2 先行研究
6.2 日本語学習者上位群に関する考察
まず、選択肢問題テストにおいては、日本語母語話者の得点の平均値(18.10)は日 本語学習者上位群(17.80)より少し高いが、標準偏差は日本語学習者より小さい(0.70
<3.19)。それは、日本語学習者の上位群には満点が取れた者が
3
人いるが(表20
網50
掛け部分:学習者
12
番、25番、30番)、一方で「人称の制限」に関する用法(人称の 制限の選択肢テストの満点は10
点)で1
点いか取れない者もいた(表18
網掛け部分:学習者
3
番)。表
18 選択肢問題テストの平均値及び標準偏差(SD)
協力者
日本語母語話者 上位群 中位群 下位群
人称 判断 の継 続性
合計 人称 判断 の継 続性
合計 人称 判断 の継 続性
合計 人称 判断 の継 続性
合計
1 9 10 19 10 10 20 10 10 20 9 8 17
2 8 9 17 10 10 20 10 8 18 9 6 15
3 9 9 18 10 10 20 10 8 18 6 7 13
4 10 9 19 10 9 19 7 10 17 2 9 11
5 9 10 19 10 9 19 10 7 17 4 7 11
6 10 7 17 8 10 18 7 9 16 4 7 11
7 10 8 18 9 9 18 6 9 15 4 5 9
8 8 10 18 10 8 18 5 8 13 2 7 9
9 9 9 18 7 8 15 2 5 7 1 8 9
10 8 10 18 1 10 11 1 6 7 3 5 8
平均値 9.00 9.10 18.10 8.50 9.30 17.80 6.80 8.00 14.80 4.40 6.90 11.30
標準偏
差 0.77 0.94 0.70 2.69 0.78 2.68 3.19 1.55 4.28 2.65 1.22 2.76
日本語学習
3
番は「人称の制限」に関する正しく答えた問題は問題34
のみであっ た(例(57))。例(57)
キムさんは日本語を学ぶ際に書くことは大切ではない{と思います/と思っています}。
51
しかし、この正解した問題について「と思っている」を選んだ理由を確認すると、そ れは「日本語を学ぶ際」の進行中と思いこんで、進行形を選んだということであった。
日本語学習
3
番は日本語能力試験N1
合格し、SPOTテストで76
点を取り、日本での 滞在時間も一年半があり、上級日本学習者だと言える。しかし、この学習者の選択肢テ スト結果から判断すると、上級日本学習者になっても、「と思う」の人称の制限用法に 関してまだ習得していなかった人もいることが分かった。また、日本語学習
3
番の文完成テストの結果を確認すると、日本語学習者3
番は文完 成テストの人称の制限に関する問題と判断の継続性に関する問題の二つ問題とも正答 できなった(例(58)~例(59))。例(58)(人称の制限)
(私は)山田さんの意見が正しいと(思います)。〇
佐藤さんは 吉田さんの意見が正しいと(思いました)。✖
例(59)(判断の継続性)
今、授業で○○についてレポートを書いているのですが、鈴木先生の研究室にある『心 理学入門』という本を参考にしたいと(思います)。✖
この学習者
3
番のデータを整理し、「と思う」と「と思っている」の知識と「産出」の結果を表
19
のように示す。表
19
学習3
番の「と思う」と「と思っている」の使い分けに関する調査結果 人称の制限 判断の継続性知識 ✖ 〇
「産出」 ✖ ✖
52
このことから、「と思う」と「と思っている」の「人称の制限」の用法に関しては、
上級日本語学習者になっても、必ずしも習得できているわけではないことが分かった。
また、「判断の継続性」に関しては、知識として習得していても、「産出」をできるわけ ではないことも分かった。