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映像技術を評価する感性評価技術について

第2章 大画面高品質化する映像社会における現状と展望

2.4 映像技術を評価する感性評価技術について

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その多様性をコントロールして実験結果を導出し,客観的観点から考察する ため,感性評価手法ではSD 法(Semantic Differential Technique)が一般的 に用いられる.SD 法は,「明るい・暗い」など,いくつかの対極となる形容 詞や形容動詞(評価語)を用意し,どちらの形容詞に近いかを評価するという 手法である.評価の尺度は一般的に,5 段階もしくは,7 段階の両極性の尺度 によって評価される.各評価の尺度を数値化し,平均得点を折れ線グラフにし たものをSDプロファイルと呼び,そのトレンド解析から対象となる事物や現 象に対して,人間がどのような感情や意義をもつのかが把握することができ る.更に,各評価語について有意差判定や多変量解析などの手法を用いて解析 することで,評価対象から得られる感性データの統計的な結果を考察すること が可能となる.

このSD法は「間隔尺度」と呼ばれる現象間の差の関係が保存される空間の 構造を解明する方法であり,SD法で得られた結果を因子分析することによっ て,評価対象の意味や解釈を議論することが可能となる.「間隔尺度」の他に も「順序尺度」とうい対応関係用いた方法もあり,一対比較法がその代表例で ある.これは,心理現象間に内在する「好き-嫌い」,「良い-悪い」といった 順序関係や大小関係に基づいて心理空間の構造を解析するものである.

SD法に代表される「間隔尺度」,一対比較法に代表される「順序尺度」の どちらにおいても,感性評価を行う上で特に注意するポイントとして,評価語 の選定があげられる.評価語は,感性ワード,イメージ形容詞等ともよばれ,

評価対象から人間が感じる印象について,的確かつ分り易く言い表す言葉ある 必要がある.工業デザインや音響空間,画像品質の分野で評価語が数多く提案 されている.これまで提案された感性評価語の一例を以下に示す.

映像ディスプレイの画質評価

活き活き, 艶やかな, 彫が深い, 精悍な, エネルギッシュな,

繊細な, 大胆な, 心地よい, 落ち着いた,明瞭な,光沢の深い,

麗しい,みずみずしい,芳醇な,甘美な香り,濡れた,開放感,凛々しい,

滋味豊かな,すっきりした,淡麗,軽妙,爽快,伸びやか,品のいい,

端 麗 な , エ レ ガ ン ト な , 都 会 的 , 洗 練 さ れ た , 趣 の あ る , お っ と り と し た , ま ろ や か な , ふ く よ か な , し な や か な

39 印刷物の品質評価

色 が 馴 染 ん で い る , 滑 ら か で あ る , し っ と り し て い る , メ リ ハ リ が 効 い て い る , 力 強 い , 重 量 感 が る , 透 明 感 が あ る , 冴 え て い る , 質 感 が あ る , シ ズ ル 感 が あ る , 品 格 が あ る ,

味覚や嗅覚の評価

み ず み ず し い , 新 鮮 さ , す っ き り し た , 魅 惑 的 な , エ レ ガ ン ト な , 深 見 の あ る , 奥 行 き の あ る , し っ か り し た , 熟 成 感 が あ る , 力 強 い , 野 性 味 の あ る , 濃 厚 な , 繊 細 な , ふ く よ か な , 透 明 感 の あ る , 丸 み の あ る , 上 品 な , 温 か み の あ る , 伸 び や か な , 滑 ら か な , 渋 み の あ る , 甘 い , さ っ ぱ り と し た , ナ チ ュ ラ ル な , ス パ イ シ ー , 複 雑 な , 酸 味 の あ る ,

2.4.2 脳生理学的アプローチ

刺激を与えたときの脳波,脳血流,脈拍,呼吸,血圧などの生体情報を計測 することで,人間の感性や情動を直接的に測定解析する評価方法についても研 究が活発である.現状では,生体情報の計測機器が大規模で高額であること,

実験の時に被験者の拘束条件が大きく負担がかかること,計測結果を安定して 得ることが出来ない等のさまざまな課題があるが,生体情報センシング技術と センシングデータ解析技術の進展により改善されつつある.

以下,主要な生体情報とそのセンシング技術についてについて述べる.

2.4.2.1 脳活性化測定

被験者の脳活性化部位を測定することで,情動を定量的に解析することが可 能とされている.脳活性化部位を詳細に測定する方法は,医療医学で活用が進 んでいるポジトロンを放出する薬剤を生体に投与して薬剤が脳などに集積する 様子を薬剤から放出されるガンマ線から検出するPET(陽電子放射断層撮像法

Positron Emission Tomography)や,強力な磁場と電波を用いて(核磁気共鳴

現象)脳内部の状態を断面像として描写するMRI(核磁気共鳴画像法

Magnetic Resonance Imaging)がある.しかし,これらの装置は大規模な施

設と高額な装置が必要であり,今後より簡便な方法で測定できる測定機器の開 発が待たれている.

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2.4.2.1 脳血流測定

より簡便に脳機能状態を計測する装置として,近赤外光を用いて頭皮上から 非侵襲的に脳血流を計測する近赤外分光法(NIRS),光トポロジー脳血流計があ る.このNIRS測定は,光トポグラフィー光を用いた無侵襲な測定で,準備を 含めても15分間程度で終了する.NIRS測定は空間分解等がMRIよりも低 く,脳活性化部位の詳細検討は難しいが,被験者の脳機能を自然な状態で計測 できる利点があり,多くの研究機関で利用されている.研究プロジェクト「光 トポグラフィー検査を心の健康に応用する会」では,前頭葉賦活のNIRS波形 を観察する事により,被験者の心の状態や精神状態を診断可能であると報告し ている[47].

2.4.2.3 脳波

脳波は0.5Hzから30Hzまでの周波数範囲の変化をもつ波型信号である.閉

眼時には8-12Hzのアルファ波と呼ばれる波形が後頭部優位に出現し,計算問

題など脳が働くとアルファ波が減って13Hz以上のベータ波が出現する.その 他,眠くなると振幅が小さくなり,スピンドルやハンプといった特徴的な波形 が出現する.更に,深い眠りでは2Hz以下の大きな波形が優位になることが分 っている.この脳波は頭皮に置いた電極から脳波計(Electroencephalograph: EEG)と呼ばれる装置で測定,記録される.

PET,MRIやNIRSが脳血流の変化を反映するものに対して,脳波は神経 活動の変化を反映することから,MRIやNIRS測定と同時に脳波を計測して相 互解析する研究も報告されている.

2.4.2.4 自律神経系

生体の感性(感情)には中枢神経系の関与が高いため,自律神経機能を測定 することにより,人間の快適状態を測定することができる.自律神経系とは,

自分の意識とは関係なしに,瞬時に身体が反応する本能的な反応である.この 神経系は交感神経と副交感神経の二つの異なる神経系によって支配されてい る.

交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれ,交感神経が優位になると,体は 緊張し,心臓の鼓動は早くなり,血圧が上昇する.更に瞳孔は散大し,呼吸は 激しく,体温が上昇する.反対に,副交感神経は,体がゆったりとリラックス している時に強く働き,心拍と血圧は低くなり,呼吸は緩やかになる.交感神

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経と副交感神経の活動状況を直接的に測定することは現状不可能だが,血圧,

心拍,脈拍,呼吸,皮膚体温,発汗量等を測定することで自律神経系の活動状 態を観察する事が可能である.

但し,自立神経系の測定結果は揺らぎ(ノイズ)や個人差が多く,長時間に 及ぶ測定結果を用いて解析する必要がある点が課題となっている.この課題に 対して,ポータブルサイズの機器を腕や耳や指先に装着するだけで,血圧や心 拍を測定可能な装置も開発され,その測定データをノートPCに無線伝送し,

自立神経系の状態を継時記録するシステムも発売されている.