P9橋脚位置における橋軸方向および橋軸直角方向の時刻歴応答変位をそれぞれ図‐6.3.3および図
‐6.3.4に示す.また,時刻歴応答変位から求めたフーリエスペクトルをそれぞれ図‐6.3.5および図
‐6.3.6 に示す.フーリエスペクトルの算定には,主要動の時間として
20sec
までの時刻歴応答変位 を用いた.図‐6.3.3および図‐6.3.4より,当然ではあるが橋軸方向に地震波を入力した場合は橋軸方向の変 位が大きく,橋軸直角方向に地震波を入力した場合は橋軸直角方向の変位が大きい.橋軸方向の変位 が大きいのは,橋の特性により橋全体の慣性力が免震支承と制震ダンパーを有するP9およびP10橋脚 に集中しやすいためである.これに対し,橋軸直角方向にはP9およびP10橋脚に作用する慣性力は大 きくなく,それ以外の橋脚位置で橋軸直角方向に大きく変位することにより,長周期化により慣性力 自体も大きく低減されたことによる.
一方,橋軸方向に地震波を入力した場合の橋軸直角方向の変位は 200mm 程度と有意な値であるが,
橋軸直角方向に入力した場合の橋軸方向の変位は極めて小さい.これは,主として橋の平面線形が曲 線であることにより,橋軸方向に入力した場合には橋台部の拘束効果によりP9およびP10橋脚に上部 構造慣性力の橋軸直角方向の分力が作用したものと考えられる.これに対し,橋軸直角方向に入力し た場合には上部構造慣性力の橋軸方向の分力は左右方向で打ち消されやすいため,橋軸方向への影響 はほとんどなかったものと考えられる.
変位波形は,橋脚が塑性化していないにもかかわらず,比較的早い時刻から正方向あるいは負方向 (a)地震波Ⅱ-Ⅲ-1 (b)地震波Ⅱ-Ⅲ-2 (c)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
図‐6.3.1 タイプⅡ地震動の入力地震波の時刻歴加速度
(a)地震波Ⅱ-Ⅲ-1 (b)地震波Ⅱ-Ⅲ-2 (c)地震波Ⅱ-Ⅲ-3 図‐6.3.2 タイプⅡ地震動の入力地震波のフーリエスペクトル
105
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (A)地震波Ⅱ-Ⅲ-1
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (B)地震波Ⅱ-Ⅲ-2
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (C)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
図‐6.3.3 時刻歴応答変位(橋軸方向成分)
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (A)地震波Ⅱ-Ⅲ-1
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (B)地震波Ⅱ-Ⅲ-2
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (C)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
図‐6.3.4 時刻歴応答変位(橋軸直角方向成分)
106
図‐6.3.5 時刻歴応答変位によるフーリエスペクトル(橋軸方向成分)
(A)地震波Ⅱ-Ⅲ-1 (d)135 度方向入力 (c)90 度方向入力
(b)45度方向入力 (
a
)0
度方向入力(B)地震波Ⅱ-Ⅲ-2
(d)135度方向入力 (
c
)90
度方向入力(
b
)45
度方向入力 (a
)0
度方向入力(
b
)45
度方向入力 (a
)0
度方向入力(C)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
(
c
)90
度方向入力 (d)135度方向入力107
図‐6.3.6 時刻歴応答変位によるフーリエスペクトル(橋軸直角方向成分)
(B)地震波Ⅱ-Ⅲ-2
(c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力
(d)135 度方向入力
(c)90 度方向入力 (a)0 度方向入力
(C)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
(b)45 度方向入力
(d)135 度方向入力 (A)地震波Ⅱ-Ⅲ-1
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力
(c)90 度方向入力
108
に偏り出している.これは,制震ダンパーやすべり支承は慣性力がそれぞれの降伏荷重を超えなけれ ばほとんど変位しないため,慣性力が大きく作用する方向に変位が偏ったものと考えられる.
一方,応答変位のフーリエスペクトルから,橋の応答周期には長周期成分が多くなっているようで あり,本橋の特徴を示している.特に,応答変位が大きい 0 度方向入力の橋軸方向成分では,4~10sec の周期帯で大きい.逆に,応答変位が小さい 90 度方向入力の橋軸直角方向のフーリエスペクトルでは,
制震ダンパーやすべり支承の1次剛性の寄与が大きいため,短周期成分でも比較的大きい.
さらに,橋軸方向入力時に橋軸方向の応答変位が橋軸直角方向に比べて顕著に大きいのは,橋梁の振 動特性によるものである.すなわち,橋軸方向の剛性が大きいことにより,P9およびP10橋脚の免震 支承と制震ダンパーに上部構造慣性力が集中しやすいためである.これに対し,橋軸直角方向入力時 には,両橋台およびP9,P10橋脚で支持されていることに加え,すべり支承のみで支持されているため,
上部構造が橋軸直角方向に大きく変位し,長周期化により上部構造慣性力の大きさが低減されている.
ただし,免震支承と制震ダンパーが設置されている P9 および P10 橋脚は振動モードの節になるため,
橋軸直角方向の応答が大きくなりにくい.
(4) 時刻歴応答抵抗力
P9 橋脚における支承部デバイスの橋軸方向および橋軸直角方向の時刻歴応答抵抗力を 0~30sec の 時間領域に対し,それぞれ図‐6.3.7~図‐6.3.8に示す.応答抵抗力は,正負が交番する抵抗力であ るが,各デバイスの分担力を確認するため,絶対値で表示した.ここでは,0~30sec の時間帯の外,
主要動の時間帯として 5~15sec に対して示した.
時刻歴応答抵抗力より,入力される慣性力に対し図-6.2.3に示すように,1次剛性の大きいデバイ スから順に抵抗し始めることがわかる.すなわち,免震支承の積層ゴム以外のデバイスは,慣性力が それぞれの降伏荷重を超えるとほぼ一定の抵抗力を持続した状態で変位に追随するが,積層ゴムは慣 性力増大に比例して変位が大きくなると共に抵抗力も大きくなる.ただし,制震ダンパーには速度依 存性があり,本システムでは速度則の小さい制震ダンパーを適用しているものの,速度が極端に遅く なると抵抗力の変動は大きくなる.このため,時刻によって抵抗力が大きく変動する.すなわち,変 位の方向が逆転する際に速度が急激に低下して抵抗力も急激に小さくなって零となり,逆向きの速度 となるので抵抗力が再び急激に増加し出す.抵抗力が速度に比例する制震ダンパーの速度による抵抗 力の変化の状況を,図‐6.3.11に示す.本システムに想定している制震ダンパーは,速度の 0.1 乗に 比例するので,同図より最大応答を呈する速度の速い領域での変動は極めて小さいことがわかる.こ のように,慣性力が大きくなり免震支承の鉛プラグ,制震ダンパーおよびすべり支承の降伏荷重を超 えると,積層ゴムが抵抗するので,弾性により周期特性をもつようになる.
すなわち,地震時の変位に対して図‐6.3.12に示すような順で各デバイスは抵抗し始め,応答変位 の小さい時刻帯では主として特定のデバイスのみが機能する.解析結果より,時刻歴応答抵抗力および 応答変位に対する応答抵抗力をそれぞれ図-6.3.13 に示す.これは,橋軸方向の最大応答抵抗力を示 す時刻 8sec 付近を示したものである.同図では,鉛プラグと積層ゴムが抵抗し始める状態からの応答 抵抗力を示している.この挙動では,慣性力が大きくなるにつれて合計応答抵抗力が大きくなるが,
109
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (B)地震波Ⅱ-Ⅲ-2
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (C)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
図‐6.3.7 各デバイスにおける 0~30sec までの時刻歴応答抵抗力(橋軸方向成分)
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (A)地震波Ⅱ-Ⅲ-1
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (A)地震波Ⅱ-Ⅲ-1
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (B)地震波Ⅱ-Ⅲ-2
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (C)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
図‐6.3.8 各デバイスにおける5~15sec までの時刻歴応答抵抗力(橋軸方向成分)
110
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (C)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
図‐6.3.9 各デバイスにおける 0~30sec までの時刻歴応答抵抗力(橋軸直角方向成分)
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (A)地震波Ⅱ-Ⅲ-1
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (B)地震波Ⅱ-Ⅲ-2
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (A)地震波Ⅱ-Ⅲ-1
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (B)地震波Ⅱ-Ⅲ-2
(a)0 度方向入力 (b)45 度方向入力 (c)90 度方向入力 (d)135 度方向入力 (C)地震波Ⅱ-Ⅲ-3
図‐6.3.10 各デバイスにおける5~15sec までの時刻歴応答抵抗力(橋軸直角方向成分)
111
鉛プラグは降伏荷重に達すると一定の抵抗力になり,積層ゴムが徐々に抵抗し始める.制震ダンパー の応答抵抗力は図-6.2.3のように一定値ではなく,合計応答抵抗力が最大となる近傍で急激に小さく なっている.これは応答抵抗力が増大から減少に転じる近傍で応答速度が急激に小さくなるためであ り,図‐6.3.13(a)に併記している応答速度がこの現象をよく表している.このため,合計応答抵抗力 が極大値に達した後も,積層ゴムの応答抵抗力は増加し続けている.また,同図(b)は横軸に変位をと って示したものであるが,積層ゴムの応答抵抗力は応答変位に比例して大きくなり,合計応答抵抗力 もその影響によりほぼ線形に大きくなっている.ただし,前述したように制震ダンパーの応答抵抗力 は,極大変位となる近傍で急激に小さくなる8),11).
① 変 位 が 小 さ い 段 階 で 主 と し て す べ り 支 承 の 抵 抗 力 が 増 大 す る
② す べ り 支 承 の 抵 抗 力 を 超 え る 慣 性 力 に 対 し て 、 主 と し て 制 震 ダ ン パ ー の 抵 抗 力 が 増 大 す る
③ さ ら に 、 慣 性 力 の 増 大 と 共 に 主 と し て 免 震 支 承 の 鉛 プ ラ グ の 抵 抗 力 が 増 大 す る
④ 免 震 支 承 の 鉛 プ ラグ の 抵 抗 力 を 超 え る 慣 性 力 に 対 し て 免 震 支 承 の 積 層 ゴ ム の 抵 抗 力 が 増 大 す る
図‐6.3.12 デバイスの機能順序
(a)速度に対する抵抗力の変化 (b)変位に対する抵抗力の変化 図‐6.3.11 速度則ダンパーの抵抗力の変化(50kine を基準)
(a)時刻 8sec 付近の時刻に対する表示 (b)時刻 8sec 付近の応答変位に対する表示 図‐6.3.13 P9 時刻歴応答抵抗力の部分拡大図(Ⅱ-Ⅲ-1 橋軸方向入力の橋軸方向抵抗力)
0.000 0.200 0.400 0.600 0.800 1.000 1.200
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000
7.6 7.7 7.8 7.9 8.0 8.1 8.2 8.3 8.4
応 答 速 度( m
/ s e c)
応答抵抗力
(k N )
時 刻
(sec
)すべり支承 制震ダンパー 鉛プラグ 積層ゴム 合計 応答速度
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000
-0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
応答抵抗力
(k N )
応答変位
(m)
すべり支承 制震ダンパー 鉛プラグ 積層ゴム 合計