第4章 関西圏の路線バスへの適用
4.1 シミュレーションの設定
4.1.3 旅行時間の信頼性の評価基準
本節では,旅行時間の信頼性の評価基準を定める.まず,サンプルの選択する経路は,
旅行時間が最小になるように経路(以下,最短経路という)を選択すると仮定する.最短
経路は,Dijkstra法で算出する.そこで,サンプルが通る時刻表ネットワーク上の旅行
経路Aを算出し,旅行時間A(乗車時間A+待ち時間A)を算出する.次に,同じサンプ ルが通る遅延ネットワーク上の旅行経路Bを算出し,旅行時間B(乗車時間B+待ち時 間B)を算出する.
本研究では,旅行時間Aと旅行時間Bを比較し,遅延が生じているか否か,早着が 生じているか否かで旅行時間の信頼性の評価を行う.さらに,旅行経路Aと旅行経路B が同じ旅行経路を通るか否かで旅行経路の信頼性の評価も行う.
以下に同じサンプルが遅延ネットワークと時刻表ネットワークを移動した時の旅行 時間と旅行経路の例を示す.ここで言う旅行経路とは,サンプルが通ったノード番号と する.
<サンプル例>
路線バス利用開始時刻: 8:17 出発駅:a駅 到着駅:d駅
サンプルは,上記に示す情報を持っており,図4.2のような時刻表ネットワーク上を 移動する.その時の旅行時間Aと旅行経路Aを算出する.ノードとリンクの説明は,
図3.16に従い,ノードの横にある数字がそのノードが持つ時間である.
まず,出発駅がa駅,路線バス利用開始時刻が8:17であるから,a駅から出発する 路線バスで,8:17以降に出発する路線バスの駅ノードに,出発ノードから出発リンク が張られる.次に,到着駅がd駅であるから,d駅に到着するすべての路線バスの駅ノ ードから到着ノードに到着リンクが張られる.そして,出発ノードから到着ノードまで の最短経路を算出する.図4.3において赤色で示した経路は,旅行経路Aの最短経路を
示す.さらに,駅ノード内の数字は,ノード番号とする.
次に,同じサンプルが,図4.4のような遅延ネットワーク上を移動する.遅延を考慮 することによって,時刻表ネットワークと多少異なるネットワーク構造を取る.その時 の旅行時間Bと旅行経路Bを算出する.先程と同様に,サンプルの出発ノード,出発 リンク,到着ノード,到着リンクを張る.図4.5において赤色で示した経路は,最短経 路を示す.表4.3に,図4.3,図4.5のように最短経路が決定した時の旅行時間と旅行 経路を示す.
鉄道 路線バス2 路線バス1 8:54
8:48 8:51
8:45 8:39
8:45
8:29 8:35 8:29
8:19 8:24
8:15 8:25
8:20
d駅 c駅
j駅 i駅
b駅 a駅
図4.2 時刻表ネットワーク(例)
図4.3 旅行経路Aの最短経路(例)
図4.4 遅延ネットワーク(例)
a駅 b駅
i駅
j駅 c駅
d駅
8:23 8:28
8:18
8:33
8:27 8:35
8:29
8:45
8:39
8:45 8:51
8:48 8:54
路線バス1
路線バス2 8:38
鉄道
a駅 駅
駅
駅 駅
駅
b i
j c
8
d 8:20
8:25
8:15
8:24
8:19 8:29
8:35
8:29
8:45
8:39 8:45
8:51
8:48 :54
7
8 11
12
13 14
10
3 6 9
2 5
1 4 出発リンク
到着リンク 出発ノード 到着ノード
図4.5 旅行経路Bの最短経路(例) 表4.3 サンプル例の旅行時間と旅行経路
旅行時間A(分) 31 旅行時間B(分) 32 乗車時間A(分) 17 乗車時間B(分) 24 待ち時間A(分) 14 待ち時間B(分) 8
旅行経路A 2→5→7→9→11→13 旅行経路B 1→4→7→9→11→13 利用駅A a→b→i→j→c→d 利用駅B a→b→i→j→c→d
表4.3より,旅行時間に遅延が生じているのがわかる.遅延が生じたことにより,乗 車
経路A と
8:29
a駅 b駅
i駅
j駅 c駅
d駅 8:23
8:28
8:18
8:33
8:27
8:35 8:45
8:39 8:45
8:51 6
8:38 8:5
時間は増加したが,待ち時間は減少している.さらに,乗りたい路線バスより,1本 前の路線バスに乗車でき,旅行経路にも変化が生じている.このような変化を全サンプ ルから取得し,旅行時間の信頼性の評価,旅行経路の信頼性の評価を行う.
旅行時間は,乗車時間,待ち時間の2つから評価を行う.旅行経路は,旅行
旅行経路Bで比較し,サンプルが通るノードがすべて同一な経路は「同一経路」,サ ンプルが通るノードは異なるが利用駅Aと利用駅Bが同一な経路は「同一路線」,どち らも異なる経路は「異経路」の3つに区別し,評価を行う. 表4.3のサンプル例の旅 行経路は,「同一路線」となる.
8:50
4 5
7
8 0
11 12
13 14
3 6 1
2 9
出発リンク
1
到着リンク 出発ノード 到着ノード