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第4章 分析3 ―三味線協奏曲―

第2節  日本の伝統楽器を使用した協奏曲の歴史

り 、カウエルは《Concerto No. 1 for Koto and Orchestra》に於いて 88 の方法論を 使用し、箏とオーケストラの音色の違いを際立たせ、更に一歩踏み込んで音階の違いも 活用している 。独奏楽器としての民族楽器の本質的な表現方法を明確化し、それと合89 奏するオーケストラとを対比してその特質を炙り出すところに民族楽器を使用した協奏 曲特有の価値がある。この観点から、日本においても、伝統楽器をより広い聴衆に向け て紹介する手段として協奏曲が使用されたという事実は、極めて重要である。

おり、雅楽に見立てられたオーケストラが伴奏パートを演奏し、箏は独奏を担当す る 。千葉潤之介はその著『作曲家宮城道雄 伝統と革新のはざまで』の中で、《越天90 楽変奏曲》について、「箏の手法の大幅な拡大」が行われた、と述べている 。 91

その後、宮城は1933年に菅原明朗との共作で《神仙調箏協奏曲》を、1937年には下 総皖一との共作で《壱越調箏協奏曲》を、そして1953年には松平頼則との共作で《盤渉 調箏協奏曲》を発表した。

また、1936年には、箏と尺八を独奏楽器とした邦楽器合奏による協奏曲、《平調協 奏曲》を発表したほか、1940年、独奏箏と邦楽器の合奏のための《祝典箏協奏曲》を発 表し、邦楽器のみで編成される協奏曲も世に出している。千葉潤之介は宮城道雄の箏協 奏曲について「よほど特別の機会がないかぎりは演奏されないのが実情である。《越天 楽変奏曲》は箏協奏曲のなかでは最も再演回数が多いとはいえ、他の宮城作品に比べれ ばその演奏頻度はまだまだ低い。そこで宮城は1935年頃この曲を邦楽器群のために編曲 し、現在よく演奏されているのはこの邦楽器版のほうである」と述べた 。 92

また、ほぼ同時期には、日本人だけでなく、外国人作曲家も箏協奏曲を発表している。

たとえば、前述のカウエルは1957年に《Ongaku》、そして1965年に《Concerto No.2 for Koto and Orchestra》を発表しており、箏は協奏曲という西洋音楽の一形式を媒体 として国境を越えて親しまれる楽器となったのである。

しかし、箏や尺八の協奏曲作品が徐々に増えたのに比較して、三味線協奏曲はあまり 発表されなかった。それはなぜだろうか。

この問いに答えるために、次にまず三味線協奏曲のリストを掲げる。これ以外に協奏 曲作品がある可能性はあるが、主立ったものは網羅したと考えている。

表 4-1

三味線協奏曲の作品リスト

浅川玉兎『長唄の基礎研究—−楽理と実技』(1957年)と千葉潤之介『作曲家宮城道雄—伝統と革 新のはざまで』(2000年)及び野澤徹也・杵家七三へのインタビューに基づいて筆者が作成。

作曲家名 曲名 作曲 年

初演時の独奏

者 楽器編成

細棹三味線と邦合奏

中能島欣一

三絃協奏曲第一

番 1936

三味線ソロ、箏(2面)、十七

中能島欣一

千鳥曲による三

絃協奏曲 1938

三味線ソロ

、オークラウロ

長澤勝俊 三味線協奏曲 1967

杉浦弘和

(後の杵屋五 三吉)

三味線ソロ、篠笛、尺八(2 本)、琵琶、箏(2面)、十七 絃、打楽器

千葉優子『箏を友として』アルテス・パブリッシング、2015年、232−233頁。

90

千葉潤之介『作曲家宮城道雄—伝統と革新のはざまで』音楽之友社、2000年、149頁。

91

千葉潤之介『作曲家宮城道雄—伝統と革新のはざまで』同上、150頁。

92

三木稔 三味線協奏曲 2008 野澤徹也

三味線ソロ、篠笛、笙、尺八

(2本)、琵琶、二十絃(2 面)、十七絃、打楽器 川崎絵都夫 三味線協奏曲 2015

野澤徹也

三味線ソロ、篠笛、尺八(2

本)、琵琶、箏(2面)、十七 絃、打楽器

シュム コー・

コリーン

When the Waves Crash

〜波濤の飛沫〜

三味線協奏曲

2016

野澤徹也

三味線ソロ、篠笛、尺八(2 本)、琵琶、箏(2面)、十七 絃、打楽器

細棹三味線とオーケストラ・吹奏楽

町田嘉章 三味線協奏曲第

一番 1929 町田嘉章

三味線ソロ、管弦楽

町田嘉章 三味線協奏曲第

二番 1935 四世杵屋佐吉

三味線ソロ、管弦楽

秋岸寛久 三味線協奏曲 1990

杵屋五三吉 三味線ソロ、管弦楽

三枝成彰 三味線協奏曲

1993 西潟昭子

三味線ソロ、フルート、オーボ エ、弦楽合奏

池辺晋一郎 1本の緑陰樹と して 

As a Shade Tree

2005 西潟昭子

三味線ソロ、フルート(2)、

オーボエ(2)、クラリネット

(2)、ファゴット(2)、F ホルン(4)、Cトランペット

(2)、トロンボーン(3)、

打楽器、竪琴、バイオリン (1)、ビオラ、チェロ、コント ラバス

ジョヴァン ニ・ソッリ マ

Theory of the earth

三味線とオーケ ストラのための

2005 西潟昭子

三味線ソロ、管弦楽

江原大介 魂の絃 ─三味線

と吹奏楽のため の協奏曲

2010 野澤徹也

三味線ソロ、ピッコロ、フルー ト(2)、オーボエ(2)、

ファゴット(2)、 E♭ クラリ ネット 、クラリネット

(3)、 B♭バスクラリネッ ト、E♭ アルトサックス(2)

B♭テナーサックス、 E♭ バリト ンサックス、トランペット

(3)、ホルン(4)、トロン ボーン(3)、ユーフォニア ム、チューバ、コントラバス、

打楽器

細棹以外の三味線の協奏曲