大澤 達雄 [飛島建設 (株) 国際支店 ブルネイ事務所 所長]/ブルネイ支部
2. 昨今の建設市場の動向
特集
ブルネイ
イ政府は、
2015
年度より歳出削減をより厳しく実 行しているため、新たな公共工事の発注を極端に控 えている。その結果、3
本の大型橋梁プロジェクト 以外に目立った公共工事の発注はなく、建設業界全 体ではこの2
〜3
年の市場は非常に受注状況が冷え 込んでいる状況にある。そのため、中小の建設会社 のみでなく、同国では大手と言われる建設会社もブ ルネイを撤退し、近隣国のマレーシアなどへ事業拠 点を移し始めている。3
)民間工事の動向2016
年度は、公共工事が先細る中で、最近の資材 価格の安値安定傾向や建設価格の下落が、民間工事 の発注を後押ししている。特に、コンドミニアム、ショッピングセンターなどの工事の発注が目立って いる。しかし、人口約
40
万人のブルネイにおいては、今後の外国企業の誘致などを見越した過剰なコンド ミニアム建設などの先行投資は、投機として魅力が 薄く、政府が推進する外国企業誘致の進捗次第では、
今後、民間工事においても工事が減少していくかも しれない。
3. 2017
年の見通しここ数年、石油産業依存の経済からの脱却、産業 の多角化を目指しているブルネイ経済ではあるが、
2016
年末においては、まだ、石油産業に重きを置く 経済の実態が続いている。2016
年9
月発表のIMF
レポートによれば、ブルネイ政府の産業の多角化が 計画通り進捗しても歳出超過は2020
年まで続くと 予想されている。しかし、2016
年度には、景気は底 を打つ見通しで、今後2019
年まで緩やかな成長が 続いていくと見通している(表1
)。建設市場においては、ブルネイ政府が期待する、
中国からの投資や民間工事が短期的に市場を支えて いくだろうが、中期的には公共工事と民間工事の両 輪が一緒に牽引しないと、まだ建設市場は回復しな いと思われる。現在の政府公共工事計画によれば、
2017
年度も公共工事の発注は期待できず、2016
年Revenue (Oil & Gas) Revenue (Others)
Total Expenditure
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021
Overall Financial Balance
Brunei Financial Revenue & Expenditure
Actual (Brunei Govt Official Announcement) BND Million
12,000
7,000
2,000
-3,000
-8,000
Projection (IMF)
Oil & Gas Production 7,737
Other Services 3,050.1 LNG &
Methanol Manufacturing 2,382.7 Government Services 2,135.9 Financial Services 922.9 Wholesale &
Retail Trade 900 Other Industries
789.4 Agriculture, Forestry & Fisheries
196.1 Brunei 2015 GDP by Economic Activity (BND Million)
表1 IMFによるブルネイ国家財政予想
度並みに冷え込むと予想され、市場全体の回復は
2018
年以降になる見通しと言われている。4.
まとめ国土も市場も小さいブルネイにとって、その経済 情勢はこれまでも原油価格や近隣諸国の影響に大き く左右されてきた。現在の原油価格の下落は、今後 ブルネイ経済が、政府が進める政策にうまく方向転 換できるか、石油産業に代わる産業の育成をより推 進させることができるかどうかなど、まさにブルネ
イ経済における転換期を迎えていると言える。特に、
政府歳出の多くを占める公務員給与など人件費の抑 制や、所得税の控除や、医療費、教育費の無償化など、
手厚い社会福祉の見直しも政府歳出を抑えていく上 で、今後見直しが必要と言われている。
現在、非常に冷え込んだ状況にあるブルネイの建 設市場は、今後上述のような、政府歳出や諸制度の 見直し、政策転換などの後、また、現在進行してい る大型プロジェクトが完成する
2018
〜2019
年以降 に、徐々に回復していくものと思われる。特集