以下の記述は,世界の鉱業の趨勢(2004)による。
9-1.概 況
1990年代からのチリにおける探鉱投資額推移は下のグラフのとおりである。2003年 は,銅価や金価格の回復基調を示したものの,探鉱投資額はここ数年の減少傾向を引き 継いで80百万USD程度であった。
チリの探鉱投資額推移
出典:Cochilco-Codelco
9-2.銅鉱床 9-2-1. CODELCO (1) 探鉱
CODELCOの2003年の探鉱実績は約2千万USD,ボーリング総掘進長14.5万mの 探鉱を実施した。既存鉱床の周辺探鉱,El Toqui鉱床の鉱量把握,チリ国内でのJ/V探 鉱,ブラジルやメキシコでの J/V 探鉱を実施した。主なチリ国内探鉱案件としては,
Purén 金プロジェクト(Mantos de Oro 社),Sierra Mariposa 銅プロジェクト(Placer Dome社),Paloma銅プロジェクト(Newmont社),Vallenar銅プロジェクト(Cementos Bio Bio社)などが挙げられる。
(CODELCO探鉱費の推移)
年 1998 1999 2000 2001 2002 2003
探鉱費(百万USD) 24.5 18 15 23 25 20
出典:Compendio de la Mineria Chilena 2004
77 87 114
73 121
175 156 224
176
136 144 130
100 80
0 50 100 150 200 250
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 年
百万US$
(2) Gaby鉱床開発
2002 年6月,EIA(環境影響評価調査書)が提出された。酸化銅鉱で資源量は 4億 t(Cu 0.54%)である。地表下50 mに胚胎する完全な潜頭鉱床で,南北2.2 km×東西1.1 kmの 範囲で合計78,000 mのボーリングが実施され,1996年に発見された。露天掘によりカソ ード年産10~15万tの計画で,初期投資額は6億USD。開発計画は,破砕,ベルトコン ベヤーによる鉱石輸送,ヒープリーチング,SX-EWの各工程からなり,2004年には詳細 設計に入る見込み。早ければ 2005 年の建設開始を予定している。現在,J/V パートナー の可能性を検討している。
(3) Mina Surピットの拡張
Chuquicamata本鉱床の南に位置するMina Sur鉱床は酸化鉱を主体とする。そのピッ トの北部延長の開発が開始された。投資額 6.5 千万 USD,埋蔵量が酸化鉱 9 千万 t(Cu 1.39%)とされている。計画では年産 12 万 t/y のカソード生産のために,Chuquicamata の湿式製錬に供することができるという。ただし,鉱床の上部には,かっての廃砕が堆積 しており,その剥土を2004年に実施し,生産は2005年からになる予定。
(4) Mansa Minaバイオリーチングによる開発
CODELCOは第Ⅱ州Chuquicamataの南10 kmに位置するMansa Mina銅鉱床の開発 を開始した。2002年1月,Conama(チリ環境委員会)にDIA(環境影響申請書)が了承され,
2千万USDを投資して探鉱坑道2.2 kmと地表・坑内ボーリング43,000 mの組合せにて 精査を実施した。現状の資源量は5億t,銅品位1.5%である。Mansa Mina鉱床はその高 い砒素含有量から乾式製錬における環境対策が課題とされていたが,BHP Billiton 社と 2000年8月,合弁会社Alliance Copper社を設立し,ChuquicamataにてMansa Mina の精鉱を対象としたTank bio-leach(微生物利用リーチング技術)について共同研究を開始 した。Billiton社はBio-COPと呼ばれる技術を有する。6千万USDを投じて年産 2万t 規模のプロトタイプパイロットプラントの建設に着工し,2004年から試験操業を行う予定。
その後,年産10万tの操業ベース規模に拡張する計画もある。
(5) 日鉱金属とのバイオ鉱業技術共同研究会社設立
2002年6月,CODELCOと日鉱金属はバイオ鉱業技術開発を行う合弁会社“Bio Sigma”
設立の合意文書に署名した。資本金3百万USDでCODELCOが66.6%,日鉱金属が残り 33.4%を出資する。バクテリアリーチング工程の改良のための基礎技術から,鉱石の性質 に適した微生物を得る目的で多様な研究開発の目的を有する。研究テーマを募集し,世界 各国の大学や研究機関から 21 グループの応募があった模様。チリ政府は,バイオ技術の 産業への導入支援を政策目標の一つにしており,本事業にも大きな関心を示している。
(6) Mejillones製錬所建設計画の凍結
2003年11月にVillarzu総裁は,本プロジェクトの凍結を発表した。国際的に精鉱市場 がタイトであることを理由の一つに挙げていた。CODELCOは2000年頃より,第Ⅱ州ア ントファガスタ市近郊の港町 Mejillones にて,新規製錬・精錬所建設計画(年産能力:カ ソード88万t,アノード43万t)を進めてきた。2001 年には,Pre F/Sを実施し,2002 年初頭よりF/Sおよび基本設計を行った。2003年1月にはEIA(環境影響評価調査書)の認 可を得ており,投資額は10億USDとし,出資パートナーの模索がなされていたところで あった。
9-2-2. Escondida Norte
Escondida Norte鉱床は,第Ⅱ州Escondidaの北5 kmに位置し,Placer Dome社が操 業するZaldivarの東側延長にあたる。Escondida第Ⅳ次拡張計画に続くプロジェクトに位 置づけ,既に,2001年12月にEIAが第Ⅱ州のCorema(地方環境委員会)に承認された。
投資額は5 億 USD 以上とされ,開発には鉱石処理プラントの建設を含まず,Escondida 本体の操業との統合により6億USD相当の投資が節約になるという。開発計画は,年産 銅量15万t/yで23年の操業ライフを有し,露天掘採掘準備,破砕機の設置,道路造成,
ベルトコンベアと周辺装置,水処理プラントからなる。第Ⅳ次拡張計画により,年産120 万tに達するが,そのピーク時の生産を持続するために必要な鉱石を供給することを目的 とする。2000年6月時点の埋蔵鉱量は,硫化鉱14.7億t(TCu 0.88%),酸化鉱1.44億t(SCu 0.73%)と推定され,銅量1.4千万t。2003年6月にF/Sを終了して,開発の最終決定を行 った。2005年8~9月の操業開始を目途としている。
9-2-3. Escondida 硫化鉱バイオリーチング
硫 化鉱 のバ イ オリ ーチ ン グプ ロジ ェ クト は,Escondida Norte の 開 発と 同様に,
Escondida第Ⅳ次拡張計画に続くプロジェクトに位置付けられ,パイロットプラントによ
る試験が実施されてきた。2004年4月の発表では,8.7億USDの投資(2004年は8千万 USD)を開始する。現在のEscondida鉱床とNorte鉱床からの低品位鉱を対象として,カ ットオフ品位0.3~0.7%(平均0.52%)で11.34億tの鉱量になると見積もっている。また,
2006年生産開始で,25年間にわたり,年産銅量18万tの生産を見込んでいる。本プロジ ェクトにはアントファガスタ郊外のColoso湾において毎秒 500 リットルの能力を持つ淡 水化プラントの建設も含まれている。
9-2-4. Spence
第Ⅱ州Calamaの南西60 km,国道25号沿いに位置し,露天掘ピットが重複するため 25号線の迂回工事が必要になる。BHP Billiton社が合併した子会社Rio Algom社の探鉱 成果であり,24,000 mのボーリングにより酸化帯と二次富化帯からなるポーフィリーカッ
パー鉱床を把握した。1.1 kmの斜坑でバルクサンプリングを行い,リーチングと浮選の両 方が検討された。2000年9月にBankable F/Sを実施し,露天掘で年産銅量22.5万t,キ ャッシュコスト55¢/lb,予想鉱量4億t,Cu 1%とされている。
BHP Billiton社は本プロジェクトに関し,外国投資委員会に子会社のRio Algom社と Rio Algom Exploration社を通じてその投資計画を申請済みである。SX-EWによる生産カ ソード20万t,日粗鉱量50,000~65,000 t,初期投資額は8億USD。2003年11月時点 では,今後の銅需給状況を分析しつつ,開発年を決定するとしている。
9-2-5. Fortuna de Cobre
第Ⅱ州Lomas Bayasの南3 kmに位置する。Boliden社の探鉱・F/Sプロジェクト。酸 化銅鉱の鉱量8億t(Cu 0.238%)でSX-EWカソード年産9万tの計画にて2001年建設開 始であったが,銅価低迷の時,2001年3月,Boliden社はLomas Bayasと合わせて本鉱 区をFalconbridge社に1.75億USDで売却した。
9-2-6. Esperanza
Luksicグループの鉱山部門,Antofagasta Minerals社が所有するプロジェクト。同社 はLos Pelambres,El Tesoroが生産に至った現在においてチリ国内の次期プロジェクト としてEsperanzaに注力している。第Ⅱ州El Tesoroから北東に5 kmしか離れておらず,
鉱量は酸化鉱7.3千万t(品位Cu 0.41%),硫化鉱2.95億t(品位Cu 0.66%,Au 0.31 g/t) と推定される。露天掘で,日産粗鉱量5 万 t/d,年産銅量 15万 tを計画している。2004 年には3百万USDを投資して,探鉱坑道の掘削などの探鉱を行う予定。
9-2-7. El Morro
第Ⅲ州Vallenarの東80 kmに位置する銅金鉱床。Noranda社が,権益を有するMetallica 社と探鉱契約を結び,1 千万 USD の探鉱および鉱区料の支払い,2007 年 9 月までに bankable F/Sを完了することで同鉱区の70%を取得できる。予想鉱量は4.65億t(品位Cu 0.61%,Au 0.5 g/t)とされている。Noranda社は追加鉱量把握のために,2004年は8,000 mのボーリング探鉱を計画している。
9-2-8. Altamira
第Ⅱ州南部に位置する。CODELCOからENAMIに法律19.137条により移譲された初 の鉱床で1994年の入札によりPudahuel社が280万USDで落札したが,権益の10%は ENAMIが保持。鉱量は1,200万t(品位Cu 1.75%,Ag 41 g/t)。1996年にF/Sが実施され,
EIA(環境影響評価調査書)が提出された。年産2万t,開発資金4.8千万USDと見積もら れるが,プロジェクトは休止状態にある。
9-2-9. Altonorte 製錬所
Altonorte銅製錬所は,1993年CallejasグループによりAntofagasta市南30 kmのLa Negraに5千万USDで建設され,98年にNoranda社に買収されて現在に至る。1996年 には溶錬能力が精鉱15万t/yから40万t/y(銅量15万t)に拡張された。さらに,2003年 9月には,1.7億USDをかけて溶錬能力82万t/y(銅量29万t),硫酸26万t/yから70万 t/yに拡張が完了し,フル操業に入っている。
9-2-10. Ventanas 製錬所および Paipote 製錬所
ENAMIは,Ventanasの溶錬能力拡張計画(55万→80万t/y)と,Paipoteの溶錬能力拡 張計画(31.5万→38万t/y)に関し概念設計中で,民間企業ではOutokumpu社がこれら製 錬所増強計画に興味を示している。Ventanasについては,ENAMIの労使双方は2002年 11月18日,VentanasをCODELCOに完全売却することで方針をまとめ,2003年7月 には譲渡法案がチリ議会に入り,審議されている。よって,Ventanas の拡張計画につい ては,CODELCOが現在進行中のAndinaやEl Tenienteの拡張計画とリンクして進めら れるであろう。
9-2-11. Mantos Blancos,ダンプリーチング
Mantos Blancos社(Anglo American社の現地子会社)が操業するMantos Blancos銅鉱 山(第Ⅱ州アントファガスタ市の45 km北東)において,投資額5.8千万USDのダンプリ ーチングプロジェクトを進めている旨を発表した。既に EIA(環境影響評価調査書)の手続 きを完了し,2003年からパイロット試験を行っている。2005年からの操業を予定してお り,この計画によって,現在の年産銅量6万tを2015年まで維持することを考えている。
9-3.金鉱床
9-3-1. Pascua-Lama
第Ⅲ州南Vallenarから南東150 kmにPascua鉱床が,アルゼンチンSan Juan州側に Lama鉱床(San Juanから北西300 km)が胚胎する。Barrick社が90%,チリ企業が10%
を所有し,2002年6月に閉山したEl Indioと2000年7月に閉山したTamboに代わる金 鉱山開発プロジェクトであり,これらの鉱山から北48 kmに位置する。埋蔵量(確定+予 想)は2000年12月末時点のデータで2.68億t,金品位1.95 g/tで,金量にして1.68千万 oz。PascuaとLamaの鉱量比は8対2とされる。投資額は9.5億USD。金価格の低迷下,
開発着手時期は延期されており,2004年中に決定する予定で探鉱と計画改善の検討を継続 するとしている。現時点では,2008 年からの操業開始を目途としている。EIA の最後の 必要条件とされていた尾鉱ダムについて新規設計を提出済み。現状の年産計画は,精鉱中 金属含有量で銅5千t,金61.5万oz,銀1.82千万ozで,キャシュコストは最初の5ヶ年 間60 USD/oz,以後100 USD/ozと非常に低いが必要な金価水準は345~350 USD/ozと 報道されている。マインライフ20年,年間粗鉱量1,500万t,従業員3,000~4,000人。
生産開始から2年後に投資額1.09億USDにより拡張後,生産金量100万ozとの計画が 発表されている。
9-3-2. Cerro Casale
本プロジェクトはF/Sの最終段階であり,投資額16.5億USDとされる。Placer Dome 社は,近年の金価低迷のため開発決定の判断を延期してきたが,2004年内で決定するとし ている。2001年,第Ⅲ州のCorema(地方環境委員会)にCerro Casale金銀銅鉱山開発に関 しEIAを提出し2002年2月に承認済み。可採鉱量は,金1.7千万oz,銀3.2千万oz,銅 (精鉱中金属量)2百万tでマインライフ 18年間。埋蔵鉱量(確定+推定)は10.35億t(品位 Au 0.69 g/t,Cu 0.26%)。年産計画は金97.5万oz,銅13万t。実収率は金74%,銅89%。
総コストは203 USD/oz,キャシュコスト98 USD/oz。精鉱を山元からCandelariaの積出 港でもあるCaldera港までをスラリーパイプライン(224 km)で流送し船積する計画。開発 時8,000名の労働力,操業期間中は1,500名の従業員を必要とし建設工事は2年間。同鉱 床は,第Ⅲ州,標高4,200 mのAldebaranとして知られる金鉱床地帯に位置し,以前ジュ ニアカンパニーのBema Gold社が所有していたが,1998年にPlacer Dome社が1.5千万 USDにより51%の権益を獲得した。現在の権益比率はPlacer Dome社51%,Arizona Star Resources社25%,Bema Gold社が24%である。