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新しい分散係数の評価法を採用した物質循環モデ ルによる閉鎖性内湾の水質予測

第 5 章 新しい分散係数の評価法を採用した物質循環モデ

循環

2

層 モ デ ルに組 み 込 んで, 博 多 湾 を 対 象 海 域 と し て 水 質 拡 散シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 い そ の 適 用 性につ い て 検討 した.

5 . 2 博多湾における水質予測シミュレーションのための物質循環モデル

5.2.1分 散 係 数 の 評 価 法 に つ い て

前 述 の よ う に 内 湾 に お け る 物 質 循 環 ・ 生 態 系 モ デ ル を 用 い た 有 機 汚 染 の シ ミ ュ レー ションに関する研究は 従 来 よ り 数 多 く 行 わ れ て き た . し か し な が ら , そ れ ら の 研 究 で は 現 象 を 規 定 す る 重 要 な フ ァ ク タ ー で あ る 拡 散 能 が 明 ら か で な い た め , 多 く の 場 合 湾 全 体 に お い て 拡 散 係 数 を 一 定 と 仮 定 し て 処 理 さ れ て い る [ 例 え ば , 堀 江 ( 1987),堀口・中 田(1993)等].また,その一定 値 に つ い て も 塩 素 イ オ ン 濃 度 な ど の 濃 度 分 布 の 実 測 値 に 現況を再現のための計算結果を fittingさせて求めているか, も し く は 経 験 的 な 数 値 を 与 えていた. しかしながら,堀江・細川(1983)は 拡 散 係 数 を 局 所 的 に 変 え た 場 合 と 空 間 的 に 一 定 値 を 与 え た 場 合 の , 物 質 循 環 モ デ ル を 用 い た 大 阪 湾 に お け る 数 値 実 験 に よ り , 拡 散 係 数 の 分 布 が 水 質 指 標 の 分 布 に 大 き な 影 響 を 与 え る こ と を 明 ら か に し て , 拡 散 係 数 推 定の重要性を指摘している.

4

章 で は , 水 深 方 向 に 積 分 し て 得 ら れ る 平 面

2

次 元 モ デ ル の 場 所 毎 の 分 散 係 数Dが 代 表 流 速 と 代 表 長 さ の 積 に 比 例 す る も の と し て 新 し い Dの 評 価 式 を 提 案 し た . そ れ に よ る と , 代 表 流 速 ス ケ ー ル と し て 場 所 毎 の 潮 流 最 大 流 速 Vmを , 代 表 実 さ ス ケ ー ル と し て場所毎の時間平均水深

h

を採用し,比例定数を

α

として

D

を式

( 4 . 2 )

の 様 に 表 し て い る.

D =

α

V

h  ( 4 . 2 )  

4

章 に 示 し た よ う に 成 層 度 パ ラ メ ー タ

( 4 . 8 )

と吹送流パラメータ

( 4 . 9 )

の 評 価 よ り 比 例定数

α

の決定を行え ば , こ の 評 価 式 を 用 い る こ と に よ り 閉 鎖 性 内 湾 に お け る 場 所 毎 の 分散係数が評価され 平 面

2

次 元 水 質 拡 散 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 う こ と が 出 来 る .

5.2.2博 多 湾 に お け る 既 往 の 水 質 予 測 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に つ い て

博 多 湾 は 韓 半 島 に 非 常 に 近 い と い う 地 理 的 条 件 か ら ア ジ ア へ 向 け た 海 の 玄 関 と し て 文 化 ・ 経 済 ・ 交 通 の 窓 口 と し て の 役 割 を 果 た し な が ら 古 く か ら 栄 え て き た 港 湾 で あ る . 我 が 国 の 大 都 市 の 中 で も 人 口 増 加 率 が 比 較 的 高 い 福 岡 都 市 圏 を 背 後 に も つ た め , 都 市 機 能 の 拡 充 を ね ら っ た ウ ォ ー タ ー フ ロ ン ト 開 発 が 活 発 な こ と が 近 年 の 特 徴 と し て あ げ ら れ る . ま た , 近 年 の 博 多 港 の 取 扱 貨 物 量 の 著 し い 増 加 に 伴 う 港 湾 施 設 の 拡 充 の 必 要 性 か ら,湾最奥部に人工島の建設が進められている[福岡市(1993)] . そ の た め , 博 多 湾 は こ こ 数 年 来 人 工 島 が 水 環 境 に 与 え る イ ン パ ク ト の 評 価 を 行 う こ と を 目 的 と し た 水 質 シ ミュレーションの対象海域として研究される機会が増えている.

博 多 湾 に お け る 代 表 的 な 水 質 予 測 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に は 次 の よ う な も の が あ る . 内 田

( 1 9 8 3 )

は博多湾を

1 0

個の海域に区分したボックスモデルを用いて,全リン (T‑P) と

COD

の物質循環を考慮した生産関数法と

dCOD

法により年平均の

COD

分布を再現して いる.その後,内田ら

( 1 9 9 4 )

は平面

2

次元単層モデルを採用して,同じく

dCOD

法と 生産関数法により

COD

分布を算出した.また,福岡市(1

9 9 3 )

は博多湾湾奥部への人工 島建設計画(現在,工事中)に伴う環境影響評価において,平面

2

次元

2

層モデルを用 いて, T‑Pと

COD

についての物質循環モデルにより年平均の

COD

分布の再現計算を 行った.更に,堀口・中田(1

9 9 4 )

5

層レベルモデルを用いて,

COD'

動物プランクト ン・植物プランクトン・デトリタス・

DO

・溶存態有機物・リン酸塩・全無機態窒素の 聞の物質循環を考慮した生態系モデルにより夏季の

COD

分布などを再現している.な お,後

2

者は人工島建設に伴う水質への影響評価も行っている.

上記の4つの研究は,いずれも水質の再現性が良いとの結論を得ているが,それぞ、れ 問 題 点 も あ る . 内 田 ら の モ デ ル は 単 層 モ デ ル を 用 い て い る た め に , 光 合 成 に よ る

COD

の一次生産量の評価に疑問が残る.堀口・中田のモデルでは流動モデル・生態系モデル 共に非常に高度なモデルを用いているが,生態系モデルで用いられた各種のコンパート メントに関するモデルパラメータの設定が他の海域で用いられた値をそのまま利用して いるという点が問題である.また,物理的な過程についてはどのモデルにおいても拡散 係数の設定法が合理的とは言えない.

そ こ で , モ デ ル パ ラ メ ー タ が 博 多 湾 を 対 象 と し た 現 地 調 査 や 実 験 に よ り 得 ら れ て い て 比較的信頼性が高い,福岡市による物質循環

2

層 モ デ ル を 水 質 モ デ ル と し て 採 用 し , 第 4章 で 開 発 し た 分 散 係 数 の 評 価 法 の 適 用 に よ り 物 理 的 に も 生 化 学 的 に も 整 合 性 の あ る 博 多湾の水質予測シミュレーションを以下に試みる.

5.2.3物 質 循 環モデルについて

平成 4年秋季の博多湾における水温分布の実測結果[劉(1

9 9 3 )J

によると,顕著な温 度躍層は見られなかった.また,平成元年度の九州環境管理協会(1

9 9 2 )

による博多湾全 域における塩素イオン濃度の実測結果によると,多々良川・御笠川・那珂川などの比較 的流量の大きい河川の河口周辺海域を除いて全体的に年平均的な塩素イオン濃度の分布 特性は顕著な密度成層を示してはいなかった. そ こ で , 流 れ の 計算 を 極 力 簡 単 に 行 う た めに,第

4

章 で 行 わ れ た 平 面

2

次 元 単 層 非 定 常 モ デ ル を 用 い て 行 わ れ た 潮 流 シ ミ ュ レ ー ションの計算結果を流れのデータとして用いることにした.

水質シミュレーションに関しては福岡市(1

9 9 3 )

により構築された物質循環

2

層モデル を採用した.海域の有機汚染の水質指標である

COD

を対象水質指標とし,植物プラン クトンの体組成比である Redfield比 と 全 窒 素

T‑N

,全リン

T ‑ P

の測定結果から博多湾で は制限栄養塩がリンである[内田ら(1

9 9 4 ) J

ことが明らかとなっていることから,リン の循環を考慮できるようなモデル化を行っている.また,光の届く表層(有光層)での み内部生産が行われるものと仮定し,有光層と光の届かない深い層(無光層)の上下

2

層に分割する

2

層 レ ベ ル モ デ ル を 採 用 し て い る . 栄 養 塩 の リ ン に つ い て は , 有 機 態 リ ン (植物プランクトン)と無機態リン(栄養塩)を一括 し た 全 リ ン 濃 度 T‑Pとして取り扱 い,

COD

T ‑ P

は生産‑分解‑底泥からの溶出・懸濁態の沈降の過程を通じて循環さ

せている.加えて,これらは海域の流れにより移流及び拡散されるものとし,水平方向 の移流・分散と鉛直方向の(上下層間の)乱流拡散に よる混合を考慮した.

各物理的・生化学的過程に関しては,表ー5.1 にまとめて示したようにモデル化を行 い 各物質の移流拡散方程式に付け加える ことで計算を行う. また,本モデルにおけ る物質循環の概略を図‑5.1に示す.

水質シ ミュ レーショ ンに用いた基礎式は以下に示す通りである.

'COD上層

+U+V す=山 [ ま { : t h 1 + S ) D 引+去((日 ) D す )

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