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日本語圏と英語圏との乳幼児音声

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 65-72)

第 5 章 日本語圏と英語圏との乳幼児の音声の時間構造

5.4 結果と考察

5.4.1 日本語圏と英語圏との乳幼児音声

日本語圏および英語圏の乳幼児の音声データ(月齢 15, 20, 24ヶ月)の中か ら,時間長が,1.5 秒以上の音声データを分析対象とした。第 2 章で,第 2 お よび第 3 主成分まで抽出し因子分析を行ったが,第 2 主成分まで抽出したとき どの月齢においても安定した結果を得られたので,第 2 主成分まで抽出した因 子分析の結果を用いた。因子分析により抽出した因子の因子得点から,自己相 関関数の値を,それぞれの音声サンプルごとに算出した結果を,図5.2 に示す。

(A)は月齢8ヶ月の日本語圏の乳幼児,(B)は月齢15ヶ月の日本語圏および 英語圏の乳幼児,(C)は月齢 20 ヶ月の日本語圏および英語圏の乳幼児,(D)

は月齢24ヶ月の日本語圏および英語圏の乳幼児の結果を示す。

自己相関関数の最初のピークの相関値(係数)の平均値は,日本語圏の乳幼 児月齢8, 15, 20, 24ヶ月では,それぞれ,0.47 s(S.D. = 0.23 s), 0.55(S.D. = 0.22 s), 0.52 s(S.D. = 0.23 s), 0.47 s(S.D. = 0.21 s)であった。英語圏の乳 幼児月齢15, 20, 24ヶ月では,それぞれ,0.61 s(S.D. = 0.25 s), 0.54 s(S.D.

= 0.23 s), 0.51 s(S.D. = 0.22 s)であった。自己相関関数のピーク値の相関値

(係数)の平均値は,日本語圏の乳幼児月齢8, 15, 20, 24ヶ月では,それぞれ,

0.28(S.D. = 0.19), 0.38(S. D. =0.25), 0.36(S. D. = 0.25), 0.33(S.D. = 0.27)

であった。英語圏の乳幼児月齢15, 20, 24ヶ月では,それぞれ,0.49(S. D. = 0.27), 0.40(S. D. = 0.26), 0.31(S. D. = 0.23) であった。月齢15, 20, 24ヶ月どの 月齢においても,自己相関関数の最初のピークの時間位置の平均値,および相 関値(係数)の平均値に関して,日本語圏の乳幼児と英語圏の乳幼児との間に 有意差は認められなかった。

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8 months of age

Japanese-learning infants (N=3)

15 months of age

Japanese-learning infants (N=5)

English-learning infants (N=5)

図 5.2 日本語圏の乳幼児の音声(●)と,英語圏の乳幼児の音声(+)の因子 得点の自己相関関数を算出し,最初のピーク値における,自己相関関数の値と 時間を示したもの。(A)月齢8ヶ月(日本語圏),(B)15ヶ月(日英語圏),(C)

20ヶ月(日英語圏),(D)24ヶ月(日英語圏)。(次ページへ続く)。

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20 months of age

Japanese-learning infants (N=5)

English-learning infants (N=5)

24 months of age

Japanese-learning infants (N=5)

English-learning infants (N=5)

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自己相関関数の最初のピークにおける時間の値の相対度数分布を図 5.3 に示 す。最初のピークの振幅が,0以下の場合,自己相関関数の最初のピーク値にお ける時間の値が,0-1 s の範囲にない場合,「ピークなし」 として扱った。その ような音声サンプルを実際に聴いてみると,区切りのない(あるいははっきり しない)声が出つづけているサンプル,何かしゃべっているが,音節が聞き取 れないサンプル,子音のような音のみのサンプルなどであった。(A)は月齢 8 ヶ月の日本語圏の乳幼児,(B)は月齢15ヶ月の日本語圏および英語圏の乳幼児,

(C)は月齢 20ヶ月の日本語圏および英語圏の乳幼児,(D)は月齢24 ヶ月の 日本語圏および英語圏の乳幼児の結果を示す。日本語圏の乳幼児月齢 8 ヶ月で は,自己相関関数の値の24% は0.2 <τ≤ 0.4 sであった。日本語圏と英語圏と の乳幼児月齢 15 ヶ月では,どの時間周期性においても,約10% であった。日 本語圏の乳幼児の月齢20ヶ月では,自己相関関数の値の22% は,0.2 <τ≤ 0.4 sであった。英語圏の乳幼児の月齢20ヶ月では自己相関関数の値の17.5% は,

0.4 <τ≤ 0.6 sであった。日本語圏の乳幼児の月齢24ヶ月では,自己相関関数 の最初のピークの時間位値τの 26.7% が,0.2 <τ≤ 0.4 sであった。英語圏の 乳幼児の月齢24ヶ月では21.8% が,0.2 <τ≤ 0.4 s であった。

分析結果をまとめると,日本語圏および英語圏の両言語圏において,月齢が

15, 20, 24ヶ月と上がるにつれて,0.2 <τ≤ 0.4 s の時間周期性の短い発話が増

え,0.8 <τ≤ 1 s の時間周期性の長い発話が減る傾向があったことがわかった。

乳幼児音声の音節の時間周期性は約 0.4 s 以下だとする研究結果が過去に報告 されている(河野2002; Nathani et al.,2003; Dolata et al., 2008)。そこで,本 研究では,時間周期性の範囲が,0.1 <τ≤ 0.4 sに着目した(図5.4)。日本語圏 の乳幼児に関して,月齢 15ヶ月では15.9%, 月齢20ヶ月では22.7%, 月齢24

ヶ月では29.9%であった。英語圏の乳幼児に関して,月齢15ヶ月では13.6%, 月

齢 20ヶ月では15.9%, 月齢24 ヶ月では23.1% であった。 カイ2乗検定の結

果,日本語圏の乳幼児月齢15, 20, 24ヶ月の間には,有意差が認められた [x2 =

11.35, df = 2, p < .01]。英語圏の乳幼児月齢15, 20, 24ヶ月の間には,有意差は

認められなかったが,月齢が上がるごとに,0.1 <τ≤ 0.4 s の範囲の自己相関関 数の値が増加する傾向が見られた。 日本語圏の乳幼児月齢8ヶ月に関しては,

0.4 s以下の時間周期性を持った音声が多かったが,これは,月齢8ヶ月は,初

期の語が出現する直前の段階で,規準喃語を発する時期であるためと考えられ るが,今後,聴き取り実験などを用いて確かめる必要があるだろう。

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8 months of age

15 months of age

図 5.3 自己相関関数の最初のピークの時間位置の相対度数分布(%)。 (A)

日本語圏の乳幼児月齢8ヶ月,(B)日本語圏と英語圏の乳幼児月齢15ヶ月,(C)

日本語圏と英語圏の乳幼児月齢20ヶ月,(D)日本語圏と英語圏の乳幼児月齢 24ヶ月。(次ページに続く)。

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20 months of age

24 months of age

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図 5.4 自己相関関数の最初のピークの時間位置τ(0.1 <τ≤ 0.4 sの時間範囲)

の相対度数分布(%)。

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