
直接操作による移動が時間軸上で衝突すると考える.
そのため,
分析者は オブジェクトの配置の変化が直接操作に起因するのか,
データ自体の時間的変化に由来するかを 判断しづらくなり,
インタフェースの直感性が喪失してしまうと考える.
このとき,
アニメーショ ンを用いずに, small multiples
等の手法を用いて時系列データを可視化する手法も考えられる.
し かし,
時点数が増えた場合に画面領域が足りなくなったり,
操作適用済みの時点を判断しづらくな る問題が想定される.
以上の理由より,
時系列データの視覚的分析に対してsemantic interaction
を適用する場合,
時間軸上でのインタラクションの衝突が問題点として想定される.
3.2.2
時空間軸間でのインタラクションの衝突Semantic interaction
では,
直接操作は可視化されたデータオブジェクトに対する空間的な配置変更として行われる
[23]. 3.2.1
節で述べた時間軸における衝突と同様に,
オブジェクトが配置さ れたインタフェースの画面(
空間座標)
を空間軸と定義する.
この時,
オブジェクトへの直接操作図
1.
時間軸上でのインタラクションの衝突例は空間軸に対するインタラクションとして解釈できる
.
一方で,
再生速度の変更などの操作は,
時 間軸に対して行われる.
この時,
視覚的分析インタフェースにおいて一部の操作は,
時間軸・空間 軸の両方を適用対象として持つため,
操作の適用対象に関して,
時間および空間軸間の衝突が生じ る.
例えば,
図2
の左に示すように,
特定のオブジェクトに対する類似オブジェクトを検索する操 作を実行した場合を考える.
このとき,
操作の解釈手法として,
特定時点でのみ配置が近接するオ ブジェクトを検索するか(
空間的な類似),
全時点における時間的な値の変化傾向が類似するオブ ジェクトを検索するか(
時間的な類似)
について2
通りが考えられる.
そのため,
適用結果が分析 者の意図と異なりうる.
衝突を回避するために
,
時間的変化をアニメーションの様に時間軸上の変動として描画する モードと,
折れ線グラフの様に配置により描画するモードを別々に用意し,
両者を相互に切り替え るシステムも考えられる.
しかし,
分析者の操作に基づきモード間の遷移を暗黙的に行う場合,
誤 解釈による分析者の混乱が起こりうる.
また,
複数の可視化手法を明示的に切り替えたり,
複数の ビューとして並置する場合,
画面の切り替えによりインタラクション数が増加したり,
必要となる 画面領域が増大するため,
ユーザビリティ低下の原因となりうる.
時空間軸間での衝突が発生しうるインタラクションとして
, 2.1.1
節で述べたYi
らによるイン タラクションの分類[97]
では以下が該当すると考える.
•
Select:
興味のあるオブジェクトの選択•
Abstract
/Elaborate:
データの詳細度の変更•
Filter:
特定の条件に従うデータを提示•
Connect:
対象オブジェクトの関連オブジェクトの提示Select
操作の場合は,
空間上のオブジェクトの選択と,
時系列データ内の興味のある時点に関する選択が考えられる
. Abstract/Elaborate
操作における衝突の例として,
時系列データに対して詳 細を確認するために拡大(
ズームアップ)
操作を行った場合,
空間的に拡大表示したいのか,
再生 速度を遅くしたいのか, 2
通りの解釈が想定される. Filter
操作の該当例としては,図2
に示した ものが挙げられる.
加えて, Filter
操作では,
空間上への可視化に直接用いない,
オブジェクトの名 称を対象としたフィルタリングも想定されるため,
それらの判別は困難になりうる. Connect
操作 に関しても,
関連オブジェクトの判断に関して図2
と同様の問題が発生する.
(空間的解釈)
(時間的解釈)
全ての時点で類似するオブジェクト 特定の時点で類似するオブジェクト
類似 オブジェクト
の検索
オブジェクトの選択
Time: t
Time Time: t
t Time
システム: どちらの意図で操作されたかを解釈困難 図
2.
時空間軸間でのインタラクションの衝突例3.2.3
可視化手法間のトレードオフ可視化されるデータ数が増加した場合の視覚的混乱や重なりの発生への対処は
,
情報可視化・視覚的分析における一般的な課題である
[97].
特に,
時系列データの視覚的分析では,
この問題に 加えて時間軸における変化の把握が必要となる.
そのため,
認知的負荷を抑制しながらデータの時 系列変化を把握できる可視化手法が必要である.
アニメーションを用いた可視化手法は
,
データの変化概要を認識するタスクに関しては静的可 視化よりも有効であることが示されている[47].
そのため,
聴衆にデータの傾向を理解させるス トーリーテリングのような用途では有効といえる.
しかし,
探索的分析などにおけるデータの時 間的特性の把握にアニメーションを用いた場合,
再生/静止の繰り返し操作に起因する認知的負荷 の増大や,
探索の正確性・速度の低下が問題点として報告されている[72].
一方で,
軌跡やsmall
multiples
のような,
アニメーションを用いない可視化手法は,
探索の正確性や,
複数時点の比較に関してアニメーションより有効であるとされている
[72].
しかし,
前者は多数のオブジェクトが 存在する場合に点の重なりが生じ,
直接操作が困難となる.
後者の場合には,
可視化結果が占有す る画面領域が広くなり,
探索時間や認知的負荷が増大する[72].
また, small multiples
のような複 数ビューを用いる可視化手法にsemantic interaction
を適用する場合,
パラメータへの操作適用結 果を各画面について個別に確認する必要があり,
分析者は負担が大きくなるため,
指標構築タスク に対しては不適切と考える.
このように
,
時系列データに対して一意に有効な可視化手法は存在しない.
そのため,
分析目的 や対象データに応じて複数の手法を組み合わせる必要がある.
ドキュメント内
首都大学東京
(ページ 36-39)