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宇野 俊貴 [清水建設   (株) 国際支店マニラ営業所 事務長]/マニラ支部

ドキュメント内 2& (ページ 31-34)

1.

経済概況

2015

年の実質

GDP

成長率は前年の

6.2%

から若 干下回ったものの、

5.9%

となり、好調を維持して いると言える。経済成長の主因はさまざまである が、フィリピン人海外出稼ぎ労働者

OFW

Overseas Filipino Workers

からの送金や、各種分野で拡大して いるビジネス・プロセス・アウトソーシング産業 の伸びによるところが大きい。フィリピンの人口は

1

億人を超えるが、

OFW

は世界中に

1,000

万人い るとも言われ、

2015

年は前年比

4.6%

増の約

258

億 ドルと過去最高を更新した(送金元は、

1

位が米国、続 いてサウジアラビア、アラブ首長国連邦、シンガポール、英 国、日本)。この送金が国内消費に繋がり、フィリピ ン経済を支えている。一方で

2015

年の輸出は前年

5.1%

減の

586

4,800

万ドル、輸入は

3.4%

666

8,600

万ドルで、貿易赤字は前年の

27

2,500

万ドルから

80

3,800

万ドルへと拡大した。

輸出を品目別に見ると、全体の

44.2%

を占める電気 機器・同部品は

12.2%

増の

259

1,900

万ドルと 好調で、中でも過半を占める集積回路が

17.8%

増と 牽引した。続いて

12.3%

を占める機械・同部品(コ ンピュータなど、事務器関連を含む)

16.5%

減の

71

9,400

万ドルとなった。同品目の仕向け地を国・地 域別に見ると、

23.1%

を占める中国向けが

30.7%

減、

11.7%

を占める香港向けが

15.6%

減となるな ど、世界経済減速の影響を受けた。

このような中で、

2016

6

月に就任したロドリゴ・

ドゥテルテ新大統領は、インフラ支出をより加速さ せ

GDP

7%

を目指すとしており、また民間企業に よる建設投資は、コンドミニアムなどの住宅開発や 地場不動産開発大手が商業施設の大型開発計画を発 表するなど、今後も堅調に推移すると見られる。

2.

諸問題

 一方で、この高い成長率の堅持の妨げとなり得る 諸問題をフィリピンは長年にわたって抱えている。

まず法整備の問題が挙げられる。アメリカ統治の影 響もあり、法の存在自体は世界的に見ても遅れてい るわけではないが、たとえば一部の高官の恣意的な 解釈により法律が捻じ曲げられ、企業が損害を被る ことが多々ある。また贈賄が絶えないなど、昨今の 世界の流調であるコンプライアンス遵守と相反する 状況が続いている。

 法やその運用の改善が特に求められているのは

VAT

還付においてである。フィリピンは経済特区庁

PEZA

Philippine Economic Zone Authority

などの法 定機関による優遇制度により、外国企業の誘致に積 極的に取り組んでいる。法人税の減免や海外からの 機械設備・部品・原材料に対する関税の免除などを 優遇する制度であるが、この還付がなかなか進まな い。歳入庁内部の問題、関係省庁の連携の不備など が大きな原因であるが、優遇とは真逆のこのような 状態が続けば、外国企業は進出するどころか、撤退 さえ検討するようになる。

 交通インフラの整備も大きな課題である。フィリ ピン国内の新車販売数は

20

万台を超えたが、これ により首都圏を中心に渋滞の激しさが増している。

これを解決するには幹線道路などの整備が不可欠で あるが、計画や実行の大きな動きは具体的には見ら れない。建設ビジネス展開のためにも、これらの諸 問題の早急な解決が求められる。

3.

アジアインフラ投資銀行加盟の影響

 ここで中国が主導するアジアインフラ投資銀行

AIIB

について記しておきたい。フィリピンも

AIIB

に加盟しているが、米格付け会社フィッチ・グルー

プ傘下の市場調査会社

BMI

リサーチのリポートに よると、フィリピンは

AIIB

から年間

2

億〜

5

億ドル

(約

235

億〜

587

億円)の融資を受け、インフラ整備、

特に港湾や鉄道などの運輸インフラ事業を進めるだ ろうと予測している。これにより中国企業が存在感 を示し、大型インフラ事業の受注で有利な立場にな るのは確実で、他国企業が官民連携

PPP

事業から 締め出される恐れがあると警告している。実際、フィ リピンの

PPP

事業を管理する

PPP

センターによる と、これまでに認可された事業は

16

件だが、現時点 で中国以外の外国企業が参加する案件は

4

件にとど まっている。また

BMI

リサーチは、近く始動する南 北鉄道の南線と将来的に期待されるマニラの地下鉄 事業は、中国企業または中国政府の資金で実施され る見込みであることを付け加えた。日本の建設会社 にとっても非常に厳しい状況と言える。

そのような中、

2016

10

月、安倍首相はドゥテル テ大統領と日本で首脳会談し、

2017

1

月にもフィ リピンを訪問した。ドゥテルテ大統領は折に触れて 中国寄りの発言をしているが、元々親日家であるこ とも公言しているため、この短期間での再会談で信 頼関係構築がさらに進めば、日系企業の進出や公共 工事の安定的な受注に繋がることも期待される。実 際、安倍首相はフィリピンに対し今後

5

年間で

1

兆円 規模の経済協力を行っていくことを表明し、また日 本政府はドゥテルテ大統領の地元であるミンダナオ 島での

ODA

による農業援助を検討している。両政府 間の親密な関係を維持することによって、日系企業 のアピールや進出に繋がることを期待したい。

4.

中期的に有望な事業展開先として

国際協力銀行

JBIC

2016

12

月に発表した 製造企業の海外事業展開に関する調査(第

28

回)で、

フィリピンは中期的(向こう

3

年程度)に有望な事業 の展開先として世界

8

位となった(調査は、製造業で原 則として海外現地法人を

3

社以上有する企業

1,012

社を対象 に、

2016

7

9

月に実施。回答率は

62.9%

。フィリピン を有望視する企業のうち、

49.0%

が実際に事業計画 を有しており、調査対象国の中で割合が最も高かっ た。また有望視する企業の約

8

割は、フィリピン市 場の成長性を評価している。

1

億人を超える人口や

23

歳という平均年齢、低い労働賃金、高い英語力も 評価されており、ここ第

2

四半期は

7%

台と東南ア ジア諸国連合

ASEAN

で最高の経済成長率を維持 する将来性に注目度が高まっている。有望と回答し た企業の中では、市場の成長性を評価する企業が

37

77.1%

と最も多く、

2014

年度の調査以来、上昇 が続いている。以下、安価な労働力

20

社)、市場の 現状規模

11

社)、組み立てメーカーへの供給拠点と して

10

社)、第

3

国への輸出拠点として

9

社)が続 いた。

フィリピンは、中期的に事業を強化・拡大するこ とを考えている企業の比率が

59.5%

で、前年度から

中期(今後3年程度) 長期(今後10年程度)

年 国・地域 回答社数 得票率

(%)

年 国・地域 回答社数 得票率

(%) 1 (1)インド 230 47.6 1(1)インド 226 62.1 2(2)中国 203 42.0 2 (3)中国 143 39.3 3(2)インドネシア 173 35.8 3 (2)インドネシア 137 37.6 4(5)ベトナム 158 32.7 4(4)ベトナム 119 32.7 5(4)タイ 142 29.4 5 (5)タイ 89 24.5 6(6)メキシコ 125 25.9 6 (8)メキシコ 59 16.2 7(7)米国 93 19.3 7 (7)ミャンマー 58 15.9 8(8)フィリピン 51 10.6 8 (9)米国 55 15.1 9(10)ミャンマー 49 10.1 9(6)ブラジル 48 13.2 10(9)ブラジル 35 7.2 10(11)フィリピン 33 9.1 複数回答あり

出所:JBIC

1 有望な事業展開先2016年度)

2.6

ポイント上昇した。

ASEAN

の主要

5

カ国(フィリ ピン、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア)の 中では、インドネシアの

62.2%

に続き、

2

位となっ た。他国が低下傾向にあるのに対し、フィリピンは 上昇傾向が続いている。主要業種別に中期的に有望 な展開先を見ると、フィリピンは自動車では

8

位、

電機・電子では

7

位、一般機械では

9

位につけた。

先にも述べたが、フィリピンは低い労働賃金、人

口、平均年齢、英語力と、非常に魅力のあるマーケッ トである。この国が抱える前述の諸問題が解決に向 かいさえすれば、日系建設業者にとってもより魅力 のある市場と変貌していくであろう。

〈参考および引用〉

日本貿易振興機構ホームページ フィリピン日本人商工会議所月報

The Daily NNA

フィリピン版

特集

ブルネイ

ドキュメント内 2& (ページ 31-34)

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