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旅行時間の信頼性の評価

ドキュメント内 中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻 (ページ 37-46)

第4章  関西圏の路線バスへの適用

4.2  シミュレーションの結果

4.2.1  旅行時間の信頼性の評価

図4.7  昼の旅行時間の散布図

図4.8  夜の旅行時間の散布図

  図4.6〜図4.8より,全体的に大きなばらつきがあり,旅行時間の信頼性が損なわれ ているのがわかる.旅行時間が長くなると遅延の影響を強く受けてしまうため,ばらつ きが大きくなる.また,旅行時間Bは遅延を考慮しているため,旅行時間Aに比べて 旅行時間が長くなるはずであるが,実際そうではないこともある.その原因は,後で述 べる.

時間帯別で見ると,昼が3つの時間帯の中で,45線より上の位置に青以外で表示さ れている範囲が1番広い.昼の時間帯が,遅延を生じやすく,最も旅行時間に信頼性を 保つことが難しいことがわかる.2.2.3節より,昼の時間帯は,交通状況の悪化が起こ りやすいと推測できる.そのことより,昼は旅行時間の信頼性を保つことが難しいとい う結果は,妥当な結果であると考えられる.

  次に,旅行時間にばらつきがある原因を追究するために,旅行時間を乗車時間と待ち 時間に分割し,比較を行う.図4.9〜図4.11に,時間帯別に乗車時間の散布図を図4.6

〜図4.8と同様な形式で示す.図4.9〜図4.11は,縦軸に乗車時間B を取り,横軸に 乗車時間Aを取る.図4.12〜図4.14に,時間帯別に待ち時間の散布図を図4.6〜図4.8 と同様な形式で示す.図4.12〜図4.14は,縦軸に待ち時間B を取り,横軸に待ち時間

Aを取る.

図4.9  朝の乗車時間の散布図

図4.10  昼の乗車時間の散布図

図4.11  夜の乗車時間の散布図

図4.12  朝の待ち時間の散布図

図4.13  昼の待ち時間の散布図

図4.14  夜の待ち時間の散布図

  乗車時間と待ち時間の散布図を比較すると,待ち時間は,ばらつきが非常に大きいの に対し,乗車時間は,待ち時間と比べて,ばらつきがあまり大きくないことがわかる.

そのことから,旅行時間のばらつきの主な原因になっているのは,待ち時間であること がわかる.

そこで,待ち時間にばらつきが起こる原因を追究する.まず,都内の路線バスと比べ,

対象とする関西圏の路線バスには,路線バスの運行本数が少ない地域が多く存在する.

そのため,路線バスの運行に遅延が生じることにより,路線バス利用者は乗りたい路線 バスに乗れず,次の路線バスに乗るために長い時間待つことが起こりえる.しかし,路 線バスの運行に遅延が生じることにより,本来乗ることができなかった路線バスに乗れ ることがあり,長く待つことなく乗車できることもある.そのことより,待ち時間が急 激に増加したり,減少したりしてばらつきが大きくなっている.

次に,乗車時間に注目する.今回のシミュレーションの設定で,遅延ネットワークに は,マイナスの遅延時間を与えていない.それにもかかわらず,乗車時間Bが乗車時 間Aと比べて,短いことが多くある.その原因を探るために,乗車時間を同一経路,

同一路線,異経路の3つに分割して比較を行う.

図4.15〜図4.17に,同一経路,同一路線,異経路別の乗車時間の散布図を示す.散 布図は,図4.6〜図4.8と同様な形式で示し,朝の時間帯を対象とする.縦軸は,乗車 時間B を取り,横軸は,乗車時間Aを取る.

図4.15  同一経路の乗車時間の散布図

図4.16  同一路線の乗車時間の散布図

図4.17  異経路の乗車時間の散布図

  図4.15より,同一経路は,ほぼ45度線上に多くの点がプロットされており,45度 線上に青以外の色が目立つ.乗車時間は,遅延の影響をあまり受けていない.

図4.16より,同一路線も,45度線付近に多くの点がプロットされているが,同一経 路に比べ,遅延の影響を受けているのがわかる.しかし,乗車時間の短縮が少しみられ る.その原因は,サンプルが通る経路にある.サンプルは同じ駅を通る経路(同一路線) を選択しているが,途中で同じ駅を通る違う系統の路線バス・電車に乗り換えることが あり,選択した系統によって駅間の所要時間にずれが起こるため,乗車時間が短縮され る.

図4.17より,異経路は,同一経路と同一路線に比べて,乗車時間にばらつきがある ことがわかる.さらに,乗車時間の短縮が多くみられる.その原因は,乗り換えにある.

時刻表ネットワーク上の旅行経路Aで乗れなかった路線バス・電車に,遅延ネットワ ーク上では乗れることがあり,異経路を選択した方が乗車時間の短縮につながることが ある.このような場合は,京都市,大阪市,神戸市のような路線バス・電車の運行が多 くある都市に向かうサンプルに多くみられる.

次に,表4.2で示した出発駅を用い,時間帯を朝とし,各路線バス会社別にサンプル を設定し,シミュレーションを行う.図4.18と図4.19に,阪急バスと京都バスの1路 線を出発駅として選択した時のシミュレーション結果を,図4.6〜図4.8と同様な形式

で示す.縦軸は,旅行時間Aを取り,横軸は,旅行時間Bを取る.それ以外のシミュ レーション結果は,付録Cに示す.

図4.18  阪急バスの旅行時間

図4.19  京都バスの旅行時間

  シミュレーション結果より,全体的に旅行時間にばらつきがある.そのことから,どの 路線バス会社の路線バスに乗車しても,旅行時間の信頼性は保たれていない.

  図4.18は,路線バス会社8社の中で1番特徴的な散布図である.図4.18より,旅行時 間が40分以内では,ばらつきが少ないことがわかる.その原因は,運行本数にある.出発 駅として選択した路線は1時間に1本のバスしか運行していないことが影響し,遅延が生 じても乗り始めの待ち時間はあまり変わらない.短時間の移動に関しては,待ち時間にば らつきが少ないので,旅行時間の信頼性は保たれている.しかし,旅行時間が長くなると,

遅延の影響を強く受けるため,旅行時間の信頼性が損なわれている.

  図4.19は,運行本数が1時間に1本の路線を出発駅としたサンプルを用いたが,図4.18 のような散布図にならなかった.なぜならば,出発駅として選択した路線には,京都市バ スの路線バスも運行しており,路線バス利用開始時に京都市バスに乗車するサンプルもい るからである.さらに,京都バスと京都市バスは,同駅間を運行することがあり,乗り換 えが容易に行える.そのために,旅行時間の信頼性を保つのが難しくなっている.

 

ドキュメント内 中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻 (ページ 37-46)

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